受精後とは妊娠した状態?着床と受精の違いや受精後の体の変化を解説
受精とは精子と卵子が結合する現象です。しかし、受精したからといって必ずしも妊娠につながるとは限りません。
この記事では、受精後から妊娠成立までの流れや受精後に起こる体の変化について解説します。妊活を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
受精後から妊娠成立するまでの流れ
「受精後、妊娠するまではどのような流れをたどるの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。ここでは、受精から妊娠成立までの流れについて分かりやすく解説します。
受精の仕組み
卵巣から排卵された卵子が卵管内で精子と出会うと受精が成立します。男性は常に精子をつくり続けて精巣上体に溜めておき、射精によって排出します。一方、女性は月に1度卵巣から成熟した卵子を排出する仕組みです。そのため、精子が卵管に入ったときに卵子が存在しなければ受精しません。
生理周期が28日の場合、排卵が起こるのは生理開始から14日後です。排卵の前は女性ホルモンの影響で基礎体温が低温相から高温相に移行し、2日間の間に排卵が起こります。
受精後に胎内で起こる変化
受精後、卵子は細胞分裂を繰り返しながら子宮に向かって移動していきます。約5日で子宮内に到達した受精卵は、約7日目に子宮内膜到達して潜りこむのが着床です。
受精しても着床しなければ、妊娠は成立しません。したがって、妊娠成立は着床したときです。なお、何らかの理由で卵管内に受精卵が着床してしまう「子宮外妊娠」を放置しておくと、卵管破裂のような重篤な症状を引き起こすので、早めの対処が必要です。
そのため、妊活をしている方は生理が来たり妊娠が確認できたりする前は体の状態に注意し、異常があったらすぐに病院を受診してください。
受精後に起こる体の変化
受精すると、子宮は着床に備えて準備を始めます。そのため、生理のときのように女性ホルモンのバランスが変化し、腰痛・頭痛・眠気などの症状が出る方もいるでしょう。しかし、受精後の体の症状は個人差が激しく、全く無症状の方も珍しくありません。
なお、妊娠週数を数える場合、受精後から着床までの時期は妊娠2週〜3週に該当します。妊娠0週0日は最終月経の初日にあたるため、妊娠が成立しなくても妊娠週数に数えます。この時期を、「妊娠超初期」と呼ぶ場合もありますが、これは医学用語ではありません。
着床後に起こる体の変化
着床は、受精後約1週間〜10日間後に起こります。着床が完了すると、女性の体は妊娠継続のためにさまざまなホルモンを分泌させます。
その結果、女性の体にどういった変化が生じるのか解説いたします。
眠気や腰痛
卵子が子宮内に着床すると、分泌が増加するホルモンは「リラキシン」です。骨盤を緩めて胎児が出産しやすくする働きがあるため、力のかかり具合によっては妊娠の初期から腰痛を覚える方もいるでしょう。
また、妊娠を継続させる効果があるホルモンは「プロゲステロン」で、強い眠気をもたらす作用があります。生理中に腰痛や眠気を覚えやすい方は、妊娠初期にもその傾向が出る可能性があります。
おりものの変化
おりものは、膣や子宮からでる分泌物の総称です。妊娠すると増加する女性ホルモンは「エストロゲン」といい、子宮内のph値が変化します。その影響で、おりものがいつもと変わる方もいるでしょう。
おりものがねばねばしたり、逆にさらさらしたりしていつもと違っているといった場合は、妊娠している可能性があります。普段からおりものの性状を観察しておくと、体調の変化や妊娠の有無に気づきやすいでしょう。
着床出血
着床出血とは、受精卵が子宮内膜に潜り込む際に子宮内膜を傷つけた場合に発生する少量の出血です。1日〜2日出血が見られ、そのあとすぐになくなります。
人によっては生理初日と間違える方もいるかもしれません。しかし、妊娠可能な年齢で心当たりのある方が、1日〜2日で出血が治まった場合、着床出血を疑いましょう。
なお、着床出血はすべての方に起こるわけではありません、着床出血がないからと過剰に心配する必要もありません。
無月経
妊娠すると排卵の必要はなくなるので、月経が止まります。無月経で妊娠を自覚する方も多いでしょう。また、基礎体温をしっかりとつけている場合は、基礎体温の変化で妊娠に気づくケースもあります。
