妊娠中の検査で子どもに障害があったらどうする?3つの選択肢をご紹介|出生前診断とは?
健康な子が生まれてきてほしいというのは、お母さんたち共通の願いですが、妊娠中の検査で障害があると診断されると毎日が不安でたまらないでしょう。
胎児に障害があると診断されたときには、中絶、出産、遺伝カウンセリングの3つ選択肢がありますが、正しい知識を知った上で判断するのが重要です。
この記事では、妊娠中に受けられる検査や障害があると診断されたときの3つの選択肢に関してご紹介します。
パートナーと一緒に見ながら、是非参考にしてみてください。
この記事の内容
妊娠中に受けられる検査の種類や受けられる時期とは?
健康な赤ちゃんに生まれてほしいと願うお母さんが、妊娠中に受けられる検査に、出生前診断があります。
出生前診断とは、胎内にいる赤ちゃんの健康状態を調べられる検査です。
この検査を行うと、形態異常や染色体異常など胎児の先天性疾患が分かります。
ただし、出生前診断には種類や内容により、検査を受けられる時期が異なるので、
あらかじめ把握しておきましょう。
出生前診断
出生前診断の種類は、大きく「非確定検査」と「確定検査」の2種類に分けられます。
非確定検査とは、形態異常を調べる検査で、確定検査は、染色体異常を調べる検査です。
では、それぞれの検査には、どのような方法があるのかご紹介します。
非確定検査
非確定検査はお母さんや胎児にリスクが無い検査で、代表的な方法として超音波(エコー)検査があります。
従来のコンバインド検査や母体血清マーカー検査は、検査の精度が低かったため、2013年に採血のみで実施でき、精度が高い新型出生前診断(NIPT)が導入されました。
確定検査
確定検査は、お母さんのおなかに針をさして羊水を調べる羊水検査や胎盤の絨毛組織を採取して調べる絨毛検査があります。
非確定検査と比較すると検査精度は高いですが、流産などのリスクもあるため、注意が必要です。
出生前診断を受けられる時期
出生前診断を受けられる時期は、検査方法により異なります。
まず、非確定検査の超音波(エコー)検査は妊娠11〜30週、母体血清マーカー検査は妊娠15〜18週、新型出生前診断(NIPT)は妊娠10〜22週に受診可能です。
次に、確定検査の羊水検査は妊娠15週以降、絨毛検査は11〜14週に受けられます。
妊娠中に受けられる出生前診断にはリスクもある
妊娠中に受けられる出生前診断は、あらかじめ胎児の健康状態をチェックできるメリットもありますが、一方で検査のリスクもあります。
非確定検査は、ほぼリスクがないといわれていますが、確定検査では母子への負担が大きく流産などのリスクもあるため、注意が必要です。
それでは、確定検査と非確定検査でのリスクについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
確定検査のリスク
絨毛検査は妊娠早期の胎盤にある絨毛を採取するため、おなかから直接針を刺すか、膣からカテーテルを挿入し採取する方法でおこないます。
流産のリスクが1%ほどあり、他にも出血や破水を起こす危険性もあります。
この検査は、超音波(エコー)で胎児の位置をチェックしながら行いますが、技術的に難易度が高く、検査できる医療機関が少ないのが実情です。
羊水検査は、妊娠15〜18週におなかへ直接針を刺し、羊水を採取する方法です。
絨毛検査よりはリスクは低いですが、0.3%の確率で破水または流産を起こす可能性があります。
非確定検査のリスク
非確定検査は母体への負担が少なく、ほぼリスクはないといわれています。
超音波 (エコー)検査は非侵襲的に行えるので、胎児にも影響はありません。
検査時にジェルを使用するため、多少お母さんは腹部に冷たさを感じることがあります。
ただし、超音波(エコー)検査で異常が見つかった場合、確定検査を受けなければなりません。
新型出生前診断(NIPT)や母体血清マーカー検査は、採血のみで検査できるので、ほとんどリスクはないでしょう。
お母さんの腕に注射針を刺すときに、多少なりとも痛みはありますが、体に大きな負担はかかりません。
