/ 胎児の染色体異常/

ターナー症候群の寿命は?普通に生活できるの?

ターナー症候群とは、染色体の異常によって引き起こされる病気の一つで、一般的には女性の特徴的な身体的特徴や生殖能力に影響を与えます。しかしながら、ほとんどのターナー症候群患者は、寿命に影響はありません。

それだけではなく、社会生活に影響なく暮らしている方も多くいます。今回は、ターナー症候群と診断された方またはそのご家族の方向けに、特徴や原因に加えて、適切なケアの重要性、社会的なサポートについても詳しく紹介していきます。

ターナー症候群の寿命は健康な方と変わらない

冒頭でも説明した通り、ターナー症候群患者の寿命は、健康な方と変わりません。

ターナー症候群は、同じ染色体異常の病気の中でも症状が軽度な疾患のためです。

ターナー症候群の代表的な臨床症状は、二次性徴の遅れ、または無発生です。

ターナー症候群とは?

ターナー症候群は、人の性別を決定する性染色体の異常であり、一般的にはX染色体の一部または全部が欠けている状態です。そのため、ターナー症候群は女性にしか起こりません。

この病気は、二次性徴の無発生や特定の身体的特徴を引き起こすことが特徴です。

外見的な特徴は?

ターナー症候群患者の外見的特徴としては、低身長(成人時でも140cm程度)や成長の遅れ、首の部分に特徴的な皮膚のたるみなど(翼状頸)が挙げられます。

ターナー症候群患者は自然妊娠率が極めて低い

ターナー症候群では、90%以上で卵巣が結合織に置き換わっているため、卵子の発育が発生しません。そのため、通常の方法で自然に妊娠することが困難な場合がほとんどです。

しかし、近年の医療の進歩により、不妊治療や代理母を利用するなどの方法を通じて出産することも可能です。

注意すべき合併症

ターナー症候群で注意すべき合併症は次のとおりです。

  • 脊柱管狭窄症
  • 大動脈狭窄症(心臓病)
  • 糖尿病

など

ターナー症候群において、合併症のリスクはあまり高いものではありませんが、定期的な検査などの一定の注意は必要です。

知的障害を合併することはがみられることは少ない

ターナー症候群の方における知的障害はまれとされています。

多動や注意欠如、学習障害などは見られることが多いですが、時間をかけて学ぶことで解決できると言われています。

ターナー症候群の治療法~健康でいるためには~

ターナー症候群によって寿命に影響する可能性は低いことがわかりましたが、治療法や対症療法などはあるのでしょうか。

先ほどもお伝えした通り、ターナー症候群患者は、目立った合併症がなくても定期検査を行うことは重要です。

ターナー症候群患者の治療法についてまとめてみました。

根本治療はなく、対症療法を行う

残念ながら、ターナー症候群の治療には、根本的な治療法は存在せず、主に対症療法が行われます。これは、ターナー症候群の原因である染色体異常の修復が現代医学では不可能だからです。

代表的な対症療法としては、成長ホルモン療法と、女性ホルモン療法があります。

成長ホルモン療法

ターナー症候群の代表的な症状である、低身長を改善するために行われます。

成長ホルモン療法をすることで、成人時の平均身長は145cm以上になります(非治療時の平均身長は138cm前後です)。

ある程度の結果が得られたら投薬は終了します。

女性ホルモン(エストロゲン)療法

女性ホルモン(エストロゲン)療法は、第二次性徴の発育を促すために行われます。

10~14歳ごろから、エストロゲンと他の女性ホルモンであるプロゲスチンを含む経口避妊薬の投薬が開始されます。

第二次性徴への影響だけでなく、ターナー症候群に多いとされる注意力、空間把握能力などの欠如にも改善効果が期待されます。

多くの場合は、思春期以降で正常の女性と同様に、月に一回の月経がくるようになります。

定期検査が重要

ターナー症候群患者は、定期的な検査が重要です。定期的な身体のチェックや血液検査により、合併症や健康状態のモニタリングを行います。これにより、早期に合併症や成長に伴う新たな問題を発見し、適切な治療やケアを受けることができます。

