妊娠初期の流産の原因とは?注意すべき兆候と予防法について解説
妊娠をした後に胎児が亡くなってしまうことを流産といいます。
皆さまの中には、せっかく妊娠したのに流産してしまわないか不安に思う方もいるかもしれません。
一般的に流産になりやすいとされている生活習慣があるため、上記のような不安を抱えられている方は、よく覚えておきましょう。
ここでは、妊娠初期に流産が起こりやすい理由や、流産の原因として考えられるもの、流産の手術方法についても解説するので、参考にしてみてください。
この記事の内容
妊娠初期に流産が起こりやすい理由を解説
妊娠12週未満での流産を早期流産といい、流産全体の8割を指します。
しかし、なぜ妊娠12週未満での流産が多いのでしょうか。
その原因には以下の2つが考えられます。
・赤ちゃんの染色体異常
・母体の年齢
ここからは、早期流産が起こりやすい原因を2つの観点から解説するので、参考にしてみてください。
赤ちゃんの染色体異常
妊娠12週未満での流産の原因は、ほとんどが胎児の染色体の異常です。
具体的には、1番から22番までの染色体が1本多いトリソミーや、1本少ないモノソミーによって、流産を起こすことが考えられます。
つまり、受精卵の段階で流産するかどうかが決まっています。
無理な運動や喫煙習慣などがない限り母親に原因はないので、気にする必要はありません。
母体の年齢
流産は、年齢によっても起こりえます。
30代になると確率は大幅に高くなり、40代になると30%以上の割合で流産してしまいます。
年齢を重ねた方が流産の確率が高まるのは、健康な卵子を排卵するのが難しくなるからです。
流産の原因として考えられる母体側の病気とは?
何回も流産を繰り返している場合、母親側が何かしらの病気を持っていることが原因かもしれません。
具体的には、以下3つの病気が考えられます。
・黄体機能不全
・子宮形成不全
・甲状腺の病気
上記の病気の場合、治療を受けることで改善する可能性があります。
ここからは、上記3つの病気について解説するので、参考にしてみてください。
黄体機能不全
黄体機能不全はエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が減少する病気です。
エストロゲンやプロゲステロンは受精卵が着床しやすい状況を作る物質であり、黄体機能不全になると着床しづらくなります。
治療法には黄体賦活療法や黄体ホルモン補充療法がありますが、有効性が確立されているわけではないため、医師とよく相談する必要があります。
子宮形成不全
子宮形成不全は子宮奇形とも呼ばれており、子宮の形が異常になっている状態のことです。全女性の5%が発症しているため、まれな病気ではありません。
子宮形成不全は早期流産の原因になる他、月経不順を引き起こすこともあります。治療は手術で行いますが、妊娠において影響が少ないとされる場合は治療をしない場合もあります。
子宮形成不全でも妊娠する場合はあるので、そこまで神経質になる必要はありません。
甲状腺の病気
喉仏の下にある甲状腺から、甲状腺ホルモンが分泌されています。
この甲状腺ホルモンは、多すぎても少なすぎても妊娠に悪影響を及ぼすとされており、流産の原因にもなるわけです。
この点においては明確なメカニズムが明らかになっていませんが、甲状腺ホルモンが乱れると流産しやすくなると覚えておけば大丈夫です。
流産の原因になりうる日常生活での行為とは?
