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先天性疾患は予防できるの?原因や予防方法について解説|出生前診断でわかること

妊娠の成立は喜ばしいことである一方、お腹の中にいる胎児に先天性の疾患があるかどうかを知りたい妊婦さんとその家族も多いでしょう。

先天性疾患の発生頻度は約2%というデータも報告されており、確実性はないものの、妊娠期間中に先天性疾患を予防する方法があります。

この記事では先天性疾患の基本情報と原因、出生前診断でわかること、予防方法について解説します。

先天性疾患とはなにか?原因は?

先天性疾患とは、生まれたときから病気を持っている状態のことを指しています。

一方、生まれたあとに、外的要因によって病気を引き起こすことを後天性疾患と呼びます。

先天性疾患になりうる4つの原因についてみていきましょう。

染色体異常が原因

先天性疾患の原因として、全体の約25%を染色体異常が占めているといわれています。

染色体異常とは、染色体の本数が通常とは異なる状況のことであり、「ダウン症候群(21トリソミー)」「エドワーズ症候群」「パトウ症候群」が対象となっています。

数ある染色体異常の中でも50%以上を占める疾患がダウン症候群です。妊娠10週から受けられる出生前診断で、事前に把握できる染色体異常も多くあります。

遺伝子の変化が原因

先天性疾患の原因として、全体の約20%を遺伝子の変化が占めているといわれています。

両親のどちらかが持つ変化した遺伝子が影響するケース、受精のタイミングで遺伝子が変化するケースなど、さまざまな可能性があります。

染色体異常と遺伝子の変化は、受精したときに起こる症状で、妊婦さんの初期妊娠時の行動とは無関係です。

不安要素や疑問がある方は、遺伝カウンセリングを受けることを推奨します。

多因子遺伝が原因

先天性疾患の原因として、全体の約50%を多因子遺伝が占めているといわれています。

多因子遺伝は、複数の遺伝子が同時に異常をきたす状態や、生後の環境要因と遺伝子の複雑な絡み合いが関係している可能性が高いです。

具体的には「ヒルシュスプルング病」「先天性心疾患」「糖尿病」などの生活習慣病を含む症状が対象です。

環境因子や催奇形性因子が原因

先天性疾患の原因として、全体の約5%を環境因子や催奇形性因子が占めているといわれています。

具体的にはタバコやアルコール、薬剤や放射線被曝による影響が大きいです。

可能な限り日常生活の悪習慣を直しましょう。

先天性疾患に該当する主な疾患とは?

