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体外受精後に出生前診断を受けるメリットについて解説!

体外受精とは不妊治療のステップとしては最後の治療になり、ここまでくるのに時間とお金と心を費やしてきた方もたくさんいます。今回はその体外受精の末に授かった命を出生前診断すると良い理由について解説します。

体外受精を経て子宮に戻った受精卵は、障害児に生まれることが多い?

子宮外で受精した受精卵は障害児になる確率が高い、などの心無い言葉を耳にしたことはありませんか。

ですが日本ではそのようなデータはありません。

体外受精の先天性異常の出現率は3%と自然妊娠で生まれた子どもの出現率と大差ない結果です。

ただ、体外受精などの生殖医療補助医療は発展途上ですので今後の動向をしていく必要があります。

受精卵の凍結期間における違い

受精卵はマイナス196℃という超低温の液体窒素のなかで凍結保存をします。

この冷凍保存によって障害児になる可能性があるのか疑問に思う方もいるでしょう。

結果から言うと、最長2年までの冷凍保存における妊娠率、出生児発育の影響は少ないことがわかっています。

このことから、がんなどの治療をしていて移植が遅れたり、出産後のため移植が遅れた場合でも受精卵や生まれてくる赤ちゃんへの影響は少ないと考えられます。

ただ、2年以上の受精卵の凍結における妊娠率や出生児発育の影響はまだ分からないので、引き続き調査が必要です。

国外の見解

ここでいう障害児は染色体異常などで、生まれてすぐにわかる障がいを指しています。

自閉症スペクトラムという障害を聞いたことがある方もいるでしょう。これは発達障害の一種であり近年増加傾向にあります。

海外ではこの増加傾向の一端に、顕微授精が関係しているとの調査報告があります。

顕微授精とは細いガラス針の先端に1つの精子を入れて、顕微鏡で確認しながら直接卵子に注入する不妊治療のことです。

またアメリカ疾病対策予防センターは体外受精と顕微授精では、顕微授精で生まれた子どものほうが自閉症スペクトラム障害と診断される傾向が高かったと発表しています。

顕微授精は体外受精に比べて受精率は高くなりますが、自閉症スペクトラム障害の発生率は高くなる可能性があると海外では考えられている傾向が強いことが分かります。

ただこの傾向は顕微授精についてのことであって、体外受精の話ではないことも留意してください。

体外受精で授かった子どもは早産の傾向がある

体外受精で授かった子どもはなぜ早産の傾向があるのでしょうか。

その1つの要因に多胎児を妊娠する確率が自然妊娠する方よりも多い傾向があるからです。ですがその要因を除いても、体外受精で授かった子どもは早産リスクが高いとされています。

体外受精は自然妊娠と違って薬剤を使い妊娠しやすい状態に体を持っていったり、採卵や胚移植など特別な操作を必要とし、その過程で母体に影響が出ることがあるからです。

ですが体外受精で子どもを授かったからといって必ず早産になるとは限りません。無事に出産できる人がほとんどなので正しい知識を持つことが重要です。

出生前診断の内容とリスクについて

出生前診断とは、お腹の中にいる赤ちゃんがどのような病気や異常を持っているか調べる検査のことを言います。

そして検査には3種類の非確定的検査と2種類の確定的検査があります。

全ての病気や異常がわかるのではなく​​​​21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーなどの遺伝子疾患や形状異常などを調べることが可能です。

非確定的検査の場合は、お母さんの血液のみで調べることができるので、赤ちゃんの流産や死産のリスクがありません。

ただ非確定的検査で陽性や高い確率で異常を認められても、診断は確定しません。診断を確定させるには確定的検査を受けなければならないのです。

しかし確定的検査は流産や死産のリスクが伴います。

なので初めにリスクのない非確定的検査を受け、その結果を見て確定的診断を提案する医療機関もあります。

非確定的検査①新型出生前診断(NIPT)

