ディジョージ症候群とは?出生前診断でわかる?
赤ちゃんが健康で無事に生まれてくれることは、かけがえのない幸せです。
しかし、まれにそうではない赤ちゃんも確かに存在します。赤ちゃんを構成する染色体は多くても、欠けていても、お腹の赤ちゃんに大きな影響を与えてしまうのです。
今回は、ディジョージ症候群についてご紹介いたします。ダウン症の次に多いと言われるこの先天性疾患は、染色体が少ないことが原因で起こるものです。
もし生まれた赤ちゃんがディジョージ症候群であるとわかったら、受けられる公的助成や患者の会なども一緒にご紹介いたします。どうぞ最後までご覧ください。
この記事の内容
ディジョージ症候群とは
それでは、ディジョージ症候群について詳しく説明いたします。
ディジョージ症候群とは
ディジョージ症候群とは、染色体が欠けることで胸腺が未発達、または正常に生成されなかったために、免疫不全をはじめとしたさまざまな疾患を起こす先天性疾患のことです。22q11.2欠失症候群とも呼ばれます。
通常人間の体は23対の染色体により構成されています。この特定の一部の染色体が微細に欠けていることを微小欠失症候群といい、胎児に大きな影響を与えてしまうのです。ディジョージ症候群は、22番目の染色体が欠けていることで発症してしまうことがわかっています。
ディジョージ症候群はおよそ4000〜5000人に一人の割合で生まれてくるとされており、基本的に染色体が突発的な異常状態になることで起こります。しかし、お父さんお母さんのどちらかがディジョージ症候群を持っていた場合、稀に50%の確率で遺伝し、引き起こされる可能性もあります。
ただし、この遺伝でディジョージ症候群が引き起こされる確率は、10%未満とかなり低いものです。そのため、多くはお父さんお母さんの遺伝子には何の問題も異常がなく、突然の染色体異常により発症します。
ディジョージ症候群は、ダウン症の次に多い疾患とされていて、日本では現在およそ4500人の方が疾患を持っています。近年では多くの企業や研究所が、より明確に出産前診断などでディジョージ症候群が判明するよう日夜研究がなされています。
症状と特徴について
ディジョージ症候群の症状や特徴は、染色体が欠けている場所や大きさによって障害の度合いが変わります。ディジョージ症候群は主な症状として以下の疾患が挙げられます。
- 血液の中を流れるリンパ球の調節を行う胸腺が生成されていない、または未発達のために起こる免疫不全
- 心臓が正常に動かない、または生成がされていない先天性心疾患
- 血液中のカルシウムなどを調整する副甲状腺が未発達
- あごが小さく、口の上蓋部分が割れており、耳が低い位置にあるなどの外見的特徴
- 精神的、知的発達がゆっくりである
ディジョージ症候群の治療は
ディジョージ症候群の治療は、疾患の度合いにより変わります。胸腺の発達具合により、カルシウムやビタミンDを増やすサプリメントなどの服薬で対処できる場合もあれば、心臓や胸腺を移植する手術などを行わなければならない場合もあります。
ディジョージ症候群の予後について
ディジョージ症候群の、長期的な予後に関するデータは今のところ存在しません。心臓移植などの手術ができ、免疫不全などに対して適切な処方がされるのであれば、就労なども可能だとされています。
ディジョージ症候群はいつ判明するのか
疾患の度合いによっては、大変厄介な症状をもたらすディジョージ症候群ですが、いつ判明するのでしょうか。症状のことをできる限り早く知ることで、今後の育児や通院などに備えておきたいものです。
ディジョージ症候群がいつ判明するのか、出生前診断などで赤ちゃんが生まれる前に知ることができるのかをご説明いたします。
出産後に判断する
ディジョージ症候群は、基本的に出産後に判明します。血液検査や心エコー検査などを行う臨床健診などで症状を疑われ、異常を調査するのです。
血液中のリンパ球の数値を通常のものと比較し、心エコーで心臓の異常性を見つけます。また胸腺を調査するために、胸部をX検査することもあるようです。
NIPTで判明する可能性がある
では、生まれる前に知ることはできるのでしょうか。
結論から申し上げるのであれば、かなり難しいと申し上げるほかありません。
ディジョージ症候群を引き起こす22番目の染色体の欠損は、かなり小さく、通常の出生前診断ではわからないことがほとんどです。ただし、昨今のさまざまな研究努力の末、新しい出生前診断であるNIPT(新型出生前診断)でわかる可能性があります。
しかし、NIPTは非確定的検査のため100%ディジョージ症候群である、とは断言することができません。もし陽性であったなら、羊水検査や絨毛検査といった確定的検査を行うことをおすすめします。
日常生活での注意点は
ディジョージ症候群を持って生まれてきた赤ちゃんに対して、今後の生活や育児など、どのような点に注意していくべきか、お母さんをはじめご家族の方は大変不安なことだと思われます。
ディジョージ症候群の家族を持つ方は、日常生活においてどのような点に注意すべきかを説明いたします。
術前と術後で注意すべきことが異なる
ディジョージ症候群は心疾患の手術を受ける前や受けた後で注意すべき点が異なります。手術前は、主に抜歯などの歯科治療や感染症の予防が大きな注意点です。手術後は、合併症の具合や度合いによって変化しますので、医師とよく話し合う必要があります。
手術を行う前後のどちらでも一番注意すべきことは、激しい運動やスポーツなどを制限することです。運動前にはしっかりと準備運動を行う、水分補給をこまめに行う、適切に休憩を取るといったことが求められます。
ディジョージ症候群は支援を受けられるのか
ディジョージ症候群は公的な支援や助成を受けられるのか、ご説明いたします。
指定難病のため公的助成制度の対象になる
ディジョージ症候群は指定難病として国に指定されています。そのため、医療費助成制度が利用できます。助成対象として治療費の自己負担上限額が定められており、これを超えると国から補助が降りる形になります。
また知的障害や精神的障害が認められた場合は「療育手帳」や「身体障害者手帳」、「障害児童福祉手当」などの対象となる可能性があります。
助成制度を受けられないこともある
先に申し上げている通り、ディジョージ症候群は染色体の欠損具合により症状が軽いものから重いものまでさまざまです。そのため、医学的見地から助成制度の対象外になる可能性もあります。
医師や市の相談窓口などで、赤ちゃんが受けられる制度を確認しておくのが大切です。
ディジョージ症候群の法人支援は
ディジョージ症候群のみを支援している法人団体はありませんが、ディジョージ症候群を含めた難病を持つ赤ちゃんや患者を支援している企業や団体が存在します。
また地域の療育センターなどでも、お母さんのカウンセリングや相談窓口を開いているところがありますので、育児の悩みや相談をしてみると良いでしょう。
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)は、難病や長期慢性疾病、小児慢性疾病などを持つ患者とご家族によって運営されている中央団体です。難病指定の患者の尊厳などを国会に申請したり、患者家族が情報交換を行う場を設けたりするなど積極的に活動されています。
まとめ
ディジョージ症候群についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
この記事のポイントは、以下の4つです。
- ディジョージ症候群は、染色体の欠損からなる遺伝子疾患です。
- 出生前にわかることはほとんどなく、出産後の臨床で判断されます。
- 治療法は、主に心臓などの免疫に対する手術が行われます。
- 公的助成は、障害の度合いによって受けられる場合があります。
出産後にならなければ、ほとんどわからない疾患です。しかし、最近の医療技術の発展によりNIPT(新型出生前診断)で判別できる可能性があります。
もし気がかりであるならば、パートナーや医師と相談し、受けてみると良いでしょう。