/ 胎児の染色体異常/

猫鳴き症候群とは?症状と特徴的な顔つきを解説!

猫鳴き症候群という言葉を聞いたことがありますか。これは15,000人〜50,000人に1人の珍しい染色体異常によって起こる疾患です。男女比は5対7と女の子が多く、特別な治療法はありません。この珍しい猫鳴き症候群の症状と特徴的な顔つきについて解説します。

猫鳴き症候群の特徴とは

猫鳴き症候群とは、新生児期に猫のような甲高い声で泣くことが多いのでこのように呼ばれています。そして、猫鳴き症候群にはたくさんの呼称があります。

他にはフランス語で「猫の鳴き声」の意味である「クリ・デュ・チャット症候群」、「5pマイナス症候群」「5pモノソー」「5p欠損症候群」などと呼ばれています。

ただWHOも提唱していることなのですが、動物に例えるのは人道上適切ではないとされているので、「猫鳴き症候群」の呼称より小児学会で推奨されている「5pマイナス症候群」の呼称がこれからは適切になってくるでしょう。

特徴的な泣き声

先にも挙げた通り、新生児期に猫に似た高音の特徴的な泣き声をしています。この泣き声は一般的に出生直後からみられ、数週間続きなくなります。ですが、猫鳴き症候群である全員がこの特徴的な泣き方をするわけではありません。

低出生体重

猫鳴き症候群患者は2500g未満で生まれることが多いです。

染色体異常や先天性感染症を持つ赤ちゃんは、2500g未満の低出生体重で生まれてくることが多いという特徴があります。

頭は普通のサイズで体が小さい低出生体重の場合は、母体側の要因であることが考えられますが、頭も体も小さい低出生体重の場合は、赤ちゃん側に何かしら要因があると考えられています。

筋緊張の低下

筋肉は常に一定の張りがありますが、筋緊張の低下はそれが弱く体が柔らかくなった状態です。元々乳幼児は体が柔らかいため気づきにくいこともあります。

赤ちゃんを仰向けに寝かせたときに、手足の動きあまりなく、腕がだらんとしていたり、仰向けの状態で両手を掴み体を引き起こそうとすると、頭がついていかず後ろに垂れ下がるなどの特徴が見られます。

また筋緊張の低下が見られると哺乳や飲み込む、などの動作が上手くできないことがあり注意が必要です。

小頭症

その名の通り頭が小さいという症状です。

この小頭小症は、頭の発達がまだ未発達の時に発症することが多いとされています。妊婦健診時に確認されることもありますし、出生してから頭の成長が止まり、小頭症になることもあります。

さまざまな合併症を生じている場合が多い

先天性心疾患や難治性てんかん、尿道下裂や停留精巣、腎無形成・馬蹄腎などの腎臓の奇形を精神発達の低下、乱視や斜視や近視、脊柱側弯症や口唇・口蓋裂、などの合併症が多いです。

ですが合併症がない場合もあります。

また先天性心疾患やてんかんといった合併症がない場合は、寿命は正常です。

猫鳴き症候群の特徴的な顔つき

猫鳴き症候群には合併症や泣き声以外にも特徴的なものが顔つきです。

どのようなものなのか説明します。

眼間開離

眼間開離とは、両目の間隔が広い状態であり、出産と同時に見られる症状で先天性の症候群で見られる特徴です。

染色体疾患の赤ちゃんは目の特徴だけでも、目の離れ具合、目の形、瞳の色、吊り目なのか垂れ目なのかなど、たくさんの症状があります。

この猫鳴き症候群の目の特徴は、両目の間隔が広い眼間開離であることです。

内眼角贅皮

内眼角贅皮は​とは、上まぶたが目頭を覆うところにあるひだ状の皮膚が、目頭を覆い被さるために目が小さく見えたり、目と目が離れて見えたりする特徴であり、場合によっては目頭切開術が適応になることもあります。

耳介低位

耳が頭部の典型的な位置より下にある状態です。

耳介(耳全体の外に出ている部分、ピアスなどをつける耳たぶも含まれるところ)の最上部が外眼角同士を結んだ水平の線より下にあることが特徴です。

この症状はいくつかの遺伝性症候群や発達遅延などにもしばしば関連していることがあります。

​​​​小顎症

小顎症は、字の通り下顎が小さいという症状です。

上顎に対して下顎が後退していて鳥のような顔つき(鳥貌様顔貌)になります。

下顎が小さすぎると、赤ちゃんは食べ物を食べたり呼吸をすることが難しくなりますが、この症状は下顎を延長する手術を受ければ改善、もしくは解消できます。

ですがこの症状は下顎を延長する手術を受ければ改善、もしくは解消できます。

丸顔

猫鳴き症候群の方は丸い顔の輪郭をしているという特徴もあります。

丸顔とは、頬から顎にかけてふっくらとしていて丸みを帯びているということです。

この丸顔は、21トリソミーなどの他の染色体異常の子どもにも見られることがあります。

歯の不具合

噛み合わせの悪さや、慢性歯周病、歯のエナメル質形成不全などがあります。

噛み合わせの悪さは、顎が小さいために歯並びが悪くなることが原因の一つです。

また、エナメル質形成不全は歯が生えてすぐに見られる変色のことで、歯の表面のエナメル質がうまく形成できない状態を言います。

このように、歯や口腔内にもさまざまな問題を抱えていることが多いのです。

猫鳴き症候群の行動の特徴とは?

