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帝王切開にはどんなメリットがある?デメリットとあわせて解説

出産を控えている方は、帝王切開に対してどのように思っているでしょうか?

「お腹を切るから痛い」「自然に産んであげたい」「陣痛がないから楽なのかな?」色々な意見があると思います。

帝王切開の最大のメリットは、お母さんと赤ちゃんの命を優先できることです。

しかし、恐怖心や術後への不安が消えることはないでしょう。

この記事では帝王切開のメリット、デメリットを説明することで、少しでも不安の少ない状態で帝王切開による出産ができるようお手伝いをしたいと考えています。

帝王切開とは

帝王切開とは、お母さんの体や赤ちゃんに何らかの問題があり、経腟分娩が難しいと医師が判断した場合に選択する方法です。

帝王切開は麻酔をかけます。多くの場合、脊椎くも膜下麻酔、硬膜外麻酔とよばれる局所麻酔を選択します。この方法を取ることにより、お母さんは意識がある状態で手術を受けることができます。そして局所麻酔は全身麻酔に比べて、赤ちゃんへの影響が少ないともいわれています。

多くの場合、お腹の下の方を横に切って赤ちゃんをとりだします。

帝王切開にはもともと予定されているものと、出産時の状況で緊急に決まるものがあります。

予定帝王切開の場合

検査等から帝王切開を選択した方が良いと医師が判断した場合、手術予定日を決めて行う方法です。

出産予定日より1.2週間早い妊娠38~39週ごろに予定されることが多いです。入院日数は経腟分娩よりも数日多くなります。

緊急帝王切開の場合

緊急帝王切開とは、経膣分娩で出産に挑もうとしている出産の最中にお母さん・赤ちゃんにトラブルが発生し、リスクや命の危険があると判断した場合、緊急で選択されることを指します。

帝王切開のメリットとは

帝王切開のメリットは、赤ちゃんが無事に生まれてくる安全性を高めることができることです。

メリットについて詳しく解説していきます。

陣痛がない

初産の方が陣痛を感じている時間は、14時間ほどといわれています。

帝王切開では、麻酔を使用するため出産の間は痛みを感じません。痛みを感じない分、母体への負担が少ないといえます。

出産時間が短い

経腟分娩の分娩時間は、初産婦で12~15時間、経産婦で5~8時間といわれています。

帝王切開では、およそ1時間ほどで出産を終えることができます。

出産日が事前に決まるため、産後の予定が立てやすい

出産日が予定されているため、家族の予定が立てやすいことがメリットです。

旦那さんの育休取得や、赤ちゃんの兄弟・姉妹の予定の調整等もしやすいといえます。

帝王切開のデメリットとは

帝王切開はお腹を切って赤ちゃんを取り出すのでリスクもあります。デメリットはこちらです。

合併症のリスク

手術中は、膀胱や腸や赤ちゃんを傷つけてしまう可能性があります。

手術後は、傷が開いてしまう縫合不全や出血、腸閉塞などがあります。

手術中、同じ姿勢でいることにより血栓ができてしまう「静脈血栓塞栓症」があります。これは足の静脈に血栓ができる病気ですが、この血栓が肺の動脈まで移動すると「肺塞栓」という命に関わる病気を引き起こしてしまう可能性があります。予防するためには術後なるべく早く動くようにしましょう。

手術の傷の痛みがある

手術後の痛みは、2〜3日程度続くといわれています。帝王切開のメリットで陣痛がないことを挙げましたが、出産後に子宮が小さくなる時に感じる後陣痛は帝王切開であっても感じます。

手術の傷の痛みに加え後陣痛もあるため、産後赤ちゃんのお世話をしながら体への負担が大きいといえます。

傷跡が残る

帝王切開をすると、傷跡が残ることを心配されている方もいると思います。

現在多くの帝王切開でお腹の下の方を横に切る横切開が選択されています。この方法だと傷跡がケロイドになることが少なく、下着に隠れて目立ちにくいです。

なるべく目立たなくするために、術後の傷跡のケアをしていきましょう。傷専用のテープを使ったり、保湿をすることで傷跡が目立たなくなるといわれています。

メンタル面のケアが必要

帝王切開で出産した方の中には、思い描いていた出産方法でなかったと落ち込んでしまう方がいます。

「傷跡を見るたびに辛い気持ちになる」「陣痛を経験していないから母親になりきれない」「帝王切開だから母乳が出にくいのではないか」など、さまざまな思いをもちます。

特に緊急で帝王切開になった場合、気持ちの準備ができないまま進んでいくため、出産後の心のケアが必要な場合があります。家族や周囲のサポートが必要になります。

2人目以降の出産時に注意すること

出産方法が限られる

帝王切開で出産した場合、2回目以降の出産方法も帝王切開が推奨されています。これは子宮破裂の危険があるからです。

帝王切開後で経腟分娩を希望される方は、子宮破裂のリスクがあること、途中で帝王切開に切り替わる可能性があることなどを理解した上で医師に相談をしましょう。

子宮破裂のリスク

一般的に子宮破裂の起こる確率は0.1%未満ですが、帝王切開後の方は0.3~3.8%と高くなります。手術の傷の部分は組織が薄くなっています。大きくなった子宮とともにその部分が伸ばされ、さらに薄くなりそこから破裂をする危険がでてきます。

子宮破裂が起こってしまったら、大量に出血し命の危険があります。赤ちゃんが死亡してしまうこともあります。

帝王切開をした方の出産回数は一般的に3回までとされています。これも子宮破裂の危険を回避するためです。

帝王切開で出産するのはどんな時?

