人の染色体の数って何本?ほかの動物は?染色体異常が起きるとどうなる
染色体の数は生物ごとに決まっています。実は染色体数は生物の特徴や進化に重要な役割を果たしています。今記事では、染色体数の基礎的な知識や異常な染色体数の影響、さらには人間や他の生物の染色体数の事例について詳しく解説していきます。
この記事の内容
ヒトの染色体
染色体はすべての生き物が持っている遺伝情報、つまりその生物の設計図のことです。
この設計図をもとに、外見や体質などが決定します。
この染色体は生物ごとに形や数が違い、突然変異が発生しても、人から動物や植物が生まれないのはそもそも染色体が違うからです。
まずはヒトの染色体について考えてみましょう。
染色体とは?人は何本?
染色体とは遺伝情報、つまり遺伝子が保存されている構造物のことで、細胞の核に存在します。同じ人間ならすべての細胞で同じ染色体を共有しています。
人の染色体は23種類が2本ずつ、合計46本の染色体を持っています。これは人であれば等しく23対46本であり、これが崩れると染色体異常となります。
また、染色体が2本ずつある理由は父親と母親から1本ずつ受け継がれるからです。
23対ある染色体は、1~22番まで番号が振られている常染色体と、23番目の性染色体という、性別を決定する遺伝情報を含む染色体に分けられます。
遺伝子と染色体
先ほど染色体には遺伝子が保存されていると言いましたが、遺伝子とは何でしょうか?
遺伝子とはDNAの内、外見や体の構造、体の性質などを決める設計図の部分を指します。
実は、DNAのすべてが遺伝情報だけで構成しているわけではないのです。
人の遺伝子の数は、20,000~23,000個と言われています。
この遺伝子を含むDNAが大量にまとめられて染色体という物質になるのです。
DNAとは?
DNAは遺伝子領域とそれ以外の領域に分けられますが、これらは4種類のヌクレオチドという物質で構成されています。
それぞれ、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という物質です。
また染色体に折りたたまれたDNAをほどいていくと、二重らせん構造になっていることがわかります。
この二重らせんに構造されたヌクレオチドの順番によって、私たちの体質や外見、その他もろもろは決定しているのです。
遺伝とは
遺伝とは親の性質が、子に受け継がれることです。
人間のさまざまな性質は、すべて遺伝情報としてDNAに刻まれています。
そのDNAは染色体にまとまっていて、染色体として子に伝わるということです。
人の染色体は46本なので、23本ずつ母親と父親のそれぞれから引き継ぎます。
例えば、23番目である性染色体では、2対が「X」か「Y」という染色体で構成されています。男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っており、女性はX染色体を2本持っています。
それぞれ、両親から1本ずつ引き継がれるので、このXとYの受け継がれる組み合わせによって、子の性別が決定します。
他の動物の染色体は何本?
人間の染色体の数は全部で46本ということがわかりましたが、他の動物や植物は一体どれくらい違いがあるのでしょうか。
他の動物の染色体数を調べてみました。
他の動物の染色体は何本?
