帝王切開後の妊娠・出産は何年空ければいい?帝王切開は何回できる?
分娩には、大きく分けて経膣分娩、帝王切開分娩の2種類があります。また、帝王切開をする方の中には、元々手術することが決まっていた予定帝王切開の方、経膣分娩予定だったが母児の理由により緊急帝王切開に切り替わった方の2パターンがあります。
どちらの場合においても、次の出産がどうなるのかと考えることがあると思います。今回は、帝王切開分娩の方が、「次の出産までどのくらいの期間を空ければいいのか」ということを中心に解説していきたいと思います。
また、帝王切開は何回できるのか、もし帝王切開となった場合の傷跡はどうなるのかも解説しているので、参考に見てみてください。
この記事の内容
帝王切開の後も出産できる?
まず、「帝王切開の後も出産できるか」ということに関してですが、帝王切開後の分娩は基本的には可能です。
ただし、分娩方法や分娩回数によっても異なるため、その点を詳しくお伝えしていきます。
どのような妊娠方法・分娩方法を選ぶかでも予定が異なる
妊娠方法としては、自然妊娠・不妊治療による妊娠があります。
不妊治療にて妊娠する場合は、施設ごとに取り決めがあり、前回の妊娠からどの程度空けて治療を開始するかという期間が異なります。
また、分娩方法は、一般的には帝王切開後は次回の分娩時も帝王切開分娩が第一選択となる場合が多いです。これは子宮破裂のリスクがあること、前回分娩時の状況によって前回分娩時と同様のリスクがあることが理由です。
ただし、帝王切開後の分娩でも、施設によって条件を満たしていれば経膣分娩にトライすることができます。これを医療用語ではTOLAC(Trial of labor after caesarean section:帝王切開後の経膣分娩の試み)と言います。
帝王切開が過去に1度だけということを前提条件として、それに加え、切開の向き、子宮の状態や前回の分娩の経過など全て満たしていれば行うことができます。
TOLACを取り扱う施設は限られているため、前回帝王切開で、今回経膣分娩にトライしてみたい方は、取り扱いがある施設か確認してから受診し、ご相談されるといいでしょう。
帝王切開は何回できるのか
帝王切開は一般的には3回程度が好ましいと言われていますが、明確な決まりはありません。
ただし、複数回同じ場所を切開していくので、子宮破裂や癒着胎盤などのリスクが上がることは事実です。個人差が大きいため、子宮の傷の状態などによるところが大きいです。帝王切開で何人まで出産することが可能かは、それぞれの妊娠経過、体調によるところもあるため、妊娠を希望する場合には、産科医師への相談が好ましいです。
帝王切開での出産後は何年空ける必要がある?
近年、高齢出産(35歳以上で初めて出産することを指す)が増えており、次の妊娠・出産まであまり期間を空けたくないという方もいらっしゃるかと思います。
では、帝王切開での出産後はどの程度の期間空けることが適切なのでしょうか。以下、身体面、心理面、キャパシティと項目を分けてお伝えしていきます。
出産後は何年空けるのか
身体的
一般的には1年程度経ってから、次の妊娠をしていくのが良いと言われています。
その理由は、帝王切開後の手術の傷がしっかりと治癒していないと子宮破裂の危険性があるからです。
帝王切開では、体の表面もですが、当然ながら内側の子宮などの臓器にも傷ができています。子宮の切開部分の傷は、治ってきていても、他の部分より薄い状態になっていたり、一部欠けていたりすることもあります。ここの部分に陣痛の力が加わると、子宮破裂につながる可能性が高まります。
ただし、この1年という期間には明確な理由はなく、また個人差があることなので、1年未満での妊娠・出産でも安全に行えた場合もあれば、1年以上の間を空けても子宮の傷の状態が改善していない場合もあります。
次回の妊娠に向けての期間については、個別に産科医師への相談、診察を受けて決定していくのが安心でしょう。
心理的
心理面に関しては、前回の分娩が緊急帝王切開であった場合、分娩自体がトラウマになっていることがあります。このトラウマによる分娩に対しての恐怖心が強いと、妊娠中・産後にかけてメンタルが不安定になりやすいです。
妊娠中・産後においては、もともとホルモンの影響で不安定になりやすいこともあり、これに加えて不安定になりやすい要素が強いと、産後うつの原因となります。
産後うつとなると、内服治療や時には入院が必要になる可能性もあります。前回の分娩へのトラウマがある方は、一度医師や助産師への相談などして、次回の妊娠前に、分娩に対しての気持ちを整理して助産師からのサポートを受けるようにしましょう。
キャパシティ
帝王切開後の体での育児は、傷跡に痛みがあったり、術後の状態によっては貧血等で活動に制限があったりする中で行われます。周囲の協力があったとしても、授乳などのメインの育児行動は母親が行うことが多いです。そのため、母親自身がどの程度のキャパシティをもっているかというところは非常に重要になります。
次の子を授かった際、術後の体で上の子のお世話と赤ちゃんのお世話を両立していくことを想定して、母親自身だけでなく夫や他の家族とも相談して、次回の妊娠を検討するとよいでしょう。
帝王切開後の傷跡はどうなる?
帝王切開後の傷跡は手術の跡ですが、ケアをすれば綺麗に治ります。
ただし、ケロイド体質の方などはやはりケロイド化してしまうことも多いため、事前に帝王切開が決まっている場合は、医師とも相談して産後のケアをしていくようにしましょう。
具体的なケア方法
帝王切開の縫合方法も施設や医師によって異なります。自然に溶ける糸で縫合していたり、縫合した上でホッチキスのようなステープラーで固定していたり、自然に溶ける糸と解けない糸を組み合わせて抜糸していたりします。
その方法によっても若干の差はありますが、抜糸や抜鈎後は、傷跡を清潔に保つこと、傷跡部分が離れるのを防ぐことがケアのポイントです。
傷跡を綺麗に直したい場合は、専用のシリコンジェルシート・テープを貼り付けたり、テープで傷跡部分の開きを予防したりしていくとよいでしょう。
商品によりますが、5〜7日間テープを張り続け、交換していく、というのを数ヶ月続けていきます。その際、傷に痒みがでたり、赤みや盛り上がりなどを感じたりする際は、産婦人科、形成外科、皮膚科のいずれかを受診し、傷の様子を診てもらいましょう。
軟膏や貼付薬、内服薬などが処方されることもあります。
傷自体は3ヶ月〜1年程度で綺麗に治ってくると言われていますので、少し時間はかかりますが、根気よくケアを続けていきましょう。
まとめ
帝王切開後の妊娠・出産のイメージができたでしょうか?
出産は何が起こるか、生まれてみるまでわからないものです。妊娠中から出産・育児に関して、さまざまな知識を得て、想定をしておくことでそのギャップに苦しまずに済むこともあるでしょう。
帝王切開後は、傷が大きいことから痛みが強く、思うように生活できなかったり、出血が多く貧血で疲れやすかったりすることもあります。周囲の協力を得ながら育児をしていきましょう。そして、次回の妊娠について考えれるような余裕が出てきた際は、医師の診察を受け、安全に出産を行うことができるのか、ということを確認していくと安心です。この記事を、今後の家族計画の参考にしていただけると幸いです。