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切迫早産とは?予兆や治療法・予防法について解説

母体の感染症や最近増えている高齢出産など、切迫早産になってしまう原因はさまざまなものが考えられます。

切迫早産は早産の手前の段階ですが、早産と同様に赤ちゃんの命にもかかわり、健康な子どもを出産できなくなってしまうリスクが発生します。

それを防ぐためには、切迫早産の予兆や症状、治療法、予防法などについて知り、理解しておく必要があるでしょう。

早産はすべての妊娠の5%に起こるとされており、早産になる可能性が高い状態の切迫早産はそれよりも多いことが考えられます。

切迫早産の原因や予兆、禁止事項について解説します。

切迫早産とは?早産や流産とはどのように違うのか

切迫早産のほかにも、早産や流産など妊娠中に起こると危険とされる状態はいくつもあり、妊婦さんはその危ない状態にならないように常に注意しなければいけません。

切迫早産とはそもそもどんなものか、早産と流産の違いや週数で変わる赤ちゃんへの影響についてもあわせて解説していきます。

そもそも早産とは何か

早産とは、正期産よりも早く赤ちゃんが産まれてしまうことです。

正期産は妊娠37週から41週6日までに出産することで、この時期に産まれた赤ちゃんは健康で適正な体重で産まれる可能性が高いでしょう。

それに対し、早産は赤ちゃんが何らかの原因で、37週未満で産まれてしまうことを指します。早産はさらに2種類に分かれ、陣痛によって出産してしまうことを「自然早産」、発育不全や母体の問題で医師が早産をさせることを「人工早産」と呼びます。

切迫早産とは

切迫早産は妊娠22週から37週の間に赤ちゃんが産まれそうになっている状態、つまり早産になる可能性が高い状態のことです。まだ産まれてはいない状態で産まれそうになっているのが切迫早産で、同じ時期に産まれてしまったのが早産ということになります。

早産をしてしまって赤ちゃんの大きさや状態が良くないと医療処置が必要となるため、切迫早産になったらできるだけ早産に進むことを避けなければいけません。

このほかに、42週を過ぎて出産される「過期産」にも注意することが大切です。

流産とは

流産は妊娠22週未満で妊娠が継続できなくなってしまうことで、早産との違いは週数です。

流産の80%が妊娠12週までと妊娠初期に起こり、流産をする確率も20代が8%~20%に留まるのに対し、40代では30%と年齢があがるにつれてリスクも上がっていきます。なぜなら、高齢になると健康な卵子が排卵できる確率が減っていくからです。

妊娠12週未満に起こる流産は染色体異常であるため、胎児側に原因があることが多いです。

赤ちゃんが助かる確率は週数で変わる

早産になった週数によって、赤ちゃんが助かる確率は変わります。早産の赤ちゃんが助かる確率を上げたり、医療処置が必要とならない状態で産んであげたりするには、赤ちゃんの成長が進んでいることが重要です。

したがって、妊娠週数が長いほど赤ちゃんが助かる確率高くなります。たとえば、妊娠24週から妊娠25週の赤ちゃんは生存率が86.5%であるのに対し、妊娠30週を超えると生存率が97%まで上がります。

さらに、妊娠9か月にあたる妊娠32週から妊娠35週では、医療処置が不要となる場合もあるほどです。ただし、すべての赤ちゃんが健康というわけではなく呼吸や発達に障害がある恐れもあるため、この時期でも注意が必要とされます。

切迫早産の原因とは

切迫早産の原因はひとつだけではなく、早産を予防するためにはさまざまなことに気をつけなくてはいけません。そのなかでも近よくある3つの原因をご紹介します。

多胎妊娠

多胎妊娠とは、子宮に2人以上の複数の胎児がいる状態です。

多胎妊娠では合併症が起こりやすく、子宮が過度に大きくなってしまい子宮収縮が起こるリスクが高まります。

母体には腎臓などが圧迫されてしまうリスクがあり、胎児には胎児発育遅延が起こりやすくなるため、合併症が起こったときには治療をしなければなりません。

感染症

感染症は切迫早産の原因の約8割だと言われています。

感染症は膣炎からどんどん広がっていき、羊水から臍帯、胎児感染にまで発展してしまいます。

感染症の種類は多く、膣内に誰もが持っている善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れることで起こる「絨毛膜羊膜炎」や性感染症などが主な感染症の原因です。このような感染症が原因で、やむを得ずに早期に出産しなければいけないこともあるので注意しましょう。

また、インフルエンザなどにも気をつけ、ワクチン接種などで積極的に感染症を予防してください。

高齢出産

最近は晩婚化が進んでいることから、高齢出産をする方も増えています。高齢出産は自然妊娠の確率を下げ、妊娠したとしても流産や早産の危険をはらんでいます。

しかし、35歳になるまで安心という訳ではなく、30歳を超えてからは妊娠への危険性も高くなってくるため、事前に高齢出産の注意点や予防策を確認しておきましょう。

切迫早産の予兆とは

切迫早産に自覚症状がない妊婦さんもいますが、自覚症状で多いものを予兆としてまとめました。下記の症状に当てはまる場合、早めに産婦人科を受診しましょう。

おりものの異常

切迫早産の予兆のひとつとして、おりものの異常があります。このときのおりものは通常と違い、悪臭を伴います。

妊婦さんのなかには、これも妊娠で起こることの一つだと思い見逃してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、妊娠が順調であればおりものから悪臭といった異常は見られません。

