21トリソミー(ダウン症)の平均寿命は?一人で生きていける?
21トリソミーは一般的にはダウン症として知られています。両親の中には「21トリソミー(ダウン症)の人の寿命はどれくらい?」「健康に暮らせるの?」という不安を感じる人もいますよね。実は、ダウン症は人によっては適切な医療と支援を受けることで生涯を豊かに過ごすことができる可能性もあるのです。今回は、21トリソミーの特徴や原因、寿命に関する情報に加えて、成人になってからの生活についても詳しく紹介していきます。
この記事の内容
21トリソミー(ダウン症)の平均寿命は?
現在の21トリソミー(ダウン症)患者の平均寿命は約60歳です。
2021年の日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳なので差があまり感じられなくなってきているといえます。
ダウン症はその外見も特徴的ですが、多くの合併症を引き起こすため、それぞれの合併症の対症療法を続けていく必要があります。
特に心臓疾患の重症度が、その後の寿命に強く影響します。
ダウン症とは?
ダウン症は、染色体異常が原因で起こる先天性疾患の一つです。
人の染色体は23対あり、それそれが対になって46本で構成されています。その中で44本は常染色体、残りの2本は父親と母親から1本ずつ引き継ぐため全部で計46本になります。
この染色体の21番が突然変異により3本になることで、ダウン症は引き起こされます。そのため、ダウン症は21トリソミーとも呼ばれます。
ダウン症は身体的な特徴や知的な発達に異常が現れることが多く、さまざまな合併症を引き起こします。
ダウン症の寿命は延びてる?
近年の医療の進歩により、ダウン症の患者の平均寿命は延びています。以前は、ダウン症の方の平均寿命は40歳前後とされていましたが、現在では60歳以上となることも多くなりました。この要因としては、早期の診断や治療方法の改善、特に予後に大きく影響していた心臓疾患の治療技術の向上があります。
しかし、ダウン症では10歳までに亡くなってしまう場合も少なからずあります。
予後に影響する合併症の早期の診断と、早期の治療開始がとても重要となるのです。
ダウン症の治療、ダウン症はよくなる?
ダウン症自体は現時点では完全に治療可能な方法はありません。
患者ごとのさまざまな合併症の治療、また定期的な検査を続ける必要があります。
しかし、適切な治療やサポートを受けることで、ダウン症の方の生活の質を向上させることができます。
具体的な治療方法としては、早期の合併症の診断及び治療、リハビリ技師による言語療法やコミュニケーションの訓練、ダウン症の症状の一つである筋力低下を克服するための理学療法などです。
これらの治療が、個々の症状や状況に合わせて行われることで、ダウン症患者の社会的自立も可能となっています。
21トリソミー(ダウン症)と生きていくには
もし自分の胎児が21トリソミー(ダウン症)と診断された場合、さまざまな不安が押し寄せると思います。
しかし、ダウン症は注意すべき病気に気を付けながら、定期的な検査をすることで、不自由なく暮らしている人も多くいます。
ダウン症患者の成人期に気を付けるべき疾患やポイントについて確認してみましょう。
ダウン症の合併症
成人期においてダウン症患者が注意すべき疾患は以下の通りです。
- 甲状腺機能異常症(30%~40%程度)
- 高尿酸血症(50%以上)
- 睡眠時無呼吸症候群(約50%)
- 成人先天性心臓病(50%異常)
- 精神疾患
など
医療の発達によりダウン症の多くの合併症は、小児の時点で根治治療することも可能となりました。しかし、成人期になってから発症するような合併症も多いため、定期的な検査や通院は欠かさないようにしましょう。
ダウン症患者の平均寿命が伸びたことにより、成人期におけるかかりつけ病院などが必要になってきています。将来のことを考えると、通いやすい病院やダウン症の症例数が多い医師などを探しておくといいでしょう。
成人期のポイント
ダウン症患者の成人後の生活においては、患者自身の社会性が重要になります。
社会性に関してポイントとなるのは下記のとおりです。
- 成人後の精神年齢は平均して5歳程度
- 知能指数(IQ)は平均20~30程度
- 記憶や数の考え方、抽象的な思考、文章の構造理解は苦手
- 視覚的な情報処理や空間の理解は得意。
一方で、聴覚的な情報を処理するのは苦手な傾向があります。 - 言語理解は比較的得意ですが、はっきり話すことが難しく、言葉が少ないことがあります。
ただ、いずれの要素も患者ごとに大きく差があり、個人個人の発達ペースにあった生活や対応が必要になります。
21トリソミー(ダウン症)の人は一人で生きていける?
