先天性疾患の種類・原因・早期発見方法を分かりやすくご紹介
皆さまの中には、「先天性疾患とはどんなものがあるのか?」「我が子に先天性疾患があるか気になる」といった不安を抱えている方もいるかもしれません。そ
こで、今回は、このような心配事を持つ方のため、先天性疾患の種類・原因・早期発見の方法などを解説します。
どの検査でどの先天性疾患が分かるのか分かりやすくまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
心臓の働きをおさらいしてみましょう
心臓には右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれる心房・心室が左右に1つずつあり、常に全身に綺麗な血液を送り、汚れた血液を肺に回収する働きをしています。
その数は1分間に70回程度と言われています。
心房・心室のそれぞれには、血液の逆流を防ぐ弁がついており、一方通行で流れています。
先天性疾患とは
先天性疾患とは何か、いつ判明するか、生まれる確率についてご紹介いたします。
先天性疾患とは、生まれつき異常がある疾患のことです。
先天性疾患の種類・症状・程度は、人によってさまざまで、治療法も異なります。
ものによっては、治療することによって症状が表れない可能性もあります。
いつ分かる
先天性疾患は、NIPTにより早ければ妊娠10週から調べることができます。
ただし、NIPTは非確定検査なので、診断結果が確定ではありません。
絨毛検査や羊水検査の場合、精度は100%で確定診断が下されます。
先天性疾患の子供が生まれる確率
環境省の調査によると、年齢に関係なく、先天性疾患の赤ちゃんが生まれる確率は、3〜5%と言われています。中でも染色体異常による先天性疾患は、高齢妊娠・高齢出産の妊婦さんから生まれる確率が高くなっています。
主な先天性疾患
先天性疾患は、たくさんの種類がありますが、代表的な先天性疾患の割合・症状・特徴・寿命をご紹介いたします。
ダウン症候群
ダウン症候群は、1000人に1人の割合で生まれ、染色体異常の中でも最も割合の多い疾患です。通常2本である21番目の染色体が3本になることで発症するため、21トリソミーともいいます。ダウン症候群は、主に以下のような症状があります。
- 頭が小さい
- 筋力が弱い
- 広く扁平な顔
- 吊り上がった目
- 舌が大きい
- 低い鼻
- 弱い筋力
- 手のひらの横一直線のしわ
- 首の後ろのむくみ
- 受動的でおとなしい
- 言葉の遅れ
- 歩き始めの遅れ
- 話しても聞き取りにくい
- 理解力が低い
- 発達障害
また、ダウン症候群の平均寿命は60歳で、他の染色体異常に比べると、長い傾向にあります。
エドワーズ症候群
エドワーズ症候群は、通常2本である18番目の染色体が3本になることで発症するため、18トリソミーともいいます。6000人に1人の割合で生まれ、主に以下のような症状があります。
- 頭が小さい
- 低身長
- 筋力が弱い
- 耳の位置が低い
- 耳が変形している
- 骨盤が小さい
- 胸骨が短い
- 椅子状足底
- 内反足
- 腹直筋ヘルニア
- 腹直筋離開
- 音への反応が弱い
- 自力歩行が難しい
- 言葉の使用が難しい
- 重度の発達障害
また、このような症状に加え、重度な合併症をともなうため、寿命は短く、生存率は50%が1か月以内、90%が1年以内です。
パトウ症候群
パトウ症候群は、通常2本である13番目の染色体が3本になることで発症するため、13トリソミーともいいます。1〜2万人に1人の割合で生まれ、主に以下のような症状があります。
- 頭が小さい
- 眼球が小さい
- 低身長
- 筋力が弱い
- 口唇裂
- 口蓋裂
- 停留精巣
- 双角子宮
- 言葉の使用が難しい
- 重度の発達障害
- 脳の構造異常
- 痙攣
- 腎臓機能が低い
- 心臓の異常
また、エドワード症候群と同様に重い合併症を発症するため寿命は短く、90%が1年以内に亡くなります。
先天性代謝異常
