遺伝の仕組みを徹底解説!遺伝子で何がどこまで決まる?親から子へ引き継がれるものとは?
遺伝という言葉は日常でもよく耳にするかもしれませんが、その正確な意味をご存知でしょうか。
あなたに何かコンプレックスを持っていたら、子へ遺伝するのか、気になるのではないでしょうか。
今回は、遺伝の仕組みと人間のどの要素が遺伝の影響を受けているのかについて解説いたします。
少しでも不安が解消され、生まれる子を迎え入れる準備にぜひ役立ててください。
この記事の内容
遺伝とは
遺伝とは、生物が親から子へと特定の特徴や情報を伝えるメカニズムです。
親の形質や性格は、遺伝情報となって子に引き継がれ、この遺伝情報のことを遺伝子と呼びます。
では、具体的にどのように遺伝情報は引き継がれるのでしょうか。
遺伝子は染色体の一部
遺伝子は染色体の一部として存在しています。
そして、その遺伝子はDNAによって構成されています。
例えるなら、DNAが遺伝情報を書き記す文字で、ノートが染色体のようなものです。
では染色体とはなんでしょうか。
染色体は、核内に存在する遺伝物質であり、DNAとタンパク質から構成されています。
人間には37兆個以上の細胞があるというのが定説ですが、細胞に含まれた染色体はすべて同一です。
また、人間の体細胞は通常23本を2セットの合計46本の染色体を持ち、各染色体には数百万以上の遺伝子が存在すると言われています。
遺伝の仕組み
遺伝、すなわち遺伝子の継承は、染色体の形で行われます。
親から子へと遺伝子が伝わる過程では、まず親の染色体が父と母それぞれで複製されます。
通常の体細胞分裂では、染色体は46本すべてが複製されますが、精子と卵子の細胞が作られるときは、染色体は半分の23本のみが複製されます。
これを減数分裂と呼びます。
その後にそれぞれの染色体を23本ずつ子どもは引き継ぎます。
このプロセスによって、新たな組み合わせの遺伝子が生成され、個体の多様性が維持されるのです。
常染色体優性遺伝
染色体は、22本1対の常染色体と、23番目の最後の1対の性染色体に分けられます。
常染色体は人間の形質や特性のほとんどが含まれており、性染色体はその名のとおり性別を決定する情報が含まれています。
常染色体優性遺伝とは、遺伝子が常染色体上に位置し、その遺伝子の1つのコピーが優性の特徴を現します。
母からもらった染色体に常染色体優性遺伝子が存在したとしましょう。
この時、父からもらった染色体の相補的な情報がどんな遺伝子だろうと、母の遺伝情報が発現するのが常染色体優性遺伝です。
常染色体劣性遺伝
常染色体劣性遺伝とは、遺伝子が常染色体上に位置し、その遺伝子の2つのコピーが劣性の特徴を現します。
つまり先ほどと逆で、どちらかの親一方から常染色体劣性遺伝子を引き継いだとしても、片一方の相補的な遺伝子が発現します。
常染色体劣性遺伝子が発現するのは、両親から共に同じ常染色体劣性遺伝子を引き継いだ場合のみです。
X連鎖性劣性遺伝
X連鎖性劣性遺伝とは、遺伝子がX染色体上に位置する劣性遺伝子です。
劣性遺伝子の性質は、両親ともに同じ劣性遺伝子を引き継がなければ、発現しないことにあります。
女性の場合は、性染色体の組み合わせはX染色体とX染色体のため、常染色体劣性遺伝子と同じメカニズムを取ります。
しかし、男性の性染色体の組み合わせはX染色体とY染色体のため、X連鎖性劣性遺伝子に対する相補的な遺伝子が存在しないため、必ず発現します。
そのため、母親がX連鎖性劣性遺伝子の保因者かつ、子どもが男の子の場合、50%の確率で同じ形質を発現します。
代表的なX連鎖性劣性遺伝の病気に血友病があります。
突然変異とは
突然変異とは、生物の遺伝情報が変化することを指します。
DNAレベルで発生する場合や染色体レベルで発生する場合など様々です。
突然変異の原因は、染色体の複製が行われるときにコピーミスが発生することにあります。
しかし、突然変異が必ずしも発現に影響を及ぼすわけではなく、実際の体には全く影響がない突然変異もあります。
逆に、たった一つのDNAの変化によって大きな影響を及ぼす可能性もあるのです。
人間が生きている過程で発生する突然変異は、後天的変異と呼ばれ主に癌などの原因になります。また後天的変異は子どもに遺伝することはありません。
遺伝性疾患とは
遺伝性疾患とは、先天的な突然変異により発症する疾患のことを指します。
遺伝性疾患は2つのパターンに分けられます。
1つ目は、両親のどちらかが遺伝性疾患の因子遺伝子を持っていて、それが子どもに引き継がれる場合です。
この場合は、親と子で同じ病気が発症する場合もあれば、親は発症せず、子どもの遺伝子の組み合わせで初めて病気が発症する場合もあります。
