ターナー症候群(TS)とは?見た目や症状・検査方法をわかりやすく解説
皆さまのなかには「ターナー症候群ってどんな病気?」「生まれた子がターナー症候群と診断されて不安」など、 ターナー症候群について不安を覚えている方もいらっしゃるでしょう。 そこで今回は、ターナー症候群の症状や検査方法について解説いたします。 対症療法や早期発見のポイントをわかりやすくまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
ターナー症候群(turner症候群)とは
女児の1000~2500人に1人の割合で発覚する難病
ターナー症候群は、女性にのみ生じる先天性疾患です。
約1000〜2500人に1人の割合で発生すると言われており、国内には約40,000人もの患者がいると言われています。
ターナー症候群が発生した胎児は流産や死産となる場合が多く、無事に出産した場合も身体的・知的障害が残る可能性が高い疾患です。
予防・治療不可能な難病であり、小児慢性特定疾病の対象疾患に指定されています。
顔つきや見た目に特徴がみられる
ターナー症候群の患者は見た目に共通点が見受けられます。
具体的な例として顎が小さい、後ろ髪の生え際の位置が低い、首回りの皮膚にたるみがある(翼状頸)などの特徴的な顔つきがみられます。
このほかの特徴として手足のむくみ(リンパ浮腫)、肘の骨格異常、低身長などが特徴です。
ターナー症候群の症状と特徴
平均よりも20㎝低い身長
ターナー症候群における代表的な特徴が低身長です。
ターナー症候群の女児の最終的な身長は138㎝前後であり、日本人女性の平均身長よりも20㎝ほど低い数値となっています。
出生時の体格は健常者と大きく変わらないものの、3〜5歳ごろから身長の伸びに差がみられてきます。
これらは成長ホルモンの分泌不良が原因と考えられており、早期からの治療により改善できることが明らかになっています。
骨格や外見の特徴
ターナー症候群にみられる外見的・身体的な特徴は以下の通りです。
- 低身長
- 翼状頸
- 手足のむくみ(リンパ浮腫)
- 外反肘
- 後ろ髪の生え際が低い
- 薬指・小指が短くなる
- 指の爪が短い
- 顎が小さい・下顎の後退
- ほくろが多い
このほかにも短頸・短い胸骨、指紋・掌紋異常、脱毛症がみられることがあります。
骨格や外見に特徴がみられる場合でも、健常人と同様に日常生活を送ることが可能です。
これらの特徴はかならずしも現れるわけではなく、発生する確率は患者ごとに個人差があります。
二次性徴がみられない
ターナー症候群の女児は、思春期に二次性徴がみられないことも大きな特徴の一つです。
通常、女性は思春期を迎えると以下のような身体的変化がみられ始めます。
- 乳房の発達
- 女性らしい丸みを帯びた体つき
- 初潮(生理)
- 子宮・卵巣の発達
これらの発育は卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の作用によって生じます。
しかしながら、ターナー症候群の女児は卵母細胞の死滅や卵巣の機能が低下している場合が多く、これにより女性ホルモンの分泌が不十分となる症例が多くみられます。
また、女性ホルモンは女性の骨密度にも大きく関係しており、軽く転倒するだけでも骨折する可能性が高い「骨粗しょう症」になる患者もいます。
さまざまな合併症が生じる可能性
染色体異常症の多くは合併症を引き起こす可能性が高く、ターナー症候群も例外ではありません。
主な合併症として以下の症状が挙げられます。
- 大動脈縮窄症
- 大動脈二尖弁
- 高血圧
- 糖尿病
- 腎臓奇形
- 血管腫
- 難聴
- 中耳炎
- 甲状腺炎
- セリアック病
- 脊柱側弯症
- 脊柱後湾症
- 発育性股関節形成不全
- 骨粗しょう症
- 注意障害
- 多動症
大動脈縮窄症や大動脈二尖弁は日常生活に支障をきたす心臓疾患であり、早期発見と治療・観察が必要となります。
また、自己免疫疾患のセリアック病も消化器官の不調やがんのリスクがあるため、早期発見と対処が必要になる疾患です。
ターナー症候群の患者には、多くの合併症を併発する方もいれば全く合併症がなく成長する方もいます。
予後を良好に保ち日常生活を不便なく送るために、これらの合併症はできる限り予防に努め、症状を早期発見・治療する必要があります。
ターナー症候群の女性は妊娠しにくい?
