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気づかないと胎児が危険?妊娠中気づきにくい高位破水についてご紹介|正しい知識と対処法について

高位破水は通常の破水とは異なり、気づくのが遅れることで胎児を危険な状態にさらす可能性があります。

この記事では、高位破水の仕組みや起こりやすくなる要因、おりもの・尿漏れと見分ける方法などをご紹介します。高位破水は妊娠中期でも起こりうるため、正しい知識と対処法を理解し、もしものケースに備えましょう。

合わせて、破水とは何かを改めて紹介していますので、是非参考にしてみてください。

出産時に起こる破水とはどういうもの?

経膣分娩であれば、出産時に破水を経験します。しかし、タイミングや卵膜が破れる位置によっては、気づくのが遅れると胎児の命が危険にさらされるケースもあります。

ここでは、破水とは何なのか、どのような種類があるのかについてご紹介します。破水がどのようなものか理解するのにお役立てください。

出産が始まる合図

破水は、おしるしや陣痛と同じく出産が始まる前兆です。胎児と羊水を包んでいる卵膜が破れ、膣から羊水が流れ出てきた現象を指します。破水の種類・タイミングは以下のとおりです。

種類タイミング
前期破水陣痛が始まる前
早期破水陣痛が始まって子宮口が開ききる前
適時破水子宮が開ききった後

一般的に破水が起こるのは、最も陣痛が強くなり子宮口が全開になるタイミングとされています。尿漏れや水っぽいおりものとは異なるので注意しましょう。

破水の仕方は大きく2つ

破水は卵膜が破ける位置によって、2つの種類に分けられます。

破水の種類卵膜が破けた場所
完全破水(低位破水)お腹の低い位置(子宮口付近)
高位破水お腹の高い位置(子宮口から離れた場所)

完全破水では、子宮口付近で卵膜が破けるため、勢いよく羊水が流れ出てくる特徴があります。

一方、高位破水では大量の羊水が勢いよく流れ出ることはなく、少量である場合が大半です。破水に気づかなかったり、尿漏れだと思ってしまう方が少なくありません。

妊娠中に気づかないと危険?高位破水とは

妊娠中、高位破水に気づかないと母体や胎児にさまざまなリスクをともないます。そのため、高位破水についての適切な知識を深め、もしものときに慌てないよう備えることが大切です。

ここでは、高位破水の特徴・原因・危険な理由の3つの観点から、詳しくご紹介します。

高位破水の仕組みと特徴

高位破水は、お腹の高い(子宮口から離れた)位置で卵膜が破れて起きる破水です。破れた卵膜と子宮口までの距離が離れているため、羊水が時間をかけて少しずつ排出されます。尿漏れや水っぽいおりものと間違えるケースもあり、妊婦検診で破水していた事実を知る妊婦さんも珍しくありません。

高位破水に気づくのが遅れると、母体・胎児共に感染症にかかるリスクが高まるため、できるだけ早期に発見し、対処することが望ましいでしょう。

高位破水が起こりやすくなる要因

本来、子宮頚管には胎児を感染症から守る働きがありますが、さまざまな要因によって機能が低下すると、卵膜がもろくなってしまいます。高位破水が起こりやすくなる要因は以下のとおりです。

要因理由
喫煙・受動喫煙たばこの煙に含まれる有害物質が影響するため
コンドームを使用しない性交渉子宮に強い刺激を与えるため
感染症(カンジダ・クラミジアなど)卵膜に傷がついたり炎症が起きたりするため
多胎妊娠母体への負荷が増加するため
強い腹圧くしゃみ・激しい咳や重いものを持つとお腹に強い衝撃がかかるため

お母さん自体が喫煙者でなくても、受動喫煙によって卵膜に影響を及ぼす可能性があります。胎児の健やかな成長のためにも、パートナーの協力は必要不可欠といえるでしょう。

胎児が危険な状態になる理由

通常、完全破水後はスムーズな出産に進むのが一般的です。一方、高位破水は自覚がないままゆっくりと少量の羊水の量が流出します。胎児に必要な羊水の量が不足すると、以下のような重篤な状態になる可能性があるでしょう。

