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ダウン症の合併症とは?症状と治療法について解説!

ダウン症は染色体異常症の中で最も発生率の高い疾患であり、国内にも80,000人の患者がいると言われています。

ダウン症にはさまざまな身体的特徴のほか、日常生活や寿命に関わる合併症にかかる可能性が高い疾患です。

本記事ではダウン症の合併症とその治療法を解説いたします。

ダウン症について知りたい方、合併症への対処法を知りたい方はぜひ参考にしてください。

ダウン症とは

ダウン用とはどのような疾患か簡単に解説していきます。

染色体異常により生じる先天性疾患

ダウン症は番染色体の異常により生じる先天性疾患のひとつであり、出生児の600〜800人に1人が発症すると言われています。

21番目の染色体が多くなる、もしくは構造に問題が生じることから、21トリソミーとも呼ばれています。

ダウン症は染色体異常症の中でもとりわけ発生率の高い疾患であり、予防や根本的な治療はできないものの、対症療法や支援制度などの対策が用意されています。

身体的特徴がみられたり合併症が出現したりしますが、人並みの寿命を全うし、学校生活や就業など社会生活を行う方もたくさん居る疾患です。

さまざまな合併症を伴う

ダウン症は主に特徴的な顔つきや低身長などの身体的特徴がみられる疾患ですが、特に注意しなければならないのが、多種多様な合併症の存在です。

染色体異常症の多くは臓器や内分泌系の合併症を引き起こし、場合によっては生命予後にも関わります。

特に心臓や消化器、血液系に関わる疾患は早期発見・治療が必要であり、ダウン症患者の寿命に大きく関わってきます。

合併症の発生には個人差があり、症状の重い方もいれば全く症状の無い方もいます。

ダウン症の合併症

ダウン症の合併症にはどんなものがあるか紹介します。

心疾患

ダウン症の合併症では以下のような心疾患がみられます。

  • 心室中隔欠損症
  • 心房中隔欠損症
  • 房室中隔欠損症
  • 動脈管開存症

心室中隔欠損症、心房中隔欠損症はいずれも重症の場合手術が必要となります。

欠損の程度が少ない場合は成長に伴いふさがる可能性があるため経過をみますが、重症例では出生後すぐに手術が必要です。

房室中隔欠損症はダウン症患者の45%が罹患する疾患であり、多くの場合手術治療を行います。

消化器疾患

消化器疾患では以下のような症状が現れます。

  • 十二指腸閉鎖
  • 食道閉鎖
  • 鎖肛
  • ヒルシュスプルング病

ダウン症における消化器疾患は腸閉塞を引き起こします。

中でも十二指腸閉鎖は発生頻度が高く、生後24時間以内に嘔吐がみられた場合はこれを疑います。

消化器疾患の場合も、保存療法で経過を追うことが難しい場合は手術が必要です。

血液疾患

  • 一過性異常骨髄増殖症
  • 白血病
  • 鉄欠乏性貧血

一過性異常骨髄増殖症は心疾患と併発することが多い血液疾患であり、白血球数の異常や肝機能障害などを呈します。

ダウン症の患者は急性白血病の発症確率が通常の10-20倍高いとされており、血液検査で発覚した場合は専門的な治療が必要です。

神経系疾患

  • てんかん
  • 発達障害

ダウン症患者に生じるてんかんは「ウエスト症候群」や「点頭てんかん」とも呼ばれ、筋肉の収縮を繰り返す点頭発作が生じます。

ダウン症患者には自閉症や注意障害などが生じやすく、IQも通常の子供の半分程になると言われています。

言語の発達もゆっくりであり、不明瞭で抑揚のない喋り方となるのが特徴です。

泌尿器疾患

  • 尿道下裂
  • 停留精巣

尿道下裂、停留精巣はいずれも男児に発症する泌尿器疾患です。

尿道下裂は尿道口が先端よりも根本側に開口する形成異常であり、手術治療が行われます。

停留精巣は精巣が陰嚢に降りてこない状態ですが、成長に伴い正常化することもあります。

自然に改善しない場合は手術が必要です。

内分泌系疾患

  • 甲状腺機能低下症
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • 高尿酸血症(痛風)

