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胎動で足の形が浮き出ることも?胎動と障害の関係についてご紹介

妊娠中期から後期になると、多くの妊婦さんが胎動を感じ始めます。胎動は赤ちゃんの存在を身近に感じられる嬉しい瞬間の一つです。

しかしながら、なかには足の形が浮き出るほど強く動き回っている赤ちゃんもいます。あまりに激しい胎動があると、赤ちゃんに何か障害があるのではと不安になる方もいるかもしれません。

この記事では、赤ちゃんの胎動の変化や障害との関係についてご紹介します。妊娠中の不安を少しでも解消し、健やかに出産まで過ごしていきましょう。

そもそも胎動とはどういうもの?

妊娠中の腹部に感じる赤ちゃんの動きは「胎動」と呼ばれています。赤ちゃんは妊娠7週頃から動き始めますが、妊娠初期は赤ちゃんの身体が小さいため、お母さんは子宮内から赤ちゃんの動きを感じません。

赤ちゃんが成長するにつれて、お腹全体で胎動を感じるようになるでしょう。

胎児の胎動を感じ始める時期

胎動を感じ始める時期には個人差があります。特に、初めて妊娠した方にとっては「これは胎動?」と判断できない場合が多く、経産婦さんよりも感じ始めが遅くなるケースが多いです。

初めての胎動は妊娠5か月〜6か月頃、週数にして16週〜22週頃に感じる方が多いです。胎動を感じ始めたころは「腸の活動かな?」「なんだかお腹がポコポコする」など分かりにくいかもしれません。次第に赤ちゃんの動きを感じられるようになり、「これは胎動だ」と分かるでしょう。

また、妊娠後期にもなると赤ちゃんの身体も成長し、力も強くなるため眠れないほどの強い胎動を感じるお母さんも少なくありません。

胎動の感じ方は人によって違う

胎動は、その感じ方や感じる強さも個人差があります。

特に日中の仕事をしている時間帯や、家事をして動き回っている時間帯はなかなか気づきにくいかもしれません。

一方、横になりゆっくりしていると、普段以上に胎動を感じられます。

また胎動の感じ方は、お母さんの体型によっても変わります。痩せ型で皮下脂肪が薄い方は胎動が感じやすい傾向にあるようです。

胎動が激しすぎて足の形が分かるって本当?

妊娠後期になると赤ちゃんは成長し、子宮の中が窮屈になります。スペースが狭くなることで、赤ちゃんが動き回る回数は少なくなるでしょう。その代わりに、「お腹を破って出て来るのでは?」と思うほどに胎動も強くなります。

ときには、足の形が分かるほど強い胎動を感じる時があるでしょう。また、恥骨や膀胱を刺激されて、痛みを感じるお母さんも少なくありません。

手足の曲げ伸ばしやキックやパンチなど、赤ちゃんの動きに合わせてお母さんは胎動を感じます。特に夜間、リラックスして寝てる時に強い胎動を感じるケースが多いでしょう。

足の形が分かるほど強い胎動は胎児に障害がある?

妊娠中はさまざまな「噂」を聞く機会も多く、胎動にまつわる噂を聞いたことのある方もいるかもしれません。

「胎動が強いとお腹の赤ちゃんに障害がある」もしくは「胎動が弱いと障害がある」といった噂に、医学的な根拠はありません。

妊娠中に分かる胎児の障害とは

生まれつき障害がある赤ちゃんは、全体の3%〜5%といわれています。生まれつきの障害はダウン症や口蓋裂・心室中隔欠損など臓器に関わるものや、奇形・発達障害などさまざまです。

また、なかには生まれる前に障害の有無が分かる検査があります。超音波検査では、身体のつくりや動き方の違いに現れる障害が判明します。口蓋裂や心臓の奇形などは超音波検査で判明することが多いです。

ただし、すべての妊婦さんが受ける妊婦健診の超音波検査では、時間が限られているため障害まで確認できない場合があります。障害の有無が気になる方は、より詳しい検査ができる胎児スクリーニングの活用を検討しましょう。

そのほか、確定検査と呼ばれる羊水検査や絨毛検査では、ダウン症などの染色体異常の診断を確定することができます。

胎動の強弱とダウン症には関係がある?

