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18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因と妊娠中の胎児の特徴について解説

世の中にはさまざまな染色体異常がありますが、なかでも有名なものに21トリソミーのダウン症などがあります。

しかし染色体異常による疾患はダウン症だけではありません。

今回はダウン症と同じ染色体異常である、18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因と、妊娠中の胎児の特徴について解説します。

18トリソミーの原因

18トリソミーは1960年代に、イギリスのジョン・H・エドワーズらによって発見されたことにちなみ、エドワーズ症候群とも呼ばれています。

本来、18番目の染色体は2本1対ですが、中にはこの染色体に異常が生じ、3本となっている場合があります。

この18番目の染色体に関わる染色体異常は、3500人から8500人に1人の割合で生じると言われています。

なぜこのような染色体異常が発生するのか解説していきます。

染色体とは

染色体は細胞の核の中に23組あり、1組が2本ずつのペアになっています。

つまり23対46本の染色体が正常な組み合わせです。

染色体不分離

ヒトの細胞分裂には体細胞分裂と減数分裂があります。

体細胞分裂は、染色体が2倍に増えて2つに分裂するので細胞の核の中に含まれる染色体の数は46本であり、この数に変化はありません。

もう1つの減数分裂は精子と卵子といった生殖細胞ができる途中に起こる特殊な細胞分裂になります。

2対の染色体のどちらか1本が男性だったら精子に、女性だったら卵子に入ります。そうすると精子には23本の染色体、卵子にも23本の染色体を持つことになります。

これらの精子と卵子が出会い受精することにより、染色体が46本になるというものです。

このようにして子どもは父親と母親から1本ずつ染色体を引き継ぐことになります。

この減数分裂の時になんらかの原因があり、18番目の染色体が2本とも精子や卵子に入ってしまうと、出来上がった受精卵に18番目の染色体が3本あるという現象が起きてしまいます。

このことを染色体不分離といい、18トリソミーの約80%は染色体不分離が原因とされています。

そしてこれは突然変異であり、両親の遺伝子に何か問題があったというわけではありません。

転座型

18番目の染色体が別の染色体にくっついている場合、18トリソミーの子どもが生まれてくる可能性があります。

両親は転座型遺伝子をもっていても影響がなく、保因していたことになります。

よってこの転座型は遺伝するということになり、18トリソミー全体の約10%は転座型が原因と言われています。

モザイク型

受精卵の細胞分裂時に、染色体不分離を起こしてしまうことで18番染色体が3本になってしまうタイプはモザイク型と呼ばれています。

このモザイク型は全体の約10%の割合で、染色体不分離と同じく突然変異によって起こるものとされています。

またこのモザイク型は、染色体不分離や転座型よりも症状が軽いことも特徴です。

18トリソミーと疑われる胎児の特徴

18トリソミーは流産になってしまうことも多く、出生まで至っても多くの場合は1週間前後で亡くなってしまいます。

では18トリソミーの疑いがある胎児には、どのような特徴があるのか説明します。

胎動が微弱

18トリソミーの赤ちゃんは、子宮内ではあまり活発的に動かない傾向にあります。

さらに胎動をあまり感じなかったり、感じても微弱なこともあるのです。

エコーで見える身体的特徴

18トリソミーの胎児には妊娠検査時のエコーでわかる身体的特徴があります。

後頭部の突出や心奇形など、18トリソミーだとわかる特徴は多岐にわたります。

これらの特徴は妊婦検診のエコーや胎児ドックで発見されることもあり、こういった形態異常が確認された場合、より確定的な診断を下すために確定診断が行われます。

羊水過多

羊水過多とは羊水が過剰にあることを指します。

これは18トリソミーの胎児の筋力があまり発達せずに羊水を飲み込む力が弱いためとされています。

羊水は肺の機能を発達させたり、お腹の中で赤ちゃんを守ったりと大切な役割をもっています。

そんな羊水が多くなると、赤ちゃんが逆子や横向きになってしまったり、早産や前期破水に繋がりやすくなってしまいます。

破水してしまった場合には、臍帯脱出(赤ちゃんよりも先に臍の緒が出てしまい、臍の緒を圧迫して赤ちゃんに酸素がいかなくなってしまうこと)を引き起こし、リスクの高いお産になることが考えられます。

単一臍帯動脈

臍帯動脈は臍の緒の中を通っている欠陥です。

この血管は本来2本ありますが、この単一臍動脈は1本しかない状態です。

染色体異常を疑う項目の1つに挙げられています。

先天的疾患や合併症

心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管狭窄などの心疾患は18トリソミー患者の9割が発症しています。

これらの先天性心疾患により、心臓に負担がかかってしまうと、うっ血性心不全や肺高血圧が早い段階で進行し、生命予後に大きく関係してきます。

また肺や呼吸器系、耳や泌尿器系の先天性疾患も多く見られることも特徴の1つです。

これらの症状が見られたら、出生前診断を受けるように勧められることが多いでしょう。

この検査は胎児へのリスクはなく、妊娠10週から受けることができ、精度も高いものとなっています。

18トリソミーの出生率と予後

染色体異常を持つ赤ちゃんは流産や死産になってしまう確率が高くなります。

では18トリソミーの場合はどうなのか見ていきましょう。

18トリソミーの流産率と出生率

18トリソミーは約95%が流産となり、無事に出生となるのは約5%とみられています。

また性別は1:3の割合で女の子が多い染色体異常です。

出生してからの予後

全体の5%程度が無事に産まれてきても、そのうちの約50%は生後2か月までに亡くなってしまうため、1年後の生存確率は約13%とされています。

18トリソミーの場合は心臓に疾患を抱えていることも多く、低体重で生まれてくることが多いことも関係していると言えるでしょう。

近年は生存率が少しずつ伸びている

医学が発展してきた近年では、外科手術を含めた新生児集中治療を行った場合の1か月生存率が約83%、​​1年以上の生存率が約25%と少しずつ生存率が伸びてきています。

しかし、生まれ持った疾患や合併症は変化していくため、症状が出たらすぐに処置を行っていかなければなりません。

さらに18トリソミーは悪性腫瘍のリスクもあるため、半年ごとの腫瘍チェックを含む定期健康管理を行う必要があります。

まとめ

18トリソミーは、染色体異常のために無事に産まれることすら難しい難病です。

明確な治療方法はなく、合併症の危険性もありますが、近年では徐々に1年以上の生存率が伸びつつあります。

もしご自身の赤ちゃんに18トリソミーの疑いがあったとしても、悲嘆に暮れるのではなく、きちんと向き合うことが大切です。