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奇形児が生まれる原因とは?先天性疾患予防のための妊婦の過ごし方も併せて解説

先天性疾患は妊娠中の過ごし方に配慮することで、発症リスクを抑えられるものも多いです。ここでは、先天性疾患の原因や種類、予防に役立つ妊娠中の生活について詳しく解説していきます。

この記事を最後までご覧いただくと、お腹の赤ちゃんが先天性疾患を発症するかもしれない不安を和らげることができるでしょう。安心して出産に臨みたい方は、ぜひ参考にしてください。

先天性疾患とは?

先天性疾患とは、生まれつき身体や臓器のどこかに異常が生じる疾患で、生まれた時や乳幼児健診などで見つかります。最も頻度が高いとされているのは心臓の先天性疾患で、乳児期の主要な死亡原因の1つです。また、特定の染色体異常も生後1カ月以内に亡くなってしまう可能性が高いとされています。

しかし、先天性疾患があるからといって、必ずしも生命に関わる問題が生じるとは限りません。症状の種類や度合いによっては、薬で症状を和らげたり、手術での治療を目指したりするケースも多いのです。

先天性障がいの種類は?

妊娠中のお母さんにとって、生まれてくる赤ちゃんの健康状態は気になるものです。先天性障がいには、形態的な異常が生じる奇形児と、身体の機能に異常が生じる先天性の疾患に分けられます。それぞれの特徴について確認していきましょう。

奇形児

先天的な奇形は生まれる前の段階で生じ、お腹の赤ちゃんの臓器や脳に異常をきたすとされています。先天性疾患のうち、およそ5%が環境因子や催奇形因子による奇形です。

なかでも、アルコールや特定の薬剤などさらされた時期・量・期間は、奇形が生じる部位に関係します。めざましく成長している臓器に影響するのです。

また、臓器や身体的な奇形にとどまらないケースも少なくありません。例えばダウン症のような染色体疾患では、心臓の奇形や身体的な奇形をともなうケースが多くみられます。

持って生まれた病気

先天性疾患は、全身の臓器に発生する可能性があります。よく名前の知られたものから、そうではないものまで、発生する部位はさまざまです。

出生時や生後1年以内に明らかになる場合がほとんどですが、妊婦健診時のエコー検査や血液検査で発覚するケースもあります。元々、両親にリスク因子がある場合、出産前の段階でも比較的発見されやすいでしょう。出産前に先天性疾患を診断するには、羊水検査・絨毛検査などの確定診断を受ける必要があります。

先天性奇形や先天性疾患が生じる原因

「先天性奇形や先天性疾患はどうして起こるの?」と疑問に感じる方は多いのではないでしょうか。そこで、先天性奇形や先天性疾患が生じる原因や、代表的な疾患について解説していきます。

生まれてくる赤ちゃんの健康状態に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

両親の染色体や遺伝子の異常

両親が染色体や遺伝子に異常を持っており、赤ちゃんに引き継がれる場合があります。染色体や遺伝子の異常によって起こる先天性疾患は、以下のとおりです。

異常が生じている部分代表的な先天性疾患
染色体の本数21トリソミー(ダウン症)13トリソミー(パトウ症候群)18トリソミー(エドワーズ症候群)
単一遺伝子優性遺伝疾患の家族性大腸ポリポーシス劣性遺伝疾患のフェニルケトン尿症伴性遺伝の血友病
多因子遺伝ヒルシュスプルング病先天性心疾患糖尿病や高血圧といった生活習慣病

ただし、異常な遺伝子を受け継いでいても、実際に症状としてあらわれていないため、親本人が自覚していないケースがあります。赤ちゃんに先天性疾患の疑いがあることが分かり、初めて遺伝子の異常に気づく方も少なくありません。

妊娠中の母体の感染症

妊娠中の感染により、赤ちゃんの先天性疾患を引き起こすおそれがある感染症は風疹・水ぼうそう・梅毒・ヘルペスウイルス感染症・トキソプラズマ症などです。

特に風疹は、「先天性風疹症候群」の原因となります。先天性風疹症候群の3大症状は、先天性心疾患(心室中隔欠損症や動脈管開存症)・難聴・白内障です。

そのほかにも網膜症や発育障害、精神発達遅延なども引き起こします。お父さんからお母さんに感染し、赤ちゃんの先天性風疹症候群につながるケースも珍しくありません。

また、トキソプラズマ症は、生肉や生乳・猫の糞などから感染する感染症です。日本人の多くはトキソプラズマに感染したことがないので、免疫を持っていない方が少なくありません。そのため、妊娠中に初めて感染し、発症してしまうケースが多いのです。