ダウン症患者のご家族としては、社会的な自立について特に不安に思うかもしれません。
しかし、現在は職業訓練などの社会的なサポートが多く受けられるため、多くの方が社会的に自立しています。
ダウン症の就職
日本ダウン症協会の2022年度の発表によると、18歳以上(就労可能年齢)の12.7%が最低賃金による雇用を受けています。
内訳は、一般雇用、障害枠雇用、特例子会社就労、就労継続支援A型事業です。
また、上記に就労継続支援B型事業を加えると、何らかの形で働いている人の割合は63.2%にも及びます。
また、就労まで結びついていなくても就労移行支援により、職業訓練などを受けている人も多くいます。
社会的支援
社会的な支援は、ダウン症の人々が自立した生活を送るための重要な要素です。
ダウン症患者が受けられる支援サービスは、それぞれの地方団体で異なります。
下記にいくつかの例をご紹介します。
- 療育手帳
知的障害と判定された人に交付されます。 - 身体障害者手帳
視覚、聴覚、体の運動障害など日常生活に影響がある人に交付されます。 - 特別児童扶養手当
知的障害や、身体障害のある子供(20歳未満)を持つ保護者に支給されます。 - 障害年金
知的障害や、身体障害などにより日常生活へ影響が出ている患者に対して給付されます。
その他にも、さまざまな支援サービスがありますので一度確認してみてもいいでしょう。地方自治体による社会支援サービスは、多くの場合その障害度によって交付されるかどうかが決定します。
よく確認したうえで申請しましょう。
21トリソミー(ダウン症)の診断は?
21トリソミー(ダウン症)は、出生後わかることもありますが、多くは出生前の検査で21トリソミー(ダウン症)の可能性を指摘されます。
では、出生前検査方法はどんなものがあるでしょうか。
新型出生前診断(NIPT)について
近年医療の発達により、より正確かつ妊娠初期の段階でダウン症などの先天性疾患の可能性を検査することができるようになりました。
そのうちの一つが、新型出生前診断(NIPT)です。
NIPTは、妊娠10週後から検査可能で、ダウン症に関しては陽性的中率が99%以上になります。
また、ダウン症だけでなく他の染色体異常や、遺伝子異常の病気まで検査することができます。
エコーでわかることも
ダウン症は、妊娠時検診などの超音波(エコー)検査で可能性を指摘されることもあります。
ダウン症を疑う所見は胎児項部浮腫(NT)と呼ばれる、胎児の首後ろに見られるむくみです。
NTは正常な胎児でも前例で見られますが、染色体異常を持つ胎児は正常時に比べて、肥大しているように見えます。
このような所見が見られた場合、染色体異常を示す血液マーカーなど複数の検査を合わせてダウン症の診断が行われます。
まとめ
21トリソミー(ダウン症)の患者の平均寿命は60歳前後で、少し前に比べて長くなってきています。近年の医療技術の発達により、今後もダウン症患者の平均寿命は伸びる想定です。
また、ダウン症患者に対する社会的な支援も存在し、あまり多くはないですが、社会的な自立ができている人もいます。
ダウン症などの先天的な疾患は、家族としても不安や考えることが多くあると思います。
考えるきっかけの一つとして、NIPTなどの出生前診断を検討してみるのもいいかもしれませんね。