先天性代謝異常は、先天的に食べ物に含まれる栄養素を消化・吸収したり、不用になったものを排泄する代謝に異常がある疾患です。数万人〜数十万に1人の割合で生まれ、適切な治療を行わないと、以下のような症状が表れます。
- 知能障害
- 発達障害
先天性疾患の原因
先天性疾患には、以下のような原因が考えられます。
- 染色体異常
- 両親からの遺伝
- 多因子遺伝
- 催奇形因子
- 環境因子
そのうち、染色体に変化をもつ疾患が約5~10%、遺伝子に変異を伴う疾患が約15~20%、環境要因による考えられる疾患が約10%を占め、複数の因子が関わっていると推定されるものも含めて約半数は現在のところまだはっきりした原因がわからない疾患となっています。
染色体異常
生死や卵子の形成過程で、染色体がうまく分離しないことで、先天性疾患を引き起こします。染色体異常が原因の先天性疾患は、約25%と言われています。染色体異常による先天性疾患は、以下のようなものがあります。
- ダウン症候群
- エドワーズ症候群
- パトウ症候群
両親からの遺伝
両親に先天的な障害があった場合、遺伝で胎児にも発生する可能性があります。遺伝が要因となる割合は、約15〜20%と言われています。遺伝因子の先天性疾患には、以下のようなものがあります。
- フェニルケトン尿症家族性大腸ポリポーシス
- 血友病
多因子遺伝
多因子遺伝とは、遺伝要因と環境要因の両方が作用して表れる遺伝の仕方のことです。多因子遺伝の先天的な疾患には、以下のようなものがあります。
- 心臓病
- 高血圧
- ヒルシュスプルング病
催奇形因子
親に催奇形遺伝子がある場合、胎児に奇形を起こす可能性があります。ただし、親が催奇形因子遺伝子を持っているからといって、必ずしも胎児に奇形が起こるとは限りません。一方で、親に催奇形因子の遺伝子がなくとも、突然変異で胎児に奇形が起こることもあります。催奇形因子による先天的な疾患は、以下のようなものがあります。
- 心室中隔欠損
- 口唇裂
- 口蓋裂
環境因子
有機臭素系化合物やダイオキシンなどの化学物質が要因となって、先天性疾患が起こることもあります。環境因子による先天性疾患は、約10%を占めます。環境因子による先天性疾患は、以下のようなものがあります。
- 尿道下裂
- 停留精巣
先天性疾患を早期発見する方法
先天性疾患を早期発見する方法として出生前診断があること、受診する割合を説明いたします。
出生前診断
出生前診断には、以下の5つの種類があります。
- NIPT
- コンバインド検査
- 母体血清マーカー検査
- 絨毛検査
- 羊水検査
これらの検査を受ければ、ダウン症候群・エドワーズ症候群・パトウ症候群などの染色体異常を早期発見できます。
出生前診断を受ける割合
出生前診断を受ける割合は、全体の妊婦さんの7.2%、高齢妊婦さんの25.1%です。高齢妊婦さんは染色体異常を持つ胎児が生まれる確率が高いため、出生前診断で調べる方が多いのでしょう。
出生前診断を受診可能期間
出生前診断は、種類によって受診可能な期間が異なります。種類別の対応可能時期は、以下のとおりです。
検査名 | NIPT | コンバインド検査 | 母体血清マーカー検査 | 絨毛検査 | 羊水検査 |
受診可能時期 | 妊娠10週〜 | 妊娠11〜13週 | 妊娠15〜20週 | 妊娠11〜17週 | 妊娠15週〜 |
まとめ
先天性疾患とは、生まれつき体に異常がある疾患で、年代問わず、全体の妊婦さんに約3〜5%の割合で生まれると言われています。
先天性疾患の種類はとても多く、症状や原因もそれぞれ異なります。
代表的なものには、ダウン症候群・エドワード症候群・パトウ症候群・先天性代謝異常があります。
全ての先天性疾患が判明するわけではありませんが、出生前診断で気付けるものもあるため、不安な方は検査するのがおすすめです。
参考資料
・環境省ー放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成28年度版、 HTML形式)h
・厚生労働省ー21トリソミーのある方の くらし
・難病情報センター-先天異常症候群(指定難病310)