バニシングツインとは?どれほどの確率でおこる?
お腹に2つの命が宿った感慨深さは、言葉に表せないものです。
しかし、一人の赤ちゃんがお腹にいる場合とはまた別に、起こりうる現象があるのです。
それが、バニシングツインです。
バニシングツインとは、片方の赤ちゃんがなんらかの理由で亡くなってしまうことを指します。
悲しい出来事ですが、実は決して珍しいことではありません。
しかしお腹の赤ちゃんが双子だとわかった時、バニシングツインはお母さんとご家族にとって、とても恐ろしいことであると思われます。
この記事では、バニシングツインの以下3点を主にご紹介いたします。
- バニシングツインとは
- バニシングツインが起こる確率は
- 生き残ったほうの赤ちゃんへの影響について
バニシングツインが起きたあとに、出生前診断をしても大丈夫かについてもご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
バニシングツインについて
それでは、バニシングツインについて詳しくご紹介いたします。
バニシングツインとは双胎一児死亡のこと
バニシングツインは、お腹にいる二人の赤ちゃんが何らかの要因で心臓を止めて亡くなり、そのまま子宮へとかえることで、医学的には双胎一児死亡と呼ばれています。
妊婦健診の超音波検査では赤ちゃんが二人、お腹に存在しているのがわかっていたにも関わらず、まるで消えていなくなってしまったように見えます。
このことから、英語で消失を意味する「バニシング」とあわせて、バニシングツインと呼ばれるようになりました。
赤ちゃんが一人の時は、出産前に亡くなるとお母さんの体から自然と外へと出されるようになっています。
しかし、双子などの多胎の時は、赤ちゃんが亡くなるとそのまま子宮へ溶けてかえるのです。
なぜこのようなことが起きるかは未だ謎となっており、一番有力視されている原因の一つとしては、染色体による異常だと言われています。
しかし、亡くなる原因もメカニズムも詳細は不明です。
心拍確認後でも起こる
妊娠の初期に超音波検査で赤ちゃんの心臓が2つとも正常に動いているのを確認できたあとでも、バニシングツインの可能性があります。
妊娠が中期に入るまでは油断できないと言えるでしょう。
そのため、双子を妊娠した時はなるべく早くに超音波検査を受けて調べることが大切です。
珍しい現象ではない
かつては双子の出産は珍しいことであったというのもあり、バニシングツインはあまり起こらないと考えられてきました。
しかし医療の進歩により超音波検査も綿密なデータが取れるようになったため、実はバニシングツインが起こっていた、ということがわかるようになってきたのです。
また昨今の晩婚化による高齢出産や不妊治療によって、バニシングツインの発生率は高い傾向にあると指摘されます。
現在において決して珍しい現象ではなくなったと言えるでしょう。
三つ子でも起こるのか
三つ子でも、バニシングツインの可能性はあります。
三つ子などは双子である時よりも、発生率が高くなり、一人だけが亡くなるのか、二人とも亡くなるのかはわかりません。
さまざまな要因が重なるため、ひとえに「バニシングツインは一人だけが亡くなること」とは言えません。
バニシングツインはいつわかるのか
バニシングツインがいつわかるのかについて、ご紹介いたします。
妊娠6週目から警戒する
バニシングツインは、妊娠6~8週目の間である初期に起こります。
赤ちゃんが一人の時でも、この時期は特に流産がしやすく、バニシングツインも同様です。
心臓が止まってしまった赤ちゃんは、自然と子宮へかえるので特別な措置を施すことは基本的にありません。
予防策はほとんどない
バニシングツインを起こさせないための対策や予防策は、残念ながらありません。
バニシングツインの大きな原因の一つとして遺伝子の異常が挙げられますが、詳細はわかっておらず、現状ではどのようにすれば防げるのかまでわかっていません。
一人の赤ちゃんの時でも、初期の頃は特に流産しやすい傾向にあります。
通常の妊娠時と同じように、一般的な以下の4点に気をつけると良いでしょう。
- ストレスをかけない
- お酒やタバコは控える
- 無理のない範囲での運動
- 薬の服用は、医師と相談する