悪臭のするおりものは、切迫早産の原因のひとつである感染症を疑う必要があります。少しでもおりものに違和感を覚えたら、病院で相談するようにしましょう。

お腹が張る

お腹が張る症状は妊娠中には判断が難しいかもしれません。しかし、つらさを感じるほどのお腹の張りは、子宮口が開いて切迫早産が起こっている可能性もあるので注意が必要です。

切迫早産の原因のなかでも、お腹の張りは危険なものなのか自分ではわかりにくいものです。しかし、頻繁なお腹の張りや痛みは切迫早産のサインです。

お腹の張りを我慢していて医療機関を受診したらすぐに入院を勧められたという方もいるので、仕事や日常生活でも無理をせず安静にするようにしてください。

腰や下腹部の痛み

切迫早産の症状として、下腹部の痛みを生じることがあります。これは、生理痛に似た痛みで、子宮収縮が起こっている可能性があるため見逃せない症状です。

切迫早産の場合には陣痛の前に破水が起こるため、急激な痛みには注意してください。破水が起こると早産が始まってしまうため、その前に対処しなければいけません。

また、腰痛は神経を圧迫することで起こります。ストレスで交感神経が優位になっている妊婦は、内臓への血流量が減少し骨盤の血流量が増加しています。そして、それが神経を圧迫する原因となっているのです。

切迫早産の治療法

切迫早産の治療法は安静にすることを含め、症状の重さによって異なります。その対応には投薬や入院などがあります。投薬に加えて超音波エコーで様子を見ることも対応のひとつとして挙げられます。

軽い症状から重度の症状までの切迫早産の治療法についてまとめました。

投薬

切迫早産の治療では投薬が行われますが、実は日本では未承認のものもあり、予防効果があることが明確であるとは言えないものがほとんどです。しかし、投薬が必要であると判断されたら、それらを使って治療を行います。

黄体ホルモン療法では、膣へ錠剤を投入します。また、黄体ホルモンと似た成分を筋肉注射する病院もありますが、海外で行っている膣への投入とは投与量などが異なるため、確実に効果があることが実証された訳ではありません。

ステロイド剤の注射は、妊娠34週未満の早産が予想されるときに使われます。これを使って胎盤を通して薬を投入し、胎児の障害を改善する手助けや発達のサポートを行います。

安静にする

出血やお腹の張りなどの症状が出てきたら、安静にしなければなりません。最初は自宅安静を指示されることが多いですが、改善しない場合には入院安静を指示されます。

安静にすることも治療のひとつで、過ごし方に制限がかかるので生活に注意しなければいけません。重症になると、ベッドの上でしか移動できないほどの制限がかかります。

点滴をしなければいけないほどの状態になると入院安静を指示されますが、基本的には1週間単位で医師の指示のもとで自宅安静をして様子を見ていきます。

入院するケースも

「安静」と聞くと自宅でゆっくりするイメージが強いですが、切迫早産は早産しそうになっている危ない状態であるため、入院を余儀なくされるケースも少なくありません。

入院するケースは重症で経過を病院で見なければいけない場合や、超音波エコー検査や血液検査、NST、点滴を受けなければいけない場合です。

入院する場合は自宅安静のときよりも生活に制限もかかり、危ない状態なので医師の指示を守ってできるだけ早産を防ぎましょう。

切迫早産での禁止事項とは

切迫早産では日常生活もさまざまな制限がかかり、ストレスを感じる妊婦さんも少なくありません。ストレスも切迫早産の原因のひとつであるため、上手くストレスと付き合っていくことが大切です。

日常生活での制限が多い

切迫早産では、いつもなら日常生活で問題がないとされていたことでも制限され、運動はもちろん、入浴や家事にも制限がかかるでしょう。たとえば、入浴は切迫早産が比較的軽い状態であれば、シャワーだけなら許可されるなど程度は人それぞれ異なります。

切迫早産の場合は自己判断での安静は避けるべきで、医師にどの程度安静にしたら良いかを確認しましょう。切迫早産の予兆が起こったらすぐに主治医の診察を受け、制限がかかった場合は家族に協力してもらうことが大切です。

禁止事項に抵触しないストレスの解消法

切迫早産の妊婦は「早産してしまうかもしれない」という不安や、これまで制限されていなかった生活が極端に制限されてしまうことで、大きなストレスがかかります。

そのストレスを解消しなければ、赤ちゃんや母体さらに負荷がかかってしまうでしょう。ストレスは身体の状態を悪化させ、それは胎児への発育へも影響します。

ストレスを軽減するためには、運動など禁止事項となっていること以外でストレス解消法を見つけることが大切です。本を読んだり人と話をしたりなど、禁止事項に抵触しないストレス解消法を試してみてください。

まとめ

切迫早産は早産の手前の状態なので、妊婦さんとしては健康な赤ちゃんを出産するためにも防ぎたいものです。妊娠中にはさまざまなトラブルがあり、それが切迫早産への引き金となることも少なくありません。

しかし、切迫早産はまだ早産にはなっていないので、予防や治療をすれば早産を防ぐことも可能です。

まずは原因や予兆などを把握して、切迫早産かもしれないと思ったら早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

参考:

・働く女性の心とからだの応援サイトー切迫早産(妊娠22週以降)

・MDSマニュアル・小児科 – 早産児