早期の流産のほとんどは染色体の異常が原因であり、母親に責任はありません。しかし、流産につながりやすい生活習慣には気をつけなければいけません。
特に以下の3点は流産の原因になりうるので、覚えておきましょう。
・激しい運動
・酒やたばこ
・栄養が偏った食生活
ここからは、上記3つの習慣と流産について解説いたします。
激しい運動
妊娠中の過度な運動は、転倒によって胎児が死亡したり、母体に悪影響を及ぼしたりします。ダンスや長距離疾走といった体を激しく動かす行為は、やめておきましょう。
妊娠後期は運動不足になりがちなので運動をしがちですが、ストレッチやウォーキングにとどめておくのがおすすめです。
酒やたばこ
妊娠中の酒やタバコは控えておきましょう。
タバコは血流量を下げるため、胎児に悪影響を及ぼし流産の原因になりえるからです。流産だけでなく奇形や低体重児が生まれる可能性があるので、妊娠中のタバコはやめておきましょう。
また、妊娠中にアルコールを摂取すると、胎盤を通じて胎児にアルコールが届きます。つまり、胎児が飲酒するのに近い状態になってしまうのです。
胎児はアルコールをうまく代謝できないため、胎児性アルコール症候群や奇形といった症状が生じかねません。
栄養が偏った食生活
偏った食生活を続けていると肥満になることが考えられます。妊娠後期に肥満になると流産の可能性が高まるため、妊娠中の食生活には気を付けましょう。
また、偏った食生活によって栄養不足に陥ると、胎児に悪影響を及ぼすことが考えられます。養不足は母体にも良くないので、妊娠中はバランスの良い食事を心がけましょう。
妊娠初期に起こる流産の手術方法
胎児が亡くなった場合、胎児を摘出する流産手術を行います。
この手術には吸引法手術と掻把手術の2種類があり、それぞれで摘出する方法が異なるので覚えておきましょう。
ここでは、流産手術の2つの方法や、メリットとデメリットを紹介していくので、参考にしてみてください。
吸引法手術
吸引法手術とは、筒状の金属を子宮の中に入れて、胎児や胎盤を吸引する方法のことです。
安全性が高く、WHOはこの吸引法を中絶の手術として推奨していますが、日本では特殊な症例でしか実施されていません。
手術例が少ないということは技術を持った医師が少ないということであり、術後のケアを受けられる病院が限られてきます。
吸引法手術を採用しているクリニックをネットで調べられるため、もし興味があれば検索してみるのも良いでしょう。
吸引法手術は安全性が高く危険性が少ないので、母体への影響が少ないのがメリットです。
そのため、体力に自信がない方におすすめの手術と言えます。
掻把手術
掻把手術とは、あらかじめ子宮口を開いておき、スプーン状の器具で胎児と胎盤を取る手術のことです。
日本では掻把手術がメインとして取り入れられており、大学病院でも最初に習う手術方法です。手術例が多いため熟練の医師もおり、手術後のケアも受けられやすいのもメリットと言えます。
反対に、医師の技術が低い場合に、深刻な事故が起こる可能性があります。
また、手術時間が長くなると、子宮内の炎症が起こる可能性があるリスクにも注意しましょう。
流産が起こりやすい年齢とは?
流産のリスクは、年齢によっても大きく関わってきます。
年齢を重ねることで健康な卵子を排出しづらくなり、この状態で受精しても細胞分裂できずに流産を起こしてしまうわけです
基本的に20代が最も少なく、40代以降になると流産の発生確率が高くなります。
ここでは、年齢による流産のリスクについて解説いたします。
20代
20代が流産する確率は、8%〜20%ほどです。
一口に20代といっても年齢によって確率が変わり、特に20代後半は10%と比べると低い数字になっています。
20代後半は妊娠の適齢期というわけです。
30代
30代女性の流産確率は、20%〜25%ほどとなっています。
30歳を超えると流産のリスクが大幅に高まり、4人〜5人に1人は流産になってしまうわけです。
30代で妊娠中・妊娠予定の方は、生活習慣や体調管理などに十分注意しましょう。
40代
40代の流産確率は30%程度となっています。
特に45歳を超えると50%を超え、流産のリスクがより高くなります。
タバコやアルコール、無理な運動などを避け、少しでも流産のリスクを下げるようにしましょう。
まとめ
初期流産は、およそ5人〜6人に1人の割合で起こりえますそのため、20代でも初期流動と無縁ではありません。
流産の原因になりかねない生活習慣はできるだけ控え、黄体機能不全といった病気があれば治療を受ける必要があります。
妊娠中にいつもと違う症状があれば、すぐに病院へ受診しましょう。
参考文献
・厚生労働科学 研究「不育症治療に関する再評 価と新たなる治療法の開発に関する研究」 -反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル
・一般社団法人 日本女性心身医学会-女性の病気について