出生前診断とはどんな検査で費用はどのくらいかかる?
出生前診断は、生まれてくる赤ちゃんの分娩や治療、生活環境を検討することを目的に行なわれる検査です。
羊水や胎盤の細胞を採取する確定検査と血液や超音波検査で調べる非確定検査があります。
今回は、検査の費用、リスクをともなう検査の種類など事前に知っておくと助かる情報を解説します。
この記事の内容
出生前診断の種類
出生前診断は2つの方法があります。超音波(エコー)の画像を使う検査と染色体を調べる検査です。
染色体を調べる検査には非確定診断と確定診断がありますが、非確定的検査で陽性と診断された後、「確定的検査」を受けるようにステップする検査に分かれています。
非確定診断と確定診断がある
全出生数の3〜5%の割合で先天的な疾患や障害をもった赤ちゃんが生まれています。
出産前に胎児の病気や障害がわかっていれば、その状況に合わせた分娩の準備や治療に結び付けられるという目的で出生前診断が実施されています。
非確定検査は染色体の疾患が疑われる場合に行なう検査であり、陽性の結果が出たとしても異常だと断定ができません。
確定診断をするためには「羊水検査」や「絨毛検査」を受ける必要があります。
出生前診断にかかる費用
出生前診断にかかる費用は非確定検査に比べて確定検査は高額です。出生前診断は検査料以外にカウンセリング料などの追加費用の請求もあるので、検査を受ける前に確認しておくと安心です。
形態異常を調べる超音波(エコー)検査
非確定検査で行う超音波検査は「胎児精密超音波検査」あるいは「胎児超音波マーカー検査」とも呼ばれている検査です。
染色体に異常のある胎児は妊娠初期に首の後ろに「NT」と呼ばれる独特のむくみが見られます。形態異常を調べる超音波検査では、この「NT」を指標(マーカー)として、形態を確認をする検査です。正常な場合は妊娠16〜18週頃に消えます。その点からこの検査は非確定検査です。
流産リスク | 無し |
費用 | 3万円~5万円 |
母体血清マーカー検査
母体血清マーカー検査は、お母さんの血液を採血して検査する「クアトロテスト」とも呼ばれる検査です。指標マーカーになる成分は、AFP・非抱合型E3・hCGの3成分、またはインヒビンAです。
流産リスク | 無し |
費用 | 2万円~3万円 |
コンバインド検査
コンバインド検査は、精密超音波検査(エコー)と、採取した血液(血清マーカー検査)の2つの検査を組み合わせて調べる検査です。
流産リスク | 無し |
費用 | 3~5万円 |
絨毛検査
確定検査として行われる絨毛検査は、お母さんのお腹から胎盤の絨毛細胞を採取する検査です。
入院する場合は入院費も考えておきましょう。
流産リスク | 約1% |
費用 | 10万円~20万円+入院費 |
絨毛検査についてはこちら
羊水検査
確定検査として行われる羊水検査はお母さんのお腹から針を刺して羊水を採取する検査です。
入院する場合は入院費も考えておきましょう。
流産リスク | 約0.2~0.3% |
費用 | 10万円~20万円+入院費 |
新型出生前診断(NIPT)
2013年からはじまった新しい出生前診断NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液を調べる検査です。
「母体血胎児染色体検査」とも呼ばれます。血液中に含まれている胎児由来のDNAのカケラを調べています。
流産リスク | 無し |
費用 | 8万円~20万円前後医療機関によって異なります。 |
出生前診断検査以外の費用
NIPTの「基本検査」は21番染色体トリソミー、18番染色体トリソミー、13番染色体トリソミー、性染色体の染色体を調べます。
「全染色体異数性検査」になると1番〜22番と性染色体のすべての数の異常(異数性)と染色体の欠失や重複といった構造異常も検査できますが、費用は高額になります。
また、検査前後はカウンセリングの体制が整っている場合もありますが、追加費用の可能性もあります。
出生前診断は医療費控除・保険の対象外
出生前診断の費用補助はほとんどありません。医療は治療ができることが条件なので医療保険が使えず全額自己負担がほとんどです。
検査料は医療費控除の対象になりませんが、入院費に関連した部分は控除対象となるときもあるので、申請できるか確認をしてみると良いでしょう。
出生前診断を受ける前に知っておくと良いこと
認可施設であるか調べる(病院選び)
新型出生前診断(NIPT)を受けられる施設は認定施設と非認定施設に分かれています。
