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子宮外妊娠はどんな状態?症状や検査、治療法について

子宮外妊娠とは、医学用語では「異所性妊娠」と呼ばれており子宮ではない場所に妊娠している状態です。確率は0.5%~1.5%と、決して珍しくはありません。

この記事では、原因や症状、どんな治療を行うのかまとめています。

子宮外妊娠ってどんな状態?症状ってあるの?

まず最初に、どのような症状が現れるのか、流産との違いなどを説明します。

子宮外妊娠とは?どこに着床するかで分類される

子宮外妊娠とは、子宮ではない場所に妊娠していることを総称して呼びます。

卵管、卵巣、腹腔内など着床した場所により呼び方が違います。一番多いのが卵管に起こるもので、全体の約95%を占めるとされています。

妊娠検査薬は反応するの?

市販の妊娠検査薬は妊娠反応があれば陽性になります。しかし、それだけではどこに着床しているかまでは分かりません。そのため、正常な妊娠でなくても妊娠検査薬は陽性になります。生理予定日の1週間後から検査薬で感知できる量の妊娠ホルモンが分泌され、検査薬に反応します。

子宮外妊娠の原因とは

卵子が排卵されると、卵巣と子宮をつなぐ卵管の途中で精子と出会い受精卵となります。その後、約1週間かけて移動して子宮内膜に到達します。その途中にある卵管の通りが悪くなっていたり運動障害があったりすると、子宮まで移動できずに子宮以外に着床してしまいます。具体的にはクラミジア感染やその他の細菌感染、子宮や卵巣の手術の経験などが考えられます。また、喫煙も関連があると言われています。

子宮外妊娠の症状は?

正常な状態ではなくても、妊娠は成立しており最初に感じる症状は普通の妊娠と変わりません。基礎体温をつけていると高温期が続き、乳房の張りが出たり、強い眠気を感じるなどの身体のだるさを感じたりします。

また、正常妊娠と同じように生理が止まります。生理周期が比較的安定している場合、生理がくる予定の日から1週間以上経っても生理が始まらないときには妊娠を疑います。

つわりの症状はある?

正常妊娠と同じように、つわりも現れます。胃のムカつきや吐き気を感じたり、においに敏感になったりという症状が早い人だと生理予定日の1週間後、妊娠5週ごろからはじまります。はじまるタイミングや程度も変わらないので、つわりの有無や重さで子宮外妊娠を見分けることは難しいでしょう。

自覚症状はある?

最初に感じる症状は正常妊娠と同じです。そのまま週数が経過し妊娠5〜6週を過ぎて赤ちゃんを包む胎嚢が大きくなってくると特有の症状が出てきます。最初に自覚されるのは軽い下腹部痛、少量の性器出血などです。

さらに週数が進むとお腹の中で出血が増えてしまい、下腹部痛はどんどん強くなり、お腹の張りや吐き気が現れます。特に、赤ちゃんが大きくなり卵管が破裂すると大量に出血し、貧血がひどくなりふらつきや動悸が現れます。

出血量が多くなり、ショックの状態に至ると意識障害が起こり危険な状態に陥ります。お腹の中での出血が性器出血として現れずに出血が増えていても気付かないことがあり、注意が必要です。

早期流産との違いについて

妊娠が分かり受診すると、産婦人科ではまず超音波で子宮の中に胎嚢があるかを調べます。妊娠5〜6週ごろには子宮の中に胎嚢が確認されますが、個人差がありまだ子宮の中に確認できないときもあります。そのようなときには、初期流産や排卵日がずれて妊娠週数が間違っている可能性があり、診断が難しいです。産婦人科で「子宮外妊娠かもしれない」と言われると不安に感じられると思いますが、先ほど説明した症状に気をつけながらしばらく様子をみることが必要になります。

妊娠は継続できる?

受精卵は子宮まで移動しないと成長できません。そのため、残念ですが妊娠の継続は不可能です。

とても珍しいケースとして、二卵性双生児で一つの受精卵が子宮内膜に、もう一つが子宮ではない場所に着床するという子宮内外同時妊娠という状態になることがあります。この場合は、子宮の中で育つ赤ちゃんは妊娠を継続することが可能な場合があります。

どのような治療法があるの?

