13トリソミー(パトウ症候群)とは?診断されたら?
「13トリソミー」とは、染色体異常の一つで、赤ちゃんの発育や成長に影響を与える疾患です。今回は、13トリソミーの原因、症状、治療法、社会的支援について詳しく解説していきます。
この記事の内容
13トリソミー(パトウ症候群)ってどんな病気?症状は?
13トリソミー(パトウ症候群)は生まれつき体に異常がある先天性疾患の一つです。
先天性疾患の中でも症例数が少なく、聞きなじみがない人も多くいると思うので、
まずは13トリソミーの基本情報を確認してみましょう。
13トリソミーの代表的な症状
13トリソミーの赤ちゃんは、一般的に重度の発達障害と知的障害を抱えています。
外見の特徴は、口唇裂(発達未熟により唇に裂け目が残る)、無眼球症、小頭症、多指症などがあります。特に顔周りに症状が現れることが多いです。
また、患者の80%に心室中隔欠損症などの発達異常が原因となる重度の心疾患が合併しています。この心疾患が患者の寿命に大きく影響を与える因子です。
他にも、停留精巣、へそヘルニア、腎のう胞、けいれんなど、さまざまな合併症の可能性があります。
13トリソミーの治療法は?
現在の医療では根本的な治療法はないとされています。
赤ちゃんそれぞれの合併症に対して、症状を和らげるなどの支持医療が用いられます。
13トリソミーの赤ちゃんの80%以上は生後1ヶ月以内に亡くなってしまいます。
また、1年以上生存できる患者も10%未満と極めて低い確率です。
しかし近年、先天的な心臓疾患の手術や、投薬などの治療が行われるようになってきており、20歳を超えて元気に暮らしている人もいます。
家族とよく話し合い、意見を尊重した上で、治療方針を決めていくことが大切です。
13トリソミーの原因は?
13トリソミーは、突然変異による染色体数の異常が原因です。
染色体は人間の設計図とも言えるもので、遺伝情報がすべて入っています。
人の染色体は、本来23種類2対の計46本で構成されていて、1〜22番まで長い順に番号がついています。
しかし、何らかの異常で本来2本ずつである染色体が3本に増えてしまうことをトリソミーと呼び、13番目の染色体が増えてしまうことにより発症します。
13トリソミーが起こる確率は、約5,000人〜12,000人に一人と言われ、
これは同じトリソミー疾患の中でも一番珍しい確率です。
13トリソミーとほかの染色体異常との違い
同じトリソミー疾患では、他にも18トリソミー(エドワーズ症候群)や21トリソミー(ダウン症)があります。
有名なダウン症も、染色体数の異常が原因となる疾患で、その確率はおよそ約700人に一人と、同じ染色体異常疾患の中でもっとも患者数が一番多いとされています。
ダウン症患者の平均寿命は50歳を超えますが、これは近年の医療技術の発達により、
先天性心疾患が克服されるようになったからです。
また、他にも染色体異常には、染色体が一本しかないモノソミー疾患や、
染色体の一部が欠けていたりなど様々な疾患があります。
13トリソミーの診断は?
13トリソミーの診断はどのようにするのでしょうか。
先天性疾患の検査方法についてまとめました。
13トリソミー(パトウ症候群)の検査法
13トリソミーの多くは、妊婦検診などの超音波(エコー)検査によって疑いをもたれることが多いです。
以下のような胎児の成長の遅れなどが見られます。
- 口唇・口蓋裂
- 小頭症
- 小(無)眼球症
- 心臓の奇形
- 羊水過多
- 多指症
- 腎のう胞(腎臓の異常)
- 単一細動脈
- 臍帯ヘルニア
13トリソミーは18トリソミー(エドワーズ症候群)と所見が似ているため、
特に「小頭症」、「口唇裂」などの顔周りの奇形が診断に重要となります。
非確定的検査
非確定的検査は、スクリーニング検査として用いられ、
患者のリスクが低いことが特徴です。エコー検査もこの非確定的検査に含まれます。
非確定的検査の陽性的中率はNIPT(新型出生前診断)の登場などにより、
年々精度が向上していますが、確定的な結果ではないことにご注意ください。
NIPTのほかにも、血液マーカー検査やコンバインド検査などがあります。
確定的検査
確定的検査は、検査結果によって確定診断を得られる検査のことです。
しかし0.2%〜1%程度の流産のリスクが伴います。
羊水検査や絨毛検査などがこれに当たり、検査材料を体内に細い針などを指し採取します。この採取時に、赤ちゃんや母体を傷つける可能性があるので実施を検討している人は、よく医師に相談しましょう。
新型出生前診断(NIPT)について
近年注目が集まっているのはNIPT(新型出生前診断)です。
母親の腕から採血をするだけで、13トリソミーなど染色体異常を調べることができ、
流産のリスクは一切ありません。
また、特にトリソミー疾患の陽性感度は高く、ダウン症に関しては99%と病気を見逃す可能性は極めて低いです。
NIPTは次世代シークエンサーという最新のDNA解析を用いて、母親の血液に遊離しているDNA断片を読み取ることにより、その高い陽性率を誇っています。
13トリソミー(パトウ症候群)と診断されたら
実際に、自分の赤ちゃんが13トリソミーと診断されたらどうしたらいいのでしょうか。
13トリソミー患者とその家族に対する社会的支援についてまとめてみました。
13トリソミーの社会的支援
近年の医療技術の発達で、13トリソミーの治療方針が変わりつつあります。
かつては、「積極的な治療を控える」としていましたが、
現在は、「状態に応じた治療を提供する」という方針で、患者の状態と出生後のケアによっては長期生存の可能性も示唆されています。
そのため、地域の療養施設やケア保育園などに入ったり、
訪問看護や訪問ヘルパーを利用して自宅療養をするなどの選択肢も増えてきています。
また、13トリソミーの子どもとその家族に対する支援団体もあります。
同じ疾患と向き合っている人たちと不安を共有することもでき、
一人で抱え込む必要はありません。
13トミソリーの子を支援する親の会
13トミソリーの子を支援する親の会は1988年に、13トリソミーの子供を持つ両親たちで発足しました。
会員の全員が13トリソミーのご家族なので、社会生活や治療など様々な不安を相談することができます。
Ohana kids
Ohana kidsは、自身も13トリソミーの子供を持つ友岡宏江さんが立ち上げたNPO法人です。
13トリソミー患者だけでなく、発達障害や知能障害患者と、その家族に向けた児童発達支援と、放課後等デイサービスを提供しています。
障害を持つ子供と、その母親のコミュニティを作る活動をされています。
まとめ
13トリソミー(パトウ症候群)は染色体数の異常によって引き起こされる先天性疾患です。
その確率は約10,000人に一人と少なく、多くの患者が生後1年以内に亡くなってしまいます。
しかし、近年の医療の発達により、長期生存が可能となってきました。
先天性疾患の場合、早めの診断と合併症の治療に早く取り組むことが、予後に大きく影響します。
ご家族と意見を尊重しあい、ベストな治療法をみつけていくことが大切です。
参考文献
日本人類遺伝学会ートリソミー18 とトリソミー13
MSD-13トリソミー