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NIPTの陽性的中率や陽性だった場合の対応を解説

出生前診断にはさまざまな種類がありますが、近年高精度な検査として注目を集めているのがNIPTです。

高精度と聞くものの、実際正確性がどのくらいか、どの程度他の検査と異なるかまではご存じない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、NIPTで確認可能な染色体の種類や陽性的中率、陽性だった場合の対応について解説しているのでぜひ参考にしてください。

NIPTで確認できる3つの染色体

人の染色体は、対になった22の常染色体と2本の性染色体で合計46本ありますが、数や形に異常が出てしまう場合があります。

常染色体は1番〜22番に分類され、本来は各2本ずつとなっているのが正常ですが、2本ではなく3本となってしまっている状態がトリソミーです。

ここではNIPTで確認可能な3つの染色体異常について解説します。

21番トリソミー(ダウン症候群)

NIPTで確認できる染色体異常の1つが21番染色体のトリソミーです。

3つの染色体異常の中で発生頻度がもっとも高く、妊婦さんが高齢となるにつれ、発生率が高くなると言われています。

ダウン症候群とも呼ばれており、その特徴は発達遅延や知的障害などです。

甲状腺疾患や眼科的疾患などとの合併症が見られ、治療が必要となる場合もあります。

18番トリソミー(エドワーズ症候群)

3つの中で発生頻度が2番目に高い染色体異常が、18番染色体のトリソミーです。

エドワーズ症候群とも呼ばれ、成長障害や顎が小さいなどの特徴が見られます。

死産や流産となる可能性が高いほか、生まれてきた場合も多くが心疾患や関節拘縮などの合併症を持ち、1歳未満で亡くなってしまいます。

ただし、現在では新生児の集中治療などによって長く生きる方もいて、致死的な疾患とは言えないでしょう。

13番トリソミー(パトウ症候群)

13番のトリソミーは、3つの中では発生頻度が低いとされています。

パトウ症候群とも呼ばれ、多くが死産や流産となり、生まれてきても1カ月を迎えることができるのは出生できた内の約20%です。

パトウ症候群は成長障害のほか、口唇口蓋裂・小頭症・多指症などの特徴が見られ、多くが心疾患などの重い合併症を抱えて生まれます。

トリソミー異常がないものとあるものが混ざっているモザイクと呼ばれる状態の場合は、疾患が軽度になると言われています。

精度を表す3つの指標

NIPTは他の非確定的検査より比較的精度が高いと言われていますが、実際どのように精度が判断されているか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、NIPTを含む出生前診断の精度を表す、感度・特異度・的中率について解説します。