ターナー女性の多くは、不自由なく暮らせる

ターナー症候群患者の多くの方は、目立った合併症もないため、健康な方と変わらず社会生活を過ごしています。

また、ターナー症候群患者とその家族によるコミュニティが多く存在しているので、自身の子どもやこれからの生活に不安な方は是非参考にしてください。

ターナー症患者の声

ターナー症候群の女性たちは、多くが健康な生活を送っています。実際の患者の声からも、ターナー女性が不自由なく暮らせることがわかります。

引用:

『理解をして貰うためのアクション』 / 小2のお子さんのお母さんより

本人以外にターナーであることを打ち明けるか否か考えました。
賛否両論あると思いますが、娘の学校は環境的にも先生方についても恵まれており、私の話せる範囲で伝えました。

ただ、理解を求めるだけではなく、今後の私たちの経験が少しでも何かの役に立てばという思いも込めて話し、誰にでも話したい内容ではないだけに、信頼できる人にだけ話しています。
受け身の立場も考えました。
でも、皆こう言ってくれました。「辛いのによく話してくれたね。話を聞いても今迄と何も変わらない。」
と説明も容易でなく、相性等もありますよね。

成人したご本人より

私がターナー女性だと知って1番気になってしまった事はやはり子供の事でした。子供が好きだった私にとっては、やはり大きな事実でした。しかし、マイナスな部分ばかりにとらわれていてもつらくなってしまうと思うので、前向きに考えるようにしています。ターナーではなくても、子供のいない家庭は多くありますし、その分自由に過ごせる時間も持てます 。子育ては出来なくても、何か他の事で役にたてる事があるとも思っています。仕事は看護師ですが、やはり不器用な事やテキパキとこなすことが出来ず苦労もあります。でも、なるべくゆったりとしたペースで出来るところで頑張っています。

ひまわりの会より

ターナー症候群のコミュニティ

ターナー症候群の女性たちは、支援を求める場としてさまざまなコミュニティに参加しています。その中でも、「ひまわりの会」と「ターナー女性と家族の会」が代表的です。これらのコミュニティは、情報交換や相互支援の場となっており、ターナー女性の生活をサポートしています。

ひまわりの会

「ひまわりの会」は、主に関西在住のターナー症候群の女性とそのご家族のグループです。情報交換や交流を行い、ターナー症候群に関する疑問や不安を解消できるような活動をしています。

定期的なイベントやワークショップも開催しています。

ひまわりの会

その他のターナー女性と家族の会

ターナー女性と家族の会は、全国的にさまざまなコミュニティを築いています。

Club-Turner」では全国のターナー女性と家族の会をまとめています。

先ほどのひまわりの会もその一つです。

自分が住んでいる地域のコミュニティがどんな活動をしているのか、ターナー症候群患者の経験やつながりなどを見ることができるので、不安の解消につながるでしょう。

確率は低いが妊娠できることも

ターナー症候群の女性は、自然妊娠する確率が低いとされていますが、全く不可能ではありません。ターナー症候群患者の中でも、モザイク型と呼ばれる正常の染色体をもった細胞と、染色体異常を持った細胞が混在している症例に関しては、比較的自然妊娠の可能性が高いと言われています。

また、非モザイク型の場合でも、一部のターナー女性は、卵子提供や生殖補助医療などの医療のサポートを受けながら妊娠・出産を経験しています。ただし、専門医の指導のもとで慎重に計画することが重要です。

まとめ

ターナー症候群患者は多くの場合寿命に影響は与えず、健康に過ごしている方が一般的です。しかし、大動脈狭窄症などの注意すべき合併症は、いくつかあるため定期検査が重要となります。

全国的にさまざまなコミュニティが存在しており、ターナー症候群に関して不安を抱えている方でも悩みの相談や、実際の体験談を知ることができます。

もし、自身の子どもやがターナー症候群だと診断された場合は、不安を抱え込まず、誰かに相談するのがいいでしょう。

また、生まれる前の不安の解消のために、出生前診断などの検討をしてみるのもいいかもしれませんね。