体外受精は双子を授かる確率が高い?原因や仕組みを解説
不妊治療の中の1つである体外受精をすると、なぜ双子を授かる可能性が高いのかを解説します。
体外受精とは卵子と精子を体外に取り出し受精させたのち子宮内に戻す治療法です。
では、以下で解説していきます。
この記事の内容
双子を授かる確率と双子のタイプ
一卵性の双子を自然に授かる確率は0.4%の確率ですが、体外受精だとその確率は1.36%になります。
二卵性の双子を自然に授かる確率はさらに低く0.2%ほどです。
また双子と言っても、2つのタイプがあり、さらに妊娠時は膜性によって3タイプに分かれます。
一卵性双生児
一卵性双生児は、見た目や血液型、性別が同じであることが特徴です。
それは同じ1つの受精卵から生まれきたからです。
なぜこのようなことが起きるのかは原因不明ですが、不妊治療をしていた場合、卵巣刺激や胚培養環境などが原因ではないかと考えられています。
二卵性双生児
二卵性双生児とは、別々の受精卵が着床しそれぞれが育っていくので性別や血液型も違ったり、顔もそれほど似ていなかったりすることが多いです。
原因は不妊治療をしていた場合、受精卵を複数個、同時に子宮に戻したなどの原因が考えられます。
妊娠中における双生児の分類
双子を妊娠中、絨網膜と羊膜がいくつあるかによって呼び方やリスクが変化していきます。
二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)
絨毛膜2つと羊膜2つのパターンとなります。
絨網膜とは胎盤の基礎となるもので、羊膜とは赤ちゃんを包んでいる膜のことです。
双子妊娠のうち70%〜75%が二絨毛膜二羊膜双胎のタイプとなります。
この記事では、このパターンを以降膜性パターン1と表します。
ちなみに二卵性の双子の膜性はこのパターン1のみです。
一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)
絨毛膜が1つ、羊膜が2つのパターン。
双子を妊娠する25%〜30%はこのタイプになります。
この記事では、このパターンを以降膜性パターン2と表します。
一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)
絨毛膜1つと羊膜1つのパターン。
双子を妊娠する全体のなかの1%以下という大変珍しいタイプです。
この記事では、このパターンを以降膜性パターン3と表します。
絨毛膜と羊膜が少なくなるにつれてリスクが上がってきます。
よって膜性パターン1から順にリスクも大きくなってきます。
体外受精で授かる双子のタイプは?
体外受精で双子を授かった人はどのような方法で双子を授かったのでしょうか。考えられるパターンを紹介します。
受精卵を複数個子宮に戻す
この場合、いくつ着床をするかによって双子などの多胎児になる可能性があり、どちらの双子になるかは分かりません。
受精卵を1つ子宮に戻す
受精卵を1つだけ母体に戻して、双子以上になることがあります。
これは受精卵を体外で培養していることが原因とされています。
受精卵のグレードの関係性
胚盤胞パラメータ(体外培養時間、胚盤胞期、内細胞塊および栄養膜外胚葉の状態)と、体外受精での一卵性双生児の発生率との関連を調べた論文によると、体外での培養期間や胚盤胞のステージなどは一卵性双生児の発生率とは関係ないとされています。
ですが、内部細胞塊がゆるく栄養外胚葉がぎっしりと詰まっている胚盤胞は一卵性の双子になりやすいとの見解でした。
※胚盤胞とは大きく膨らんだ胚の状態のことをいい、この内部細胞塊は赤ちゃんになる部分を指し、栄養外胚葉は胎盤になる部分です。
双子を授かるリスク
通常、単体児でも妊娠や出産にはリスクを伴います。それが双生児だった場合のリスクはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
お母さんにかかるリスク
母体側のリスクは、妊娠高血圧症候群や血栓症、浮腫、妊娠糖尿病などが挙げられます。
またお腹が張りやすく、腰痛や貧血になりやすい傾向です。
