NIPTが適用される妊婦さんの条件について徹底解説
妊婦さんの出産年齢が徐々にあがっている現状などから、出産前にNIPT(新型出生前診断)により、胎児に染色体異常があるかどうか検査が実施されています。
この検査は全国のNIPT認可施設・認可外施設で受験可能です。
この検査が適用される妊婦さんにはどのような条件が必要なのか、また認可施設や認可外施設での運用状況などについて徹底解説いたします。
この記事の内容
NIPT(新型出生前診断)が受けられる妊婦の条件
妊婦さんであれば、誰でも検査が受けられるわけではありません。
またNIPTの適応条件に合致した妊婦さんでも、必ずしも受験する義務がない点にご注意ください。
以下の条件の、いずれかに該当する妊婦さんが受験可能です。
これを前提として、NIPT適用可能な妊婦さんについてご説明いたします。
なお、以前までは「出産予定日時点で35歳以上」という年齢条件もありましたが、2022年2月18日に日本医学会が公布した指針により、現在は年齢制限は撤廃されています。
過去に染色体数的異常の子どもを出産した方
過去にダウン症や18トリソミー、13トリソミーの赤ちゃんを妊娠・出産した妊婦さんは検査が適用されます。
染色体異常自体は珍しいものではなく、遺伝の可能性はありません。
ただし両親のいずれかが染色体の構造異常をもっている場合は、その可能性がでてきます。
過去に染色体異常の赤ちゃんを出産した場合は検査だけではなく、遺伝カウンセリングも合わせて受けるのが理想的です。
母体血清マーカー検査や超音波検査で染色体数的異常の可能性がある場合
母体血清マーカーや超音波検査の結果、胎児にダウン症や18トリソミー、13トリソミーの異常が疑われる場合も受験できます。
母体血清マーカー検査は妊婦さんから採血した少量の血液から染色体異常を調べることができますが、簡易的な非確定検査であることに変わりありません。
これだけでは胎児の染色体異常を正しく判断できないのです。
超音波検査も同様です。
染色体異常が疑われている状態なので、この段階で「赤ちゃんに異常がある」と落ちこむ必要は一切ありません。
NIPT検査でさらに詳しい検査をすることで、異常なしの結果がでる可能性も十分あります。
NIPT対象となる週数や遺伝カウンセリング
NIPTは、いつでも好きなときに自由に検査ができるものではありません。
決まった期間内でなければ受験できない点に留意してください。
また遺伝カウンセリングを受けることにより、遺伝病に対する正確な医療情報を得ることもできます。
受験できる期間は?
NIPTは原則として約10~15週の間に受験します。
医療機関のなかには9週から16週まで可能、10週から17週まで可能など受験期間に違いがありますので、事前の問い合わせが必要です。
検査の結果、陽性と判断される可能性がありますが、大事なのはこの後の対応になります。
ご夫婦だけで悩むのではなく、医学的知識のしっかりした遺伝カウンセラーと面談し、納得できる結論を出してください。
遺伝カウンセリングとは?
遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが担当しています。
一般的な産婦人科クリニックには常駐していませんので、通院しているクリニックからの紹介状が必要です。
もしNIPTで陽性と診断された場合は遺伝カウンセラーと相談することで、今後考えられる可能性や複数の選択肢を、医学的な観点から提案されます。
遺伝カウンセラーに相談した内容は医療情報となりますので、外部に個人情報などが漏れる心配はありません。
もちろんNIPT受験前に、カウンセラーに相談することもできます。
遺伝カウンセリングのしっかりした医療機関を選ぶ
NIPTはある程度精度の高い検査方法として認知されていますが、一番大事なのはそれを受け止めるご夫婦です。
真実とは違う結果になることもありますし、たとえ検査で陰性でも、赤ちゃんに遺伝病がある場合もあります。
どのような経過をたどるにしても、まずはご夫婦がしっかりした知識をもつことが大切です。
そのためには医学知識に裏打ちされた現状認識やアドバイスが必要ではないでしょうか?
検査結果だけにこだわらず、遺伝カウンセリングのしっかりした医療機関を選ぶことも重視してみてください。
NIPT適用外の妊婦がNIPTを受験できる?
厚労省が認可したNIPT認定施設では、受験できる妊婦さんの条件が厳しく決められています。
そのため条件に合わない妊婦さんは受験ができない状況です。
しかし、条件に合わなくても受験できるケースもあります。
条件に適合しなくても受験できるケースがある
NIPTの認可施設では、受験のためのガイドラインがあり厳しく審査されています。
ご夫婦での診察や紹介状の提出、事前予約の必要性などもあり、そうそう簡単に受験できません。
ただNIPTは認定外施設でも実施されています。
認定外施設といっても違法施設ではなく、きちんとした医療機関です。
認定外施設であれば妊婦さんの年齢や既往症は問われません。
夫婦で受けるカウンセリングや診療も、妊婦さんだけですむこともあります。
病院により受験の条件が違うため、希望する病院へ問い合わせてみましょう。
海外でのNIPT事情(欧州・フランス編)
日本国内のNIPT事情をみてきましたが、海外ではどのような流れで診断されているのでしょうか?
フランスでも日本と同じく、NIPTの診断結果は1〜3週間程度で判明します。
また検査が義務ではない点も、日本との共通点です。
フランスでのNIPT(新型出生前診断)の位置づけ
フランスでは、NIPT(フランスではDPNIと呼ばれます)が積極的に推進されています。
2011年からフランスで始まった検査ですが、保険適用外で高額な費用がかかる点が問題視されていました。
「経済的格差で女性がNIPT(DPNI)検査を受験できないのは差別」との声により、2019年には条件に当てはまる妊婦さんは健康保険で受験できるよう法律が改正されています。
また年齢制限もありませんので、エコーや出生前診断で「リスクが高い」と判断された多くの妊婦さんが検査を受けています。
フランスにおけるNIPT(DPNI)は、健康保険内で受験できる身近な検査なのです。
フランスでのNIPT検査の内容とフォロー
フランスで実施される検査内容は、日本と同様にトリソミー13、18、21(ダウン症)の3種類です。
全染色体検査は実施されていません。
検査で陽性になった場合、羊水穿刺による遺伝病の確定審査へと進みます。
確定診断で陽性と判断されると「このまま妊娠を継続するか、それともあきらめるか」の選択に直面しますが、日本と同じくカウンセラーのフォローが入る点に注目です。
検査で陽性が出ると、精神的に不安定になるカップルが多いのは世界共通といえます。
遺伝カウンセリングは、カップルの心を支える大事な存在なのです。
健康保険でNIPT(DPNI)検査が受けられる妊婦さんの条件(フランス)
フランスでは以下の条件にあてはまる妊婦さんは自費ではなく、健康保険での受験が認められています。
クアトロテストは妊婦さんの年齢や超音波検査、母体血清マーカーなどの検査を複合的に判断し、染色体異常の可能性を算出する方法です。
- クアトロテストで、中~高程度のリスクがあると判断された場合
- クアトロテストの内容が低リスクであっても多胎妊娠や既往症の妊婦さんは保険適用OK
- クアトロテストで十分な検査内容が得られなかった場合
まとめ
年々出産年齢が上昇している日本では、胎児の染色体異常のリスクもあがっています。
ただNIPT検査ではすべての病気を診断することはできず、結果をどう考えるのかはご夫婦にゆだねられています。
検査の有効な活用のためには、専門医や遺伝カウンセラーとの連携が必須です。