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妊娠中のお腹の変化|大きさや張り・受診する判断の目安などを解説

妊娠中は胎児が大きくなるにつれて、一番変化が目立つ場所がお腹です。そのため「お腹の状態変化が気になる」「お腹の症状について悩みがある」といった妊婦の方は多いでしょう。

本記事では、お腹の大きさ・張り・受診の判断目安まで、妊娠中のお腹についての気になる情報をご紹介します。順調に経過しているかの判断材料や、日常生活における注意点の参考にしてはいかがでしょうか?

妊娠中のお腹の大きさの変化は?

お腹のふくらみが目立ち始めるのは、妊娠中期ごろからです。妊娠中期に入った妊娠16週から少しふくらみが見立ち始めて、妊娠20週ごろからは勢いよく大きくなってきます。

妊娠後期になると一気にお腹も大きくなり、「仰向けに寝るのが苦しい」「腰や背中の筋肉に負担がかかって腰痛がつらい」といった方が増えてきます。

標準的な体型の方でも、臨月に近づくと腹囲が100cmほどになるケースもめずらしくはありません。少しでも快適に過ごすためにも、就寝時には抱き枕を使用し仰向けを予防する、骨盤ベルトを使用して腰や背中の痛みを防ぐなどの対策が必要です。

腹の張りは2種類に分けられる

お腹が目立たないうちは、まだお腹の張りがどんな感覚なのか分からない方もいるでしょう。次第にお腹が大きくなってくると、徐々に感覚が分かるようになってきます。また、お腹の張りは主に以下の2種類です。

  • 生理的な原因による張り
  • 何らかの危険信号による張り

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生理的な原因による張り

通常、子宮は柔らかく緩んだ状態です。日中、仕事や家事などで、動き過ぎたり働き過ぎたりすると、それが引き金となり子宮が収縮します。しかしこの子宮収縮は、しばらく安静にしていると落ち着いてくる「生理的な張り」であり、心配はいりません。

このほかにも、妊娠に伴い子宮の容積が増えたり、子宮を支えている靭帯が引っ張られたりすることで「お腹の張り」を感じることもあります。

何らかの危険信号による張り

何かトラブルが起きているために、お腹が張っている可能性もあります。たとえば、お腹の張りが安静にしていても1時間以上続く場合、切迫早産が考えられます。また、出血をともなうと、流産や早産の可能性が高いため早めにかかりつけの産婦人科へ連絡をとりましょう。

自分で正常・異常の判断ができないと悩む方は、少しでも気になったらまずは産婦人科へ相談するようにしましょう。

【妊娠時期別】お腹の張りの特徴

お腹の張りは、妊娠超初期〜初期に一番多く感じられます。この時期、外見ではお腹のふくらみは目立ちませんが、子宮の成長が著しいためお腹が張るのです。妊娠中期に頻度はやや落ち着いてきますが、妊娠後期にまたお腹の張りを感じるようになります。

各時期の詳しい特徴は以下のとおりです。

時期特徴
妊娠超初期感覚が分からず「突っ張り感」と表現されることもある。生理的な張りの場合がほとんど。
妊娠初期ボールのような固さを感じると、張っている可能性がある。みぞおちやへそ、下腹部全体に感じる。
妊娠中期頻度が減ってくる。頻回に張る・張りが長い場合はトラブルが起きている可能性がある。
妊娠後期出産に向けて赤ちゃんが下がってくると、腰やお腹の負担が張りを引き起こす。

自身のお腹の張りに不安を感じたら、参考にしてください。

妊娠中のお腹の張り|受診する判断の目安5つ

お腹の張りの原因は、疲労やお腹のしめつけ、胎動などさまざまです。子宮はいつでも時々収縮していますが、週数や程度によっては早産や流産の可能性があります。そのため妊婦さんの自覚症状の訴えが、異常の早期発見にはとても大切です。

ここでは、かかりつけの産婦人科へ相談・受診をした方がよい症状についてご紹介します。

1.休んでも治らない

生理的なお腹の張りであれば、一時的なものであるため安静にしていれば次第に落ち着きます。生理的なものかどうかを判断するためには、1時間くらい安静にして様子を見ましょう。

