/ 胎児の染色体異常/

18トリソミー(エドワーズ症候群)って?ダウン症(21トリソミー)との違い、出生前診断でわかる?

赤ちゃんの健康について考える上で、遺伝によって引き起こされる病気(先天性疾患)の不安もあるでしょう。今回は、その先天性疾患の中の一つである18トリソミー(エドワーズ症候群)という病気についてご紹介します。また、よく聞くダウン症との違いや、出生前診断(NIPT)についてもまとめているので参考にしてください。

トリソミーとは?

トリソミーとは、特定の染色体が通常よりも多く存在する状態で起こる染色体異常です。染色体は私たちの細胞内にある遺伝情報を持つ構造物であり、通常は46本の染色体があり、父親と母親から受け継いだものがペアとなり2本ずつが23対存在しています。

また、染色体は番号で区別されています。

染色体のうち、22対は常染色体と呼ばれ、体の発育や機能に関与しています。最後の1対の性染色体と呼ばれ、性別を決定する情報が含まれています。

トリソミーを生じると、特定の身体的特徴や発達障害を伴う先天性疾患を患うことになってしまうのです。

18トリソミー(エドワーズ症候群)とは?

今回は染色体異常の中でも、18番目の染色体が3本になって状態の細胞が生まれることにより発症する18トリソミー(エドワーズ症候群)について説明します。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因

何らかの原因で、18番目の染色体がうまく分裂できずに2本とも精子、または卵子が入ってしまうことがあります。その2本の18番染色体を持った状態が要因となり、18トリソミーは起こります。この現象を染色体不分離と言い、18トリソミーの80%が、染色体不分離によって引き起こされます。しかし、これは両親の性質や遺伝子の問題ではなく、突然変異によって発生するものです。

18トリソミーの子供が生まれてくる確率は、1/6000程度と言われていてとても珍しい疾患の一つです。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の症状

18トリソミーでは約90%の確率で心疾患系の合併症が見られます。

例えば、心臓がちゃんとした形に発達しないまま生まれてしまう、心室中隔欠損、心房中隔欠損などです。

このような先天的な心臓病の病気により、心臓に負荷がかかり、二次的な合併症としてうっ血性心不全や肺高血圧が進行していきます。

また身体的な特徴としては、湾曲した足底が特徴的な揺り椅子状足底や、後頭部の突出、他にも様々な奇形を伴う事があります。

臓器に発生する奇形症状は、その後の予後に大きく影響を与えるため、早期の発見と治療が重要です。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の治療と寿命

残念ながら、18トリソミーには明確な治療法はありません。

18トリソミーを伴って生まれた赤ちゃんの半分は1週間以内に死亡し、1年を超えて生存できる確率も10%以下です。

しかし、最近では寿命の長さに強く影響する、心疾患の治療技術が発達したことにより5、6歳まで生きる子供が増えてきています。

ただその場合でも、重度の発達障害と機能障害は避けられないため、家族のサポートが重要になるでしょう。

ダウン症との違いは?

同じ先天性疾患の中でも、ダウン症は耳にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

実はこのダウン症も、18トリソミー(エドワーズ症候群)と同じ、トリソミーが原因となる疾患です。

そこで、ダウン症と18トリソミー(エドワーズ症候群)との違いをまとめてみました。

ダウン症とは?

ダウン症候群(21トリソミー)は21番目の染色体が通常より1本多くなることで発症する染色体異常疾患です。はこのダウン症は染色体異常の中でも最も発症頻度が高く、新生児の約600~800人に1人がダウン症候群だといわれています。

