緊急帝王切開になる原因とその流れについて解説!
出産方法は大きく分けて経膣分娩と帝王切開の2つの方法があります。
今回はその帝王切開の中の、緊急帝王切開について解説します。
この記事の内容
緊急帝王切開とは
帝王切開は、予定帝王切開と緊急帝王切開の2つに分けられます。
予定帝王切開とは逆子や多胎児、持病や前回の出産が帝王切開だったなど、経膣分娩での出産にリスクがあるので帝王切開を計画的に行うことです。
対する緊急帝王切開とは、経膣分娩で出産に挑もうとしている最中に母体や胎児側になんらかのトラブルが起こり緊急に分娩方法を帝王切開に切り替えることを指します。
胎児側のトラブル
陣痛や母体には問題はなくても、胎児側に何かしら異常があった場合は状況に応じて緊急帝王切開になる場合があります。
異常回旋
赤ちゃんは出産時に何度か体制を変え、回転しながら骨盤内に進んでいきます。
これを回旋といいます。
この回旋を行う際に赤ちゃんが巨大児だったり、奇形があるとうまくいきません。
また赤ちゃんがお腹の中で、体制を間違ってしまい起こることもあります。
臍帯脱出
臍帯脱出とは破水後、赤ちゃんより先にへその緒である臍帯が降りてきてしまうことです。
臍帯脱出が起きると、赤ちゃんの生命線であるへその緒が圧迫されて、酸素が供給されなくなり致命的な状態になる可能性が高まります。
胎児の命を一刻も早く救うために、緊急帝王切開に切り替えられることがあります。
母体側のトラブル
へその緒で繋がって酸素や栄養をもらっている赤ちゃんは、母体側にトラブルがあった場合、連動するように状態が悪くなってしまいます。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠時に高血圧や尿蛋白が出ることにより、赤ちゃんの発育が悪くなったり胎盤に酸素が行き届かなくなります。
尿蛋白が出るということは、母体側の腎臓の機能が低下することが原因です。
また肝機能障害と血小板の減少が引きおこる病気でHELP症候群というものもあります。こちらは母子ともに死亡リスクがあり、早期の出産を求められることもある危険なものです。
さらに高血圧によるめまいや脳出血、肝臓や腎臓の機能障害を引き起こし、赤ちゃんが死亡してしまったり、母体側も命の危機に陥る場合もあります。
常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離は、正常な位置にあった胎盤が剥がれてしまう状態を指します。
胎盤が剥がれてしまったら、激しい出血や腹痛が起こり赤ちゃんに酸素が行き渡らなくなり母子ともに危険な状況に陥ります。
非常に危険な状況であり、一刻も早く適切な処置が必要です。
分娩中のトラブル
陣痛はあるけど微弱な陣痛しかなかったり、子宮口が開かず長時間お産が進まない時があります。
お産を促す薬を投与しても進まなかったり、長丁場で赤ちゃんの心拍が下がってしまった場合などは、緊急帝王切開に切り替わることがあります。
緊急帝王切開と予定帝王切開の精神面での違い
緊急帝王切開の場合は、心を整える暇がないほどのスピードで手術台に上がることも少なくありません。ですが予定帝王切開の場合は出産の日までに心の整理をすることができます。
予定帝王切開の場合、前もって出産日がわかる
いつ陣痛がくるか分からない、などの悩みはなくお父さんとお母さんの予定を見ながら出産予定日を決めることができます。
第2子以降だと上の子どもの予定なども含め周りがサポートしやすくなり、産後の入院期間も安心できることも多くなります。
予定帝王切開の場合、帝王切開を受けるための準備ができる
どのようなスケジュールで帝王切開に臨むのか、病院側からしっかりとした説明を受けることができ、術後あったら便利なものや必要なものを余裕を持って揃えることができます。
