バニシングツインとは?双子の妊娠で片方が流産してしまった時の母体や残された赤ちゃんへの影響を解説
多くの方にとって双子の妊娠は、とても喜ばしいことです。
妊婦さんはもちろん、家族や親戚で双子の誕生を楽しみにされることでしょう。
しかし双子の妊娠では、必ずしも2人とも無事に生まれてくるとは限りません。
双子の1人が消えてしまう現象をバニシングツインといいます。
この記事では、双子の1人が消えてしまう可能性や原因・影響について解説します。
この記事の内容
双子妊娠で片方を流産してしまうバニシングツインとは
バニシングツインをご存知でしょうか?
双子の妊娠で、片方の胎児が流産し、おなかの中からいなくなってしまう現象をバニシングツインと言います。
「おなかの中から胎児がいなくなる?」と不思議に思うことでしょう。
まずはバニシングツインについて、詳しく解説します。
バニシングツインとはどんなものか
単胎妊娠では、胎児が亡くなると自然流産することが多いです。または子宮内除去術を行うこともあります。
つまり、亡くなった胎児は、妊婦さんの子宮から排出されます。
多胎妊娠では、妊婦さんの子宮に亡くなった胎児が吸収され、見えなくなる現象が起こりうるのです。
双子の1人(twin)が、突然見えなくなる(vanishing)ので、この現象をバニシングツインと呼びます。
バニシングツインが起こる時期
子宮内から胎児が1人消えてしまう「バニシングツイン」は、妊娠初期の6週から8週目に起こる場合が多いのが特徴です。単胎妊娠でも、この時期は流産の可能性が高い時期です。
一方、妊娠8週目以降になると、発生する確率は下がります。ただし流産のリスクはぬぐえません。
無事に出産するまで何が起こるかわかりませんので、油断はできません。
バニシングツインが起こる確率
バニシングツインは早期の超音波検査で発見されます。
そのため近年の超音波技術の発達と普及により、発見されやすくなり、増加傾向に見られがちです。
しかしバニシングツインに気付かず、単胎妊娠と診断されることもあります。
妊娠に気づくのが遅かった場合や、受診が遅れた場合等です。
また近年は不妊治療で体外受精も増えてきています。
体外受精では多胎妊娠になる確率が増えますので、発生数も増えると考えられます。
さらにバニシングツインの確率は多胎妊娠の種類によっても違うと言われています。
一卵性双生児の方が、二卵性双生児に比べて、発生する確率が高いのです。
妊娠6週から8週目の発生確率は一卵性双生児で約50%、二卵性双生児で21%との報告があります。
双子妊娠で片方が流産したときに与える影響
バニシングツイン現象が起こると、 亡くなった胎児はどうなるのでしょうか。
また残された赤ちゃんやお母さんの体に、どんな影響があるのか心配です。
亡くなった赤ちゃんが与える影響について、説明します。
亡くなった赤ちゃんはどうなるのか?
妊娠初期(妊娠12週目まで)にバニシングツインが起こると、亡くなった胎児はお母さんの子宮に吸収され、消えてしまいます。
超音波検査で以前まで見えていた赤ちゃんが、消えて見えなくなってしまうのです。
妊娠中期以降に起こった場合、胎児が完全に吸収されないケースもあります。
生きている双子の1人の中に腫瘍として発見されたり、体内から異物として発見されたりした例がありました。
残された子に影響はあるのか?
妊娠初期のバニシングツインは、胎児が完全に消失するため、残された子に影響はありません。
残された子は、その後も育っていき、無事に生まれるケースがほとんどです。
妊娠中期以降の一卵性双生児の場合は注意が必要です。感染症や血液凝固、脳に障害が起こることもあります。
二卵性双生児の場合は残された胎児への影響はほぼありません。
母体への影響はあるのか?