「お腹の中の赤ちゃんがダウン症だったらどうしよう」と不安に感じてしまう妊婦さんは少なくありません。胎動の強弱がダウン症に関係するという噂を聞いたことがある方もいるでしょう。

実はダウン症の子は筋力が一般的な子よりも弱いため、胎動が弱いとダウン症の可能性があると考えられてきました。その一方で、ダウン症の子のなかには多動症の子も多くみられるため、胎動が激しくてもダウン症であるといった噂もありました。

しかし、胎動の強さでダウン症の判断はできません。障害の有無を評価・診断したいのであれば、エコー検査やNIPT、羊水検査・絨毛検査などを受ける必要があります。

ダウン症(21トリソミー)とは?

ダウン症は21トリソミーとも呼ばれ、染色体異常によって引き起こされる疾患です。

通常46本ある染色体のうち、21番目の染色体が1本余分に存在することで発生します。

ダウン症には臓器面の発達のほかにも知的障害も見られ、注意欠如や多動症、自閉的行動が多く見られます。

ダウン症の軽度重度は明確には決められていませんが、知的障害の度合いや合併症のリスクで判断されるケースが多いです。

ダウン症は、見た目や合併症など特徴がいくつかあります。

身体的特徴合併症
・つり目・耳が小さい・首の後ろに皮膚が余っている・手掌単一屈曲線・舌が長い・鼻が低い・心疾患・知的障害・感覚器障害(難聴、白内障など)・内分泌障害(糖尿病など)・脱臼・痙攣

これらは一例にすぎません。

手掌単一屈曲線とは手のひらをまっすぐ横切る1本のシワで、感情線や頭脳線のような手相が見られません。

また低身長や筋力の弱さもダウン症の特徴の1つです。

妊娠中から検査でダウン症は診断できる?

合併症や知的障害などの疾患のリスクがあるダウン症の有無を、出産前に知っておきたい方もいるのではないでしょうか。

胎動だけでは判断できませんが、妊娠中の検査でダウン症は診断は可能です。超音波検査やNIPT(新型出生前診断)など選択肢はいくつかありますので、ぜひ参考にしてください。

エコーでの診断は可能

普段、妊婦健診でおこなわれるエコー(超音波検査)のエコー写真でダウン症が疑われるケースがあります。ただし、あくまでもダウン症の有無を確定する診断ではない点に注意が必要です。

エコー写真で分かるダウン症の胎児の特徴は、以下のとおりです。

  • 鼻骨が短い
  • 首の後ろにむくみが見られる
  • 心臓弁の逆流

ダウン症は顔が平坦で、鼻の骨が短い傾向があります。そのため、エコーの時点でも鼻骨の短さが分かるとダウン症の疑いが持たれます。また首の後ろのむくみは「NT値」として数値化されており、これもダウン症の疑いを示す指標の1つです。ダウン症は心疾患など合併症も多く見られるため、心臓弁の逆流が見られた場合も疑われます。

ただし、通常の妊婦健診でのエコーは赤ちゃんの成長をメインに見ているので、ダウン症が見つからないケースが多いのも事実です。

NIPT(新型出生前診断)も選択肢のひとつ

出生前診断には超音波検査以外にもNIPTなどがあります。超音波検査はエコーで障害の有無を調べる検査ですが、NIPTは血液による検査です。

ただし、これらはあくまで障害の可能性をみつける検査に過ぎません。もしこれらの検査で障害の疑いが見つかった場合は、さらに確定検査を受ける必要があります。

確定検査には、羊水検査や絨毛検査などがあります。羊水検査とは妊娠15週〜18週あたりで羊水を採取して、胎児の細胞から染色体の情報や遺伝性の疾患の有無が分かる検査です。絨毛検査でも同じく絨毛を採取し、染色体や遺伝を調べます。

どちらも胎児由来の細胞、もしくは受精卵由来の細胞から調べるため精度はほぼ100%です。これらの検査によって障害の診断が確定します。

まとめ

足の形が分かるほど強い胎動を感じる赤ちゃんに、不安を感じてしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、胎動を感じる時期や強さ・頻度は個人差があります。

「胎動の強さとダウン症の有無には関連がある」といった噂が出回っていますが、医学的な根拠はありません。お腹の赤ちゃんがダウン症であるか知るためには、さまざまな検査を受ける必要があります。

妊婦健診でのエコー検査や、希望に応じて受けられるNIPT検査を活用して、赤ちゃんの健康状態の把握に努めましょう。

参考文献

厚生労働省ー出生前検査に関する厚生労働省の方針について

日本産婦人科医会ー(1)NIPT,出生前検査:将来的発展VS 問題点と限界