【男児だけの染色体異常】XYY症候群(ヤコブ症候群)とは?原因と特徴を解説
XYY症候群(ヤコブ症候群)は男性だけに見られるもので、性染色体異常により起こります。
XYY症候群という言葉自体知らない、よくわからないという方も多いと思います。
また、同じ性染色体異常で起こる、クラインフェルター症候群(XXY症候群)との違いは?
もし赤ちゃんがこの症候群と診断された場合、どのような治療や社会的支援があるのか、事前に知っておくと安心できるはずです。
ただXYY症候群は1,000人に1人出現するもので珍しいものではありません。
この記事の内容
XYY症候群の原因と特徴
男性の性染色体はX染色体とY染色体のペア(XY)、女性ならX染色体とX染色体のペア(XX)になります。
ところがXYY症候群の男性はXYYと、Y染色体をひとつ多くもって生まれてくるのです。
その結果、どのような影響が現れるのでしょうか?
男児だけにみられる染色体異常がXYY症候群
前述したように、男児の性染色体がXYではなくXYYの場合、XYY症候群と診断されます。
Y染色体の過剰なコピーにより引き起こされることが原因です。
人間の染色体は46本ですが、XYY症候群の方は47本になることも大きな特徴です。
性染色体の異常と聞くと「将来子どもを授かることができないのではないか?」と心配になりますが、生殖には大きな影響はありません。
またXYY症候群は遺伝しにくいため、「生まれた子どももXYY症候群になるのでは?」など過剰な心配は無用です。
しかし、言い方を変えれば、健常者同士からでもXYY症候群(ヤコブ症候群)の男児が生まれる可能性があるということになります。
外見的特徴や知能など
XYY症候群の子どもによくみられる外見的・知能面での特徴があります。
・平均より背が高い
・家族とくらべてIQレベルがやや低い傾向
・言語的問題を抱える可能性がある
・軽度の発達障害や会話の遅延、学習障害、ADHDがみられることがある
必ずこれらの特徴がみられるわけではありません。
ほとんど症状もなく、自覚がないまま一生過ごしている方もいます。
ほかの染色体異常(クラインフェルター症候群)に対する違い
XYY症候群と同じ性染色体異常に、クラインフェルター症候群があげられます。
この症候群では性染色体がXXYとなり、X染色体が1つ多いのが特徴です。
500人に1人の割合で生まれてくると言われており、XYY症候群より生まれる確率が高くなります。
知能は正常かやや低めで背が高く、手足が長く、精巣が発達しないなどが特徴です。
生殖機能がない(無精子症)男性が多いため、自然妊娠はかなりむずかしいと言われています。
XYY症候群の症状はさまざま
XYY症候群の子どもに出現する症状はさまざまですし、その症状の度合いも個人によって差があります。
以下のような症状がみられると言われていますが、ほとんど症状が気にならない方も多いため「わが子が必ず発達障害になる」と思いこむのはNGです。
学習障害
学習障害/自閉症スペクトラム障害/注意欠陥・多動性(ADHD)/発話の遅延をまとめて「発達障害」と呼びます。
XYY症候群の子どもには発達障害の症状がみられます。
学習障害は体の発達や知的レベルに問題ないものの、計算や読み書きなど部分的な学習が苦手になることです。
ほかの学習障害(ADHDや発話の遅延など)と一緒に症状がでることもあります。
生まれつきの脳の異常であるといわれており、根本治療はありませんが、周囲のフォローにより症状とうまく折り合っていくことが大切です。
自閉症スペクトラム障害
自閉症スペクトラム障害は「対人関係に苦手意識をもち、自分のペースや興味を最優先にする傾向を強くもつ」ことが特徴です。
ただし自分の興味や関心だけを追い求めることは決してマイナスではなく、状況によってはプラスになることもあります。
研究職のように専門分野一筋に打ちこむ仕事であれば、多少変わった方と思われても業績やキャリアを構築できるかもしれません。
ただ対人関係に苦手意識があることから、一般的にはストレスや不満がたまりやすいでしょう。
注意欠陥・多動性(ADHD)
注意欠陥・多動性(ADHD)は、注意力がない(不注意である)という特性と、多動性・衝動性(じっと待てない)の2つの特性をもっています。
ADHDの症状は一過性のものではなく成人になっても続くため、学業や人間関係の構築に影響を与える可能性があるのです。
この症状の原因はあきらかになっていませんが、遺伝的要素や妊娠期の妊婦さんの喫煙、アルコール摂取などが考えられています。
XYY症候群の治療方法は?