しかし、無月経が必ずしも妊娠とは限りません。心当たりがあった場合でも、ホルモンバランスが崩れて月経が遅れているだけ、といったケースもあります。今まで規則正しく月経が来ていた方が予定日を過ぎても来ない場合は、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。
受精後に着床しない原因と対処法
性行為をして受精をしても、さまざまな原因で着床しないケースも決して珍しくありません。この状態が一定期間続くと不妊と判断されます。
不妊のカップルが妊娠を望む場合は、その原因によっては治療が必要です。ここでは、受精後に着床しない原因と対処法を紹介します。
子宮に原因がある場合
子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、卵管留水腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などがあり、子宮が妊娠に適した状態でないと受精卵は着床しません。また、実例は少ないですが、子宮が奇形で妊娠が難しいケースもあります。
婦人病など子宮に原因がある場合、治療をしないと妊娠が難しい可能性もあるでしょう。子宮の病気の中には、生理周期が乱れる、生理痛が酷いなど自覚症状が出るものもあります。生理が規則的にこない、体温の変化が見られないなど身体に不安がある場合は、可能な限り早く産婦人科を受診してください。
男性側に原因がある場合
男性が無精子症をはじめとする造精機能障害や精路通過障害の場合、受精自体が難しいケースもあります。精子が少ない、もしくはない場合や精子が正常に排出されない場合でも射精自体は可能です。したがって、病院で検査を受けるまで自身の障害に気がつかないケースもあります。
男性の不妊は自信の喪失につながる場合もあり、医師の診察に消極的な方も多いです。しかし、男性側に原因がある場合は、女性がいくら努力しても妊娠しません。赤ちゃんを望むカップルは、男性・女性共に医師の診察を受けましょう。
原因不明なケースもある
男女ともに全く健康で精機能に問題がなくても、受精・着床に至らないカップルもあります。現代医学でも明確な治療法がなく、性交以外の方法での妊娠を勧められるケースもあります。
原因不明で妊娠に至らず、ブライダルチェックで不妊を判別できなかったカップルは少なくありません。希望通りに子どもを授かれなければ、人工授精や体外受精も視野に入れるとよいでしょう。
病院の受診を検討するのはどのような場合?
最後に、病院の受診をおすすめする事例を紹介します。中には「産婦人科の受診はハードルが高い」「男性医師の診察には抵抗がある」などと考えている方もいるかもしれません。しかし、自身の健康や妊孕性を保つためにも早めの受診を検討しましょう。
着床後の症状があり月経がこない
妊活をしている方や、避妊をせずに性交した後で着床後に現われる症状が出たら、早めに病院を受診しましょう。正常な妊娠なのか、赤ちゃんが順調に育っているか、早いうちに確認すれば対処法も選べます。
妊娠が確認されたらお住まいの自治体の役所から、母子健康手帳を受け取りましょう。自治体によっては、検診の補助券がもらえたりサポートを受けられたりします。
職場への報告は、流産の危険性が低くなった妊娠12週以降が一般的です。ただし、妊娠初期は体調が不安定になりやすく、早めに伝えておくと理解が得られやすいでしょう。
一定期間妊娠しない
避妊せずに性交をして1年間妊娠しない場合、不妊と診断されます。不妊の原因はさまざまであり、男女両方に原因があるケースも珍しくありません。また、不妊治療は年齢が若いうちに受けたほうが成功率は高いです。
妊活をしており、基礎体温をしっかりとつけて妊娠しやすい状態のときに性交をしている場合は、3か月〜半年間妊娠しなかったらパートナーと一緒に病院を受診しましょう。
まとめ
受精と妊娠はイコールではありません。着床しなかった場合は妊娠に至らず、そのまま次の生理がきます。妊娠を望む場合は、基礎体温をつけて排卵日を認識し、タイミングに合わせた性交を行ないましょう。
また、妊活をしているのになかなか妊娠しない場合、早めにパートナーと一緒に病院を受診してください。
参考文献
・日本生殖医学会-妊娠の成立
・日本生殖医学会-不妊症の原因にはどういうものがありますか?