バニシングツインによる、母体への影響はほぼありません。過度な心配をする必要はないでしょう。
けれども、双子の片方を亡くしてしまった悲しみが、すぐに癒えるとは限りません。
悲しみによる身体への影響が少なからずあるかもしれません。
パートナーと気持ちを共有したり、元気に成長している赤ちゃんへ目を向けたりして、できるだけ前向きに過ごすよう心がけましょう。
双子の妊娠で片方が流産してしまう原因と予防策
双子妊娠の際に片方の胎児が消失してしまう現象は、なぜ起こるのでしょうか。
バニシングツインが起こる原因と予防策があるのか、解説します。
双子のうち片方だけが流産してしまう原因は分かっていない
双子の妊娠で片方の胎児だけが亡くなってしまう、はっきりとした原因は分かっていません。
しかし妊娠初期の流産は、単胎か多胎かに関わらず、起こりえます。
流産の原因は染色体異常であることが多いです。
そのため、双子のうち片方だけ流産してしまう原因も、染色体異常と考えられることもあります。
染色体異常は妊婦さんや両親には原因がないと言われています。
バニシングツインへの予防策は現在のところない
双子の妊娠で片方の胎児が消失してしまう、バニシングツインへの予防策はない、というのが現状です。
片方の胎児が子宮に吸収され消失してしまう原因が解明されていないため、残念ながら予防策もありません。
片方が流産した時でもNIPTは可能なのか
双子のうち片方が流産してしまうことは、とても悲しいことです。
せめて残された胎児は無事に生まれてきてほしい、と願うことでしょう。
片方が流産してもNIPTが可能なのか、亡くなった赤ちゃんがNIPTの結果に影響するのか、解説します。
双子のうち片方だけが流産してしまったあとでもNIPTは可能
バニシングツインが起こった場合でもNIPTは可能です。
NIPTとは、胎児の遺伝病や染色体異常、先天性代謝異常や染色体異常等を診断するものです。
採血をし、妊婦さんの血液中のDNAから診断します。
NIPTの検査結果が陰性であれば、残った胎児も消失した胎児も問題はなく「染色体疾患の可能性はない」と考えられるでしょう。
NIPTを受ける際の注意点
バニシングツインが起こった後、消失した胎児のDNAが残っている可能性があります。
一卵性双生児の場合は、どちらの胎児も同じDNAなので、検査結果に問題はありません。
二卵性双生児の場合、消失した胎児と残っている胎児と、どちらのDNA結果なのかわからない場合があります。
そのため、NIPT検査の結果が「陽性」の場合は残った胎児に異常がなくても、消失した胎児のDNAが残っていると、陽性になることがあります。
結果が陽性の場合は、羊水検査で確定させることが大事です。
二卵性双生児でバニシングツインが起こった場合は、NIPTを受ける際に注意が必要です。
双子の片方を失った悲しみから解放されるには
双子の妊娠を喜んでいた矢先に、片方の赤ちゃんを失った悲しみは計り知れません。
流産は心にも大きなダメージを与えます。
妊婦さん自身が心身ともに健康に過ごし、残った赤ちゃんを無事に出産するためにできることはあるでしょうか。
双子でなくても流産の原因は不明な場合が多い
単胎・多胎に関わらず、妊娠初期は流産の可能性が高まります。
流産の原因は染色体異常が多いと言われますが、原因がわからない場合も多いです。
そのため、流産はお母さんやお父さんが予防することは難しいのです。
つらいときは同じ経験をした方との交流も前向きになるヒントになる
流産による悲しみは、同じ経験をした方同士で分かり合えるかもしれません。
つらいときは同じ経験をした方に、ヒントや解決策を求めてみてはどうでしょうか。
双子の妊娠で片方を失ってしまったことは残念ですが、お腹にはもう片方の赤ちゃんが育っています。もう1人の赤ちゃんを元気に生むための経験談を聞いてみるのも良いでしょう。
まとめ
双子の妊娠の際、片方の胎児が流産し消失してしまう現象が「バニシングツイン」です。
原因や予防策については現時点ではわからないことが多いです。
しかし残った赤ちゃんは無事に生まれることがほとんど、という事実もあります。
流産した悲しみはこの上なく、精神的なダメージも大きいでしょう。
心の負担を軽くするために、流産について正しい知識をつけたり、経験者と交流したりしてみてはいかがでしょうか。
残った赤ちゃんを無事に出産するためにも、妊娠さん自身の身体を大切に、過ごしていきましょう。