妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)って何?症状や予防策を知って不安を解消しよう
妊娠中毒症は、症状が悪化すると母子ともに命に影響する危険な症状です。
予防や対策を知らないまま妊娠中毒症になってしまうと、胎児発育不全や子癇発作といった合併症を引き起こす可能性があります。
妊娠中毒症の原因や予防法について学んでいきましょう。
この記事の内容
妊娠中毒症とは?
初産の人は妊娠中毒症と聞いてもイメージがわかないと思います。
妊娠中毒症とはどのような症状がでるのか、赤ちゃんに影響があるのかなどご紹介いたします。
妊娠中毒症とはどういうもの?
妊娠中毒症は、妊娠中期から後期に見られることが多く、28週以降に気を付けなくてはいけません。
妊娠初期では、自分で症状を見極めることが難しく、定期検査などで発見してもらうことが重要です。
近年は「妊娠高血圧症候群」という名称に変更したため、昔の方には馴染みにくい症状になってしまいました。
妊娠中毒症の症状について
妊娠中毒症の症状としては、「高血圧」、「蛋白尿」、「むくみ」の3つが挙げられます。
以前は3つの症状のうち1つまたは2つに当てはまると、妊娠中毒症として認定されていたので、定期検査に行くと「検尿」、「血圧チェック」の二つを事前に行い、医師が「むくみ」がないかチェックします。
近年の調査により、主な原因が高血圧であることが判明したため、蛋白尿やむくみがあった場合でも、血圧に問題がなければ妊娠中毒症ではありません。
妊娠中毒症の原因
結論から言えば、妊娠中毒症の原因はまだ特定されていません。
最も有力な説は、妊娠15週目までに胎盤の血管が正常通りに作られない、という説です。
出産すると症状が緩和されることから、妊娠が原因ではないかという説もあります。
正常に育っているケースや、発育に問題があるケースであっても妊娠中毒症にならないことがあるので、現在も原因を研究しているところです。
妊娠中毒症は赤ちゃんに影響がある?
妊娠中毒症は、母体だけでなく胎児にも影響が出ます。
例えば、胎児が子宮にいる状態で亡くなってしまう「子宮内胎児死亡」や、体重が2,500g未満で生まれてしまう「低出生体重児」などです。
妊娠高血圧症候群と妊娠中毒症との違いは?
名称が改正されるまでが「妊娠中毒症」で、変更されたあとの名称が「妊娠高血圧症候群」です。
上記でも述べましたが、高血圧が原因であることがわかったため、むくみや蛋白尿であっても血圧が正常であれば、妊娠高血圧症候群ではありません。
妊娠高血圧症候群(HDP)の予防や治療法について
妊娠高血圧症候群になる原因はまだ特定されていませんが、予防することはできるのか、治療法はあるのかについて説明します。
妊娠中毒症を予防するには
必ず効果がある予防法は、現段階ではまだ見つかっておりません。
少しでも可能性をつむぐために、健康管理を維持することが一番の予防法です。
栄養バランスを考えた食事や適度な運動、休息をたっぷり取るように心がけましょう。
妊娠中毒症を治療することはできるのか
治療法としては、「安静にする」、「入院する」、「出産する」の3つです。
・安静にする
軽度な症状である場合は、自宅で療養することになります。
家事や仕事など、とにかくあまり動かず安静にしていることが大切です。
・入院する
重度な症状になる可能性がある場合、入院して経過を見ます。
症状によっても異なりますが、1週間~10日ほど入院し血圧を下げる薬を使いながら状況を判断します。
胎児の状態が悪化しそうな場合は、帝王切開で早急に出産させることが重要です。
部屋の大きさや入院日数によって異なりますが、35万円~50万円前後は費用がかかります。
・出産する
出産すれば症状が緩和されるため、早く出産することが一番の治療法です。
妊娠高血圧症候群(HDP)になりやすい方の特徴
妊娠高血圧症候群になる可能性を秘めている人の特徴について説明します。
塩分やカロリーの摂取量が多い方
塩分やカロリー摂取量が多い人は、妊娠高血圧症候群になりやすいとされています。
一日の塩分摂取量の目安としては、10gを参考にしてください。
人により状態が異なるため、医師に相談して摂取量を判断してもらうことが大切です。
高齢出産の方
年齢が上がるにつれ、障害やダウン症などのリスクが高くなります。
妊娠高血圧症候群も同じく当てはまるため、発病する確率が高くなります。
家族や親族に高血圧や持病がある方
高血圧や糖尿病など遺伝と関係する傾向になるため、妊娠高血圧症候群も発病する恐れがあります。
家族や親族に症状を持っていた経歴がある方は、注意が必要です。
妊娠高血圧症候群(HDP)の他に注意すべきこと
妊娠中は一つの症状だけでなく、胎児に影響が出るあらゆることに注意しなければいけません。
妊娠中に気をつけておくべきことをご紹介いたします。
タバコと飲酒は絶対にしない
喫煙や飲酒は、胎児の栄養や酸素に悪影響を及ぼすため確実に避けるようにしましょう。
タバコを吸っていなくても、副流煙として体内に入る可能性もあるため、パートナーや周りの人にも協力してもらいましょう。
カフェインなど食事管理に気を付ける
カフェインの取りすぎは胎児に影響がある、と指摘されています。
一日の摂取量は明確に決まっていませんが、世界保健機関が設定している摂取量は約300mgです。
カフェインはコーヒーだけでなく、お茶や炭酸ジュースなどさまざまなものに入っているため注意しましょう。
適度な運動でストレスをためない
ストレスはホルモンバランスの乱れにつながるため、適度な運動や休息をとってリフレッシュできる状態を維持しましょう。
過度な運動は身体に負担がかかるため、自分に合った適度な運動が大切です。
妊娠高血圧症候群(HDP)の合併症
妊娠高血圧症候群は、母子ともに影響がある可能性があり、重度な症状になると、どんな合併症があるか説明します。
子癇発作
病気 | 20週目以降に初めて起きたけいれん発作 |
症状 | 胃痛、頭痛、目がチカチカする |
備考欄 | 脳出血も引き起こす可能性がある |
HELLP症候群
病気 | 血液の異常により、肝臓機能が低下する病気 |
症状 | 嘔吐、吐き気、腹痛、胃痛 |
備考欄 | 臓器障害を起こす可能性がある |
常位胎盤早期剥離
病気 | もともとあった位置から胎盤がはがれてしまう病気 |
症状 | 腹痛、出血、子宮が硬くなる、胎児の動きが鈍い |
備考欄 | 胎児が死亡する恐れや、凝固障害を起こす可能性がある |
胎児発育不全
胎児発育不全は、重度の妊娠高血圧症候群により引き起こされる症状です。
胎児に栄養や酸素が行きにくくなってしまい、発育が不十分になってしまいます。
まとめ
妊娠中毒(妊娠高血圧症候群)は未だに原因が特定がされていないため、必ずしも効果的な対策法がないのが現状です。
症状が重症化してしまうと、子癇発作や胎児発育不全といった合併症も発生する可能性があります。
そのため、定期検査で身体の胎児の状態を把握し、早期発見できる体制を整えましょう。
参考文献
・日本産科婦人科学会 – 妊娠高血圧症候群とは?
・東京都福祉保健局 – 妊娠高血圧症候群等の医療費助成
・MSDマニュアルプロフェッショナル版 – 妊娠高血圧腎症および子癇