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妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合のリスクや痛みについて解説

妊婦検診に行ったところ、子宮筋腫があると指摘されてしまい戸惑う方もいるでしょう。

妊娠中でも手術をして摘出したほうがいいのか、その際破水をしないかなど心配は尽きません。

子宮筋腫がある場合、妊娠中にどのような症状がでるのか、手術の必要性と合わせて解説します。

妊娠中に子宮筋腫がある場合の主な症状とは?

妊娠中は、できるだけリスクがない状態で過ごしたいと思う方も多いでしょう。

子宮筋腫は30歳以上の女性20~30%が罹患しており、決して珍しい病気ではありません。

しかし、妊娠中は赤ちゃんの発育に影響が出ないか心配です。

こちらでは、子宮筋腫になったときの症状について解説します。

お腹の張り・痛み

子宮筋腫は、子宮内の平滑筋という部分にこぶのような形で現れます。

自律神経の影響を受けやすく、疲れやストレスを感じると子宮が萎縮しやすいです。

また、出産が近づくと子宮が収縮しやすくお腹の張りも頻繁に感じます。

しかし、妊娠中は胎児の成長と同じく子宮筋腫も成長することがあります。

妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンなど、妊娠を維持するためのホルモンが分泌されているからです。

血栓症になりやすい

妊娠中は胎児と一緒に子宮筋腫も成長します。

大きくなった子宮筋腫が血管を圧迫することで、血液の流れが悪くなります。

流れが悪くなると、血管内に血栓ができる可能性が高いです。

この血栓を放置すると、下肢静脈血栓や脳梗塞や肺梗塞など重大な病気を引き起こす原因になります。

通常、血栓症は出産後になる方が多く、その際ワルファリンと言った血栓を溶かす薬を投薬します。

しかし、妊娠中は胎児に影響があるため、ヘパリンに切り替えられる可能性が高いです。

同じ姿勢で長時間いるのを避けたり、水分を摂取したり血栓予防をしましょう。

流産になるリスクが上がる

子宮筋腫になると血行障害が起こる可能性があり、せっかく着床して胎児が育っても流産になる可能性は高いです。

また、筋層内筋腫が4㎝以上あると、流産や反復流産・不育症になるリスクも高くなります。

子宮筋腫があると、次の可能性が高くなります。

  • 切迫流産:17%~25%
  • 切迫早産:16%~39%
  • 前期破水:7%
  • 早産:9%~20%

1度の流産では子宮筋腫が直接的な原因かは不明です。

しかし、何度も流産を繰り返す場合は、子宮筋腫が原因と考えられるでしょう。

子宮筋腫になる確率は?

30〜40代の女性に多くみられ、全妊娠の1.5〜4.0%に見られます。子宮筋腫は生理がある限り大きくなる可能性はありますが、閉経すると女性ホルモンが減少するため小さくなるでしょう。

出産の際に出血量を測定しますが、子宮筋腫がない方と比較すると、子宮筋腫がある方は2倍近く出血します。

また、子宮筋腫の大きさや位置によっては帝王切開が必要になることがあります。

妊娠中に子宮筋腫が見つかると手術が必要?

