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出産年齢によるリスクの変化とは?出生前診断や対策について解説

年齢を重ねると出産の際、母体や赤ちゃんに負担がかかり、さまざまなリスクが上がります。

しかしそのリスクには、対策が取れます。生活習慣を見直したり、定期的に赤ちゃんの検査を受けたりして、少しでも安心して出産を迎える準備をしていきましょう。

出産リスクが上がる年齢とは?適齢期はいつ?

近年では、晩婚化と不妊治療などの生殖補助医療の発達に伴い、高齢出産を迎える方が増えています。

しかし、出産のリスクは30歳頃からゆるやかに上がり、35歳を過ぎると急激に上昇します。自然妊娠・不妊治療のどちらの場合でも、妊娠中や分娩にともなうリスクが、出産適齢期の18歳~34歳に比べて高くなってしまうのです。

高齢出産にはどんなリスクがあるの?

年齢が上がるにつれて、母体にかかる出産時の負荷や、妊娠中にかかる産科合併症の発生率は上昇していきます。

そのため、若年層の母体よりも30歳代以降の母体の方が、リスクの種類も多岐に渡ります。赤ちゃんを安全に迎えるために、これらのリスクを把握しておきましょう。

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の発生率が上がる

「妊娠高血圧症候群」とは、妊娠20週以降、産後12週までの間に高血圧となる疾患です。自覚症状がほとんどなく、ご自身で症状の把握は難しいため、妊婦健診を受ける必要があります。

「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に起きる「糖代謝異常」です。妊娠中に母体が高血糖になると、羊水量の異常や肩甲難産(出産時に胎児の肩が引っかかる難産)が起こる可能性があります。また、母体のみでなく胎児も、巨大児・心臓の肥大・最悪の場合死亡に至るリスクも高まります。

難産になる可能性が上がる

難産とは、陣痛周期が10分以内になってから初産婦で30時間、経産婦で15時間以上かかる場合の出産を指します。

高齢出産で難産になりやすい理由は、年齢が上がると産道や子宮口が硬くなる傾向があり、赤ちゃんが出て来るまでに時間がかかるためです。分娩が難航した場合、陣痛促進剤の使用や帝王切開への切り替えの検討が必要になるかもしれません。

流産の発生率が上がる

流産とは、何らかの原因で妊娠22週未満に赤ちゃんが亡くなることで、約85%は妊娠12週までに起こっています。

流産の確率は35歳から少しずつ高まり、40歳以上となると流産の確率は約40%、45歳以上では80%を超えるのです。

これは、母体年齢が上がると染色体異常の頻度が高くなる点や、加齢にともなう子宮機能低下が影響していると考えられています。

低体重児が産まれる可能性が上がる

低体重児とは、2500g以下の体重で生まれる胎児を指します。低体重児になる母体側の原因は、「妊娠高血圧症候群」「常位胎盤早期剥離」「子宮頚管無力症」や感染などで、早産となるためです。

ただし、胎児側が原因の場合もあります。それは、双胎や多胎妊娠により子宮が大きくなる場合です。また、胎児の疾病などで早く出産し治療した方がよい場合もあります。

ダウン症など染色体異常の発生率が上がる

ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」といい、染色体の突然変異によって起こる染色体異常です。通常、21番目の染色体が1本多くなっている点から「21トリソミー」とも呼ばれています。

ほとんどが偶発的で、600人~800人に1人の割合で生まれるとされており、誰にでも起こりえる症状です。また、ダウン症のある胎児は子宮内の環境がよくないと流産しやすくなるため、生まれてきた赤ちゃんは強い生命力を持っているといわれています。

出産前にリスクに備えるなら「出生前診断」

「出生前診断」とは、胎児の健康状態への心配や、ご自身の年齢で出産に不安を感じる際に、胎児のリスクについて知る検査です。出生前診断で、先天性疾患の一部を調べることができます。

いくつか種類があり、検査時期や母体への負担などがそれぞれ異なります。

コンバインド検査

妊娠12週~13週目に行われる、「超音波検査」と「妊婦自身の血清マーカー検査(採血)」の2つを組み合わせて行う検査です。

超音波検査では、胎児の首のうしろのむくみの厚さや胎児心拍数・胎児の大きさ(頭殿長)を計測します。また血清マーカー検査では、2つの胎盤由来のタンパク質とホルモンを計測します。