認定施設とは日本医学連合会が認可した検査施設で、『出生前診断に精通した臨床遺伝専門医が在籍し、専門外来を設けていること』などの条件を満たしている施設のことです。認定施設でNIPTを受けるには対象者に条件があるので確認が必要です。
非認定施設は「違法な施設」という意味ではなく、条件を満たしていない施設という意味です。そのため認定施設のように検査を受ける方の制約がなく、専門スタッフがいない場合があります。検査を受けやすいメリットはあるのですが、お母さんの不安や悩みに寄り添う適切な遺伝カウンセリングが受けられないこともあるので確認しておきましょう。日本産婦人科学会は出生前診断が胎児のスクリーニングの目的だけで実施されないための指針を示しています。
リスク
確定診断はお腹に針を刺して行うので、「侵襲的検査」と言います。そのため合併症には出血、腹痛、子宮内感染、胎児の受傷、早産などがあります。適切な処置で対処できる場合がほとんどなのですが、流産や破水等のリスクがとなる場合が 羊水検査で0.3%、絨毛検査で1%程度あります。
また、出生前診断は胎児の染色体の変化をみているので、染色体に関する全ての病気を診断するわけではありません。染色体異常は女性側だけの原因ではなく、父親が高齢の場合は胎児が突然変異を起こすリスクが高いとされ、男性の検査をしているところもあります。
カウンセリング費用
出生前診断を受けるか迷っている場合や先天的な病気・障害が見つかった時は治療の方向性や胎児の中絶を選択するなどの問題に対応するため、専門の認定遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医の存在が重要です。どのような専門性があるのか確認しておくと良いでしょう。
1回のカウンセリング時間は30分〜1時間で、費用は医療機関によりますが約5000円〜1万円です。出生前診断の費用を確認する場合は検査以外のカウンセリング費用やアフターフォローの費用が含まれた費用設定か、追加の負担費用が必要になるのか、続けて絨毛検査や羊水検査(確定検査)を受けることが可能かどうか確認しておきましょう。
検査費用を補う補助制度はあるの?
妊娠は治療の対象にならないことから、妊娠中の医療費は全額負担がほとんどです。ダウン症などの染色体異常も治療ができないという考え方から治療対象になっていません。
妊娠中にかかる費用を抑えたい方
・通院回数を考えて、妊娠中のからだにあった距離を考えてアクセスの良いところを選んで おくと良いでしょう。
・医療機関によっては非確定的検査を行った後、ひき続き確定検査をする場合はその費用の 一部を補助してくれる制度を用意しています。医療機関の補助の有無を確認しておくと良 いでしょう。
・一度検査費用の全額を支払うことが難しい場合は、クレジットカードでの分割払いを利用 する方法もあります。クレジットカードでの支払いに対応している病院を選ぶこともおす すめです。
医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に家族(生計を共にする)が支払った医療費の合計が一定金額(10万円)超えた時に、算出した金額分を「所得控除」をして利用できる制度です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関で検査や治療などで支払った保険適用の費用を一月分を合計して、金額が上限を超えた時に、超えた分の金額が戻ってくる制度です。
上限額は年齢や所得によって決まっていて「一施設一疾病」の原則があるので、異なる病気も合算できるわけではありません。申請の手続きが必要です。
不妊治療費
令和4年4月から、人工授精等の「一般不妊治療」や体外受精・顕微授精等といった「生殖補助医療」が医療保険の適用になりました。
また不妊治療費などは医療費控除の対象です。
まとめ
出生前診断を希望する場合は、いくつかの情報を得ることが大切です。
検査の流れ、リスク、費用だけでなく出生前診断の倫理的問題もあるので、十分な認識をもたずに心配や不安だけで検査を受けてしまうと後悔する場合があります。
検査結果を受け入れる覚悟も必要かもしれません。
参考文献
・厚生労働省-NIPT: noninvasive prenatal testing
・日本産科婦人科学会 – 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針
・厚生科学審議会科学技術部会-NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書
・厚生労働省-出生前検査に対する見解・支援体制について