この他にも、異常や不安があれば、医師やパートナーとこまめに相談するようにしましょう。
バニシングツインの確率は
バニシングツインの確率について、ご紹介いたします。
およそ15%ほどの確率で起こる
バニシングツインは、およそ10~15%ほどの確率で生じます。
決して高い確率というわけではないのですが、低い確率であるとも言えないでしょう。
また三つ子や高齢出産、不妊治療などで発生率はさらに上がります。
双子のタイプで確率が異なる
双子の赤ちゃんが一卵性であるか、二卵性であるかでも発生する確率が変わります。
通常一卵性の方が、バニシングツインはしやすいです。
これは、絨毛や羊膜など、お母さんの子宮内にある組織によるものと言われます。
一つの胎盤を二人でわけあっていたり、二人いることで子宮の羊水量が多すぎてしまったりなどの問題で流産することが多いのです。
NIPT(新型出生前診断)は受けられるのか
結論から申し上げると、バニシングツインのあとでも、NIPT(新型出生前診断)を始めとした出生前診断は受けられます。
しかし、実施してくれる病院や施設は限られるので、まずは医師に出生前診断を受けられるかを尋ねると良いでしょう。
隠れバニシングツインに注意する
隠れバニシングツインとは、最初から赤ちゃんは一人であると診断されていたのに実は二人いて、片方は判明する前に亡くなっていた、という現象です。
隠れバニシングツインの時、NIPTで採血した組織が亡くなった方の赤ちゃんの細胞だということが多く、偽陽性、偽陰性の可能性が格段に上がります。
また赤ちゃんが二卵性である時も、誤診断の可能性が高くなります。
NIPTの検査結果が陽性でも、二卵性の赤ちゃんは遺伝子を分け合わずに異なっているので、実は生きている方の赤ちゃんにはなんの問題がない時もあります。
NIPTを受ける際は、これらについても考慮する必要があるでしょう。
バニシングツインの影響について
残された赤ちゃんに対して、バニシングツインの影響は全くないとは言い切れません。
ただし、二卵性であったり、赤ちゃんが同じ胎盤からお母さんの栄養などをもらっていない時は、その影響を受けることはほとんどありません。
問題は、一つの胎盤を二人で使用している場合や一卵性である場合です。
どちらもお腹に残った方の赤ちゃんと栄養や遺伝子情報を分け合っていますので、少なからず影響を受けると考えられます。
しかし、影響が必ずあるというわけではありません。
また残った方の赤ちゃんへの影響は、かなり低いものであるようです。
生き残った赤ちゃんに影響を与えることがある
先にも申し上げたように、一卵性であるほうが二卵性よりも、バニシングツインの後、残った方の赤ちゃんに影響がでやすい傾向にあります。
明確にはわかっていないものの、染色体による異常がバニシングツインの原因の一つと言われます。
そのため、染色体の異常によって引き起こされる先天的疾患を持つ可能性が出てくるようです。
もし影響が出た場合は、特に18トリソミーなどの可能性が考えられます。
18トリソミー(エドワーズ症候群)
18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、18番目の染色体が1本多いことによる異常によって引き起こされてしまう先天的疾患です。低体重や呼吸器系といった身体的疾患のほか、知的、精神的分野の発達がゆっくりであることが特徴とされています。
18トリソミーの赤ちゃんが、無事生後1年を迎える事のできる確率はかなり低いものです。
羊水検査で調べられる
バニシングツインのあとでNIPTを受け、陽性と診断された場合、羊水検査で本当に障害があるかどうかを確定することができます。
バニシングツイン時は偽陽性の判断となることがあるため、羊水検査を受けることがおすすめです。
まとめ
ここまでバニシングツインについてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
特に妊娠8週目という初期の状態に発生しやすく、予防方法も対策もほとんどありません。
せっかく宿った命を失うことは、お母さんにとって大変辛いものです。
決して自分を責めたり一人で抱え込んだりせず、必ずパートナーやご家族とよく話すようにしましょう。
お腹にまだ残ってくれている命を、どうか大切にしてください。