葉酸などの栄養不足

赤ちゃんの健やかな成長には、充分な栄養が必要です。妊娠初期のうちは母体に蓄えられている栄養分でも、赤ちゃんの成長をサポートできます。しかし、赤ちゃんの成長にともない、母体に蓄えられている分だけでは充分にまかないきれなくなるのです。

特に妊娠初期に葉酸が不足すると、赤ちゃんの脳や脊椎などに先天性障がい(神経管閉鎖障害)が生じるリスクが高くなります。神経管閉鎖障害は、赤ちゃんの無脳症を引き起こす原因の1つです。

葉酸はビタミンB群の栄養素で、血液を作り出すのに必要です。葉酸の不足は母体の貧血も引き起こすので、妊娠中の女性にとっても健康維持に欠かせない栄養素といえるでしょう。

妊娠初期に葉酸を摂らなかった場合についてはこちら

妊娠中に摂取した有害な物質

妊娠中、長期間にわたって高濃度の有害物質にさらされると、赤ちゃんの先天性疾患のリスクが高まります。特に気をつけたいのは以下のとおりです。

  • 放射線
  • 特定の薬剤
  • アルコール
  • 喫煙

特定の薬剤は赤ちゃんの奇形を誘発するため、妊娠中は自己判断で薬を服用するのは控えましょう。また、アルコールは赤ちゃんの流産や死産のリスクを高めます。飲酒量との相関関係は不明ですが、妊娠後の飲酒は避けてください。

そのほかにも、タバコは赤ちゃんの神経発達障害や前置胎盤・胎盤早期剥離を生じやすくなります。喫煙本数が多いほど赤ちゃんの早産率が上がるので、妊娠が分かった時点で禁煙をしましょう。

先天性疾患を予防できる妊娠中の過ごし方

赤ちゃんの先天性疾患を予防するには、栄養バランスの整った食生活が欠かせません。なかでも、葉酸を含む食品を多く摂るとよいでしょう。

また、梅毒や風疹などの感染症は、血液検査で感染の有無や抗体価を確認できます。ワクチンによって感染を予防できる感染症もあるので、未接種の方は接種を検討しましょう。

さらに、薬剤の中には赤ちゃんの奇形を誘発するものがあります。自己判断で薬を服用するのはやめましょう。医療機関を受診して、妊娠の可能性があることを伝え、適切な薬の処方を相談してください。

先天性疾患と向き合うには

赤ちゃんに先天性疾患があるかもしれないと分かった時、病気そのものに対する不安以外に、今後の生活への影響にも不安を感じる方は多いものです。赤ちゃんの病気と向き合うためには、まず正確な情報を入手しましょう。

  • かかりつけの産婦人科医に専門医を紹介してもらう
  • 専門医がそろっている医療機関をインターネットで調べる
  • 学会のホームページで専門的な医療機関の情報を得る

先天性疾患をすぐに受け入れるのは難しくても、正確な情報を得て、赤ちゃんが生まれた後の生活をイメージすることが大切です。

NIPTで先天性疾患が分かる?

NIPTは母体の血液を採取することで、赤ちゃんの染色体疾患を調べることができます。妊娠10週以降から実施可能です。精度は99%以上ですが、あくまで非確定診断にとどまります。また、NIPTを受けられる施設は以下の2種類です。

  • 認定施設:日本医学界と日本産科婦人科学会が認定
  • 認定外施設:認定を受けていない

認定施設では、要件を満たさなければNIPTを受けられない点に注意しましょう。NIPTで陽性もしくは判定保留の結果が続く場合は、確定的検査である羊水検査を視野に入れる必要があります。

まとめ

先天性疾患や先天性障がいは、両親から受け継いだ遺伝子や染色体だけでなく、栄養不足や感染症、有害な物質が原因となって引き起こされます。妊娠中の過ごし方に気をつけることで防げるものも多く、パートナーの協力も欠かせません。

もしも生まれてくる赤ちゃんの先天性疾患が心配な場合は、妊婦健診のエコー検査や血液検査に加え、NIPTの実施も視野に入れるとよいでしょう。

参考文献

・厚生労働省-NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 

・MSDマニュアル家庭版-先天異常の概要