2つ目は、親の精子と卵子が作られるときに突然変異が発生する場合です。
この場合は、親の元々持っていた遺伝子とは関係がない突発的な発生が原因になります。
ダウン症などの染色体異常疾患の多くは、このケースだと言われています。
DNA異常
DNAにおける先天性遺伝疾患は、1つの遺伝子の変異によって引き起こされる単一遺伝子疾患と、複数の遺伝子異常によって引き起こされる他因子遺伝疾患が知られています。
具体的な例としては、鎌状赤血球貧血や筋ジストロフィー、先天性代謝異常などが挙げられます。
後天的なDNA突然変異は癌の原因と呼ばれています。
この癌を引き起こす遺伝子は、ドライバー遺伝子と呼ばれ、がん治療における手がかりとして研究が進められています。
染色体異常
染色体異常には質的な変化と、数的な変化があります。
染色体数的異常では、減数分裂の時に染色体の数が通常の状態と比較して増加または減少しています。例えば、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)は、それぞれ21番の染色体、18番の染色体が3本になり、染色体の合計が47本になってしまう病気です。
また、染色体の一部が欠失したり、入れ替わったりすることを染色体質的異常と呼び、代表的なものに猫泣き症候群(5p-症候群)があります。
遺伝子で何が決まる?
遺伝は私たちの外見や内面、そして病気の発症にも関与しています。
以下では、遺伝によって決まる要素について詳しく説明します。
外見で遺伝する要素
私たちの外見は、遺伝によって大きく影響を受けます。
遺伝子が持つ情報が体の構造や特徴の形成に関与し、親から子へと受け継がれます。
例えば、目の色や髪の色、身長などは、遺伝子のバリエーションによって異なる特徴が現れます。
また、顔の形や体型も遺伝によって決まる要素と言えます。
内面で遺伝する要素
遺伝は私たちの内面的な要素にも影響を及ぼします。
人格の特徴や傾向、認知能力などは、遺伝的な要素が関与しています。
研究によれば、性格特性や認知能力の50%が遺伝子によって影響を受けることが示されています。
ただし、これらの要素は環境との相互作用も重要であり、純粋に遺伝のみによる影響ではありません。
病気で遺伝する要素
遺伝は病気の発症にも関与しています。
有名な先天性疾患だけではなく、遺伝子によって将来かかりやすい病気やかかりづらい病気があると言われています。
例えばADHD、てんかん、糖尿病、がんなど、様々な疾患が遺伝子によって影響を受けていることが知られています。
これらの疾患は家族に集団的に見られることがあり、家族歴や遺伝子検査によってリスクを評価することができるのです。
ただ、これらすべての要因は遺伝子によってのみ決まるものではありません。
少なからず環境の要因も受けることに注意しましょう。
よくある勘違い
遺伝子には沢山の情報が刻まれており、その謎の多くはいまだに加盟されていません。
そのため、遺伝に関する理解には、いくつかの勘違いや誤解が存在します。
遺伝子ですべてが決定される?
遺伝子は私たちの外見や内面、さらには病気や薬に対する体質など様々なことに影響を与えます。
しかし、遺伝子だけですべては決まりません。
環境や生活習慣によって変化する要因も同じくらい重要な要素です。
例えば、遺伝的な素質に優れた人でも、適切な環境や教育を受けなければ才能を活かすことができないこともありますし、逆もまた然りなのです。
病気の人にしか突然変異はない?
突然変異は、病気の人に限らず、健康な人にも起こることがあります。
遺伝子変異の全てがマイナスな要因に働くとは限らないのです。
人間や他の生物たちが、ここまで進化してこれたのは突然変異と環境適応の歴史でもあります。
人間だけで見ても、地域による人種の差は激しく、これらは歴史上どこかで発生した突然変異が、環境に適応して多種多様の進化を遂げたという事なのです。
突然変異が起きると必ず病気になる?
突然変異が起きたからといって、必ずしも病気になるわけではありません。
突然変異が発生した場合でも必ず発現に至るわけではなく、さらには常染色体優性遺伝のような発現率が高い突然変異でも、なぜか症状が現れないこともあります。
実際には、多くの突然変異は無害であり、人々の遺伝的な多様性を豊かにしています。
まとめ
遺伝はDNAや染色体によって、遺伝情報が親から子に引き継がれていきます。
遺伝子は様々な要素に影響を与えており、外見、内面、体質など人間のほとんどが遺伝子に影響されていると言っても過言ではありません。
しかし、人間の性質は遺伝情報だけで全てが決定するわけではなく、環境要因も同じくらい重要な要素なのです。