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絨毛検査とは何か?メリット・デメリットとほかの検査との違いを解説

絨毛検査(じゅうもうけんさ)は羊水検査と並ぶ出生前診断であり、胎児の染色体異常を発見するために有用な検査です。

高額な検査費用や母体へのリスクといった問題もありますが、3〜4人にひとりが高齢出産といわれる昨今、出生前診断を検討される方も多いのではないでしょうか。

この記事では絨毛検査のメリットやデメリットについて解説し、他の出生前診断との比較についても解説いたしますので、ぜひご一読ください。

絨毛検査とは

絨毛検査は「確定的検査」といわれるもので、妊婦健診時のエコー検査やNIPT(新型出生前診断)で、胎児に異常がある可能性があるとされた際に行うものです。

絨毛検査とは?

絨毛検査は胎盤から絨毛細胞(胎盤の元になる細胞)を取り出して培養し、染色体の数・形などを観察することで染色体異常や先天性の疾患を調べるものです。

医療機関により多少異なりますが、おおむね妊娠10週〜14週ころに検査が可能であり、一般的な羊水検査の実施時期よりも早い段階での検査が可能です。

何を診断するのか

絨毛検査では、主に下記の疾患と染色体異常の診断が可能です。

・21トリソミー(ダウン症候群)

・18トリソミー(エドワーズ症候群)

・13トリソミー(パトウ症候群)

・染色体の部分転座、重複、欠損など

羊水検査と比較して多くの細胞を採取するので、さまざまな疾患を調べることができます。

血縁者が遺伝病を持っている場合の遺伝子検査としても選ばれる方法です。

検査の方法

胎盤から直接細胞を採取します。

エコー検査で胎児と胎盤の位置を確認し、胎盤が形成されている位置によって検査方法が「経腹法」「経膣法」のいずれかから選択されます。

〔経腹法〕

胎盤が子宮の前壁や底部にある場合は、経腹法が採用されます。下腹部より注射針を刺して絨毛細胞を取り出します。

〔経膣法〕

胎盤が子宮の後壁や頸部付近にある場合には、経膣法が採用されます。膣から鉗子(かんし)というハサミのような器具かカテーテル(細い管)を挿入して絨毛細胞を取り出します。

検査後について

検査後2〜3週間ほどで結果が分かります。

何らかの疾患が確認された場合はその後について考えていく必要がありますが、染色体異常が見つかってもそれ自体を治療することはできないため、先天性の疾患に対応可能な医療機関を紹介してもらうなどの対応をすることになります。

絨毛検査から分かること

絨毛検査では胎児の先天的な疾患の有無を約99%の精度で確定することができますが、別の検査をしないと分からない疾患や障害もあります。

絨毛検査で分かること

絨毛検査で分かるのは、基本的に染色体異常による疾患に限定されます。

ダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群のほかにも染色体の形状や数の異常により起こるさまざまな疾患や障害が診断できますが、心疾患・脳の異常・体格や骨の異常・知的障害・視覚や聴覚の異常を見つけることはできません。

絨毛検査の注意点

絨毛検査にはデメリットもあります。

絨毛検査によって流産してしまう可能性は1%ほどといわれており、羊水検査の場合(約0.3%)と比較すると、大きな数字です。

また、費用が保険適用外で全額自己負担となり、高額です。金額は医療機関により異なりますが、東京都の場合で12万円〜27万5千円、検査費用のほかに紹介状作成料や初診料がかかるほか、検査前後のカウンセリング費用が別途必要になる医療機関もあります。

さらに、絨毛検査には高度な技術が求められるため実施している病院は限られており、東京都でもわずか8か所です。検査日を含め少なくとも数回通院することを考えると、金銭面だけでなく体調面の負担も考えられます。

絨毛検査と羊水検査

絨毛検査・羊水検査ともに胎児の染色体や遺伝子による先天的な疾患や障害を発見するには有効な検査です。

診断できる内容にはほぼ違いはありませんが、実施する時期と細胞の採取場所が少し異なるため、それぞれにリスクがあることは理解しておく必要があります。

絨毛検査と羊水検査の違い

絨毛検査と羊水検査には以下の違いがあります。

〔実施時期〕

絨毛検査は妊娠11週〜14週、羊水検査は妊娠15週〜18週に実施します。

絨毛検査は羊水検査より早期に実施でき、その分早く結果が分かるのがメリットですが、流産の危険性は高くなります。

〔診断の結果〕

絨毛検査では胎盤由来の細胞を、羊水検査では羊水中の胎児の細胞そのものを検体とすることから、得られる結果の確実性に違いがあります。

絨毛検査の場合は正常な染色体と異常な染色体が混在して見つかる「胎盤性モザイク」の可能性が1%ほどあります。この場合、追って羊水検査を行うことが検討されます。

絨毛検査のメリットと流産のリスク

絨毛検査のメリットは、羊水検査よりも早い時期に検査を受けることができ、その分結果を早く知ることができるところにあります。

しかし、流産のリスクに関しては羊水検査と比べ高い可能性が指摘されており、流産以外にも出血や破水の可能性、感染症のリスクが考えられます。

羊水検査のメリットとデメリット

羊水検査は、羊水に含まれている胎児の細胞を検体とするので、高精度で染色体異常症を診断できます。

検査は羊水量が十分に増える妊娠15週頃まで待たねばなりませんが、精度の高い診断結果が得られます。

しかし、確率は0.3%と低いですが流産のリスクはあり、絨毛検査同様、検査後に出血や破水が起きる可能性もあります。

出生前診断の種類

出生前診断には非確定検査(母体血清マーカー検査、コンバインド検査、NIPT新型出生前検査)と確定検査(絨毛検査、羊水検査)があります。

非確定的検査

血液検査や超音波検査により、胎児の染色体異常等の可能性の有無を調べます。

母体にも胎児にもリスクなく受けることができますが、この検査で分かることは「染色体異常の可能性がある」ということのみであり、疾病や障害を特定するためには確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受ける必要があります。