実際の妊婦さんをモデルとして起用しています。 

妊娠前に子宮筋腫がある場合、妊娠に影響があるほどの大きいものに関しては手術を行います。

手術方法はお腹を開けて取り除く開腹手術と、お腹を開けない腹腔鏡下手術です。

しかし、腹腔鏡下手術であっても全身麻酔をする必要があるほか、お腹に3〜4箇所小さな穴を開けるので不安に思うでしょう。

妊娠中、子宮筋腫が見つかったら手術を行わなければいけないのか、解説します。

基本は経過観察

子宮筋腫が見つかったからといって、すぐに手術は行いません。

基本的には経過観察を行います。

妊婦健診のときに赤ちゃんの大きさと一緒に、子宮筋腫の大きさも図ります。

妊娠初期の時点で子宮筋腫が大きく妊娠継続の妨げになる、循環障害や栄養障害の原因になっている場合は核出術を行う可能性が高いです。

ただし、この核出術は妊娠12週以降は難しいです。

超音波で子宮筋腫の大きさや部位を調べ、妊娠継続に影響がなければ、そのまま経過観察を行います。

帝王切開になることも

子宮筋腫があっても、帝王切開になる訳ではありません。

エコーや超音波で子宮筋腫の大きさや位置、個数や赤ちゃんの大きさ、胎盤の位置まですべて確認します。

医師が帝王切開にするかどうかを判断するには子宮筋腫だけではなく、赤ちゃんの向きが異常であったり前置胎盤だったり筋層が伸びにくい場合は帝王切開に決めるでしょう。

医師によっては帝王切開の際に子宮筋腫を摘出する方もいます。

この場合、分娩方法は通常の帝王切開の方と同じです。

ただし、帝王切開で出産した場合は次の出産も帝王切開になります。

子宮筋腫は保険が適用される?

いざ手術になったとき、気になるのは手術費用です。

費用が高額だと、手術に対して躊躇してしまうでしょう。

とはいえ、胎児の成長の妨げになっている場合はやむを得ません。

では、実際に手術をする場合どれくらいの費用になるのでしょうか。

手術費用

腹腔鏡下手術を行った場合、費用は病院によって異なりますが入院費を含めておよそ40万円~65万円程です。

保険適応で実施しており、入院日数はおよそ5日間、保険会社の内容によって後からお金が戻るでしょう。

妊娠中に子宮筋腫が理由でお腹が痛くなった時の対処法

仕事や家事をしているとき、お腹が張って辛くなった経験がある方もいるでしょう。

子宮筋腫があるとお腹が張りやすいので、無理をしない生活を心がける必要があります。

では、お腹が張ったときの対処法について解説します。

胎児に影響のない痛み止めを処方してもらう

痛みで仕事や家事が思うようにできないなど、日常生活に影響がある方は主治医に相談して妊娠中でも服用できる薬を処方してもらいましょう。

妊娠中に処方できる鎮痛剤は、アセトアミノフェンです。

服用しても胎児が薬の影響を受けにくいです。

ただし、ロキソプロフェンやイブプロフェン、アスピリンは妊娠中に服用できません。

服用すると胎児の動脈管が収縮し、心不全や胎児水腫の可能性が高くなります。

妊娠中は自己判断で薬を服用せず、医師に相談しましょう。

横になる

お腹が張って辛いときは、シムスの体位で横になりましょう。

その際、できれば骨盤ベルトなどお腹を締め付けているものをはずすと、血行がよくなるので楽になります。

お腹が冷えている方は、腹巻などを使って温めてみたり、温かい飲み物を飲んでリラックスしましょう。

ただし、横になってもお腹の痛みが改善されない・どんどん痛みが強くなる、出血を伴う場合はすぐに掛かりつけの医師へ相談してください。

まとめ 

子宮筋腫があったとしても、必ずしも妊娠に直接的な影響を与えるわけではありません。

大きさや発生位置、個数などをエコーで観察して妊娠や出産に影響がなければ、手術はおこないません。

ただし、子宮筋腫があるとお腹が張りやすく、早産や流産のリスクは高いです。

合併症になる可能性もあるので、子宮筋腫があるとハイリスク妊娠の一因になります。

お腹の張りや痛みを感じたら、横になったり鎮痛剤を飲んだりしましょう。

それでもお腹の張りや痛みが改善されない、出血を伴う場合はすぐに掛かりつけの医師に相談してください。

参考文献

・日本産婦人科学会-10.妊娠初期に確認!合併異常のチェック

・国立研究開発法人科学技術振興機構-子宮筋腫合併症における子宮筋腫変異痛のリスク因子の検討

・MSD Manualus-妊娠中の血管閉塞性疾患

・国立研究開発法人科学技術振興機構-子宮筋腫合併症妊婦の看護支援の検討