甲状腺機能低下症はダウン症患者に多くみられる合併症であり、体重増加や低体温などが引き起こされます。

糖尿病も同様に頻発する合併症であり、1型糖尿病の発症率は約5倍と高い割合となっています。

また、筋肉量が少なく肥満児の多いダウン症患者においては2型糖尿病も発症しやすいため注意が必要です。

また、成人のダウン症患者の半数にみられる高尿酸血症(痛風)も、水分の摂取や定期的な血清尿酸値の測定などが必要です。

眼科疾患

  • 遠視
  • 近視
  • 乱視
  • 斜視
  • 眼振
  • 白内障

ダウン症患者の眼科疾患罹患率は46〜100%と言われており、年齢とともに発症率は上がる傾向にあります。

斜視の罹患率は5〜47%とされており、主に内斜視がみられます。

また、先天性白内障の発症率は通常の10倍です。

耳鼻科疾患

  • 難聴
  • 中耳炎
  • 滲出性中耳炎
  • 喉頭軟化症

ダウン症患者の多くは聴覚異常を伴います。

アメリカでダウン症患者1088名に聴力検査を実施したところ、84%にあたる921名に異常が認められたと報告がされています。

喉頭軟化症は、気道である喉頭が柔らかく、気管が狭められてしまうために生じる喘鳴のことです。

整形外科疾患

  • 低身長
  • 偏平足
  • 環軸椎不安定症
  • 漏斗胸

ダウン症患者は骨格の小ささやホルモン分泌の不良により、低身長となりやすいことが特徴です。

環軸椎不安定症とは、頭を支える頚椎のうち第1・第2頚椎の関節が不安定となり、脱臼や亜脱臼を引き起こす症状のことです。

ダウン症患者のうち10〜30%が環軸椎不安定症をきたすと言われており、場合によっては脊髄へ影響し運動麻痺などが生じます。

ダウン症の合併症の治療方法

ダウン症にはさまざまな合併症があることがわかりました。

ここからは合併症の対症療法や治療方法について紹介します。

手術による臓器の治療

心室中隔欠損症や心房中隔欠損症などの先天性の心疾患や、十二指腸閉鎖などの消化器疾患に対しては、出生後間もないころから手術治療が検討されます。

特に心疾患は生命予後に関わるため、重症の場合は生後すぐに欠損を塞ぐ手術が行われます。

生後すぐの手術は子供の体にかかる負担が大きくリスクを伴うため、症状が軽い場合は投薬治療で様子をうかがい、ある程度成長してから手術を行う場合があります。

服薬・投薬による内分泌系疾患のコントロール

糖尿病や高脂血症、甲状腺機能低下症などの内分泌系の疾患に対しては、投薬や服薬による対症療法が行われます。

内服薬で様子をみることができる患者も居れば、1型糖尿病のように、若年から発症し継続的にインスリン治療を実施しなければならない患者も居ます。

内分泌系は定期的に検診を受け、数値が変わっていないかどうか確認することと、症状に対して適切に薬を処方することが重要です。

ホルモン療法による成長促進

ダウン症の子供は、低身長や全身的な筋力の未発達が生じる場合が多いです。

低身長に関しては、ホルモン補充療法により成長ホルモンを補うことで平均身長へ近づけることができます。

ダウン症の原因

ダウン症の原因となる染色体異常について解説します。

21番目の染色体異常が原因

ダウン症の原因は21番目の染色体異常です。

染色体異常の発生は明確な原因がない突然変異とされていますが、出産時の母親の年齢が発生率に関与していると報告されており、母体の年齢が高くなると染色体異常が生じやすくなります。

厚生労働省の発表しているデータによると、母親が20歳で出産した場合は1667人に1人

の割合でダウン症の子供が生まれるのに対し、30歳では952人に1人、40歳では106人に1人と大幅に増加すると報告されています。

親から遺伝する場合もある

ダウン症の染色体異常には型があります。

最も割合の多い「標準型」、正常な染色体と異常をきたした染色体が混在する「モザイク型」、21番染色体のうち1本が他の染色体にくっつく「転座型」の3つがあり、このうち「転座型」に遺伝の可能性があるのです。

ダウン症の今後の課題と解決策

ダウン症の今後の課題と、現在期待されている治療法について解説します。

寿命の増加に伴う認知症が問題となる

1970年ごろまでは、ダウン症患者の寿命は30歳程度とされていましたが、近年では50歳以上と改善しており今後も延びていくと考えられています。

寿命が増加することにより問題となるのが認知症です。

ダウン症患者は健常者と比較し認知症になる確率が高いとされており、60代を迎える前に4人に1人が罹患すると言われています。

IPS細胞による治療が期待されている

ダウン症は先天性の染色体異常症であり、根本的な治療法は確立されていません。

しかし、フランスとスイスの研究所により、ダウン症候群患者に生じる症状を改善する治療が研究されています。

この研究によって、将来的に患者の認知症や嗅覚低下を改善する可能性があると期待されています。

まとめ

ダウン症はさまざまな合併症を伴う疾患であり、症状が出現する頻度や程度にも個人差があります。

なかには生命予後や日常生活に関わる重大な症状もあるため、定期的な検査や日ごろの健康状態をよく確認し、必要に応じて治療を行っていく必要があります。

ダウン症は生涯付き合っていく必要があるため、症状や治療法をよく理解しておくようにしましょう。

参考資料

・Kathryn L. Kreicher, Forest W. Weir, Shaun A. Nguyen, et al-Characteristics and Progression of Hearing Loss in Children with Down Syndrome. J Pediatr 2017;193:27-33.PubMed

・Silvia Natsuko Akutsu, Tatsuo Miyamoto, Daiju Oba, Keita Tomioka, Hiroshi Ochiai, Hirofumi Ohashi, Shinya Matsuura-iPSC reprogramming-mediated aneuploidy correction in autosomal trisomy syndromes,PLOS ONE

・独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 紀要第8号-50 歳を過ぎたダウン症者の健康管理に関する研究