/ 妊娠にまつわる疑問/

子宮外妊娠ってなに?原因、症状から治療法まで解説

妊娠は目に見えないため、さまざまな不安を感じるでしょう。

とくに出血したりお腹の痛みがあったりすると、「赤ちゃんは大丈夫か?」「流産したんじゃないか?」など不安に思う方も少なくないはずです。

妊娠初期に不安を感じるものの一つに「子宮外妊娠」があげられるのではないでしょうか。

きちんと着床しているのか、と不安な時間を過ごしている方もいるかもしれません。

これから子宮外妊娠とはなにかを解説します。疑問を解消して、不安が少ない妊娠生活を送れるようお手伝いをしていきたいと思っています。

子宮外妊娠とは?

子宮外妊娠とは、赤ちゃんを育てる場所である子宮以外の場所に受精卵が着床した状態です。

しかし子宮の中であっても、子宮内膜以外に着床してしまうことがあります。これらをすべて「異所性妊娠」といい、100人に2人の確率で発生するといわれています。

子宮には成長していく赤ちゃんを守る機能、空間がありますが、子宮以外の場所にそれらはありません。そのため赤ちゃんが子宮以外で育つことは難しく、妊娠を続けていくことはできません。

また細い管である卵管に着床した場合、胎芽が大きくなることで卵管破裂を引き起こすことも少なくありません。破裂が起こることで激しい腹痛や出血がみられ、母体の危険が伴うリスクも高くなります。そのため子宮外妊娠の早期発見は重要といえるでしょう。

着床する場所
正常妊娠子宮内膜
子宮外妊娠子宮以外の場所で、ほとんどは卵管に着床
異所性妊娠子宮内:子宮角、子宮頚部子宮外帝王切開後の傷

子宮外妊娠の原因、症状はなに?

原因は何なのでしょうか?症状についても解説します。

原因

原因として、受精卵が卵管を通る時のトラブルが一番多いといわれています。

代表的な原因を下で説明していきます。

性感染症

性感染症にかかると卵管炎を起こし、その部分が狭くなったり、詰まったりしてしまいます。受精卵が通る時に、この部分で止まってしまい子宮までたどり着けません。

子宮内膜症

子宮内膜症になると、骨盤内が癒着(ゆちゃく)してしまうといわれています。

癒着とは、臓器同士がくっついてしまう状態のことです。その影響から卵管が狭くなってしまうことがあります。

体外受精

体外受精では、採卵時の手技や卵を戻すタイミングなど、さまざまな影響から受精卵が卵管に戻ってしまったり、着床不全を起こしたりすることもあります。

過去に異所性妊娠をしている

異所性妊娠をしていない人の発生率は1~2%なのに対し、経験している人の再発率は10~25%と高くなっています。

上にあげた原因の他にも

  • お腹の手術を受けたことがある人
  • 喫煙
  • 高齢出産

などがあげられます。

症状

症状にはつわり、少量の出血やお腹・腰の痛みがあります。これらは子宮外妊娠でなくても起こるため、症状だけをみて子宮外妊娠と診断するのは難しいといわれています。

なかには破裂をするまでまったく症状がない方もいます。生理不順で妊娠に気づかない場合や、不正出血だと思い妊娠を疑っていない方もいるため注意が必要です。

着床した部分が破裂してしまうと、大きな痛みを感じるとともにお腹の中で大量出血し、ショック状態になる可能性もあります。この状態は命の危険があるため、早急な処置が必要です。早期に発見し、破裂前に治療をした場合、命の危険が回避されることがほとんどです。

このような状態にならないためにも「妊娠をしたかもしれない」と気づいたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

子宮外妊娠の検査方法

子宮外妊娠には独自の症状がないため、気がつかないまま危険な状態になってしまうことがあります。そのため妊娠の可能性を感じたらすぐに検査をしましょう。子宮外妊娠の早期発見には、一般的な妊娠検査で正しい妊娠週数を知り、エコー検査やhCG検査をすることが必要とされています。

妊娠検査薬

薬局で購入することができる市販の妊娠検査薬。陰性、陽性の反応は分かりますが、着床している場所までは分かりません。

陽性が確認出来た場合には正常妊娠かを診断をするために医療機関への受診が必要です。

hCG検査

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、妊娠初期から確認できるホルモンです。子宮外妊娠をしていた場合、hCGの値が正常妊娠と比べて少なく、数値の上がり方も緩いといわれています。

この検査だけで子宮外妊娠と診断はせず、エコー検査と合わせて診断していきます。

エコー検査(超音波検査)

妊娠5週目以降もエコーで胎嚢が確認できないと、子宮外妊娠の可能性が高いとされています。流産においても胎嚢が見えない場合があるため、判別が必要です。

この検査だけで子宮外妊娠と診断をすることはなく、hCG検査と合わせて診断していきます。

子宮外妊娠の治療法

検査で子宮外妊娠していることが分かったら、破裂を回避するために早めの治療が必要となります。

治療方法は2種類あります。

手術による治療

卵管に着床した場合、子宮外妊娠している部分のみを取り除く手術をおこないます。これは今後妊娠の可能性を残すため、取り除く範囲を最小限にするためです。手術は腹腔鏡手術と呼ばれる、小さい傷が数か所で済み、体への負担が少ない方法を選択します。

しかし状態によっては、子宮や他の臓器を摘出することや、お腹を大きく切る開腹手術になることもあります。

薬物療法

破裂していない、全身状態がよいなどの条件がそろった場合、薬による治療が行われることもあります。

薬はメトトレキサートという抗がん剤で、投与することで妊娠組織を消滅させます。投与している期間は吐き気、脱毛、白血球・血小板の減少などの副作用があります。また保険適用外の治療となるため、金銭的な負担についても考えなければいけません。

子宮外妊娠についてよくある質問

ここからは子宮外妊娠についてよくある質問を紹介します。

妊娠継続は可能なの?

子宮以外の場所では赤ちゃんを育てる機能、場所がないため妊娠を継続することはできません。

「子宮外妊娠」と「早期流産」の違いとは?

「子宮外妊娠」はエコー検査で子宮内に胎嚢が見えない状態です。

「早期流産」は、胎嚢は見えているけれど赤ちゃんの心臓が動いていない、または大きくなっていない状態をいいます。

「子宮外妊娠」を放置するとどうなるの?

着床した部分が破裂してしまう危険があります。破裂をすると激しい腹痛や大量出血を起こし母体の命が危険となる可能性があるため、絶対に放置はしないでください。

再発リスクはあるの?

再発率は10~25%といわれています。子宮外妊娠をしたことがある人は、妊娠が判明したら早めに医療機関を受診しましょう。

予防はできる?

予防することは難しいです。しかし検査によって診断、治療をすることで予後は良好です。

まとめ

ここまで子宮外妊娠についてお話してきました。

子宮外妊娠は、予防することや自分で危険に気づくことが難しいため、もしかしたら不安が強くなってしまった人もいるかもしれません。

ですが、子宮外妊娠は早期に発見することで命の危険を回避できます。

既往やリスクがある方は、医療機関を受診し自身の状況を伝え情報共有していきましょう。

参考文献

MSD-異所性妊娠

社会福祉法人恩賜財団済生会ー異所性妊娠(子宮外妊娠)