他の動植物の染色体本数は下記の通りです。
種族 | 染色体本数 |
植物 | |
ソラマメ | 12本 |
タマネギ | 16本 |
イネ | 24本 |
ジャガイモ | 48本 |
動物 | |
ネコ | 38本 |
ヒト | 46本 |
ゴリラ | 48本 |
イヌ | 78本 |
表を見ると、染色体の数が生物の構造に関係していないことがわかると思います。
また、人間とゴリラのように近縁種であると染色体の数も近くなります。
染色体異常の病気
このように人間は親から子に染色体を遺伝させていきますが、稀に染色体に何らかの異常が起こる可能性があります。この染色体異常は、常染色体、性染色体に関わらずすべての染色体で起こりうるのです。
染色体異常には大きく分けて2種類あります。
構造異常
構造異常は、染色体の一部に異常が発生します。例えば、染色体の一部が、本来あるべきではない別の染色体と結合してしまう「転座」。
染色体の一部が、失われてしまっている状態を「欠失」。
また、染色体の一部が「重複」してしまう場合や、さまざまな構造異常が存在します。
染色体構造異常の病気
染色体構造異常の病気には、以下のものがあります。
- 猫泣き症候群(5p欠失症候群)
- プラダー・ウィリー症候群
- ウォルフ・ヒルシュホーン症候群 など
構造異常の場合は、その構造異常度は患者さんによって異なります。
例えば同じ欠失症でも、どこまで失われているかで症状や重症度に影響が出ます。
数的異常
数的異常は、本来2対23本の合計46本ある染色体の数に異常が発生します。
例えば、余計に1本多い場合は「トリソミー」、2本多い場合は「テトラソミー」、1本足りない場合は「モノソミー」と呼ばれます
染色体数的異常の病気
染色体数的異常の病気は以下のとおりです。
- 13トリソミー(パトウ症候群)
- 18トリソミー(エドワーズ症候群)
- 21トリソミー(ダウン症) など
数的異常で最も多い病気は、21トリソミー(ダウン症)と呼ばれる病気で、国内に約8万人いると言われています。
染色体異常の原因とは?
これらの染色体異常の原因は、多くの場合では両親の精子もしくは卵子を作るときに起きる減数分裂時に、突然変異が発生したことによるものと言われています。
ただ、一部の染色体構造異常では、両親に症状が出ていないレベルの異常が胎児に引き継がれる場合があり、流産などのリスクになることもあります。
また、女性の年齢が上昇するにつれて、染色体異常の確率も上がるので、不安な方はこの後ご紹介する出生前診断などを検討してみてください。
染色体異常の検査(出生前診断)
染色体異常は、出生前診断と呼ばれるスクリーニング検査で、事前に判明する場合があります。出生前診断には確定検査と非確定的検査の2種類が存在し、どちらもメリットとデメリットがあるので、よく医師と相談した上で実施して下さい。
羊水検査
羊水検査は確定的検査であり、その検査結果によって確定診断を得られます。
胎児の周りを満たしている羊水を採取し、そこに含まれる胎児の細胞から、染色体異常を検索するのです。
細い針をお腹に刺しますが、注射程度の痛みのため、麻酔をしない施設も多くあります。
しかし、最大のデメリットとして、0.1~0.3%ほど流産のリスクが伴います。
絨毛検査
絨毛検査も羊水検査と同様に、確定的検査の一つです。
胎児とお母さんをつなぐ組織の一部である絨毛を検査します。
この絨毛検査も、1%ほどの流産のリスクが伴うため、実施の際は十分にリスクを把握したうえで検討しましょう。
NIPT(新型出生前診断)
NIPTは別名新型出生前診断と呼び、非確定的検査の一つです。
近年、DNA分析器の発達により可能となった検査方法で、非確定的でありながらもダウン症に関しては99%の感度と特異度を誇ります。
また、妊娠10週目から検査可能です。
しかし、あくまで非確定的検査であるため、確定診断はつかないことを十分にご注意ください。
まとめ
染色体とは、遺伝情報を含むDNAのまとまりであり、ヒトは46本の染色体を持っています。染色体の数は生物ごとに決まっていて、この染色体の数や内容によって、人が人であると決定されているのです。
しかし、突然変異などによって染色体に異常が発生した場合、先天性疾患として赤ちゃんに発現します。
不安に感じた方は、NIPTなどの出生前診断をぜひ検討してみてください。
参考文献
農研機構-いちから分かる!「ゲノムの正体を探る」 | バイオステーション
MSDマニュアル-遺伝子と染色体 – 01. 知っておきたい基礎知識 – MSDマニュアル家庭版
MSDマニュアル-染色体異常症と遺伝子疾患の概要
染色体欠失症候群の概要 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版
厚生労働省 – ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します
HRpro – 「障がい者雇用」の給与設定のポイントとは? 雇用促進に活用できる助成金も紹介
日本産科婦人科医会 – NIPT,出生前検査:将来的発展VS 問題点と限界
厚生労働省 – 出生前遺伝学的全国調査