18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)とは?治療法や予後について解説
18トリソミーとは、出生時の18番染色体数の異常によって生じる疾患です。
本記事では、18トリソミーの症状や特徴、検査方法などを解説いたします。
性染色体疾患の中でも予後不良となりやすい重篤な疾患ですが、治療法や早期発見のための検査方法も紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
18トリソミー症候群とは
18トリソミー症候群の概要と寿命について紹介します。
3500人~8500人に1人が発症する先天異常症候群
18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)は先天性の染色体異常症です。
3500〜8500人に1人という稀な確立で発生する難病であり、男児よりも女児に発生する確率が高い疾患となっています。
小児特定慢性疾患に指定されており、医療費の助成を受けることができる疾患です。
多くの患者が心疾患や脳など中枢神経系の奇形、身体発達障害や知的障害をきたしています。
18トリソミー症候群は染色体の不分離により生じる
18トリソミー症候群は、常染色体のうち18番目の染色体に異常をきたすことで発症します。
染色体は父親から23本、母親から23本の計46本を受け継ぎ、そのうち1〜22番が常染色体と呼ばれます。
通常、染色体は2本で1組のところ、18トリソミー症候群の患者は18番染色体が3本存在しており、これがさまざまな症状や特徴を引き起こす原因とされています。
染色体が3本となる理由は、精子や卵子の段階で「染色体の不分離」という現象が生じることが原因です。
染色体の不分離は、母体の年齢と関係があると言われており、出産時の母体の年齢が高いほど発生する確立が高くなります。
また、18トリソミー症候群の染色体は他の染色体異常症にもみられるように、「標準型」「転座型」「モザイク型」などの型があり、それぞれ発生率が異なります。
寿命は極めて短い
18トリソミー症候群は、染色体異常症のなかでも予後不良とされており、1歳までの生存率は12~13%程度と極めて低い疾患です。
心臓・腎臓などの臓器奇形も伴いやすいことが、生存率を引き下げる一因となっています。
医療技術の発展により、近年では10歳以上まで生きられる方も出てきていますが、他の染色体異常症と比較しても生命予後不良の重篤な疾患です。
また、染色体異常症のなかでも重症度の高い疾患であり、妊娠中に流産や死産となる確率も高いとされています。
18トリソミー症候群の症状と特徴
18トリソミー症候群の患者に診られる症状や特徴を解説します。
出生前に母体にみられる症状
胎児が18トリソミー症候群である場合、妊娠中の母体にも症状が表れます。
例としては胎盤矮小や羊水過多などがあり、超音波で確認できる胎児の発育不全や形態異常、胎動が弱弱しいことなども挙げられます。
出生時の身体的特徴
18トリソミー症候群の患者は、以下のような身体的特徴を持つことが多くなります。
- 突出した後頭部
- 耳の変形・低位置
- 顎が小さい
- 多毛
- 口唇裂・口蓋裂
- 手指の重なり
- 短い胸骨
- 低身長
- 揺り椅子状足底
これらの特徴は個人差があり、全ての特徴がみられる方もいれば、健常人と変わらない見た目をされる方も居ます。
発生しやすい疾患と合併症
18トリソミー症候群の患者はさまざまな合併症を伴う場合があります。
- 心疾患(心室中隔欠損・心房中隔欠損・大動脈狭窄・動脈開存症など)
- 呼吸器疾患(上気道閉塞・無呼吸発作・横隔膜弛緩症など)
- 肺高血圧
- 消化器疾患(鎖肛・食道閉鎖など)
- 泌尿器疾患(鼠経ヘルニア・水腎症など)
- 脊柱側弯症・関節拘縮
- 多指症・合指症
- 悪性腫瘍(Wilms腫瘍・胚芽腫)
- 難聴
これらの症状のなかでも心疾患を伴う確率が非常に高く、それらは予後を左右するため、できるだけ早い段階での症状・状態の発見と治療が必要となります。
心疾患や消化器疾患などの深刻な疾患は、手術療法を行うことによって生命予後を改善することが可能です。
その他の合併症に関しても早期発見と対処が求められるため、検診や状態の観察が重要と言えるでしょう。
18トリソミー症候群の治療方法と予後
18トリソミー症候群の治療法や予後、今後期待される治療について解説します。
新生児集中治療
新生児集中治療とは、低出生時や疾患を持った新生児のケアを行い、状態を安定させるために実施する治療のことです。
NICU(新生児集中治療室)にて心拍・血圧・呼吸などのバイタルサインをモニターし、必要に応じて呼吸の補助や酸素の供給をサポートします。
出生後に治療が必要となった新生児のうち、新生児集中治療を実施した場合は、1年生存率が29%となったと報告されています。
心臓・食道閉鎖などの手術療法で予後は改善しつつある
新生児集中治療でのケアに加え、心疾患や消化器疾患への手術療法を行うことで生命予後は改善しつつあります。
手術しなかった患者の1年生存率が約13%であるのに対し、心臓手術を行った患者は1年生存率が25%へ上昇し、1か月生存率は83%と高い数値を表しています。
ただし、18トリソミー症候群患者の合併症は時期を経て変化するため、手術をして予後が改善しても検診による状態観察を欠かさないことが重要です。
IPS細胞による治療の可能性が示唆されている
広島大学の研究結果によると、トリソミー症候群の患者の皮膚細胞からIPS細胞を作り出すことにより、3本だった染色体が正常な2本の染色体となることが発見されました。
この研究では18トリソミー症候群だけではなく、9・13・15・21トリソミーの患者にも効果が期待できるとされており、今後の染色体異常症の治療に役立つ可能性が示唆されています。
18トリソミー症候群の検査方法と診断
18トリソミー症候群の検査と診断について解説します。
NIPT(新型出生前診断)による非確定検査
NIPT(新型出生前診断)は、妊娠中に胎児の染色体異常を検査することができる非確定検査のことです。
母体の血液からDNAを調査し、染色体に異常がないかを判断します。
精度の高い出生前診断ですが、確定診断を下すためには羊水検査・絨毛検査などを実施する必要があります。
羊水検査・絨毛検査による確定診断
スクリーニング検査で18トリソミーの疑いがあった場合、羊水穿刺や絨毛検査を用いて確定診断を実施します。
妊娠11〜14週の間は絨毛検査、15週以降の場合は羊水検査を実施して細胞を採取し、18番染色体の数が3本であれば診断が確定されます。
羊水検査では母体の腹部に注射針を刺す必要があり、少なからず感染症や子宮収縮、下腹部痛などが生じるリスクもあるため、医師とよく相談することが重要です。
出生後は血液検査で診断される
出生後に18トリソミー症候群を検査する場合は、血液から染色体を採取して検査を行います。
検査結果が出た後は、X線所見などの画像診断や各種合併症の検査を行います。
まとめ
18トリソミー症候群は、性染色体疾患のなかでも予後不良の難病です。
症状が重篤化しやすいことから生後寿命は1歳に満たないことが多い疾患ですが、近年では手術療法により生存率も向上しています。
早期発見により対策や心の余裕を持つようにし、専門医やカウンセラーのサポートを受けながら疾患と向き合うことが大切だと言えるでしょう。
参考文献
・公益社団法人 日本産科婦人科医会 – 染色体異常
・小児慢性特定疾病情報センター – 18番染色体トリソミー症候群
・MSDマニュアル プロフェッショナル版 – 18番染色体トリソミー
・公益社団法人 日本超音波医学会 – 産婦人科:胎児異常・胎児評価
・公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会 – 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針