〔NIPT 新型出生前診断 (妊娠9〜10週以降に実施)〕

血液中の胎児由来のDNA断片を解析し、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーの可能性を判定します。

〔コンバインド検査(妊娠11〜13週に実施)〕

超音波検査で胎児の首の後ろのむくみ(NT)を測定し、血液検査で胎盤由来の2種のタンパク質を解析して18トリソミーと21トリソミーの可能性を判定します。

〔母体血清マーカー検査(妊娠15〜18週に実施)〕

血液に含まれる胎児由来のタンパク質を解析し、18トリソミー、21トリソミー、解放性神経管奇形の可能性を判定します。

コンバインド検査と母体血清マーカー検査においては、上記検査のほかに妊娠週数、妊婦さんの体重、家族歴、1型糖尿病の有無などの情報を加味して胎児が疾患を持っている可能性を調べ、検査結果は確率で示されます。

確定的検査

絨毛検査や羊水検査は、それだけで染色体異常による胎児の疾患・障害を確定する「確定的検査」です。

99%の高精度で胎児の染色体異常全般を診断できます。

しかし費用が高額であること、0.3%(羊水検査)〜1%(絨毛検査)の確率で検査時のダメージにより流産する可能性があることから、非確定検査の結果が陽性の場合に確定検査を受けることを勧める医療機関もあるようです。

診断結果から分かること

絨毛検査と羊水検査で診断できるのは染色体異常による疾患のみです。

これらの検査で異常が認められなくても。心疾患や体格や骨の異常、脳・聴覚・視覚の障害などは別途検査が必要です。

出生前診断を受けるべきなのか

出生前診断は任意で受けるものですが、晩婚・晩産化が進んでいる昨今、検討される方は多いのではないでしょうか。

胎児の状態を調べることで、金銭面や働き方などの準備を事前にできることは大きなメリットですが、一方で、結果によって産まない選択をすることの是非については、慎重な議論が必要です。

絶対に受けなければいけないものではない

出生前診断を受けるか受けないかは、個々の判断に任されています。その結果をどう考えるか、ということも、また自由です。

出生前診断を受ける決断をした方、受けないことを選んだ方、それぞれの声をご紹介します。

〔検査を受けた方の声〕

「障害があると分かれば早めに準備をしたかった」

「障害のある子を育てる自信がなかった」

〔検査を受けなかった方の声〕

「費用や流産等のリスクが大きいため受けないことにした」

「障害児であっても中絶するという選択肢はなかった」

「出生前診断を受けるか」「その結果をどう考えるか」ということは正解のない問題かもしれません。パートナーや家族と話し合っても、決断することは容易ではないでしょう。

不安に思っていることは医師やカウンセラーに相談し、解決の手助けをしてもらいましょう。

費用の面などから受けない方もいる

経済的な理由で受けない選択をする方もいます。

先に述べたとおり、検査費用は保険適用外であり平均して20万円前後です。

検査費用に加え、前後のカウンセリング等にも別途費用がかかる場合があり、大きな負担となります。

高齢やハイリスク出産がある方は受けたほうがおすすめ

妊娠年齢25歳と35歳の場合とを比較すると、ダウン症候群で約3.24倍、その他の染色体異常症では2.47倍と発生率が増加することが厚生労働省の調査により分かっています。

高齢出産の場合やハイリスク出産の場合、血縁者に遺伝病などがある方がいる場合などは、早期に診断が出ることで、早めに準備を進められるなどのメリットがあります。

非確定的検査はNIPTがおすすめ

母体血清マーカーやコンバインド検査といった従来の非確定検査が妊娠11週以降であったのに対し、NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週0日と早い段階で染色体異常症の有無の可能性を検査できます

腕からの採血のみで検体を採取できるため、流産のリスクや胎児への影響がなく、精度が99%と非常に高いこともNIPTが選ばれる理由です。

まとめ

絨毛検査は精度の高い確定検査であり、胎児の健康状態を把握するためには有効な手段です。

検査を受けた方の中には「結果を聞くのが怖かった」という声もありますが、正確な情報を得ることで準備をできる、心の整理をできるといったメリットも大きいようです。

迷われている方、不安のある方は医師やカウンセラーに相談し、アドバイスを受けながら検討されてはいかがでしょうか。

参考文献

・公益社団法人日本産婦人科医会-関沢教授の周産期講座2.胎盤性モザイク

・公益社団法人日本産婦人科医会-流産の原因 2.染色体異常

・厚生労働省-「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書

・出生前検査認証制度等運営委員会-検査を受けた人の声 受けなかった人の声