/ 胎児の染色体異常/

5p マイナス症候群とは?原因と合併症について解説

皆さまは、5pマイナス症候群というものをご存じでしょうか。

5pマイナス症候群とは、染色体に異常が生じることで引き起こされる染色体異常症候群の一つです。

今回はそんな5pマイナス症候群の症状と原因、それに伴う合併症について解説していきます。

5p マイナス症候群ってどのような症状なの?

私たち人間はざっと見積もっても60兆個の細胞が一塊になっている存在です。

その細胞の核の中に染色体というものが23対46本あります。

5pマイナス症候群とは5番目の染色体が正常な染色体に比べて、部分的に欠失していることで生じる染色体異常症候群の1つです。

5pマイナス症候群は、​​5p欠失症候群や猫鳴き症候群とも呼ばれていて1万5000人〜5万人に1人の割合で出生します。

男女比は5対7と女児に多い傾向です。

では5pマイナス症候群の特徴を見ていきましょう。

猫のような甲高い泣き声

5pマイナス症候群の赤ちゃんは、生まれたときの泣き声に特徴があります。

それは猫のような甲高い声で泣くということが新生児期から乳児期に見られるというものです。

この泣き方は数週間ほどでみられなくなります。

全ての5pマイナス症候群の赤ちゃんがこのような泣き方をするわけではありませんが、「猫鳴き症候群」と言われる所以はここからきています。

また、フランス語で猫の鳴き声を意味する言葉を用いて「クリ・デュ・チャット症候群」などとも呼称されていたこともあります。

しかし今は動物に例えるのは非人道適切ではないとWHOも提唱しており、「5pマイナス症候群」や「5pモノソー」「5p欠損症候群」などの呼称を使うことを推奨されています。

運動発達の遅れ

5pマイナス症候群の赤ちゃんは、頭を動かすことや座るなどの、精神的かつ筋肉的な活動を要する動きが苦手な傾向があります。

生まれてから首が座る時期、腰が座る時期、はいはいを始める時期、歩き始める時期の遅れ、さらに言葉の発達の遅れも確認されています。

一方で、ゆっくりですが少しずつ医療的支援などの力を借りて成長していくこともできます。

精神発達遅延

また5pマイナス症候群の赤ちゃんは、全体的に知能の発達の遅れが確認されています。

なぜ精神発達遅延が起こるのかは原因不明であり、知的障害は中度〜重度とされています。特に言葉の遅れは認められていますが、言葉を理解することは得意なようです。

発達診断や知能検査、心理検査などは子どもの年齢に合わせて行われます。

そのほかに多動や自傷行為なども見られる場合があります。

なかには多動や自傷行為などが見られる場合もあります。

筋緊張低下

筋緊張低下とは、本来一定の張り(緊張状態)を保っている筋肉が、何らかの理由で筋緊張低下状態になってしまうことです。

特徴としては筋肉がマシュマロのように柔らかく、腕などがだらんとしていたり、仰向けで寝かせているときにカエル足の形で太ももの外側が床につくなどです。

しかし乳児は元々体が柔らかいため、判断が難しい場合もあります。

筋緊張低下が確認されると運動面の発達に繋がるほか、何か隠れた病気が起因しているかなど、さまざまな状況や検査から判断していかなければなりません。

5p マイナス症候群の原因と遺伝

5pマイナス症候群は、5番目の染色体が部分的に短く欠損していることが原因だと説明しましたが、なぜ短く欠損しているのか、そしてpマイナス症候群は遺伝によるものなのかどうかについて解説いたします。

突然変異

染色体異常による疾患となると、両親の遺伝子に何らかの原因があるのではと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、5pマイナス症候群の約85%は両親からの染色体異常が認められておらず、突然変異によるものだと考えられています。。

突然変異が起こるうちの約80%は、父親の精子が作られる過程のなかで、何らかの原因により染色体が切断されることにより起こるものです。

つまり、染色体の突然変異による5pマイナス症候群と診断された場合は、遺伝が原因ではないと考えられます。

また5番目の染色体の欠損には個人差があり、欠損が小さいほど症状は軽いとされています。

不均衡型相互転座​​

不均衡型相互転座によって引き起こされている5pマイナス症候群は、全体の約10%前後とされています。

転座とは、1対2本染色体の2か所が入れ替わっていることを指します。

入れ替わっているだけで染色体に過不足はないので、本人は何の障害もなく正常です。

このような染色体を保因する方は均衡型転座保因者と呼ばれています

均衡型転座保因者は道状生活を送るには問題はありませんが、精子や卵子を作る過程でのみ遺伝子情報に過不足のある不均衡な染色体を作ってしまう可能性があるという問題があります。