出生前診断でわかる障害とは
出生前診断では、染色体異常が起因しているダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群の障害が分かります。
これらの障害の特徴や寿命などをご紹介しますので、参考にしてください。
ダウン症候群
ダウン症候群の特徴は、成長障害や筋肉の緊張が低下する、特徴的な顔貌です。
そして、心臓疾患や消化器の奇形、甲状腺疾患、耳鼻科領域の疾患などの合併症もあります。
ダウン症候群の子どもは、支援クラスや特別学級に通い、寿命はおよそ60歳といわれています。
エドワーズ症候群
エドワーズ症候群は、胎児期からの成長障害、呼吸や摂食障害がみられ、合併症は心臓疾患、消化管の奇形、関節の拘縮などが特徴です。
エドワーズ症候群の子どもは、身体や知能に発達の遅れがあり、場合によって呼吸の補助が必要になります。
そして、妊娠中に胎児が死亡することが多く、出産後も1か月の死亡率が50%、1年での死亡率が90%となります。
パトウ症候群
パトウ症候群は、成長障害、呼吸や摂食に障害がみられ、口唇口蓋裂、心臓疾患、目の疾患などの合併症もみられます。
身体や知能の遅れがみられ、状態によっては呼吸の補助が必要です。
出生前診断で障害があるとわかったときの対処法
出生前診断で障害があるとわかったときには、中絶手術、出産、遺伝カウンセリングへ相談など3つの対処があります。
胎児に障害があるとわかったお母さんは、どうしていいのか不安でいっぱいでしょう。
命の選択を迫られ、どれが正解なのかは倫理上難しい問題ですが、3つの選択肢をぜひご覧ください。
選択1|中絶手術
1つ目の選択肢は中絶手術ですが、日本では母体保護法により妊娠22週未満までと定められています。
人工中絶手術は基本的に安全な手術ですが、母体への負担を減らすならば、妊娠6〜9週までが良いでしょう。
妊娠10週を過ぎると胎児が成長するため、手術の難易度があがり、妊娠12週以降には胎児は死産となり届け出や埋葬も必要になります。
中絶手術は、精神的負担が大きいので、よくパートナーと相談することが大切です。
選択2|出産
2つ目の選択肢は出産で、通常の妊婦生活と同様ですが、この期間中にダウン症児の親になるための準備をしましょう。
ダウン症児の症状は個人差がありますが、治療やサポートを受ければ生活は難しくありません。
例えば、特別児童扶養手当や障害児福祉手当、小児慢性疾患医療助成制度など行政のサポートを活用できます。
各自治体によって、独自の助成制度もあるので、妊娠中に調べて申請の準備を行いましょう。
また、ダウン症候群に関しての情報を知ることも、とても大切です。
公益財団法人 日本ダウン症協会やNPO法人 親子の未来を支える会などをぜひ活用しましょう。
選択3|遺伝カウンセリングへ相談
3つ目の選択肢は、遺伝カウンセリングへ相談することです。
遺伝に関する悩み全般を、専門の医師やカウンセラーがカウンセリングしてくれます。
受診するには、まずかかりつけ医に遺伝カウンセリングを受けたい旨を伝えましょう。
もし、かかりつけ医がカウンセリングを行っていない場合、登録機関遺伝子医療体制検索・提供システムのホームページで検索できるので活用してください。
ただし、原則カウンセリング料は一般的には約5000円〜1万円ですが、自由診療のため受診前に問い合わせして確認しましょう。
まとめ
出生前診断とは、胎内にいる赤ちゃんの健康状態を調べ、形態異常や染色体異常など胎児の先天性疾患が分かります。
ただし、確定検査は母体に負担が大きく破水や流産などのリスクもあるので注意しましょう。
子どもに障害があると診断されたときには、中絶手術、出産、遺伝カウンセリングなどの選択肢がありますが、パートナーときちんと相談することが大切です。
参考文献
・厚生労働省研究班監修–妊娠中に行われる出生前検査について
・日本産婦人科学会-15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)