ターナー症候群の女性には卵巣の機能不全・低下が生じるため、多くの方は不妊となります。
ターナー症候群の女性が妊娠を希望する場合は、卵巣の移植や卵子提供が選択肢としてあげられます。
しかし、無事に妊娠できたとしても成長ホルモン・女性ホルモンの不足により、体格や子宮の発育が不十分な場合は妊娠・出産に耐えることができません。
妊娠・出産を希望する場合は、成長期や思春期からホルモン治療を開始し、妊娠に耐えられる体づくりを行っていく必要があります。
ターナー症候群の生じる原因
X染色体数や構造の異常により生じる
ターナー症候群の原因は染色体の異常です。
染色体とは、親から子へ遺伝子を受け継ぐための遺伝情報が収められた場所のことです。
父親から23本、母親から23本の計46本を受け継ぐことで、筋肉や骨格、臓器などの細胞を作り出しています。
染色体にはXX染色体とXY染色体の組合せがあります。ターナー症候群の患者はこのうちXX染色体が1本不足する(モノソミーX)、もしくは構造に問題が生じることで発生すると考えられていますが、詳しいメカニズムは解明されていません。
なかには正常な染色体と混在しているケースもあり、これらは「モザイク型」や「モザイク・ターナー症候群」と呼ばれています。
ターナー症候群の対症療法と予後
ターナー症候群は症状や合併症に対し適切な治療を施すことで生命予後を保ち、健常人と変わらない生活を送ることができます。
現在行われている治療について解説していきます。
ターナー症候群の治療法は?
ターナー症候群には、現在の医療では根本的な治療方法はありません。
発生した症状に対して治療し、成長ホルモン・女性ホルモンの投与により発育を促進していきます。
また、患者とその家族に情報を提供する家族会があります。
ターナー症候群について情報を聞き、同じ症状の方々と話し合うことで、不安を取り除き生活の助けになることでしょう。
成長ホルモンの補充による低身長の予防
ターナー症候群による低身長の予防として、成長ホルモンの補充療法が行われます。
成長ホルモン補充療法は年齢に対しての基準値と、年間の成長速度の基準値に達していない場合に開始となります。
成長ホルモン補充療法は年間の成長速度の経過を追い、終了基準に達するまで継続します。
女児の治療終了基準の身長は145.4㎝です。
成長ホルモン補充療法の治療費は高額ですが、染色体異常は小児慢性特定疾病の一つであり、医療費の助成を受けることができます。
助成金額は世帯ごとの年収によって異なりますが、治療が終了するまで自己負担額を減らすことができるため、主治医と相談し意見書を書いてもらうことをおすすめします。
また、成長ホルモンの投与は自宅での自己注射が可能です。
定期的に診察を受けていれば、病院に通うことなく自宅で治療が行えます。
女性ホルモンの補充による二次性徴の誘発
卵巣の機能不全・低下に対しては女性ホルモンの補充療法が行われます。
思春期の始まる10歳ごろから治療を開始し二次性徴を促していきますが、女性ホルモンの早期投与は低身長を引き起こすと言われており、成長ホルモン補充療法とのバランスをみながら実施していきます。
女性ホルモンの投与により、女性らしい体つきをにするだけでなく子宮の発達を促し、将来的に卵子提供や卵巣移植による妊娠・出産に対応することが可能となるのです。
合併症を適切に予防すれば寿命は変わらない
ターナー症候群にはさまざまな合併症のリスクがありますが、予防や対症療法に徹することで普通の生活を送ることができ、寿命も健常人の平均と変わらないことがわかっています。
糖尿病や高血圧など、生活習慣や服薬・投薬でコントロールできる合併症は定期的な検診を受け、まめに健康状態をチェックしておくことが重要です。
外反肘や発育性股関節形成不全などの骨格に関する異常も成長に伴って発見されるため、主治医の意見を伺いながら経過を追うことが必要です。
心疾患や腎機能など臓器に関する合併症は、場合によっては手術が必要となりますが、早期治療により良好な予後を手に入れられます。
ターナー症候群を早期発見するには
低身長を指摘されたら専門医を受診する
患者のなかには出生後すぐに目立った特徴がみられず、成長に伴って判明するケースがあります。
検診で低身長を指摘された場合や、二次性徴がみられず発育が遅れている場合などは専門医を受診しましょう。
場合によっては成人まで判明せず、不妊治療を受ける際に発覚することもあります。
早期に発見するにこしたことはないため、身長や発育の経過をチェックし、指摘があった場合は必ず受診するようにしましょう。
染色体検査で診断される
ターナー症候群が疑われた場合は、血液検査を実施し染色体を調べます。
検査によりX染色体の異常が見つかった場合に診断されます。
血液検査で異常が見つからなかった場合も、モザイク型の可能性が残されているため、皮膚などの細胞から染色体を検査することがあります。
NIPTなら出生前に検査・診断できる
NIPT(新型出生前診断)は、子供がお腹の中にいる間に性染色体の異常がないかを調べる検査です。
従来の出生前検査と比較しても精度の高い検査であり、ターナー症候群の有無を早い段階で調べることができます。
まとめ
ターナー症候群は染色体の異常により女児に発生する疾患です。さまざまな症状や身体的特徴、合併症がみられる場合がありますが、適切な治療によって普通の生活を送る方も多くいます。早期に発見することで対処しやすくなるため、出生前診断や定期的な検診を受けることをおすすめします。
参考文献
・日本小児内分泌学会薬事委員会 – ターナー症候群におけるエストロゲン補充療法ガイドライン
・一般社団法人日本内分泌学会 – ターナー症候群
・日本側弯症学会 – 側弯症とは