感度

感度とは染色体に異常がある場合に、陽性となる確率です。

感度90%とは、胎児が染色体異常を持っている妊婦さん10人が検査を受けた場合、9人は陽性が出るということです。

21番のトリソミーに関して非確定的検査の感度を比較すると、NIPTは感度99%で、80%の母体血清マーカー検査やコンバインド検査より高い精度と言えます。

感度が高ければ高いほど、陰性の正確さが高くなり、信頼して検査を受けられるでしょう。

特異度

特異度とは染色体に異常がない場合、陰性となる確率です。

特異度90%とは、胎児が染色体異常を持っていない妊婦さん10人が検査を受けた場合、9人は陰性が出るということです。

21番のトリソミーに関して非確定的検査の特異度を比較すると、NIPTは特異度99%で、92%の母体血清マーカー検査やコンバインド検査より高い精度と言えます。

特異度が高ければ、偽陽性が出る確率が低くなり、陽性の場合異常があると判断しやすいでしょう。

的中率

的中率は陽性もしくは陰性の検査結果が、実際に正しいかを判断するための指標です。

陽性的中率とは陽性の場合、胎児に染色体異常がある確率で、陰性的中率は陰性の場合に胎児が染色体異常を持っていない確率です。

感度や特異度が疾患を持つ、もしくは持たない方を基に算出するのに対し、的中率は陽性もしくは陰性の検査結果が出た方を基に算出します。

感度や特異度では、検査結果と実際の染色体異常の有無が異なった場合が加味されていません。

的中率は感度や特異度よりも、より検査の精度を表す指標と言えるでしょう。

NIPTの陽性的中率

NIPTについて調べているとき、「偽陽性」という言葉を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

精度の高いと注目のNIPTですが、確定的検査ではなく、結果は100%正確とは言えません。

ここでは陽性的中率と偽陽性について解説しているので、参考にしてください。

陽性者的中率

陽性的中率とは検査結果が陽性の方の内、胎児が実際に染色体異常を持っている方の確率です。

陽性的中率が高ければ高いほど、検査結果の陽性が間違っている可能性が低いと言えます。

NIPTの陽性的中率は、他の非確定的検査と比べると高く、21番のトリソミーは96.3%の的中率です。

同じNIPTでも18番のトリソミーは86.9%、13番のトリソミー53.1%と染色体によって的中率は異なります。

偽陽性

偽陽性とは、検査結果が陽性と出たにも関わらず、胎児に染色体異常がない状態をいいます。

反対に検査結果が陰性と出たにも関わらず、胎児に染色体異常がある状態は、偽陰性です。

NIPTで偽陰性が出る原因は、双胎妊娠で片方の胎児が染色体異常によりすでに亡くなっている場合や、妊婦さんに腫瘍などの病気がある場合などさまざまです。

また、まれに正しく検査が行われなかった場合も偽陽性となる可能性があります。

陽性的中率は年齢によって変動するの?

染色体異常は妊婦さんが高齢になるにつれて発生率が高くなり、それに伴って陽性的中率も高くなります。

21番のトリソミーに関するNIPTの陽性的中率は、20代後半では49.8%と低いですが、40歳では90.9%です。

40歳では高い確率で陽性が的中するものの、20代後半の場合、受検して陽性と判定された方の約半分が偽陽性となる確率があります。

また、18番や13番のトリソミーは、21番のトリソミーに比べて発生確率が低いため陽性的中率も低いとされています。

陽性だった場合の対応

NIPTは陽性結果が出ても100%染色体異常があるとは判断できません。

陽性判定が出た場合は、確定的検査を受けましょう。

ここでは、2種類の確定的検査、羊水検査と絨毛検査について解説します。

羊水検査

羊水検査とは、妊婦さんのお腹に針を刺して羊水を採取し、羊水から胎児の染色体や遺伝子の異常を確認する検査です。

胎児を包んでいる羊水には、胎児の細胞が含まれていて、その細胞一つひとつに胎児の遺伝子や染色体の情報が存在します。

妊娠15週目〜妊娠16週目以降に受検でき、約3週間で結果が出ます。

染色体異常の診断はほぼ100%の正確性と言われていますが、0.3%〜0.5%の流産リスクがあり、検査には慎重な判断が必要です。

絨毛検査

絨毛検査とは胎盤にある絨毛を採取し、絨毛から取得した細胞で、胎児の染色体や遺伝子の異常を確認する検査です。

方法には妊婦さんのお腹に針を刺して採取する経腹法と、妊婦さんの膣から子宮頸管を通して採取する経膣法の2種類があります。

妊娠11週以降の早い時期に受検でき、約2〜3週間で結果が出ます。

約1%の流産リスクがあるほか、実施可能な施設が限られているため注意が必要です。

まとめ

NIPTでは、主に3つの染色体異常を確認できます。

陽性的中率は、他の非確定的検査と比べると比較的高いものの、偽陽性の可能性もあり100%結果が正しいとは言い切れません。

陽性が出ても異常がない可能性もあるため、リスクや特徴を知った上で、より正確な判断が可能な確定的検査を行いましょう。

参考文献

・厚生労働省 – 無侵襲的出生前遺伝学的検査各種出生前(p26,p40)

・厚生労働省 – 不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会(p16)