その他の先天性の病気

18トリソミーのような先天性の病気は他にも様々あります。

モノソミー

染色体モノソミーはトリソミーとは逆に染色体が1本しかない病気です。

・ターナー症候群

ターナー症候群は性染色体が一本しかない病気で、女性にしか発症しません。
特徴的な症状としては、低身長と2次性徴の遅れが挙げられます。

先天性疾患の中では、合併症などのリスクは低い方ですが、大動脈狭窄症などの心臓疾患に注意が必要となります。

染色体部分欠失

染色体は2本ちゃんとあるが、一部が欠けてしまったことにより病気を発症する場合もあります

・猫泣き症候群

5番目の染色体の一部が欠失している疾患です。新生児期〜乳幼児期に認められ、ネコのような鳴き声が特徴的なことから猫鳴き症候群と呼ばれています。

遺伝子変異

染色体異常ではなく、特定の遺伝子に異常をたしたり、異常のある遺伝子を両親から引き継いでしまったりすることにより病気になる場合もあります。

・マルファン症候群

大動脈、骨格、皮膚など、全身の結合組織が脆くなる病気。大動脈解離や大動脈瘤破裂などにより突然死のリスクがある。

・コフィン・ローリー症候群

中度から重度の知的障害を伴う病気です。特徴的な顔が見受けられます

他にも先天性疾患は多様にありますが、これらの病気は生まれる前の検査、出生前診断で診断できることがあります。

この記事でも詳しく解説しているので良ければ参考にしてみてください。

18トリソミー(エドワーズ症候群)は出生前診断でわかる?

18トリソミーなどの先天性疾患は生まれる前の検査、出生前診断でわかる場合があります。今回は18トリソミーの検査方法についてまとめてみました。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の検査法

18トリソミーを疑うエコー所見は以下の通り。

・胎児発育不全

・羊水過多

・小脳底形成(小脳の大きさが小さい)

・手や足などの形態異常、奇形

・単一臍帯動脈(母から胎児へ栄養を送る臍帯動脈が、通常2本のところ1本しかない状態)

・心臓の異常形成、奇形

など

またエコー検査以外に様々な検査法があり、出生前診断は非確定的検査と、確定検査の2種類に分けられます。

非確定的検査

非確定的検査は、リスク検査やスクリーニング検査として用いられ、患者さんへの侵襲性(痛みや、流産などのリスク)が低いことが特徴です。

エコー検査もこの非確定的検査に含まれます。

非確定的検査の陽性的中率はNIPT(新型出生前診断)の登場などにより、年々精度も上がっていますが診断が確定できるわけではありません。確定的検査</h4>

確定的検査は、疾患の有無を確実に調べる検査のことをいいます。

羊水検査や絨毛検査などがこれに当たり、体内から直接組織を採取することにより、確定的な検査結果を得ることができる反面、赤ちゃんや母体を傷つけるリスクも伴います。

NIPT(新型出生前診断)について

NIPT(新型出生前診断)は母親の血液から、18トリソミーやダウン症などの染色体異常を調べることができます。母親の腕から採血をするだけなので、流産のリスクは一切ありません。また、最大の特徴はその検査感度で、ダウン症に関しては99%と病気を見逃す可能性は極めて低いです。

NIPTは次世代シークエンサーという最新のDNA解析を用いて、母親の血液に遊離しているDNA断片を読み取ることにより、その高い陽性率を誇っています。

妊娠してどれくらいでわかるのか

NIPTは妊娠後10週0日目から受けることが可能です。
従来の出生前診断である母体血清マーカーやコンバインド検査では早くても11週以降ではないと検査ができませんでした。

しかし、NIPTの登場により、より早く、より確率の高い検査結果を得られるようになり、NIPTを受ける人は増えてきています。

まとめ

今回は18トリソミー(エドワーズ症候群)についてご紹介しました。

18トリソミーは現在では根本的な治療法がなく、予後が難しい病気です。

しかし、現在では医療の発達により以前より、生命予後は改善しています。

治療法については家族としっかり話し合った上で、どのような選択をしていくかを決めていきましょう。

参考文献

・公益社団法人 日本産科婦人科医会 – 染色体異常

・小児慢性特定疾病情報センター – 18番染色体トリソミー症候群

・MSDマニュアル プロフェッショナル版 – 18番染色体トリソミー

・公益社団法人 日本超音波医学会 – 産婦人科:胎児異常・胎児評価

・公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会 – 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針

・国立環境研究所-次世代シークエンサー

・厚生労働省-NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書
・小児慢性特定疾病情報センター –染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群の疾患一覧