XYY症候群は1,000人に1人の確率で発生します。
珍しい症状ではないこと、誰でもXYY症候群の赤ちゃんを出産する可能性があります。
ではこの症状をもって生まれた赤ちゃんにはどのような治療が可能なのでしょうか?
根本治療は不可能/対処療法のみ
今のところ、XYY症候群の子どもに発達障害の症状がみられたとしても、根本的な治療法は見つかっていません。
これはほかの遺伝病の子どもと同じで、基本的には対処療法のみになります。
ただしXYY症候群の子どもはほかの遺伝病の子どもより症状がでない、軽微であるという特徴があります。
ただ症状の出方には個人差がありますので、症状をしっかり見極める必要があるでしょう。
症状によっては薬物治療やホルモン療法などがありますが、これらも基本的に対処療法です。
XYY症候群の子供に対する社会的支援
この症候群をもった約9割の男性は、一生涯「自分がXYY症候群である」ことに気がつかないまま生活する傾向です。
ただなかには発達障害が強く発現するケースもあるため、その場合には社会的支援が得られます。
知的障害者と診断されれば社会的支援が得られる
発達障害の程度が深刻で、一般社会での生活がむずかしい場合は社会的支援(障害福祉サービス)が得られます。
発達障害の場合は知的障害に分類されますので、まずは主治医と相談し、障害の度合いにより市役所・区役所などに障害者申請をおこないましょう。
障害者と認定されれば精神障害者手帳が交付され、さまざまな社会支援(所得税や住民税などの控除など)が受けられます。
自立生活支援や就労定着支援、障害者年金などの支援解説
精神障害者と認定されると、障害の重さにより各種支援が期待できます。
一人だけでは行動できないときは、同行支援や行動支援などの支援が受けられるのが特徴です。
就労継続支援A型(雇用型)や就労継続支援B型(非雇用型)は地方でもかなりの数の施設があり、就労支援の環境は手厚く整っています。
XYY症候群の検査方法や発覚するきっかけ
約90%のXXY症候群の男性は自分の病に気がつかないまま一生涯を終えると言われていますが、なかには遺伝病が確認されることがあるのです。
どのような経緯でこの遺伝病が発覚するのでしょうか?大きく分けて2つの道があります。
NIPT(新型出生前診断)による検査
NIPTは胎児の遺伝疾患を出産前に判断する方法で、精度は高いと言われています。
妊婦さんの少量の血液から21番染色体トリソミー、18番染色体トリソミー、13番染色体トリソミーが陽性か陰性かを判断可能です。
一般的にはこの3種類の遺伝病の検査にとどまりますが、なかにはすべての染色体検査を実施する医療機関もあります。
このとき胎児がXXY症候群になっていると判明するのです。
ただこのすべての染色体検査は20万円以上の費用がかかり高額なので、現実的ではありません。
まとめ
XYY症候群は遺伝病の一種であり、ランダムに生まれるためこの遺伝病をコントロールすることはできません。
健康なカップルから生まれる可能性もあります。
ただほかの遺伝病の子どもよりも、症状は軽微です。
NIPTを希望される方は早めに検査可能な医療機関を受診してください。
参考文献
・厚生労働省 – 障害福祉サービスについて
・厚生労働省 – 精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について
・国立研究開発法人科学技術振興機構 – XYY症候群の一幼児例
・厚生労働省 – 政策レポート 発達障害の理解のために
・京都大学 – XYY 症候群の3例