妊娠高血圧症候群
普段は正常な血圧の人が、妊娠することで高血圧になりさまざまな症状が出てきます。
母体や胎児の命に危機に陥る重大な症状もありますので、注意が必要です。
対処法は安静にして、食事を見直すことです。それでも解決しない場合は入院となり食事と降圧剤により徹底的に管理されます。
血栓症
血の塊を血栓と言います。
この血の塊が、動脈や静脈を塞いでしまうことを血栓症といいます。
妊産婦で問題になるのは、深部静脈血栓症と、それによって起こる肺血栓塞栓症です。
浮腫
浮腫とは、むくみのことです。
赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮も大きくなり、大静脈を圧迫するためむくんだり、ホルモンバランスの変化によりむくんだりします。
このむくみが出ると、妊娠高血圧のサインかもしれませんので注意してみてください。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中に血糖値が上がることです。
妊娠糖尿病になると赤ちゃんが巨大化したり、呼吸異常や代謝異常を引き起こしたりしてしまいます。
赤ちゃんたちにかかるリスク
胎児側のリスクは、単胎児にはない特有のリスクがあります。その症状について説明します。
胎児発育不全
これは数週に対して発育が平均より遅れている状態を指します。
双子妊娠の場合、平等に栄養が行き届くわけではありません。特に胎盤を分け合っている膜性パターン2と3では栄養の行き届くバランスが偏ることはよくあることです。
またそのほとんどは、胎盤や臍帯の状態が原因であると言われていて、胎児の症状が重症化する場合もあります。
双胎間輸血症候群
これはパターン2か3の場合、どちらか一方に血液が多く送られて血液の流れのバランスを崩してしまうことで起こるものです。
多く血液が送られてきた方には、高血圧や多尿、羊水過多、胎児水腫などを引き起こします。
少ない血液しか送られてこない方は、低血圧や乏尿、羊水過小、胎児発育不全などを引き起こします。
膜性パターン2のおよそ10%におこるといわれており、治療をしなければ二人とも亡くなってしまう可能性が高くなります。
胎児死亡
双子は流産率や、子宮内胎児死亡率、新生児死亡率が高くなります。
そのほかに先天性異常が単体児に比べて、確率が高いということもありますが、一卵性の双子だからといって2人とも異常があるとは限りません。全く全てが同じというわけではないからです。
バニシングツイン
2人のうちの1人が妊娠初期に亡くなり、子宮に吸収されて消えてしまうことです。医学的には双生一児死亡と呼ばれます。
妊娠初期の6週から8週目に起こり、その確率は約10%から15%とされ膜性パターン2と3に見られ、膜性パターン1は比較的起こりにくいとされています。
このバニシングツインには予防法や対処法はありません。妊娠初期の流産のようにどうすることもできないのです。
ちなみに生き残ったもう1人の赤ちゃんに影響が出る確率はそれほど高くありません。
双子の妊娠が判明するのはいつ?
双子だとわかるのは、エコー検査時に分かります。
妊娠検査薬で陽性が出た段階では分かりません。
妊娠数週でいうと5週〜6週頃になり、胎嚢がいくつあるかによって膜性が決まってきます。
まとめ
双子を授かる確率は低いですが、生殖医療補助の発展により確実に高くなってきていることが分かりました。
また、多胎児は母体や胎児にもリスクがあり、より慎重に妊娠生活を送らなければなりません。ですが多胎児には多胎児の良さがあります。
メリットやデメリットを理解した上で、家族計画を進めていきましょう。
参考文献
・亀田IVFクリニック幕張ー一卵性双胎は胚盤胞のグレードと関連する?(論文紹介)
・uicharmー双子妊娠の確率は?いつわかる?
・NIPT japanー双子が生まれる確率は?双子妊娠によるリスクやバニシングツインについて
・母子衛生研究会ーよくわかる用語辞典 【妊娠編】
・stemcellー妊婦さんの浮腫とは?妊娠高血圧症候群に注意