排卵ってなに?排卵から着床までを解説
妊娠をするためには「排卵」が正常に行われなければなりません。「排卵しないと妊娠しない」「排卵して妊娠しなければ生理がくる」など、知っている方も多いと思います。
では、排卵とはどのような状態をいうのでしょうか?知っているようで知らない「排卵」について解説していきます。
この記事の内容
排卵とは
排卵とは成熟した卵胞から飛び出した卵子が、卵巣から卵管采をへて卵管へ移動することを指します。ではくわしく解説していきます。
排卵の仕組み
排卵前の卵子は、卵巣の中で細胞に守られた状態で存在します。この状態を卵胞といいます。
①脳の視床下部から、たくさんある卵胞の中の1つを成熟させるように下垂体へ向けて性腺刺激ホルモンが分泌されます。
②それを受けた下垂体は、卵胞刺激ホルモンを分泌します。
③卵胞刺激ホルモンに刺激された卵胞は大きく成長し、エストロゲンを分泌します。
④卵胞が大きくなりエストロゲンの分泌量も増えると、それに反応して下垂体から排卵を促す黄体形成ホルモンが分泌されます。黄体形成ホルモンは排卵を促すタイミングにだけ分泌され、この現象をLHサージとよびます。
⑤LHサージに反応して、卵胞の中から卵子が飛び出します。この状態を排卵といいます。
⑥卵子が出た後の卵胞は黄体へと変化します。黄体はプロゲステロンを分泌し、その作用で厚くなった子宮内膜が受精卵を受け入れやすいよう整えます。
用語の解説
性腺刺激ホルモン | 視床下部から分泌され、卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモンの分泌を促します。 |
卵胞刺激ホルモン | 下垂体前葉から分泌され、卵胞を刺激して発育を促す作用があります。 |
黄体形成ホルモン | 下垂体から分泌され、卵胞を成長させる作用から排卵を引き起こします。また、排卵した後の卵胞に働きかけ黄体化させ、プロゲステロンの分泌を促します。 |
エストロゲン | 子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすいよう整える作用があります。 |
プロゲステロン | 厚くなった子宮内膜をさらに妊娠しやすい状態に整えます。 |
排卵日っていつ?
月経周期が28日の場合、生理が始まった日から数えて14日目に排卵が起こるといわれています。しかし生理周期が不順な方はこの方法で排卵日を知ることは難しいでしょう。
確実な方法は基礎体温測定と排卵検査薬になります。
基礎体温測定
基礎体温測定は、毎日同じ時刻に同じ条件で測定する体温のことです。
正常な基礎体温では、低温期と高温期の2相に分かれます。低温期から高温期に移行する直前に一番体温が下がるタイミングがあります。そこから1~2日の間に排卵が起こるといわれています。
排卵検査薬
排卵検査薬は尿の中の黄体形成ホルモンをチェックすることで、排卵日を知ることができる検査です。
LHサージとよばれる黄体形成ホルモンが大量に分泌される期間は1日だけです。そこから24~36時間以内に排卵が起こります。
排卵と妊娠の関係
排卵が正常に行われないと妊娠は成立しません。排卵と妊娠の関係について解説します。
排卵から着床まで
排卵したあとの卵子は卵管で精子と出会い受精します。そして子宮へと移動し着床をしていきます。
それぞれの過程を解説します。
排卵
卵胞刺激ホルモンの作用で卵胞は20㎜ほどの成熟卵胞となります。そこから排出された卵子は、卵巣からも飛び出し卵管采から卵管に入ります。
受精
膣内に射精された精子の数は4000万個以上ですが、卵管にたどり着くのは数十から数百個といわれています。卵管の中で卵子と精子が出会い、受精します。
着床
受精卵は成長しながら、卵管の中を移動し4~5日かけて子宮に向かいます。
子宮の中には妊娠成立に向けて準備をしていた厚くふわふわになった子宮内膜があります。受精卵はそこにもぐりこんで着床します。
妊娠の確率が高いタイミングはいつ?
