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羊水検査でわかることは?羊水検査の種類と方法についてご紹介

赤ちゃんを授かることは、大変喜ばしいことです。

しかし、お腹の中の赤ちゃんに病気がないかどうかは、お母さんとお父さんにとって気になるものでしょう。

赤ちゃんの状態を調べる方法の一つに、「羊水検査」と呼ばれるものがあります。母体から羊水を採取して赤ちゃんの染色体を調べることで、先天性の病気などを調べる検査です。

今回は、そんな羊水検査についてご紹介いたします。

羊水検査で赤ちゃんに異常が見つかった場合に受けられる支援などについてもご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。

羊水検査とは

それでは、羊水検査とはなにか、詳しくご紹介いたします。

胎児がつかっている羊水を採取して行われる検査

羊水検査とは、お母さんのお腹の中で赤ちゃんがつかっている羊水を注射で採取して行う出生前検査のことです。羊水には、赤ちゃんの皮膚や赤ちゃんから剥がれた粘膜の細胞などが漂っています。その細胞から得た染色体を解析し、赤ちゃんに先天性の疾患などの遺伝子異常がないかを調べます。

羊水検査は、超音波検査(エコー検査)で得たデータを元に、赤ちゃんが傷つかないよう細心の注意を払いながら、お母さんのお腹に直接針を刺して羊水を取ります。

NIPT(新型出生前診断)で疑いがでた場合に用いられる

羊水検査は、2013年に始まったNIPT(新型出生前診断)を受けて、遺伝子異常の疑いなどが見られた場合に、確定検査として用いられることが多くなってきています。NIPTが始まる以前は、遺伝子異常の確率が高くなる35歳以上の妊婦さんが対象でした。

羊水検査はいつから受けることができる?

羊水検査は、およそ15週から18週に受けるのが適切な時期となっています。個人の体質などにもよりますが、この期間に羊水の水分量が多くなるからです。

羊水検査の精度は

羊水検査の精度はほぼ100%で、赤ちゃんが持つ染色体異常による疾患などを明らかにすることができます。しかし、羊水検査には種類があり、調査する過程や見解が異なるため、結果に差が出てしまう場合もあります。

また染色体や遺伝子の異常以外で起こる疾患を発見することは困難なため、100%赤ちゃんに異常がないと断定できないのが現状です。

羊水検査の費用と時間は

羊水検査は相場として、おおよそ20万円以上がかかります。妊娠は病気ではない、という観点から、健康保険適用外となりますので、完全自己負担額となります。病院によって金額が変わりますので、しっかりと確認しておきましょう。また、お住まいの地域の自治体によっては、費用の何割か負担してくれるところもあるようです。

羊水検査にかかる時間は、多く見積もって2時間ほどです。羊水を採取するだけならば、処置は1分程度で完了します。しかし、エコーで赤ちゃんの位置や姿勢を見ながら針を刺す位置を決めたり、お母さんの内臓などにも気を使ったりなど、十分安全に配慮して行うので、羊水を採取するまでに想定以上の時間がかかることがあります。

検査後は1時間以上の安静が必要ですので、時間に余裕を持って検査に行くようにしてください。

双子などの場合は

お母さんのお腹の中に複数人の胎児がいる場合でも、羊水検査を受けることはできます。しかし、赤ちゃんの位置や姿勢によっては検査が行えなかったり、流産リスクなどが上がったりすることから、羊水検査をおすすめしない病院もあります。

羊水検査でわかる障害は

羊水検査でわかることは、主に性別や先天性疾患などです。

羊水検査で先天性疾患などの障害がわかる

羊水検査では、以下の先天性疾患を診断することができます。

  • 21トリソミー(ダウン症候群)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • 13トリソミー(パトウ症候群)

21トリソミー(ダウン症候群)

ダウン症候群は、通常ペアになっている22本の染色体のうち、21番目の染色体が1本多いことで起こる疾患のことです。心臓などの内蔵や目、耳、鼻などに合併症が起こりやすい傾向にあります。また言葉や社会性などの発達分野において、健常な人よりもゆっくりであることが特徴です。

18トリソミー(エドワーズ症候群)

18トリソミーは、18番目の染色体が1本多いことで発症する疾患です。出生時に低身長であるなどの身体的な障害のほか、知的障害、合併症などが起こりやすいです。

流産の確率が非常に高く、生後1週間以内に亡くなることがほとんどです。18トリソミーの赤ちゃんが一年以上生きられる確率は10%にも満たないとされています。

13トリソミー(パトウ症候群)

13トリソミーは、13番目の染色体が1本多いことで起こる疾患です。単眼や耳の変形、かかとの突出など体に明らかな奇形が見られたり、重度の知的障害、合併症などを引き起こしたりします。

13トリソミーの症状は重篤な場合が多く、生後1か月に亡くなるケースが大半です。13トリソミーの赤ちゃんが無事に1歳を迎えられる確率は、18トリソミーと同様に10%未満と言われています。

羊水検査の種類と方法は

羊水検査の種類と方法をご紹介いたします。病院によって種類が異なるので、医師と相談して決めることが大切です。

羊水検査には4つの種類がある

羊水検査には、以下の4種類があります。

  • 染色体分染法(Gバンド分染法)
  • qf-PCR法(Quantitative Fluorescence PCR法)
  • マイクロアレイ検査
  • FISH法(fluorescence in situ hybridization法)