このように不均衡な染色体を持つ精子や卵子と受精した場合、5pマイナス症候群になる可能性があります。

よって不均衡型相互転座による5pマイナス症候群と診断された場合、原因は両親のどちらかの遺伝によるものと考えられるでしょう。

モザイク型​​

モザイク型は精子と卵子が受精した後に起こる細胞分裂時に、染色体の欠損が見られるというものです。

この場合、正常な染色体を持った細胞と欠損した染色体を持った細胞がモザイクのように混在している状態になります。

正常な細胞と欠損した細胞のどちらも持っているので、一般的に症状は軽い場合が多いです。

よってモザイク型による5pマイナス症候群と診断された場合、原因は遺伝ではないと言えるでしょう。

5p マイナス症候群の合併症

5pマイナス症候群は約10%は生後早期死亡があるとの報告がありますが主要臓器の疾患や合併症がない場合は寿命は正常とされています。

しかし、数々の合併症のなかには、命の危機に晒される危険なものもあります。

先天性心疾患

先天性疾患とは、生まれつき心臓や血管の状態が正常とは異なっていて、心臓や血液の障害が起きてしまうことをいいます。

5pマイナス症候群の赤ちゃんのなかの約20%の割合で、認心室中隔欠損や動脈管開存、心房中隔欠損といった先天性心疾患が認められており、場合によっては新生児期に手術を行ないます。

先天性疾患があるかないかは、生命予後が大きく左右される重要なポイントと言えるでしょう。

難治性てんかん​​

難治性てんかんとは、てんかんの薬を複数服用してもてんかんの発作が治りにくい場合を指します。

てんかんの発作は日常生活を送るなかでいつくるか分からず、頻度は1週間に2回以上とされていて、薬が効かなかった場合には、原因となっている脳の腫瘍を摘出する手術や、電気的刺激を与えて発作を軽減させる方法などがあります。

先天性心疾患同様、難治てんかんを持っているかいないかは、予後が左右される重要な項目です。

脊柱側弯症

脊柱側弯症とは、背骨が直線状ではなく左右に曲がっている病気です。

痛みや肺活量の低下、神経障害を引き起こすことがあります。

​​背骨が直線上ではなく左右に曲がり、多くの場合は背骨のねじれを伴います。

この症状が進行すると心理的ストレスの原因や腰痛や肺活量の低下などの呼吸機能障害、神経障害を伴うことがあります。

成長期には定期的に医師に見てもらい、必要に応じてコルセット装用、修復術を行います。

合指症​​

合指症とは、隣り合った指の一部や全部がくっついている(癒合)している症状です。

皮膚だけがくっついている場合と、骨までくっついている場合がありますが、生後1歳前後に分離手術を行います。

この合指症は1000人〜3000人に1人であり、2:1の割合で男の子に多い傾向です。

目や耳、その他内臓系の合併症

泌尿生殖器、停留精巣や尿道下裂、馬蹄腎・腎無形成などの腎臓の奇形、循環器、歯並び、呼吸器、口唇・口蓋裂、斜視や近視、乱視、消化器、整形外科、また、中耳炎を繰り返しやすく聞こえの症状を持つ、などさまざまな合併症があります。

しかしこれらの症状は、いずれも定期的な検診で早期に発見し治療が可能です。

また合併症がない場合もあります。

まとめ

5pマイナス症候群は染色体疾患ではあるものの、心疾患とてんかんがなければ比較的予後が良いことが多いことがわかりました。

身体的にも精神的にも発達がゆっくりなことが多く、合併症もたくさんありますが、医療ケアや定期検診などをしっかりと受け、体の変化にその都度向き合っていくことですくすくと成長していきます。

また大部分は突然変異によるもので、遺伝的な原因は全体の約10%と低いことも分かりました。

5pマイナス症候群と診断されても、周囲のサポートを得ながら幸せに暮らしている方はたくさんいますので、希望を持って進んでください。

参考文献

・難病情報センター-5p欠症症候群

・TENJIN J-TEC-再生医療のおはなし

・MSDマニュアル-遺伝子と染色体

・MSDマニュアル-染色体欠失症候群

・遺伝子疾患プラス-5p欠失症候群

・遺伝子疾患プラス-脊柱側弯症

・Jaapapnaesneese Phhysyisoailcal Thherearpyapy Assosoioactioan tion 83.猫なき症候群の運動発達

・Medical Note-筋緊張低下

・名古屋市立大学産科婦人科学教室-夫婦のどちらかの染色体均衡型転座

・東京HEARTクリニック-染色体転座について

・5p−症候群の子を持つ家族の会-5p−症候群について

・がんと希少な病気の情報サイト-てんかん

・一般社団法人日本形成外科学会-合指症

・公益社団法人日本整形外科学会-小児の脊柱側弯症