子宮外妊娠と診断されると、どんな治療を受けるのか不安になりますよね。そのときに妊娠何週で、赤ちゃんの大きさはどのくらいなのか、どんな症状かなどで治療の方法を決めます。

また、今後妊娠の希望があるかどうかも治療法の選択には重要になります。医師の説明を聞き、ご自身の希望も伝えるようにしましょう。

手術による治療

子宮外妊娠の治療では、基本的には手術を行います。妊娠している部分を取り除くことが根本的な治療だからです。手術にはお腹を開く手術と、お腹に開けた小さな穴から内視鏡と手術器具を入れる腹腔鏡手術があります。どちらの場合も妊娠部分を確認し切り取ります。子宮外妊娠のほとんどが卵管に起こると説明しましたが、卵管ごと切り取る場合と妊娠部分だけを切り取る場合があります。受診したときにすでに胎嚢が大きくなり卵管が破裂し、お腹の中に出血している場合にはすぐに手術が必要です。手術を受ける場合は、1週間ほどの入院ですが、大量出血によって貧血が重症であれば輸血が必要です。そのときにはもう少し治療に時間がかかります。

薬物による治療

どこで妊娠したのか不明なときや手術が難しい場所で妊娠した場合には、薬物治療が選ばれます。メトトレキセートという抗がん剤の一種を使って、受精卵の細胞分裂を止める方法です。

卵管を傷つけずに治療でき、手術や麻酔による身体へのダメージは少ないですが、薬の副作用も起こります。抗がん剤の副作用は、吐き気や脱毛、白血球の減少などです 。副作用は一時的なもので、数週間から長引く場合も3か月くらいでおさまるでしょう。

手術と比べると治療に必要な期間が長く、その間も出血や腹痛などが起こらないか注意しておくことが必要です。メトトレキセートを使っても効果がない場合には手術が必要となります。また、メトトレキセートを使う薬物治療は保険適応ではなく、自費による治療です。

経過観察

子宮以外の場所での妊娠が分かっても、特に治療をせずに様子をみることがあります。受精卵が明らかに成長していない場合、そのまま自然に流産となったり、体内に吸収されたりということが起こるからです。

この場合は定期的に血液検査を受け妊娠ホルモンの値をみて、値が下がっていくかを調べます。経過観察を続けるときは、万が一お腹の中で出血が起こったときにすぐに手術を受けられる環境を整えておくことが必要です。そのため、手術に向けた検査を先にしたり、手術の説明を済ませたりしておくことも多いです。

子宮外妊娠を経験したら、次の妊娠はどうなる?

一度子宮外妊娠を経験すると、次の妊娠への影響が心配になると思います。影響があるのかを説明します。

次の妊娠に影響する?

手術を受けた場合、子宮の疲労やホルモンの乱れによって体のコンディションは万全ではありません。治療を受けたあとには生理が再開して3か月から半年ほど間を空けてから次の妊娠を計画しましょう。

しかし、子宮外妊娠は再発する割合が10%ほどと一般的な発生率よりも高くなることが知られています。新たな妊娠を希望するときには医師に相談してから計画するのが安全といえます。そして次の妊娠が分かったときには速やかに受診し正常な妊娠であるかを検査しましょう。

また、再発を防ぐために新たな妊娠を計画する前に卵管の状態を確認することもあります。その場合、卵管造影検査や内視鏡検査を行います。

体外受精の適応になることも

手術を受け卵管を切除しても自然な妊娠は可能です。片方の卵管を切除した場合でも、妊娠率が半分になるのではなく20〜30%の低下とされています。ただ、卵管の通りが悪いことが原因であったときには残った卵管も同じような状態だと考えられます。

また、手術で両側の卵管を切除することもあります。このようなときには次の妊娠を希望した際に、体外受精の適応になります。治療を受けた場合には、担当の医師に今後の妊娠や出産について相談しておくとよいでしょう。

心と身体のケアに努めましょう

子宮外妊娠は、手術の適応になったり薬物治療に時間がかかったりと体に負担がかかるだけでなく、心にも大きな負担がかかると思います。

治療後は体を休めて体調を整え、体調に変化があったときには治療を受けた病院に相談しましょう。それだけでなく、治療を受けたあとには心のケアも必要です。悲しい気持ちを1人で抱え込まず、家族や友人など信頼できる人に話を聞いてもらうことも大切です。

担当の医師や、病院の看護師など専門家に相談してもよいでしょう。体調が回復すれば趣味の時間をもち気分転換するなど、体だけでなく心を休める時間も持つようにしてください。

まとめ

子宮外妊娠は最初のうちは症状が乏しく、自分で判断するのは難しい疾患です。また、放置すると出血が増え危険な状態になることも考えられます。予防することも難しく、早期発見が大切なので妊娠したかもしれないときは、速やかに産婦人科で検査を受けましょう。