予定帝王切開

経腟分娩ではお母さんと赤ちゃんの安全を守ることが難しいとわかった場合、医師から帝王切開をすすめられます。手術日は出産予定日より早い38~39週頃に設定されます。

具体的には、検診で赤ちゃんに何らかの異常(胎児異常)が見つかった場合や、双子以上の妊娠(多児妊娠)の場合、産道をうまく通ることができない可能性があるので、帝王切開を選択する場合があります。

帝王切開術後

帝王切開を1回以上経験している方は、子宮破裂の危険があります。

また、子宮の手術後などは、傷の部分が妊娠経過とともに伸ばされ、破裂してしまう危険性があります。

児頭骨盤不均等

赤ちゃんの頭が大きい場合や骨盤が狭い場合など、赤ちゃんが骨盤を通り抜けることができないと判断された時に帝王切開を選択します。

前置胎盤、低置胎盤

  • 前置胎盤:胎盤が子宮の出口の一部分またはすべてを塞いでいる。
  • 低置胎盤:胎盤が低い位置にある。

前置胎盤は、妊娠後半に突然出血を起こすことがあります。分娩時にも大量に出血する危険性があります。

緊急帝王切開

経腟分娩の途中にお母さんや赤ちゃんに何らかのトラブルがあり継続することが難しいと判断された場合、緊急帝王切開に切り替わります。

胎児心拍異常

分娩中は陣痛と赤ちゃんの心拍を分娩監視装置と呼ばれるモニターで確認しています。モニターで赤ちゃんが十分に酸素を受け取れていない、へその緒が赤ちゃんに絡みついてしまったなどの異常を示した場合、緊急帝王切開になることがあります。

分娩停止、遷延

  • 分娩停止:陣痛があるのにお産が進まない状態が続くこと。
  • 遷延:子宮の入り口が十分に開かずにお産が長く続いていること。

赤ちゃんの頭が降りてきている状態であれば、鉗子や吸引などの器械を使って分娩をおこないますが、そうでない場合は帝王切開となります。

妊娠高血圧症候群の増悪

妊娠高血圧症候群が悪化すると、胎盤の機能が低下してしまいます。このことで赤ちゃんへ十分な酸素が送り込まれない可能性、胎盤がはがれ落ちてしまう危険性があります。

子宮内感染

破水をすると子宮と外がつながる道ができます。破水してから時間が経過すると、そこから菌が侵入して子宮内が感染してしまうことがあります。子宮内感染は母体、赤ちゃんともに危険な状態となる可能性があるため、帝王切開を選択します。

 常位胎盤早期剥離

胎盤が通常の位置にあるにもかかわらず、妊娠の途中ではがれてしまうことをいいます。

胎盤がはがれてしまうと赤ちゃんに必要な酸素や栄養が送られなくなってしまいます。そして胎盤がはがれると大量に出血をしてしまいます。母体、赤ちゃんともに命の危険のある重大なものです。

妊娠高血圧症、子宮内感染、喫煙している方はリスクがあるといわれています。

回旋異常

分娩が始まると赤ちゃんは骨盤や産道を通り抜けるために少しずつ体勢や向きを変えていきます。回旋異常はこの動きがうまくできていない状態をいいます。この状態が続くと分娩時間が長くなったり、分娩停止の状態になることもあります。

臍帯巻絡、脱出

臍帯巻絡とは赤ちゃんの体にへその緒が巻き付いてしまっている状態です。頻度は20~25%と低くありませんが、首にきつく巻き付いてしまったり、へその緒の血流が悪くなり赤ちゃんの心拍に異常が出る場合があります。

臍帯脱出とは、破水後に赤ちゃんよりも先にへその緒が外に出てきてしまう状態です。骨盤と赤ちゃんでへその緒が圧迫されてしまい、赤ちゃんへ血液が送られない危険な状態となってしまいます。

まとめ

帝王切開のメリット、デメリットについて解説してきました。

帝王切開と聞くとついデメリットである痛みや傷について思い浮かべる方も多いかと思いますが、メリットにも目を向けていくことで前向きに帝王切開に気持ちを向けることができるかもしれません。

出産後はどんな出産方法でも精神的に不安定になりやすいといわれています。

帝王切開で出産した自分を責めたり、落ち込んだりすることなく、周りに相談、頼っていきましょう。

参考文献

・厚生労働省ー合併症を有する妊娠と周産期医療体制

・日本産科麻酔学会JSOAPー帝王切開の麻酔Q&A

・日本産後ケア協会ー産後ママが精神的に不安定になりやすい3つの要因