先天性疾患に該当する主な疾患として「21トリソミー」「エドワーズ症候群」「フェニルケトン尿症」「パトウ症候群」の4種類が挙げられます。

それぞれの疾患について解説します。

21トリソミー

21トリソミーは、染色体異常による疾患です。

両親の精子と卵子が細胞分裂をする際に、本来2本であるべき21番目の染色体が3本になることで、引き起こされます。

妊婦さんの年齢が高くなるほど、21トリソミーになる確率は高くなり、特徴的な顔つきや筋肉や知能の発達遅れが症状として現れます。

ダウン症候群とも呼ばれており、両親が健常の場合でも一定の確率で起こり得る疾患です。

エドワーズ症候群

エドワーズ症候群は、染色体異常による疾患です。

両親の精子と卵子が細胞分裂をする際に、本来2本であるべき18番目の染色体が3本になることで、引き起こされます。

低身長や小頭症など見た目の違いのほか、重症の場合は1年以内に死亡する可能性があります。

フェニルケトン尿症

フェニルケトン尿症は、遺伝子の変化による疾患です。

両親がともにPAH遺伝子の異常を持ち合わせてる場合、1/4の確率で発症しますが、劣性遺伝疾患のため発症率は低いです。

新生児マススクリーニングで検査をおこない、食事や血液中のフェニルアラニンを管理して予防します。

パトウ症候群

パトウ症候群は、染色体異常による疾患です。

両親の精子と卵子が細胞分裂をする際に、本来2本であるべき13番目の染色体が3本になることで、引き起こされます。

身体の成長や脳の発達の遅れが生じるほか、重症の場合は半年〜1年以内に死亡する可能性があります。

先天性疾患は出生前診断でわかる

胎児に先天性疾患があるかどうか気になる妊婦さんも多くいるでしょう。

現在は、一部の先天性疾患を判断できる2種類の出生前診断があるので、解説します。

エコー検査

エコー検査は、妊娠11週目以降に胎児の身体的な特徴から先天性疾患の有無を判断する検査方法です。

あくまで身体的な特徴をエコーで確認するだけですので、可能性は判断できても先天性疾患を確定することはできません。

羊水検査

羊水検査は、妊娠15週以降に受けられる確定診断で、妊婦の羊水に含まれる胎児の細胞をみて、染色体の形と数に異常がないか判断する検査方法です。

羊水採取では妊婦さんのお腹に直接針を刺すため、流産や出血、母体障害などの合併症リスクが伴います。

羊水検査についてはこちら

出生前診断で先天性疾患を調べられる方の条件とは?

出生前診断を受け付けている医療機関は複数ありますが、遺伝子カウンセラーや実績を持つ医師が在籍している認定機関では、検査が受けられる条件が設けられています。

それぞれの条件について解説します。

高齢出産の妊婦さん

35歳を過ぎると、21トリソミーを中心とした染色体異常による先天性疾患を引き起こす確率が急激に高くなります。

そのため、高齢出産の対象となる妊婦さんは、認定機関で出生前診断が受けられます。

先天性疾患を妊娠・出産経験のある方

過去に先天性疾患があると判断された胎児を妊娠したことがある方、出産したことがある方は、再び先天性疾患を持つ胎児を授かる可能性が高いです。

そのため、年齢の条件を満たしていなくても、認定機関で出生前診断が受けられます。

母体血清マーカーで異常があると診断された方

妊婦さんの血液採取から特定の先天性疾患の可能性が判別できる母体血清マーカーで陽性になると、確定検査を受けることを推奨されます。

そのため、年齢や過去の妊娠経歴の条件を満たしていなくても、認定機関で出生前診断が受けられます。

先天性疾患を予防する方法はあるのか

結論からお伝えすると、染色体異常による先天性疾患を予防する有効な方法はありません。

ただし、一部の先天性疾患に関しては、日々の生活で予防するだけで発症の可能性を下げることができます。

妊娠初期から葉酸を摂取する

妊娠中は葉酸を積極的に摂取することが推奨されていますが、先天性疾患の一種である神経管閉鎖障害の予防につながるといわれています。

神経管閉鎖障害を発症すると、歩行障害や排便障害、水頭症など日常生活に悪影響を及ぼす症状を引き起こしかねません。

妊娠初期に葉酸の摂取量が少ないとリスクが高まるため、1日400μgを目安に摂取するよう意識するとリスクを最小限に抑えられます。

ブロッコリーやほうれん草など食材からとるほか、サプリメントからの摂取もおすすめです。

ヨウ素の摂取を控える

妊娠中にヨウ素を摂取し過ぎると、甲状腺機能低下を引き起こすリスクがあるといわれています。

わかめや昆布などヨウ素を多く含む食材には注意が必要です。

一方で、まったく摂取しないと胎児の流産や死産につながるため、摂取量に気をつけましょう。

水銀やビタミンAを過剰摂取しない

水銀には胎児の中枢神経の発達を阻害する可能性があり、ビタミンAには催奇形性を引き起こす可能性があるため過剰摂取は厳禁です。

妊娠初期であれば、ビタミンAは1日1,500μgRE以内、マグロやカジキなど水銀を含む可能性のある食材は1週間で50〜100g以内に抑えましょう。

まとめ

この記事では、先天性疾患の基本情報と原因、出生前診断でわかること、予防方法について解説しました。

結論として、妊娠中であっても出生前診断をおこなえば、胎児の先天性疾患の有無を判別できます。

ただし、確定診断の場合は妊婦さんのお腹に針を刺すため、母子ともにリスクが伴います。

まずは、NIPTなどのリスクの伴わない検査方法で疾患の可能性を調べて、確定検査を受けるかどうか検討しましょう。

1度、NIPTナビにご相談してみてはいかがでしょうか?

参考文献

・MSD-先天異常の概要 – 23. 小児の健康上の問題

・北海道大学 環境健康科学研究教育センター – 先天異常の発生状況