胎児ドックとは?胎児ドックでわかることやメリット・デメリットをご紹介
皆さまの中には、「胎児ドックでわかることって何?」「胎児ドックのメリットとデメリットは?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで、今回は、このような疑問を持つ方のため、胎児ドックの目的・わかることなどをご紹介します。
子供の情報は見逃したくないもの。メリットやデメリットについてもわかりやすくまとめておりますので、お悩みの際はぜひ参考にしてください。
この記事の内容
胎児ドックとは
胎児ドックの目的や受ける割合についてご紹介いたします。
胎児ドックとは
胎児ドックは、通常の妊婦健診よりも胎児のことを詳しく調べられる検査のことであり、「胎児スクリーニング検査」「胎児形態異常スクリーニング検査」「胎児初期精密検査」「ベビードッグ」とも呼ばれています。
胎児ドックの目的
胎児ドックの目的は、通常の妊婦健診では知ることのできない胎児の発育の異常の有無を確認することです。
胎児ドックは受けるべき?
胎児ドックを受ける場合、赤ちゃんの発達の異常を調べて終わりではありません。
もし赤ちゃんに何らかの異常が見つかった場合、夫婦は産むか産まないかという倫理的な選択が必要になります。
胎児ドックを受けようと思っている方は、受けた後に陽性が出る可能性も踏まえて、受けましょう。
下記の方は、胎児ドックを受ける傾向にありますので、参考にしてください。
- 高齢妊娠・出産である
- 夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である
- 過去の妊娠で赤ちゃんに異常が見つかった
- 上のお子さんに障がいがある
胎児ドックを受ける割合
胎児ドックを受ける割合は、出生数97.7万件において7.2%、高齢妊婦数27.8万人において25.1%です。全体で見ると少なく感じますが、高齢妊婦さんだけで見ると約4分の1の割合で、胎児ドックを受けていることが分かります。
胎児ドック検査を受ける流れ
1.カウンセリング
胎児ドックを受ける前にカウンセリングを行うことがほとんどです。カウンセリングでは、夫婦の現在の状況を把握し、検査の意義や方法を夫婦に理解してもらうことを目的としています。
2.検査
通常の妊婦健診で行うエコー検査より時間をかけてスクリーニング検査を行っていきます。チェック項目は受ける時期によって異なります。
3.フィードバック
胎児ドックは検査結果がすぐに分かるため、検査結果が出たら、結果をお伝えしていきます。結果を受けて今後の選択肢について医師とともに考えていきます。
胎児ドックでわかること
胎児ドックは妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期によってチェック項目や分かる疾患が違います。では、時期別にご紹介いたします。
初期胎児ドック
初期胎児ドックの検査時期・チェック項目・分かることは、以下のとおりです。
- 検査時期:妊娠11〜13週
- チェック項目:全身の形態・脳や顔の構造・心臓の構造・四肢の確認
- 分かる疾患:染色体異常・心疾患の可能性
病院によって対象の妊娠週数が多少変化しますが、一般的には、初期胎児ドックは妊娠11〜13週に行われます。赤ちゃんのむくみの有無や体の部位の位置、血流を見ることができるため、染色体異常や心疾患の可能性を知ることができます。
中期胎児ドック
中期胎児ドックの検査時期・チェック項目・分かることは、以下のとおりです。
- 検査時期:妊娠18〜20週
- チェック項目:大脳や小脳・顔・心臓・肺・胃腸・肝臓・腎臓・外性器
- 分かる疾患:染色体異常・心疾患・形態異常の可能性
中期胎児ドックは一般的に妊娠18〜20週に行われます。鼻骨の形成、心臓の弁の動きまで見ることができるため、初期胎児ドックで分かる染色体異常、心疾患に加え、胎児の形態以上の可能性を知ることができます。
後期胎児ドック
後期胎児ドックの検査時期・検査内容・分かることは、以下のとおりです。
- 検査時期:妊娠28〜30週
- チェック項目:大脳や小脳・心臓・肺・胃腸・肝臓・腎臓・外性器
- 分かる疾患:染色体異常・心疾患・形態異常・先天的な脳の異常の可能性
後期胎児ドックは一般的に妊娠28〜30週に行われます。脳のしわまではっきりとみることができるため、初期胎児ドック、中期胎児ドックで分かることに加え、先天的な脳の異常の可能性も知ることができます。
胎児ドックのメリット・デメリット
胎児ドックにはメリットもあれば、デメリットもあります。それを踏まえた上で、胎児ドックを受けなければなりません。では、メリットとデメリットをご紹介いたします。