  • 酸素不足による窒息
  • 栄養不足による成長不足
  • 感染症にかかるリスク

羊水不足は、胎児に酸素や栄養が供給できなくなるため、胎児を危険にさらします。羊水量はエコー検診で調べられるので、異変を感じたら速やかに受診しましょう。

高位破水・おりもの・尿漏れを判断する3つのポイント

「下着が濡れているので、もしかしたら高位破水かもしれない」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、高位破水とおりもの・尿漏れを区別する3つのポイントをご紹介します。ただし、自分の判断だけでは不安なときは、かかりつけの産婦人科での検査を検討してください。

判断ポイント①|自分で止められるかどうか

1つめの判断ポイントは、「自分で止められるかどうか」です。尿漏れは自分の意思で止められますが、おりものや破水は自分の意思では止められません。

また、出る感覚が長いか短いかにも意識しましょう。高位破水は、羊水が少しずつ、長い間流れ続けます。一方、おりものは一時的に出る傾向があります。自分で止められるかどうかだけでの判断が難しい方は、次のポイントと合わせて区別しましょう。

判断ポイント②|色や匂いはどうか

2つめは、色や匂いで区別する方法です。破水の場合、おりものや尿とは明らかに異なります。

項目匂い
破水無色透明・薄い黄色・薄いピンク色無臭・独特な生臭い匂い
おりもの半透明・白っぽい色・クリーム色甘酸っぱい匂い
尿漏れ薄い黄色・茶褐色アンモニア臭

破水と尿がさらっとした液体なのに対し、おりものは粘り気があるのも区別する際のポイントです。普段から、尿やおりものの性状や色をよく観察しておくとよいでしょう。

判断ポイント③|どのようなときに出てくるか・量に変化はあるか

高位破水では、液体が流れ出てきたと感じるタイミングや量の変化に特徴があります。

  • 何もしなくても長い時間をかけて流れ出てくる
  • 体を動かすたびに流れ出る
  • 少量ずつ流れ出てくる
  • 流出していた羊水が一時的に止まり、再度流出する

また、重いものを持ったり激しい運動をしたり、体に負荷がかかる動作のときに量が増える場合があります。尿漏れとは異なる感覚があれば、高位破水を疑いましょう。

妊娠中に高位破水かもと感じたら

妊娠中に生じた異変によって「高位破水かもしれない」と不安を感じたら、以下のように対処しましょう。

  • シャワー・お風呂に入らない
  • 速やかに病院に電話する

破水が起こると、いよいよ出産が始まると焦ったり、胎児が無事か不安を感じたりするものです。しかし、高位破水が起きてから陣痛が始まるまでに、数日かかるケースもあります。慌てずに、落ち着いて行動することが大切です。

シャワー・お風呂に入らない

破水すると、羊水を洗い流したくなるかもしれませんが、シャワー・お風呂は厳禁です。すでに卵膜が破れているため、雑菌が子宮に侵入する恐れがあります。大腸菌や腟内に存在するカンジダ菌といった細菌が、破けた卵膜から侵入することで子宮内感染が起こる可能性もあります。

どうしても汚れが気になるときは、清潔なタオルで拭う程度にしましょう。下着には清潔なナプキンやタオルをあて、雑菌や細菌が侵入・繁殖しないよう、こまめに取り換えてください。

病院へ電話する

高位破水に気づき、予想していなかったハプニングによって、思わずパニックに陥ってしまうケースは少なくありません。その場合も、できるだけ早く病院へ電話して医師の指示に従いましょう。なかには、医師の声を聞くだけで安心できる方もいるでしょう。

体を動かすと羊水が出やすいため、できるだけ安静にし、病院へ向かう車内でも横になりましょう。その際、腰にバスタオルを巻いておくと安心です。

まとめ

この記事では、高位破水の仕組みや起こりやすくなる要因、おりものや尿漏れとの判断方法などをご紹介しました。妊娠中、高位破水に気づかないまま放置すると、感染症や早産・流産につながる可能性も少なくありません。

「高位破水かもしれない」と思ったら、速やかに病院に電話し、医師の指示に従ってください。高位破水についての正しい知識と対処法を理解し、大切な胎児の命を守りましょう。

参考文献

・e-ヘルスネットー女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響

・日本医科大学多摩永山病院ー周期看護マニュアル