妊娠の成立が一番高いタイミングは排卵日の1~2日前です。
これは精子と卵子の寿命に関係しています。
精子の寿命は2~3日、卵子の寿命は排卵後約1日です。
排卵日の前から精子が待機しておくことで、卵子と精子が出会う確率が高くなります。
排卵期の体の変化
排卵日前後に体が変化するのは、エストロゲン、プロゲステロンが関係しているといわれています。
症状が強く出る方もいれば、全く感じない方もいます。症状が全く出なかったからといって排卵していないわけではないので、心配しなくて大丈夫です。
ではどのような体の変化があるのでしょうか?当日と前後に起こる症状に分けて解説します。
排卵当日に起こる症状
排卵当日に起こる症状は
- 排卵痛
- 排卵出血
です。
排卵痛
排卵痛が起こる原因ははっきりとは分かっていません。現時点でいわれているのは、卵子が卵胞から飛び出したときの刺激と、その時一緒に出る卵胞液と血液が腹膜を刺激することによる痛みではないかということです。
子宮内膜症がある方は排卵痛を感じやすいともいわれています。
排卵出血
排卵出血は破れた卵胞から流れ出た血液です。不正出血と思う方もいると思いますが、排卵の時期かどうかで判断できます。
排卵日前後に起こる症状
排卵日前後に起こる症状は
- むくみ、冷え
- 眠気
- 腰痛
- 吐き気、めまい
- イライラ
- 胸の張り
- 肌荒れ、便秘
- おりものの変化
です。
むくみ、冷え
黄体から分泌されるプロゲステロンは体に水分を留める作用があるため、むくみやすく、冷えやすくなります。
眠気
プロゲステロンの影響で、眠気が出現します。また、排卵後に基礎体温が上がることで睡眠の質が低下し、だるさを感じることもあります。
腰痛
排卵痛と同じく原因ははっきりと分かっていません。痛みには個人差があります。
症状が全く出ない方も多くいらっしゃるので、心配しなくても大丈夫です。
吐き気、めまい
はっきりとした原因は分かっていません。ホルモンバランスの変化からくるものといわれたり、吐き気は腸に水が貯まることが原因ともいわれています。
イライラ
イライラするのはプロゲステロンの影響ではないかといわれています。月経開始2週間前くらいから症状が出始めるようです。
胸の張り
プロゲステロンには「妊娠を維持させる」という重要な役割があります。その一つに乳腺を発達させるというものがあり、胸の張りを感じやすくなります。
肌荒れ、便秘
プロゲステロンが増えると、腸の動きが弱まり便秘になりやすくなります。
便秘になると腸の中に悪玉菌が増え、それらが肌荒れの原因になっているといわれています。
この時期は水分、野菜を多めに摂ることを心掛けて、便秘を予防をしましょう。
おりものの変化
排卵日前から徐々におりものの量が増え、排卵すると徐々に量が減っていきます。
性状は粘度の高い透明のおりものから、白に近い色のやや粘り気のあるものに変化していきます。
排卵障害ってなに?
排卵障害とは卵が育たずに排卵していない状態、卵が育ってもうまく排卵ができない状態のことをいいます。
基礎体温を測った場合、排卵していると低温期と高温期の2つの相に分かれますが、排卵障害がある場合は相が分かれません。
排卵障害の原因、治療法について解説します。
排卵障害の原因は?
排卵障害の原因は
- 中枢性、排卵障害
- PCOS (多嚢胞性卵巣症候群)
- 高プロラクチン血症
です。
中枢性排卵障害
ストレスやダイエットなどが原因で、排卵に必要なホルモンの分泌が少なくなることにより起こる排卵障害です。
原因となっている状態を治療する必要があります。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
排卵に関係するホルモンのバランスが崩れて、卵巣の中に成熟していない卵胞がたくさんでき、なかなか排卵できない状態をいいます。
高プロラクチン血症
プロラクチンという母乳を作るためのホルモンの数値が高い状態のことをいいます。
プロラクチンの数値が高いと排卵障害が起こってしまいます。
治療法
治療法は
- 内服薬
- 注射
- 漢方薬
があります
内服薬
ホルモン分泌の指令を出す場所である視床下部に働きかけて、排卵が起こるようにする薬です。処方される薬はクロミッド、セキソビットなどです。
注射
内服薬で効果が確認できない場合、直接卵巣に働きかけて排卵を起こす注射薬のゴナドトロピン製剤を使います。自己注射ができるタイプの注射薬です。
漢方薬
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、柴苓湯(さいれいとう)などの漢方薬が処方されることがあります。
漢方薬は効果を感じるまでにかなり長い時間がかかります。病院によっては漢方薬と排卵誘発剤を併用することもあります。
まとめ
目に見えないけど重要な「排卵」は、ホルモンと密接に関係しています。
ホルモンを整えるには、食事や睡眠、日々の生活を整えることが重要となってきます。
排卵時の症状がないからといって、排卵していないわけではありません。
排卵をしているか知りたい時は基礎体温測定、排卵検査薬の使用をおすすめします。
もし排卵をしていないかもしれないと感じたら早めに医療機関に受診しましょう。
参考文献
・日本産婦人科医会-妊娠まで 卵胞発育、卵の成熟、排卵、受精、着床、排卵障害治療法、排卵障害の治療薬