染色体分染法(Gバンド分染法)

染色体にはバンドと呼ばれる柄が存在し、特殊な染色でバンドをはっきりと浮かび上がらせることで染色体の数や赤ちゃんの状態などを調査する方法です。

顕微鏡で確認できないほどの染色体異常には、気づかない場合もあります。

qf-PCR法(Quantitative Fluorescence PCR法)

染色体の一部にある遺伝子を複製、増幅させて遺伝子異常などを調べる方法です。

上記で紹介したダウン症候群ほか、ターナー症候群などがあるかどうかを調査することが可能です。

マイクロアレイ検査

胎児の染色体を分解し、蛍光塗料を吹きかけて細胞の配列や領域から遺伝子を観測する検査方法です。Gバンド分染法よりも細かく遺伝子情報を読み取ることができ、がん治療の検査でも使用されています。

FISH法(fluorescence in situ hybridization法)

羊水検査で最も一般的な方法で、染色体の主要な一部に蛍光色を塗って光らせ、顕微鏡で遺伝子異常を見つけ出すものです。染色体自体に大きな欠損や重複などを見つけるだけですので、細かい遺伝子情報などを読み取ることは難しいとされています。

羊水検査の方法と使用される針について

それでは、羊水検査の大まかな流れと使用される針についてご紹介いたします。

羊水検査の大きな流れは、以下の通りです。

  1. 胎児の位置や姿勢を、エコーで確認します。
  2. 胎児の様子を観察し、羊水の量を計測します。この時、羊水の量が不十分であったり、妊婦さんや胎児の調子が悪いと判断されたりした場合、中止になります。
  3. 問題がなければ、局所麻酔を打ちます。
  4. 妊婦さんのお腹に針を刺して、羊水を採取します。胎児や妊婦さんの安全に最大限に配慮しながら行われます。

羊水検査で使用される針の太さは、基本的に25Gと呼ばれる極細の針です。およそ20~30mlの羊水を取られます。双子で羊水検査を行う場合は、2回採取されます。

実は危険?羊水検査のリスクについて

医師が最大限の配慮をしても、羊水検査のリスクはゼロではありません。極細の針であるとはいえ、妊婦さんの腸などの内蔵に傷がつきやすく、出血が止まらなかったり、羊水が漏れ出してしまったりする危険性があります。

医療の進歩により、羊水検査で胎児が流れる流産の確率は、0.3%と大変低いものです。しかし、可能性があることだけは理解しておいた方がよいでしょう。

羊水検査を受けた後の注意

羊水検査の術後は、1~2時間ほど十分に安静する必要があります。落ち着いた頃に、エコーでもう一度胎児の様子を観察して、問題がなければ帰宅することが可能です。ただし、帰宅した後も無理な動きなどはなるべく避けて安静にするように心がけてください。

羊水検査で胎児に異常が見つかった時は

羊水検査の結果、胎児に異常が見つかった場合、産後の育児などをサポートしてくれる行政支援などについてご紹介いたします。

羊水検査の結果は100%ではない

羊水検査の結果は、ほぼ100%に近いものですが、完全に100%とは言い切れません。先程ご紹介いたしました検査の種類によっては、結果が異なることもあり、出産してみなければわからない、というのが現状です。

中絶は可能

妊婦さんの状況などにもよりますが、妊娠21週目までは中絶が可能です。検査の結果のみでは、中絶することができませんが、お母さんが「精神的・肉体的に育児が不可能である」と判断された場合は中絶することができます。

検査を受ける前に病院のフォロー体制を確認

出生診断を受ける前に、もしもに備えて病院側のフォロー体制などを確認しておく必要があります。大変デリケートな問題に直面するため、お母さんとお父さんの悩みを打ち明けられるカウンセラーが在籍しているか、医師のサポート姿勢などについても確認しておきましょう。

行政支援や支援団体を活用する

行政や自治体で、先天性疾患を持つ赤ちゃんに対しての支援を行っています。また先天性疾患の赤ちゃんを抱える親への相談窓口を開いている法人団体も存在していますので、困ったことやわからないことなどを話してみると良いでしょう。

「特別児童扶養手当」や「療育手帳」がもらえる

公的サポートとして、さまざまな支援制度を活用することができます。20歳未満の知的・身体的障害を持つ人に支給される「特別児童扶養手当」といった手当や、知的障害者に支給される「療育手帳」などの各種手帳がもらえます。自治体での制限や所得制限などがあるため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

支援団体に相談する

さまざまな企業や法人により運営されている、障害児を支援するための団体があります。児童を預かってくれる保育園や幼稚園のほか、療育訓練を指導してくれる施設もあり、両親の悩みや相談などを受け付けてくれているところも多いです。

一人で抱え込まず、公的なものをはじめ、いろいろな支援団体へ相談してみると良いでしょう。

まとめ

羊水検査は赤ちゃんの異常を素早く見つけられる精度の高い検査です。しかし、母体に負担がかかることや流産のリスクなども十分に視野に入れておかなければいけません。

もし赤ちゃんに異常が見つかったら、お母さん一人で悩まずに、パートナーや医師の方に相談するようにしましょう。支援団体の経験者の方などにお話を聞くのも良いかもしれません。

無事に赤ちゃんを迎えられるよう、周囲の人の助けを借りるようにしましょう。

参考文献

慶應義塾大学病院 医療健康情報サイト ー「羊水検査

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター ー「ダウン症