胎児ドックのメリット
胎児ドックのメリットは、以下のとおりです。
- 流産や死産のリスクがない
- 当日中に結果が出る
- 赤ちゃんの異常が早期に分かる
- 他の検査に比べると比較的安価
胎児ドックの1番のメリットは、安全性です。羊水検査や絨毛検査は妊婦さんのおなかに針を刺して調べるため、早産や流産のリスクを伴いますが、胎児ドックは超音波検査なので、そのようなリスクはありません。
また、他の出生前診断とは違い、その場ですぐに検査結果が分かり、赤ちゃんの異常を早期発見できるため、生まれる前から心の準備ができたり、出産後の治療法を考えることができます。
費用面については、出生前診断で最も受診率の高いNIPTが10〜20万円かかるのに対し、胎児ドックは3〜5万円と、約¼で済みます。
胎児ドックのデメリット
胎児ドックのデメリットは、以下のとおりです。
- 精度がNIPT、羊水検査、絨毛検査に劣る
- 偽陽性が多い
- 確定診断はできない
NIPT、羊水検査、絨毛検査に比べて、精度が劣り、疾患がないにも関わらず陽性反応が出ることがあり、確定診断はできません。
検査内容における他の出生前診断との違い
検査内容における他の出生前診断との違いを解説いたします。
母体血清マーカー検査
母体血清マーカー検査の検査方法・対象期間・対象疾患・検査結果までの日数は、以下のとおりです。
- 検査方法:採血
- 対象期間:妊娠15〜20週
- 対象疾患:21トリソミー・18トリソミー・神経管閉鎖不全症
- 検査結果が出るまでの日数:約10日〜2週間
胎児ドックは幅広い期間で検査できますが、母体血清マーカー検査は5週間の間でしか検査が受けられません。また、胎児ドックはスクリーニング検査なので、見た目を詳しく見ることができますが、母体血清マーカーは採血のみなので、楽な検査ではあるものの、見た目を詳しくみることはできません。
NIPT
NIPT検査の検査方法・対象期間・対象疾患・検査結果までの日数は、以下のとおりです。
- 検査方法:採血
- 対象期間:妊娠10週〜
- 対象疾患:21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー
- 検査結果が出るまでの日数:約1〜2週間
NIPTは精度がかなり高いため、最も受診率の高い出生前診断です。
コンバインド検査
コンバインド検査の検査方法・対象期間・対象疾患・検査結果までの日数は、以下のとおりです。
- 検査方法:精密超音波検査と採血
- 対象期間:妊娠11〜13
- 対象疾患:21トリソミー・18トリソミー
- 検査結果が出るまでの日数:約2週間
コンバインド検査は、超音波検査と採血を組み合わせた検査です。胎児ドックと同様に、コンバインド検査も流産や早産のリスクは伴いませんが、対象疾患が少なく、受けられる週数も短く限られています。
羊水検査
羊水検査の検査方法・対象期間・対象疾患・検査結果までの日数は、以下のとおりです。
- 検査方法:羊水を採取
- 対象期間:妊娠15週〜
- 対象疾患:染色体異常全般
- 検査結果が出るまでの日数:約3週間
羊水検査は、妊婦さんのおなかに針を刺して羊水を採取するため、流産や早産のリスクを伴います。
絨毛検査
絨毛検査の検査方法・対象期間・対象疾患・検査結果までの日数は、以下のとおりです。
- 検査方法:絨毛を採取
- 対象期間:妊娠11〜17週
- 対象疾患:染色体異常全般
- 検査結果が出るまでの日数:約2〜3週間
絨毛検査は初期の胎盤の一部である絨毛を採取して行いますが、羊水検査よりも流産や早産のリスクが高いと言われています。
費用面における他の出生前診断との違い
費用面における他の出生前診断との違いを表でご紹介いたします。
出生前診断の種類 | 費用 |
胎児ドック | 3〜5万円 |
母体血清マーカー検査 | 2〜3万円 |
NIPT | 20万円 |
コンバインド検査 | 3〜5万円 |
羊水検査 | 10〜20万円 |
絨毛検査 | 10〜20万円 |
まとめ
胎児ドックは生まれてくる赤ちゃんの形態異常、染色体異常の病気の可能性を知ることができます。胎児ドックとよく比較されるNIPTと比べると、精度は劣るものの、結果がすぐに出る点や費用が抑えられるというメリットがあります。メリットとデメリットを踏まえて、胎児ドックを受けるか決めましょう。
参考記事
・厚生科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会ー母体血清マーカーに関する見解(報告)
・日本人類遺伝学会ー日本人類遺伝学会倫理審議委員会の母体血清マーカー検査に関する見解