猫鳴き症候群の子どもには身体的な特徴だけではなく、特徴的な行動が見受けられます。

その中でも反復運動、多動症、自傷行為は日常生活を送る中で、猫鳴き症候群の子どもをサポートする周りの家族が頭を悩ませる問題です。

どのようなものなのか詳しく見ていきましょう。

反復運動

単純な同じ動き(手を叩いたり、指はじきなど)、反復的な物の使用(車のおもちゃを一列に並べる、コインを並べるなど)、反復発語(聞いた言葉をおうむ返しするなど)、同じ場所に行ったり来たりするなどの行動を反復行動といいます。

このような反復運動は自閉スペクトラム症の子どもなどにも見られ、何かを変更することが苦痛で、時には強い反発や癇癪を起こすことがあります。

自傷行為

壁や床などに頭をぶつける、頭や顔を手で叩いたりひっかいたりする、自分の眉毛や髪の毛を抜く、体を掻きむしるなどの行為は自傷行為に当たります。

自分の指の爪を噛んで食べてしまうことも、大袈裟に聞こえますが自傷行為の1つです。

自傷行為を行う理由は、周りとのコミュニケーションが取れないもどかしさや、周囲の興味を引きたい、刺激に対して敏感なところと鈍感なところがある、遊び感覚でやってしまう、などさまざまなものがあります。

ですが原因は一人ひとり異なるので、その子はどういった理由で自傷行為に及んでしまうのか見極めて判断することが必要です。

多動症

多動症の特徴としては、手足をそわそわ動かしたり、静かに遊べない、順番を待つことが困難、静かに遊べない、じっとしていない、しゃべりすぎる、席についていられない、他人を妨害し邪魔をする、質問が終わる前に答え始めるなどの行動が挙げられます。

猫鳴き症候群はどうやって診断されるの?

猫鳴き症候群の特徴を説明してきましたが、猫鳴き症候群は出生前検査やFLASH法、マイクロアレイ染色体検査などで診断が確定します。

妊娠時に胎児の状態を知りたくて出生前検査を受け発覚することもありますし、妊婦健診のエコーで正常ではない場所が見つかり検査を勧められ発見されることもあります。

出生後は小頭症・低出生体重・筋緊張低下症・猫のような泣き声などの症状から判断しますが、猫鳴き症候群は症状が多岐に渡るため診断が困難な場合も多いです。

なので染色体異常を調べることが必須となります。

出生前検査

出生前検査は出産前の妊娠期に行う検査です。

検査方法も多数ありますが、新型出生前検査(NIPT)は母体からの血液を採取するだけで検査ができるので胎児を流産したり死産するリスクがありません。

母体血中の胎児DNAを分析し、染色体の異常や遺伝子の異常を調べるもので、妊娠10週0日から受けることができます。

とても精度が高い検査ですが、新出生前検査で陽性が出た場合、確定的検査である絨毛検査や羊水検査を受けて診断を確定させます。

FLASH法

FLASH法は子どもが生まれてから行う検査です。

蛍光 in ハイブリダイゼーション方法とも呼ばれており、蛍光物質をつけた対象となる遺伝子と標準的な遺伝子を比較して可視化する方法になります。

染色体の形態も評価できるため、染色体構造異常の確認に用いることも可能です。

マイクロアレイ染色体検査

この方法も子どもが生まれてから行う検査です。

染色体を細かく分割し、蛍光組織で標識することによって、健常者と羅患者の色素強度を比較し、異常を判断する検査方法です。

従来の染色体検査より50倍〜100倍程度の細かいサイズの過不足を見分けることができるため、原因同定の可能性が高くなります。これまで原因不明といわれていた遺伝性疾患の診断に大きな貢献をしています。

まとめ

猫鳴き症候群には色々な呼称があります。

また症状や合併症、顔つきなどもたくさの特徴をもっていることも、猫鳴き症候群の特性の1つと言えるでしょう。ですが合併症や身体的特徴も手術や投薬などで改善されることがたくさんあります。

心疾患や難治てんかんを持っていた場合は予後が左右されますが、治療法も医学が発展してきた昨今では心疾患の手術の成功率は上がってきています。

猫鳴き症候群と診断されても周囲や医療のサポートを借り、支えながら生きていくことが可能です。

参考文献

・ヒロクリニックークリ・デュ・チャット症候群(猫鳴き症候群、5pマイナス症候群)

・5p−症候群の子を持つ家族の会ー5p−症候群につい

・MSDマニュアルー染色体欠失症候群 眼の先天異常 耳の先天異常 顎の異常

・Medical Noteー気付かれにくい赤ちゃんの筋緊張低下。早期発見に向けて「筋緊張低下医療相談」の提供を開始 筋緊張低下 小頭症

・MIYA FACE CLINICー蒙古ひだ

・リタリコ発達ナビー障害のある人の自傷行動の原因、対処法、自傷行動がみられたときの相談先まとめ

・NHKー子どもの発達障害 「注意欠如・多動症(ADHD)」とは?症状など徹底解説

・NIPT japanー出生前診断とは

・ヤクルト中央研究所ー健康用語の基礎知識