これらの計測値を基にして胎児の21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワーズ症候群)の確率を算出するのです。

ただし、染色体異常が高いと判断された場合でも、100%染色体異常があるわけではありません。確実な結果を出すためには羊水検査などの「確定検査」を受ける必要があります。

羊水検査

妊娠15週~18週に行われる、羊水を採取して胎児の染色体や遺伝子を調べる検査です。羊水中に含まれている胎児の細胞から、染色体異常や酵素の変化を調べます。

羊水検査は、エコーで胎児の状態を確認したあとに羊水を約20ml採取します。この際、針を使用するため、妊婦さんの内臓に傷が付きやすいです。出血が止まらなかったり羊水が漏れ出してしまったりする危険性があり、流産の可能性が0.1%~0.3%あります。

NIPT検査(新型出生診断)

妊娠10週~16週に行われる、採血による検査です。新型出生診断とも呼ばれ、21トリソミー(ダウン症)、13トリソミー、18トリソミーなどの染色体異常を判定します。

従来の出生前検査と比べて最速の時期で胎児の状態を把握でき、検査自体の精度がきわめて高い点が最大のメリットといえるでしょう。また、羊水検査のように内臓を傷つけないため、流産のリスクもありません。

検査結果は「陰性」または「陽性」で判定され、染色体異常の場合は陽性スコアがつきます。遺伝子の情報から、どれだけその疾患に近いかで判定されるのです。

ただし、検体(血液)に含まれる赤ちゃんのDNAの量が基準に満たない場合や、服薬中のお薬のために検査ができないことがあります。

出産に備えて生活習慣を整える

出産リスクが高くなるにつれて、ご自身の体調管理にも配慮しなければなりません。睡眠や食事を決まった時間にとるといった生活リズムの調節はもちろん、食事や運動にも気をつけ、体重管理をする必要があります。

特に不足しがちな栄養素や、妊娠中でも無理なくできる運動などをご紹介します。

「葉酸」を意識した食生活をする

妊娠初期の器官形成期に「葉酸」が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まります。胎児の脳と脊髄・中枢神経系に重要な役割を担う神経管は妊娠初期に形成されます。神経管閉鎖障害を防ぐためには、葉酸を充分に摂取することが重要です。

葉酸を多く含む食べものの例は以下のとおりです。

  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • えだまめ
  • 納豆
  • 焼きのり

焼きのりではなく味付け海苔からも葉酸は摂れますが、焼きのりの方が多く葉酸を含みます。また、焼きのりの方が塩分が控えめで血圧が上昇する心配も抑えられるでしょう。

無理のない程度に運動をする

妊娠中に運動不足になると「心肺機能低下」「血行不良」などの発生率が高くなるため、少しでも運動を生活に取り入れてみましょう。

たとえば、自宅で可能な「踏み台昇降運動」は、手軽にウォーキングに近い有酸素運動の効果が期待できる運動です。ただし、手すりなどにつかまりながら転倒に十分注意して行いましょう。

妊婦さん向けの「マタニティヨガ」は、心と身体のストレスどちらにも効果的といわれています。妊娠中の腰痛軽減にも効果があるため、身体的ストレスがグッと減るでしょう。

体重増加に注意

急激な体重増加は「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」を引き起こすリスクがあり、その結果、難産になる可能性が上がります。

しかし、空腹時はつわりで気持ち悪くなり、つい食べる量が増えてしまう時もあるかもしれません。そのような場合には食べる量は変えずに、1日3食を5食に分割して回数だけを増やすなどの工夫をしてみましょう。

ただし、体重増加を気にし過ぎて食事制限をするとストレスも大きくなるため、過度に意識し過ぎないことも大切です。

まとめ

年齢にともない出産の負担やリスクは変わります。不安なときには、出生前診断で赤ちゃんの状態を把握するとよいでしょう。さらに、出産に備えてバランスのよい食生活を心がける、規則正しい生活習慣を意識するといった対策も大切です。

これらをふまえてご自身に合った対策から1つずつ始めていき、安心して赤ちゃんを迎えましょう。

参考文献

・公益財団法人 日本ダウン症協会ーダウン症のお子さんどもを授かったご家族へ

・第62巻日本公衛誌 第5号ーマタニティヨガの有効性に関する文献的考察