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ダウン症候群の平均寿命とは?ダウン症の子育てや向き合い方

皆さまの中には「ダウン症候群って予後はどうなんだろう?」「ダウン症候群の寿命は今後伸びる可能性はあるの?」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。そこで、今回は、そんな疑問を持つ方のために、ダウン症の平均寿命を過去の平均寿命と比較して解説します。

ただでさえ妊娠・出産は命懸けで不安がつきものです。赤ちゃんが障害を持っているとなれば、より不安を感じることもあるでしょう。今後平均寿命が伸びる可能性やダウン症候群の方が受けられる支援についても分かりやすくまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

ダウン症候群とは

ダウン症候群の主な症状や割合を解説いたします。

ダウン症候群とは

通常2本である21番目の染色体が3本になることで起こる染色体異常症の一つです。そのため、またの名を21トリソミーといいますが、ダウン症と略称で呼ぶことが多いです。標準型・転座型・モザイク型の3種類があり、ほとんどが標準型です。

ダウン症候群の原因

ダウン症候群の原因は、ダウン症候群の種類によって異なります。最も発生率の多い標準型は、突然変異で起こるもので、減数分裂の際に21番目の染色体対が分離されなかったことが原因です。

転座型は、21番目の染色体が他の染色体に付着することで起こります。転座型の約半数は、両親のどちらかが均衡型転座を持っています。

最も発生率の低いモザイク型は、受精後の卵分裂の過程で分離されなかったことが原因で起こります。

ダウン症候群の割合

ダウン症候群の割合と出生年齢との関係性を解説いたします。

ダウン症候群の割合

染色体異常の中でも最も発生率が高く、600〜800人に1人の割合で生まれます。

出生年齢とダウン症候群の関係性

出生時のお母さんの年齢とダウン症候群が生まれる割合は、以下のとおりです。

お母さんの年齢ダウン症候群の子が生まれる割合
250.8%
301.1%
352.6%
409.4%
4533.3%

ダウン症候群の特徴

ダウン症候群の見た目や発達の特徴、合併症を解説いたします。

ダウン症候群の見た目の特徴

ダウン症候群の身体的な特徴は、以下のとおりです。

  • 吊り目
  • 鼻が低い
  • 顔が平たい
  • 筋緊張が低く、口が開きがち
  • 首の後ろに皮膚が余っている
  • 舌が大きい

ダウン症候群の発達の特徴

ダウン症候群の発達の特徴は、以下のとおりです。

  • 知的障害
  • 運動の遅れ
  • 言語の遅れ
  • 物事を理解するスピードが遅い
  • 話しても聞き取りにくい
  • 自閉症

ダウン症候群の代表的な合併症

ダウン症候群の代表的な合併症は、以下のとおりです。

  • 白内障
  • 斜視
  • 甲状腺機能障害
  • 排尿機能障害
  • 難聴
  • 心室中隔欠損
  • 心内膜欠損
  • 動脈管開存
  • 食道閉鎖
  • 鎖肛
  • 十二指腸閉鎖

この中でも、心臓疾患はダウン症候群児の40〜50%に見られます。次に発症率の高い合併症は、食道や腸の異常です。ただし、合併症がない場合やこの他にも合併症が引き起こされる可能性があり、個人差があります。

ダウン症候群の寿命

ダウン症の平均寿命について解説いたします。

ダウン症候群の平均寿命

ダウン症候群の現在の平均寿命は、60歳です。

1900年のダウン症候群の平均寿命は、5歳以下でした。しかし、徐々に平均寿命は上がっていき、1930〜1970年ごろには平均寿命は約10歳にまで引き上げられました。1970年から飛躍的に平均寿命が伸び続け、2000年には平均寿命が50歳を上回り、現在では60歳にまで上がりました。

ダウン症候群の平均寿命が伸びている理由

命に関わる合併症が多い中で、合併症の治療の成績が向上しているからです。特に心室中隔欠損、心内膜欠損などの先天性心疾患や食道閉鎖などの先天性消化器疾患などの治療成果が見られます。

平均寿命は伸びている傾向にあるため、医療の発展とともに、今後もさらに平均寿命が高くなる可能性があるでしょう。

ダウン症候群の子育てについて

ダウン症候群児のいる、生まれる両親は、費用面においても向き合い方についても悩むことがあるでしょう。そこで、ダウン症候群の子育てで費用となる費用や向き合い方をご紹介いたします。

ダウン症候群の子育てに必要な費用とは?

幼児期にかかる費用は、一般的な子育ての費用のほかに、療育費があります。療育費用は通院と同様の扱いとなるため、無料で通える方がほとんどですが、対象から外れると毎月お金がかかります。

また、通院は多くとも医療費はかかりませんが、そこまでの交通費が毎月かかるとなると、負担に感じる方もいるかもしれません。入院となると、自己負担になることもあります。

しかし、さまざまな福祉支援が受けられるため、入院や手術が頻繁になければ、それほど経済面の負担を感じることはないでしょう。

ダウン症候群の子供との向き合い方

簡単な言葉や表現で、分かりやすいように伝えてあげることが大切です。視覚的な情報の方が分かりやすいため、絵や図形で説明してあげると良いでしょう。

また、自信を損なわないようにすることも大切なポイントです。個性を受け入れ、こだわりを否定したり、何でも手を貸すのはやめましょう。何でも手伝ってあげたくなる気持ちは分かりますが、1人でできたという達成感を覚えさせることが大切です。手伝うのは頼まれた時だけにし、ゆっくりと見守りましょう。そうすれば、その子のペースでゆっくりとできるようになっていきます。

ダウン症候群が受けられる支援

ダウン症候群は、合併症が多く、通院や治療が必要となる機会が多くあります。そのため、経済面で苦労するという方が多いでしょう。そこで、ダウン症候群児を持つ家族が受けられる支援をご紹介いたします。

特別児童扶養手当

福祉増進のために、特別児童扶養手当制度があります。1級と2級に分かれており、1級は53,700円、2級は35,7600円となっています。20歳未満まで受け取れますが、両親の所得によっては、受け取れないこともあります。

支給対象となる場合は、お住まいの市町村の窓口で申請できます。自治体から案内はないいため、ご自分で申請を忘れないようにしましょう。

障害児福祉手当

福祉向上のために、障害児福祉手当制度があります。支給額は15,220円で、20歳未満までが受け取れます。ただし、特別児童扶養手当と同様に、両親の所得によっては受け取れません。支給対象となる場合は、お住まいの市町村の窓口で申請できます。特別児童扶養手当と同様に、自治体から案内はないため、ご自分で申請してください。

小児慢性疾患医療助成制度

患者さんの家庭の負担を軽減するため、小児慢性疾患医療助成制度があります。 お住まいの地域により、助成が受けられる施設は決まっています。事前に指定された病院、診療所、調剤薬局などを調べてから受診しましょう。指定の施設以外は、助成対象となりませんので、ご注意ください。

まとめ

ダウン症候群は全体的な発達の遅れを感じるとともに、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。合併症の治療は医療の進化とともに成績を上げており、1900年には5歳以下であった平均寿命が、現在では60歳まで上がりました。今後も医療の進化とともに、平均寿命は上がっていくと予想されています。

また、ダウン症候群児を持つ家庭は、費用面の負担や向き合い方について悩む機会が多いかと思いますが、さまざまな福祉支援が受けられます。ただし、自分から申請しないと受け取れないため、手続きには気をつけましょう。