化学流産とは?流産の発生確率とあわせて解説!
流産とは妊娠22週より前におきる妊娠の中断をいいます。
妊娠12週未満は早期流産とよび、それ以降は後期流産として分けて表現しています。
原因によっては化学流産とよばれる流産はどのようなものなのか、どのくらい起きているのかを解説します。
この記事の内容
流産の発生確率について
妊娠初期に流産となっていまっている方の割合が8~15%前後であることを考えると、6〜7人に1人は妊娠初期に流産していることがわかります。
しかし妊娠初期の流産は原因のほとんどが胎児側で、妊娠12週以降の後期流産とは原因が異なっているのです。
妊娠初期の流産発生確率</h3>
妊娠初期には、妊娠と診断された方の約15%に流産が起きています。
流産(自然流産)は24歳以下では妊娠した90人の16.7%におきていますが、25〜29歳では11.0%、30〜34歳はさらに低くなって10.0%です。しかし35〜39歳では20.7%に増えて、40歳以上になると妊娠した人の41.3%と半数近くになってきます。
出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等の あり方に関する検討会」 報告書 参考資料3抜粋https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/0000016944.pdf
早期流産
妊娠週数が不明で流産がおきた時は、胎児の体重から判断され、500g未満で生まれた場合が流産です。
妊娠11週6日まで(12週未満)の妊娠初期の流産は特に「早期流産」と呼ばれています。
早期流産の原因は胎児側の原因で60〜70%は染色体の異常とされているので、この原因の場合は有効な治療はなく、安静にしていても流産は防げないとされています。
後期流産
後期流産は早産と似た原因で起きます。
母体の感染や腟炎、子宮頚管無力症といった子宮の働きに関するもの、胎児にとっては居心地が悪く感じる子宮の奇形や子宮筋腫、多胎妊娠もそうです。
そのため、後期流産は母体の状況に応じた治療がなされます。
流産が起きた後の処置も週数が進むにつれ時間や日数を必要としますが、1度の流産は原因を追究しない傾向です。
年代別の流産発生確率
流産にはいくつかの種類がありますが原因のすべては解明されてはいません。
しかし、母体の年齢が増すごとに流産の割合が増えることは分かっています。
20歳代の流産の割合に比べて40歳代は4倍ほど多くなっているのは、年齢が上がるとともに元気な卵子を排出できにくくなる、あるいは受精してもうまく細胞分裂ができなくなるためだとされています。
化学流産の発生確率
流産は自然に妊娠が終わる「自然流産」と、人工的に流産を起こす「人工流産」の2つに分類されます。
化学流産の特徴は自然流産と同じ経過をとることです。
割合
化学流産は妊娠検査をしなかった場合は自然流産と勘違いされるので、妊娠を意識していなければ生理や不正出血と考える場合があるので若い年代層では30〜40%におきているのではないかと推定されています。
自然排出した時のした時のエピソードでは「月経量はちょっとだけ多いと思った程度だった」とか、月経痛のない方が「月経痛らしきものがあった」「下腹部の張りを感じた程度」と表現されています。
そのため化学流産の正確な確率は分からないとされています。
化学流産の妊娠検査薬で陽性とでるとき
化学流産の後、妊娠反応は速やかに陰性に変わって月経が開始されると説明されますが、通常は化学流産の出血が止まって1週間程度は陽性反応が続くようになります。
妊娠検査薬は精度によって反応に差があるので、hCGは受精卵が子宮内膜に触れている間は分泌され、内容物が体外に排出されるまで分泌は続き、陽性反応を示すとされています。
1週間程度過ぎても妊娠検査薬で陽性に出る場合は、一定量のhCG((ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌があると判断して妊娠の継続を疑ってみましょう。
化学流産後に陽性になる原因
化学流産にともなう出血の期間は個人差があることも陽性が続く原因ですが、全妊娠の1〜2%の割合で子宮外妊娠(異所性妊娠)が見つかるので注意が必要です。
化学的流産後に妊娠検査で陽性になる原因は以下のものが考えられます。
①検査薬の精度と検査時期
②個人差がある
③ホルモンを分泌する内容物がある(稽留流産)
③子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性
陽性が続くとき
妊娠検査薬では子宮内で妊娠しているかどうかの判断はできません。
妊娠検査薬で陽性がでている間は妊娠が継続されていると判断をします。
子宮外妊娠の場合は一定期間は無症状のことが多いので、超音波検査を用います。