安静にしても張りが治まらなかったり、一度落ち着いても1時間のうちに複数回張りを繰り返したりする場合は注意が必要です。切迫早産や流産の可能性もありますので、かかりつけの産婦人科に指示を仰ぎましょう。

2.張りに加えて出血がある

妊娠初期は4人~5人に1人は出血を体験するといわれており、異常がなくても出血することはよくあります。また、出血の原因が子宮入口のびらんやポリープといったケースも珍しくありません。

ただし、お腹の張りに加えて出血がある場合、流産や切迫早産などが考えられ注意が必要です。妊娠37週以降は「おしるし」の可能性もあり、その場合は様子を見ても問題ありません。おしるしとは性状の異なるサラサラとした大量の出血がある場合は、常位胎盤早期剥離・前置胎盤などの緊急性の高い出血の可能性があります。

3.普段より痛みや固さの程度が強い

妊娠後期に「お腹が板のように固い」「痛み強く動けない」と、張りの程度が強い場合には注意しましょう。「常位胎盤早期剥離」と呼ばれる子宮壁から胎盤がはがれてしまう病気の可能性があり、非常に緊急性が高い状態といえます。

常位胎盤早期剥離を疑う徴候は以下のとおりです。

  1. お腹の痛みが持続している
  2. 出血の量が多い
  3. 胎動が感じられない

母子ともに命の危険を及ぼす場合があるため、上記の兆候があれば迷わず産婦人科を受診しましょう。

4.発熱をともなう

妊娠中に発熱する原因の1つが「子宮内感染」です。子宮内感染は、腟から子宮内に細菌が入って起こりますが、子宮内で炎症が起こると絨毛膜羊膜炎になります。

これにより、破水や子宮収縮・陣痛を引き起こすリスクが上がり、早産の危険性が高まるでしょう。また、妊娠中の発熱には以下のリスクがあります。

妊娠初期に39.5℃以上の発熱がある妊娠後期の発熱
自然流産胎児の脳または脊髄の異常切迫早産

子宮内感染・風邪などによる発熱でも、切迫早産のリスクを高めるため、日頃からお腹の張りには注意してください。

5.胎動を感じない

お産が近づいてくると、赤ちゃんの頭が骨盤の中に下がり大きな動きは感じにくくなります。しかし、胎動が少し小さくなることはあっても、ゼロになるわけではありません。

昨日まで元気に動いていたのに胎動が減った場合、赤ちゃんが苦しがっているサインの可能性があります。胎動の回数を自身で数える方法(胎動カウント)があり、簡単に実践できるアプリも出ています。胎動をチェックする際は、安静にして確認しましょう。不安な場合は、状況を説明し産婦人科で確認してもらってください。

妊娠中にお腹が張ったらどうする?

お腹が張った時の適切な行動に悩んでしまう方は少なくありません。そこで、すぐにできる対処方法をご紹介します。

対処方法詳細
安静にする横になって休み、全身をゆるめるように力を抜く。横になれないときは、できるだけ座り楽な姿勢をとる。
お腹をさすらないお腹をさする、軽く押すなどの行為は、子宮収縮を促すためNG。
体を温める体が冷えると血管が収縮して、お腹が張りやすくなる。腹帯・羽織り・飲み物・靴下などで、冷え対策をする。
ゆったりした服を着用する洋服でお腹がしめつけられて張ることがある。時期に合わせてインナーや洋服を見直す。
便秘を予防・解消する妊娠によるホルモン変化の影響で便秘になりやすい。便秘がお腹の張りを引き起こすこともあるため、食事や運動で予防・解消に努める。
おっぱいマッサージを中断するバストへの刺激は子宮収縮を促すホルモンを分泌させる。お腹が張ったら続けず中断する。

お腹が張った時の参考にしてください。

まとめ

妊娠中のお腹は、胎児の成長による大きさの変化だけではありません。目には見えない子宮収縮によるお腹の張り・ホルモンバランスの変化などさまざまです。

安心して妊娠期を過ごすためにも、お腹の変化や受診すべき判断の目安を知ることは大切です。お腹の状態の異常サインを知り、必要時は産婦人科の指示を仰ぎながら、母子ともに健康な出産にお役立てください。

参考文献

・産婦人科診療ガイドライン – 産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020

・公益社団法人 日本産科婦人科学会 – 前置胎盤