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猫泣き症候群って何?子供が診断されたら

猫泣き症候群は染色体の異常によって引き起こされる、生まれつきの病気です。

「猫泣き症候群って何?」、「診断されたらどうしたらいいの?」子供が生まれる前にこんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか?

そんな猫泣き症候群の症状や特徴、検査法についてまとめてみました。

珍しい病気だからこそ情報が限られるので、しっかりと理解しましょう。

猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)とは?

先天性疾患のなかでも、猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)はあまり耳なじみがない病気ですよね。クリ・デュ・チャットとは、フランス語で「猫の鳴き声」という意味です。まずは猫泣き症候群がどんな病気なのか、基本的な症状などを確認してみましょう。

猫泣き症候群の症状

猫泣き症候群はその名のとおり、猫のような甲高い鳴き声が特徴の病気です。

身体的には、両目が離れ、丸顔、耳の位置が低い、顎が小さいなどの特徴的な顔が見られます。

また、筋緊張の低下や、嚥下(飲み込む)が上手くできないことなど、それ以外にも多くの場合で、成長障害や発達障害が見られています。

猫泣き症候群の合併症

身体的な症状より頻度は低いですが、臓器にも先天的な合併症を伴うことがあります。

・心疾患・・・心房中隔欠損、心室中隔欠損

・泌尿器疾患・・・馬蹄腎(腎臓奇形)、腎臓の形成障害

・生殖器系疾患・・・停留精巣

・眼科系疾患・・・近視、斜視、乱視など

また、脊柱管狭窄症とてんかんに関しては頻度が高い合併症として知られているので注意が必要です。

発達障害

猫泣き症候群は、ほとんどの人が発達障害や成長障害を伴います。

代表的な例は、運動機能の遅れです。

座る、四つん這い移動(はいはい)、つかまり立ちなどに遅れが生じ、独り歩きが可能となるのは平均で3歳ごろになります。(健康な人の場合生後10か月程度)

他にも精神的な発達障害や、言語障害が現れることも珍しくはなく、家族のサポートとリハビリテーションで、猫泣き症候群患者の生活を支える必要があります。

猫泣き症候群の原因

猫泣き症候群の原因は、先天的な染色体異常です。

通常ヒトの遺伝子は46本の染色体で構成されており、父親から受け継ぐものと母親から受け継ぐものがペアとなって2本ずつが23対存在しています。23対のうち22対は常染色体と呼ばれ、1番から22番までの番号がついています。

残る1対は性染色体と呼ばれ、X染色体とY染色体の組み合わせで性別が決定します。

1本の染色体はさらに細かい部分に分けることができ、中心にセントロメアがあり、それを挟んで短腕と長腕に分かれます。短腕のことを「p」と呼び、長腕のことを「q」と呼びます。(例えば5番染色体の場合、短腕を5p、長腕を5qと呼びます。)

クリ・デュ・チャット症候群では、5番染色体の短腕が部分的に欠失することで発症するため、「5p欠失症候群」や「5p-症候群」とも呼ばれます。

猫泣き症候群が生じる確率

猫泣き症候群が生じる確率は15,000〜50,000人に1人と推定されます。

また、精神的な発達障害を持っている方の350人に1人が、この猫泣き症候群だといわれています。

猫泣き症候群の治療

残念ながら猫泣き症候群の根本的な治療はないため、患者さんごとによる合併症や、発達障害に対する対症療法を行っていくこととなります。

患者さんの成長と共に、注意すべき合併症が変化するため、それに応じた治療が必要となります。

特に注意が必要な症状としては、心疾患合併症、脊柱管狭窄症、てんかんなどが挙げられます。

猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)の検査方法は?

では猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)はどのように診断されるのでしょうか。猫泣き症候群は、合併症の有無によりその後の生活や予後に大きく影響します。迅速な診断が重要となるので参考にしてください。

生後の検査

猫泣き症候群では、生後、身体的な特徴や甲高い鳴き声などから疑いがもたれ、染色体検査により診断が確定されます。

染色体検査には、G-banding法(ギムザ法)、FISH法、マイクロアレイ法があります。

いずれも、採血のみで検査可能です。

G-banding法

G-banding法(ギムザ法)は、白血球などをギムザ液と呼ばれる染色液で染めることで、染色体が直接染色されます。

これをデータ解析することで、染色体の数的異常や構造異常を検査する方法です。

FISH法

G-banding法で判定できなかった場合、FISH法が行われます。
FISH法は、染色体の特定の領域に対して反応・結合するプローブを用いることで、特定の染色体異常がわかる方法です。

例えば猫泣き症候群の場合は、5番染色体に欠失が生じているので、欠失部分に特異的なプローブを用いて反応の有無を検査します。

また、他にも原理はFISH法と同じですが、より詳細に解析ができるマイクロアレイ法などもあります。

NIPT(出生前診断)

また、最近ではNIPT(新型出生前診断)により、赤ちゃんが生まれる前に猫泣き症候群のスクリーニング検査が出来るようになっています。

NIPTは母親の血液検体で、詳細に赤ちゃんの遺伝子や染色体による先天的疾患を検査できる方法です。

妊娠10週目という、早い時期から検査することができます。

ただし、NIPTは非確定的検査であり、その検査結果により確定診断が出来るわけではないので、十分に医師と相談した上で検査を行いましょう。

猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)と診断されたら

実際に自分の子どもが、猫泣き症候群と診断されたらどうしたらいいのでしょうか。猫泣き症候群患者の寿命や、社会生活についてまとめてみました。

猫泣き症候群患者の予後、寿命は?

猫泣き症候群の患者さんは、合併症に重度の臓器疾患がなければ寿命に大きな影響はありません。

約10%ほどで生後早期死亡があると報告されていますが、生後数年を過ぎれば、死亡率は減少します。

最近の医療の発達により、60代まで生きることも珍しくなくなりました。
成人後に予後に影響する因子としては、心疾患と難治性てんかんなどが挙げられます。

猫泣き症候群患者の日常生活

猫泣き症候群の多くの場合で問題となる、合併症や発達障害のために、定期的な検査とリハビリ療養が必要となります。

特に子どもの成長に合わせて相談できる病院があれば安心できます。

社会生活としては、特別支援学級に通うことが多いですが、普通クラスに通う人も中にはいます。教育機関卒業後は、作業所で働く人、介護施設へ入所する人など様々です。

猫泣き症候群の症状や、発達障害の度合いは個人差が大きいため、それぞれにあった選択肢を選んでいく流れとなります。

猫泣き症候群患者への社会的支援は?

猫泣き症候群は特定難病に指定されており、また小児慢性特定疾病でもあるので、医療費助成などを受けることができます。

カモミールの会(5p-症候群の子を持つ家族の会)という支援団体もあります。
猫泣き症候群と診断されてから、不安に思うようなことを中心に発信されているので、一度見てみるのもいいかもしれません。

カモミールの会

まとめ

猫泣き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)は、5番染色体の一部に異常が発生することにより発生する先天性疾患です。身体的な特徴に加えて、合併症や発達障害が見られ、患者さん一人ひとりに合った治療が重要になります。

予後は比較的良好で、重度の臓器疾患がなければ成人まで生きる方も多くいます。

NIPT(新型出生前診断)によって、赤ちゃんが生まれる前に検査を行うことも出来るので、不安を感じている方は医師にご相談してみてください。