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染色体と遺伝子はどこにある?NIPTでわかるDNA異常もあわせて解説!

「染色体と遺伝子の違いは?」「そもそも遺伝子って何?」

先天性疾患を考えるうえでこれらの疑問は必ず浮かぶものでしょう。

遺伝子やDNAという言葉は耳にすることが多いですが、細かくどう違うのか、理解するのはなかなか難しいと思います。

そこで今回は、DNA、遺伝子、染色体のそれぞれの違いと、これらに起こる遺伝子異常とその病気についてまとめてみました。

遺伝子とは

遺伝子とは、生物が持つ遺伝情報のことです。

DNA(デオキシリボ核酸)という分子で構成されており、生物の発育や機能に関与しています。

「遺伝子」は情報のことで、この情報は「DNA」という文字を使って書かれていると考えてみてください。

人間の遺伝子の数は約25,000個以上と言われています。

DNAを通じて遺伝情報が受け継がれ、遺伝子の変異や異常はさまざまな疾患や特性の発現に関与しています。

遺伝子の研究は医学や生物学の分野で重要な役割を果たしており、遺伝子の理解は人間の健康や疾患の予防・治療にもつながることが期待されています。

DNAとは?

では遺伝子を構成しているDNA(デオキシリボ核酸)とは何でしょうか。

DNAは遺伝情報をコードする重要な分子です。

DNAは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)という4種類の塩基から成り立ちます。

これらの塩基が特定の順序で並び、長い2重らせん構造をとっています。

具体的に、DNAは3つごとの塩基配列によりアミノ酸の合成を指示しています。

例えば、AACという配列は「アスパラギン」というアミノ酸を、GCGという配列は「アラニン」というアミノ酸をコードしています。

人間の体には様々な臓器、細胞、ホルモンなどが存在していますが、これらはすべてアミノ酸の組み合わせによって生成されているのです。

遺伝子の役割

遺伝子は、生物の発育や機能に関与しており、さまざまな特徴や性質を決定する役割を果たしています。

例えば、身長や目の色などの遺伝的な特徴は、遺伝子の情報によって制御されています。

そして、これらはDNAによってコードされた酵素やタンパク質の合成にも関与し、生物の代謝や免疫系の機能などにも影響を与えています。

また、この遺伝情報は両親から受け継がれたものです。

人間の体には約37兆個もの細胞があると言われていますが、これらは、両親から受け継いだ受精卵ただ一つの細胞と同じ遺伝子を持っています。
現在ではこの遺伝子を解析することが、人体の謎を解き明かすカギと考えられており、特定の遺伝子がどんな特性や体質に関係しているのか、日々研究されています。

染色体とは?

染色体とは、非常に長い鎖となったDNAが折りたたまれた姿のことです。

DNAは、ヒストンというタンパク質と共に規則正しく折りたたまれて、染色体に収納されています。

DNAが親から子に引き継がれるときや、細胞分裂が起こるとき、染色体の形となって伝達されるのです。

人間の染色体は全部で46本です。それぞれの染色体は対になって存在しており、父親から半分、母親から半分を引き継ぎます。
また、染色体はその23対のうち、22対が常染色体、残りの1対が性染色体と呼ばれます。

常染色体

常染色体は、体のほとんどの特性や性質についての情報が含まれています。

長さの長い順で1〜22番の番号が割り振られていて、それぞれが異なる遺伝子を持っています。

常染色体の対になっている1本1本の各遺伝子は遺伝子の位置と数、形、大きさが同じになっています。つまりこれらの常染色体上の遺伝子はバックアップを持っているとも言えるのです。

性染色体

性染色体は、生物の性別を決定する染色体です。

人間では、性染色体はX染色体とY染色体の2種類があります。

通常、女性は2つのX染色体を持ち、男性は1つのX染色体と1つのY染色体を持っています。

この性染色体の組み合わせにより、個体の性別が決まるのです。

性染色体は常染色体とは違い、遺伝情報が対になっていません。

染色体や遺伝子はどこにあるか

染色体や遺伝子は生物の中でどのように配置されているのでしょうか?

