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染色体異常は顔に特徴がある?起こりやすい症状や疾患についてご紹介

「染色体異常とはどのような疾患なの?」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

本記事では、染色体異常の疾患や母体への影響、検査方法などについて解説します。

お腹の赤ちゃんに染色体異常があるかもしれないと不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

染色体異常とはどのような疾患?

染色体異常とは、お腹の赤ちゃんの染色体の数や形に異常が生じることで起こる、さまざまな疾患です。

ここでは、染色体異常が起こる原因や発生率、代表的な疾患などについて詳しく紹介します。

染色体異常とはどのような疾患なのか、気になっている方はご確認ください。

主な原因・発生率

お腹の赤ちゃんに染色体異常が生じるハッキリとした原因は分かっていません。

ただし、染色体異常の発生には、以下のような要因が関わっているのではないかとされています。

  • 両親からの遺伝
  • 何らかの病気による
  • 偶発的に起こる
  • 母体の年齢が高い(高齢出産)

特にダウン症は、母体の年齢が上がるほど発生率が高くなります。

母体が20歳であればおよそ1500人に1人程度の割合であるのに対し、40歳ではおよそ100人に1人とダウン症の子どもが生まれやすくなるのです。

染色体異常の種類

正常な染色体は長腕と短腕で構成されており、全部で23本46対です。

染色体の中には遺伝子が並んでおり、設計図の役割を果たしています。

染色体異常の種類は以下のとおりです。

染色体異常の種類染色体の状態症状
数的な異常3本1対はトリソミー1本しかないものはモノソミー特徴的な顔つきや知的障害、小脳症、低身長
構造の異常染色体の一部が失われたり、余分になったりする染色体に応じた症状

染色体の構造の異常では、症状があらわれないケースも少なくありません。

代表的な3つの疾患

染色体異常で代表的なのは、疾患名の染色体が3本ある「トリソミー」です。

それぞれの特徴や症状を確認してみましょう。

疾患特徴症状
13トリソミー3つのトリソミーのなかで最も平均寿命が短い口唇口蓋裂、大きい鼻、頭が小さい重度の循環器疾患、乳児期の無呼吸発作、重度の知的障害
18トリソミー出産まで至りにくく、出産から1週間以内に亡くなるのがほとんど後頭部の突出、耳の位置が低い、あごが小さい、口唇口蓋裂心疾患や呼吸器系疾患、消化器系疾患など        
21トリソミー最も頻度が多い鼻が低い、耳が小さい、つり目、首の後ろの皮膚が余っている心疾患や消化器疾患、低身長、筋肉量の低下で身体が柔らかい

異常が生じている染色体によって、あらわれる症状が異なる点に注意してください。

顔や全身に起こりやすいさまざまな症状

染色体異常は、身体や脳の成長・発達が遅れたり、顔つきに特徴が出たりします。

特に以下のような症状は起こりやすいです。

  • 低身長で頭が小さい
  • 目が離れている、耳の位置が低いなど顔つきに特徴がある
  • 運動や言葉の発達が遅い
  • 心臓に穴が空いている、指が短いなど身体の組織の形が通常と異なる
  • てんかん発作が起こる
  • 筋肉の力が弱く、身体がグニャグニャとしている

赤ちゃんの染色体異常が疑われる場合、どのような症状が起こりうるのか、産婦人科医に確認しておきましょう。

胎児に染色体異常があると母体はどうなる?

染色体異常のある赤ちゃんは心疾患や筋緊張の低下によって、胎内での活動性が下がるため、胎動を感じにくくなります。

また、染色体に異常をきたしている受精卵の多くは着床できず、無事に着床できても流産や死産の確率が高くなっています。

流産を繰り返すと子宮に傷がつき、子宮内膜の癒着を起こし、分娩時の大量出血を招くおそれがあります。

そのほかにも、両親のどちらかに染色体異常がある場合、妊娠そのものの成立が難しく、不妊となるケースもあります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p欠失症候群)とは?