新型出生前診断とは、お母さんの血液中に含まれる赤ちゃんのDNAを断片分析することで、赤ちゃんの特定の遺伝子疾患があるかどうかを調べることができます。

9週から10週以降に受けることができ、その感度は99%と高く、赤ちゃんの染色体疾患をより正確に調べることが可能です。

非確定的検査②コンバインド検査

この検査は超音波検査と採血を組み合わせた検査になります。

この2つを組み合わせると、ダウン症と18トリソミーかどうかを調べることができます。

11週から13週で行い、検査を受けてから結果が出るまで2週間ほどかかることが多いです。

そして結果は1/20や1/200、1/2000など確率で出るので、この結果をどう受け止めるかはそれぞれの夫婦によって変わってきます。

非確定的検査③母体血清マーカー検査

この検査では、お母さんの血液中に含まれる、胎盤由来のタンパク質を解析します。15週から18週で行い、検査から結果が出るまで2週間ほどかかります。

これにより18トリソミー、ダウン症候群などの可能性について調べることが可能です。

また、この母体血清マーカー検査もコンバインド検査同様に確率で結果が出ます。

確定的検査①羊水検査

確定的検査を受けると、診断が確定します。

その1つの羊水検査とは、お母さんのお腹に直接針を刺し、羊水を採取して染色体の形と数を調べ、染色体疾患のみを調べる方法になります。

15週から16週以降で行い、検査から結果が出るまで2〜3週間ほどかかります。

母体や胎児にもリスクがある検査です。

赤ちゃんの死亡や流産のリスクは約300人に1人という割合です。

確定的検査②絨毛検査

絨毛とはこれから胎盤になる部分です。

羊水検査同様の方法で絨毛の細胞を採取し、染色体の形と数の変化を調べます。この検査では染色体疾患全般を調べられる検査です。

11週から14週に行い、検査から結果が出るまで2〜3週間ほどかかります。

母体や胎児にもリスクがある検査です。

赤ちゃんの死亡や流産のリスクは約100人に1人という割合です。

着床前診断と出生前診断の違いとは?

出生前診断と似たような言葉で着床前診断というものがあります。

この着床前診断とは、子宮に戻す前の体外受精によって作られた受精卵を胚になるまで育てて、その胚から取り出した細胞や染色体を調べる方法です。

細胞や染色体を調べることは出生前診断と同じですが、着床前診断は子宮に戻す前に行い、出生前診断は妊娠後に行います。

出生前診断はどのくらいの方が受けているの?

1998年から2016年までの調査によると、日本のNIPTを含む出生前診断を受けた方は、出生数97.7万件中の7.2%、高齢妊婦数27.8万人中の25.1%です。

対する海外の割合は、2010年と2011年における欧米における調査によると、出生前診断(主に初期コンバインド検査)の実施率は、デンマーク90%以上、イギリス60%、フランス84%、オランダ26%となっています

海外の方が日本よりはるかに多く出生前診断を受けていることが分かります。

出生前診断を受けることは悪いことではない!メリットを紹介

出生前診断は命の選別に繋がるなどの否定的な意見もありますが、メリットもたくさんあります。

生まれる前に一部の障害へのリスクを知ることができる

結果の有無に関わらず、赤ちゃんの状態を知ることができます。

また心の準備や医療体制を整えてサポート体制を万全にできるので、お母さんや家族の安心へと繋がります。

出産前に環境や気持ちを整えることができる

いくら医療体制や周りのサポート体制を整えても、赤ちゃんを産むことができるのはお母さんだけです。

お腹の赤ちゃんの状態を知ることで、知識や理解を深めていくことができます。

結果の有無は関係ありません。

周囲のサポートしてくれる方たちとも情報や気持ちを共有して、子どもと生きていく新しい生活が始まる前に1人で抱え込まない環境を作ることが大切です。

まとめ

出生前診断で何か見つかった場合に命の選別を問われることがあるかもしれません。

ですが体外受精まで挑んでやっと授かった命を心配に思ったり、不安を感じることはいけないことではありません。

出生前診断を受けて、その先にある結果を受け止める覚悟をしたのなら、周りの意見に左右されず自分の気持ちを大事にして進んでください。