染色体は細胞核内に詰まっている

染色体は、生物の細胞核内に存在しています。

細胞核は細胞内の重要な部分であり、染色体が収納される場所です。

通常時、染色体は細胞核内で染色質という繊維状の構造を取っており、細胞分裂の際に染色体の構造に変化します。

染色体はDNAによって構成されている

染色体はDNA(デオキシリボ核酸)から構成されています。

DNAは遺伝情報を含んだ分子であり、染色体の主要な成分です。

染色体はDNAの折りたたまれた構造をしており、遺伝情報が保護されています。

DNAの一部が遺伝子としての機能を担っている

DNAのうち遺伝子として機能しているのは一部のみです。

遺伝子はDNA上の特定の領域であり、その配列によってタンパク質の生成や調節が行われます。

この遺伝情報がコードされている部分をエキソンと呼びます。

実はこのエキソンはDNAの1%にしか満たず、残りの99%はイントロンやノンコーディング部分と呼ばれています。

これらは、タンパク質の発現調整などに関わっていると言われていますが、実際にはその働きが解明されていない部分がほとんどです。

先天性疾患

先天性疾患とは、生まれつき染色体や遺伝子異常により、備わってしまった病気のことを指します。

以下に、先天性疾患の主な種類とその原因について説明します。

突然変異

遺伝子や染色体異常の原因のほとんどは突然変異によるものです。

母親の卵子、もしくは父親の精子が突然変異によって異常が起きた状態で受精した場合、先天性疾患の原因になります。

突然変異とは細胞分裂時にDNAを複製するときに発生するコピーミスのことです。

通常はコピーミスが発生すると、体内の調整機能によりその細胞は機能を停止することになりますが、稀にそのまま発現してしまうことがあります。

遺伝子変異疾患

遺伝子変異疾患は、特定の遺伝子の異常が原因で生じる先天性疾患の一種です。

遺伝子における突然変異は、その発生部分によって小さな影響の場合と、大きく影響する場合があります。

以下が遺伝子の突然変異が原因で発症する先天性疾患です。

遺伝子変異疾患

  • コフィン・ローリー(Coffin-Lowry)症候群・・・知的障害
  • ソトス(Sotos)症候群・・・大頭、過成長、骨年齢促進などの症状
  • 歌舞伎症候群・・・特徴的な顔貌と心臓疾患を含む様々な合併症
  • アンジェルマン(Angelman)症候群・・・重度の精神発達の遅れ

など

染色体異常疾患

染色体異常疾患は、染色体の構造や数に異常が生じることで引き起こされる先天性疾患の一種です。

染色体異常は、染色体の欠失、重複、転座などが生じることを指します。

以下が染色体の突然変異が原因で引き起こされる先天性疾患です。

染色体異常疾患

  • 5p-症候群・・・成長障害
  • 18トリソミー症候群・・・成長障害、重度の心疾患を含む様々な合併症
  • 13トリソミー症候群・・・成長障害、重度の発達の遅れ、重度の心疾患を含む様々な合併症
  • ダウン(Down)症候群・・・発育の遅れ、筋緊張低下など

など

新型出生前診断(NIPT)とは

先天性疾患は遺伝子の突然変異によって引き起こされる事がほとんどであり、胎児が出生されるまで診断をすることが難しいのが実情です。

新型出生前診断(NIPT)は、妊娠中の胎児の染色体異常を非侵襲的に検査する方法です。

NIPTはスクリーニング検査であるため確定診断はつきません。

しかし、先天性疾患に対する不安を取り除くことができるかもしれません。

NIPTとは

NIPTは、”Non-Invasive Prenatal Testing”の略称であり、母体の血液中に存在する胎児由来の遺伝子断片を解析することで、胎児の染色体異常を検出する手法です。

この検査は非侵襲的であり、胎児に対するリスクが少ないことが特徴です。

また、妊娠10週目という早い時期から検査をすることができます。

しかし、あくまで確定的検査ではないため、検査結果については医師からの説明をしっかりと受けましょう。

羊水検査、絨毛検査

出生前診断には、羊水検査や絨毛検査という確定的検査もあります。

この2種類の検査は、検査結果によって確定診断を得ることができます。
しかし、これらの検査は侵襲的な手法であり、0.1~0.3%程度ですが流産のリスクを伴います。

検査の実施を検討する際は、よく医師に相談しましょう。

NIPTでわかる染色体異常

NIPTは、様々な先天性疾患を検査することができます。

代表的な染色体異常としては以下のものがあります。

21トリソミー

21トリソミーは、ダウン症とも呼ばれる染色体異常の一つです。

正常な場合は、21番染色体が2つ存在しますが、21トリソミーでは3つ存在します。

染色体異常疾患の中では最も罹患数が多く、発育の遅れ、筋緊張低下など様々な症状があります。

NIPTにおける陽性的中率は95%以上と言われています。

18トリソミー

18トリソミーは、エドワーズ症候群とも呼ばれる疾患で、18番染色体がトリソミーを起こしています。

主な症状は成長障害、重度の心疾患を含む様々な合併症であり、心臓疾患が重度のため生後数年で命を落とすことも珍しくありません。

NIPTを用いることで、18トリソミーの検出精度を向上させることができます。

13トリソミー

13トリソミーは、パトウ症候群とも呼ばれる染色体異常のひとつで、13番染色体がトリソミーとなっています。

一般的に染色体異常は、番号が低い染色体に発生するほど、合併症が重度になると言われています。

主な症状は18トリソミーに近く、成長障害、重度の心疾患などが見られます。

まとめ

染色体は、DNAが折りたたまれた構造のことであり、細胞の核に存在しています。
また染色体に含まれた遺伝情報は、体の様々な特性や性質などを決定しており、突然変異によってDNAや染色体に異常が発生すると、先天性疾患が引き起こされます。

もしご自身の赤ちゃんや将来のことに不安を抱えている場合は、出生前診断などを検討してみてもいいかもしれません。