子宮の中に胎嚢が見える時期になっても確認できない時や着床部位がわからない場合は、子宮外妊娠を疑わなければなりません。
子宮外妊娠(異所性妊娠)の症状は着床した場所によって妊娠の持続期間に差があります。
子宮外妊娠
受精卵が着床する子宮外の妊娠部位は卵管、子宮頸管、卵巣、腹腔などで、子宮外妊娠の90%は卵管です。
卵管は子宮の左右にあって、卵巣から出てきた卵子を受け止めて子宮に運ぶ役目をする管状の器官です。
長さは 10〜12 cmありますが太さは約 3〜8 mmと細く、受精卵が成長するには狭く、破裂(卵管破裂)して大量出血からショック死をするおそれのある疾患です。
受精卵が子宮内以外で育つことは難しいとされています。
緊急性が高いので、陽性反応が続く場合は注意が必要です。
不育症との関係
不育症とは、2回以上の流産や死産を繰り返す場合をいいます。
日本では約3万人いると推定されていますが、化学流産は流産の回数に入りません。
子宮外妊娠(異所性妊娠)や絨毛性疾患(胞状奇胎)も同じ扱いです。
治療の対象になるのは、早期流産を連続して3回以上繰り返した時です。
後期流産は流産になる頻度がかなり低いので、2回以上を繰り返した時は治療の対象になります。
化学流産の兆候と症状
化学流産と診断されるのは主に超音波検査が実施された時です。
超音波検査は初回の妊婦検診の受診時に行うことが多く、厚生労働省の指針では妊娠前期に2回の超音波検査をすすめています。
妊娠前期に受ける妊婦検診は4週間に1回の間隔です。
兆候
化学流産の兆候はほぼないとされているため、症状から判断することは難しいでしょう。
化学流産が起きるのは妊娠のかなり早い時期なので、妊娠前期の特有のつわり症状や乳房の張り、あるいは腹部の張りを感じてくる時期に届いていないため、化学流産していた場合はこれらの症状(訴え)も乏しくなります。
基礎体温の変化
基礎体温のグラフは一般的に排卵期以降は高温期が続き、月経とともに下降して低温期に入る折れ線を描きます。
妊娠しているときは月経が来ないので予定月経の頃も、高温期が続きますが、化学流産が起きた場合の基礎体温はその頃から下降してきます。
妊娠できていた(着床していた期間)期間だけ遅れて下がりますが、妊娠新検査薬で陽性が出ているのに低温気が続いている場合は化学流産を疑いましょう。
不正出血
化学流産の出血は、受精卵が子宮内膜と一緒に体外に排出されるときに見られます。妊娠検査薬で陽性に出ているので、妊娠を望む場合は不正出血が心配です。化学流産は胎児側の原因でおきるため流産を止めることは難しいとされています。少量でおなかの痛みや張りがなければ翌日受診してみましょう。
化学流産後の生理は、1度受精卵が着床しているのでホルモンバランスの乱れでいつもの月経周期と違う場合もあるので心配はいりません。大幅に遅れたり、化学流産後2ヶ月を経過しても次の生理が来なかった場合は、病院を受診した方がよいでしょう。
化学流産後の生活
化学流産の経験は次の妊娠を不安にさせます。
化学流産は妊娠に影響しないとされているので、次の排卵があり月経が終われば次の妊娠を考えても良いでしょう。
ホルモンのバランスを整えるためにも流産後は妊娠できるからだづくりを始めることが大切です。
化学流産後の日常生活
化学流産のほとんどは生理と区別がつきにくい経過をとるので、労働基準法の妊娠4か月以降の流産・早産の就業制限の適応ではありません。
進行流産や稽留流産、不全流産の時のように子宮内容物を取り除く手術などもほとんどなく普通の生活をおくることが可能です。
心が沈みがちになるので気分転換や適度に体を動かすなど、適度なストレス解消を心がけてみましょう。
仕事の開始はふらつきを感じなければ数日から1週間程度で復帰していますが、自分の体力に合わせ、休憩を取りながら始めると良いでしょう。
次の妊娠に臨むために
化学流産は妊娠に影響がないので、出血がなくなれば性行為も行なえます。
生理の再開は1〜3か月が多いのですが、妊娠を望んでいる場合は排卵チェッカーや基礎体温測定で排卵の確認をしてみると良いでしょう。
基礎体温測定してグラフがガタガタに見えて排卵の予測が難しいときは病院に相談してみましょう。
妊娠に適したからだづくりのために引き続き飲酒量、喫煙行為(副流煙も)など流産のリスクは避けることをおすすめします。
まとめ
化学流産は流産の中でも極初期に、胎児側の原因でおきる確率が高いとされています。
母体の影響は少ないのですが流産をしたという心の葛藤はなかなか消えることはなく、妊娠を強く望んでいる場合はうつ病になってしまうことも指摘されています。
化学流産は次の妊娠に影響を残すことはなく、流産としてのカウントもされないため、次の妊娠に向けて身体を整えておくことが大切です。
参考文献
・厚生労働省ー「流産死産報告書_最終0331」
・日本産婦人科医会ー「化学流産」
・日本産科婦人化学会ー「流産・切迫流産」