「トリソミー以外にどのような染色体異常があるの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。

染色体異常の疾患の1つに、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p欠失症候群)があります。

ここではウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因や症状・合併症、治療方法などについて解説いたします。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は4番目の染色体の異常

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、4番目の染色体の一部の遺伝子不全で起こる疾患です。

発症の原因は突然変異が大半ですが、一部では両親の病気が関わっているとされています。

発症確率は、5万人に1人程度と推定されている、非常に珍しい先天性疾患です。

ただし、症状が軽度で見すごされている可能性もあるため、実際はデータよりも発症頻度が高いと推測されます。

女性と男性の比率は2:1となっており、女性に多い疾患であるといえるでしょう。

顔や全身にあらわれる症状・合併症

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は顔や身体にさまざまな症状・合併症が起こります。

眉間が突出する眉毛の位置が高く弓状鼻梁が広い目の位置が離れている上瞼が垂れ下がっている
身体成長障害筋緊張の低下難治性の転換消化器や泌尿器系の異常難聴先天性心疾患
精神面摂食障害睡眠障害

顔つきに目立った特徴があり、出生児から小児期にかけてよくみられます。

しかし、次第に軽度になっていき、思春期を迎えるころにはあまり目立たなくなります。

診断後の治療方法

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、完治を目指せる治療方法がありません。

しかし、もしもウォルフ・ヒルシュホーン症候群であると診断された場合、生じやすい症状を軽くするための適切な治療が行われます。

  • 抗けいれん薬を投与する
  • 摂食障害に対しては摂食訓練を行う
  • 発達の遅れがある場合は個人に合ったプログラムでリハビリを進める

このとき、個人の心身の状態に合わせた治療方法を選ぶのが大切です。

自己判断で治療をやめたりせず、担当医のもとで適切な治療を受けましょう。

染色体異常の検査方法

ここまでは染色体に異常があると先天性疾患をもって生まれてくるということを解説しましたが、それではその「染色体異常」はどのようにして検査するのでしょうか?

ここからは染色体異常の検査方法について詳しくご紹介していきます。

NT測定

NT測定とは、赤ちゃんの首の後ろの皮膚のむくみをチェックする検査です。

一般的に、NTは妊娠10週〜14週ごろにみられます。

赤ちゃんの血液やリンパ液の流れが後頚部に溜まったもので、生理現象の1つともいえるでしょう。

NTが大きいからといって、必ずしも異常なわけではありません。

ただし、NTは2mm程度である場合が多く、もしも5mmを超える場合は精密検査を検討しましょう。

NIPT

NIPTは母体から採取した血液を用いて、赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。

これまでに13、18、21トリソミーといった基本検査が行われてきました。

さらに、近年では4p欠失症候群を含む「全常染色体全領域部分欠失疾患」についても、高い精度で調べられるようになりました。

妊娠10週以降から受けられる反面、もしも異常が見つかったとしても確定診断にはなりえません。

確定診断には、羊水検査を行う必要がある点に注意してください。

羊水・絨毛検査

羊水検査や絨毛検査は確定診断と呼ばれ、NIPTよりさらに高い精度で赤ちゃんの異常を判定できます。

絨毛検査妊娠11週~14週頃に実施腹部または膣から、胎盤の絨毛の一部を採取する
羊水検査妊娠15週~16週頃に実施羊水をおよそ20mlを採取し、羊水中に含まれている胎児の細胞で染色体を検査する

NIPTとは異なり、検査実施時に流産や死産など母体や赤ちゃんへのリスクがあるため、慎重に検討する必要があるでしょう。

まとめ

染色体異常とは、染色体の数や構造に異常が生じることで、赤ちゃんにさまざまな症状があらわれる疾患です。

多くの場合、特徴的な顔つきであったり、先天性の心疾患やてんかんなどを持っていたりします。

赤ちゃんに染色体異常があるかどうかを調べるためには、エコーでのNT測定やNIPTが有効です。

母体や赤ちゃんへのリスクも低く、安全性に配慮されている検査であるといえるでしょう。

赤ちゃんの染色体異常が心配な方は、ぜひこの機会に検査を検討してください。

参考文献

・MSDマニュアル家庭版-ウォルフ-ヒルシュホーン症候群

・厚生労働省-NIPTの対象とされるトリソミーについて