また帝王切開への知識を深める時間を持てたり、経膣分娩では必要のない限度額証明書などを前もって準備できるので安心に繋がります。
予定帝王切開の場合、出産後のメンタル不調を予測し対応ができる
産後の傷跡を見て落ち込んだり、帝王切開での出産について何気ない言葉に傷つくこともあるかもしれません。特に産後は出産方法に関わらず、メンタル面が不調になることも多いです。周囲の方にそのことを伝えることで、自分のメンタル面を優先できる環境を整えることができます。
準備していてもメンタルの不調は必ず訪れます。ですがその不調の時に、産後のホルモンバランスが乱れることを知っているか知らないかでは、自分自身も周りの家族も対応が大きく変わってくるので情報を共有することを心がけましょう。
緊急帝王切開の流れとその後の母体と胎児への影響
緊急帝王切開が必要と判断された時の流れを解説します。
緊急帝王切開までの流れ
緊急帝王切開が必要と判断された場合、医師から本人や家族に帝王切開で出産する旨の説明が行われ承諾を得なければなりません。
本人が承諾できるような状態ではない場合や、その場に家族の方がいない場合は電話で承諾を得てから緊急帝王切開に進みます。
ですが一刻を争う非常に危険な場合は、家族や本人の承諾を待たずに医師の判断で行われることもあります。
緊急帝王切開後の母体と胎児への影響
予定帝王切開の場合は腰椎麻酔によって行われ、お母さんの意識がある中での出産になります。ですが緊急帝王切開の場合、一刻も早く麻酔をかけて胎児を取り上げなければならないときは、全身麻酔を医師が選択する場合があります。
そのため胎盤を通して麻酔が赤ちゃんに届いてしまい、一時的に呼吸が弱くなってしまうことがありますが、薬の効力がなくなれば問題はなくなるので心配することはありません。
なので緊急帝王切開自体は母体や赤ちゃんに直接的な影響はありませんが、胎児側に問題があった場合、その後NICU(新生児集中治療室)などに運ばれたり、母体側にも薬の投与など必要な処置が行われます。
帝王切開後の妊娠は可能
次の妊娠を望めるのか不安になることもあるかもしれません。
帝王切開の場合、3人までは可能としているところもありますが、それ以上可能な場合もあれば、それ以下の場合もあります。子宮の状態を見ながら医師と相談していくことが大切です。
一般的には次の妊娠まで1〜2年ほど空けて、しっかりと子宮の状態を戻してからが安心です。子宮の状態が戻り切らないうちに妊娠してしまった場合、子宮破裂や早産のリスクが高まります。
なぜ次も帝王切開を勧められることが多いのか
前回の出産が帝王切開だった場合、次のお産に求められることはいかに安全に出産を乗り越えるかが重要になってきます。一度子宮にメスを入れたら、子宮破裂のリスクが高まります。子宮破裂をすると母体死亡率は1〜2%、赤ちゃんの死亡率は80%、生存しても後遺症が出る確率が極めて高いです。
そのため子宮破裂のリスクを避けるために次のお産も帝王切開を勧められることが多いです。
経膣分娩は望めないのか
必ず次も帝王切開というわけではありません。帝王切開後の出産に経膣分娩での出産を行うTOLACという方法があります。ですがどの産院でも対応しているわけではありません。また誰でもTOLACで出産できるとも限りません。医師と相談してみることが大切です。
まとめ
緊急帝王切開の原因や流れについて解説しました。母体側や胎児側のトラブルに加え、お産中のトラブルによっても緊急帝王切開に切り替えられることもあります。生死に関わることも多く、一刻を争う状況の中で医師も看護師も、最善を尽くして命を救おうとしてくれます。その場にいる人たちを信じて、命を救う判断をしてください。出産は何が起こるか分かりません。一番大切なことはお母さんと赤ちゃんの安全であり、出産方法は命を助ける手段であることを忘れないでください。
参考文献
・一般社団法人 日本産科麻酔学会ー帝王切開の麻酔 Q&A
・MSDー常位胎盤早期剥離