新型出生前診断
(NIPT)とは

新型出生前診断
(NIPT)とは?

新型出生前診断(NIPT)とは、採血検査を行い、赤ちゃんの染色体に異常がないか調べる非確定的検査です。
具体的には、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)の3つと性染色体(XXおよびXY)の異常、または微小欠失症を調べることができます。
妊娠10週目から検査を受けることができ、従来の母体血清マーカー検査に比べると精度が高く、早い段階で検査を受けられるのが新型と言われる所以です。
また採血による検査であるため、妊婦さんと赤ちゃんの身体に与えるリスクも少なく、1回の来院で検査が終わることも特徴のひとつです。

新型出生前診断
(NIPT)でわかる
こと

新型出生前診断(NIPT)で調べることができる染色体異常は、「ダウン症候群(21トリソミー)」、「18トリソミー」、「13トリソミー」の3つです。

・ダウン症候群(21トリソミー)
ダウン症候群は、22組ある染色体の21番目の染色体が3本になってしまう染色体異常です。
症状としては、身長が低い、発達が遅い、特徴的な顔つきになる、といったことが挙げられます。
妊婦さんの出産年齢と共にダウン症になる確率が上がり、20歳では1/1,667、40歳では1/106となっています。

・エドワーズ症候群(18トリソミー)
エドワーズ症候群は、18番目の染色体が3本になってしまう染色体異常です。
症状としては、あごが小さい、後頭部が突き出ている、といったことが挙げられます。
先天性の心疾患を患う可能性が高く、約90%の患者が心疾患を発症しており、約60%は生まれる前に亡くなってしまいます。
また出生しても、男児は1.6か月程度、女児は9.6か月程度と寿命が短いのも特徴です。
エドワーズ症候群になる確率は、3,500〜8,500人に1人程度で、発病率は女児の方が高い傾向にあります。

・パトウ症候群(13トリソミー)
パトウ症候群は、13番目の染色体が3本になってしまう染色体異常です。
心臓や脳の病気、発育不全などさまざまな症状が見られ、赤ちゃんの多くは出産前に亡くなってしまいます。
出産できたとしても、平均寿命は3~4か月ほどです。
パトウ症候群になる確率は、5,000〜12,000人に1人程度といわれています。

染色体異常症(異数性)

状態 影響 原因
ダウン症(トリソミー21)
21番染色体の二重構造が3つになっていることから、「トリソミー21」と呼ばれています。ダウン症は、発達障害の中で最も一般的な病気で、世界中で約1,000万人が患っています。染色体異常による先天性の病気です。
社会性障害では、他人とのコミュニケーションや社会的な関係の構築が難しいことがあります。精神的な問題では、注意力や集中力の欠如、行動の制御の困難、情緒の不安定さなどが見られることがあります。身体的な問題では、低筋トーンや筋力の低下、関節の柔軟性、心臓や消化器系の先天的な異常などがあります。
また、ダウン症の患者は他の発達障害の患者と比較して、一般的に低いIQを持つ傾向があります。これは、脳の発達に関わる遺伝子の異常により、知的能力の発達が制限されるためです。
21番染色体の一部または全部が3つ存在する染色体異常です。通常、人は23対の染色体を持っていますが、ダウン症の場合、21番染色体が3つ存在するために起こります。この染色体異常は、受精時に親から受け継がれることがあり、母親の年齢が高いほどダウン症のリスクが高くなることが知られています。
エドワーズ症(トリソミー18)
新生児期に発症する先天性異常症の一つです。18番染色体の2本が結合している状態(トリソミー)です。
症状としては、頭部が小さく、顔面の特徴が特殊なほか、心臓病、腎臓病、消化器病などがあります。また、発達障害や精神病などもあります。治療としては、症状に応じて様々な治療が行われていますが、全治は難しい病気です。 通常、人間は各染色体を2本ずつ持っていますが、エドワーズ症の場合、18番染色体が3本存在しています。この染色体異常が胎児の発育に影響を与え、エドワーズ症の症状が現れると考えられています。具体的な原因はまだ解明されていません。
パタウ症候群(トリソミー13)
トリソミー13(Patau症候群)とは、染色体異常の一種であり、染色体13番に3つ以上の複製が存在している状態です。
この病気は、染色体13番に3つ以上の複製が存在することで、様々な症状を引き起こします。頭蓋骨、目、心臓、腎臓、肝臓、脳、腰椎、腹部、肺、腎臓などが異常な形になったり、腎結石の発生などがあります。また、発達障害や精神的な障害もあります。 この染色体異常は、通常は親からの遺伝によるものではなく、胎児の発生過程で起こる偶発的なエラーによって生じます。
具体的な原因は不明ですが、母親の年齢が高いほどトリソミー13のリスクが高まることが知られています。また、染色体異常が起こるリスクは、妊娠初期の胚の細胞分裂過程でのエラーに関連していると考えられています。
クラインフェルター症候群
通常の男性には存在しない余分なX染色体(通常はXY染色体)を持っている状態です。
脊髄性筋萎縮症(SMA)とも呼ばれ、脊髄神経細胞の損傷により、筋肉の発達が遅れることを特徴としています。
また、呼吸器系・神経系の発達障害がみられることもあります。
通常の男性には存在しない余分なX染色体は、通常の男性の性染色体の組み合わせであるXY染色体に比べて、性ホルモンのバランスや性器の発達に影響を与えることがあります。この遺伝子異常は、通常は両親からの偶発的な遺伝子変異によって起こります。
ターナー症候群
Turner症候群とは、X染色体の1本が欠失している状態です。女性のみに発症します。
典型的な症状として、低身長、下垂体機能低下、乳房の発育不全などがあります。また、内分泌機能障害や心血管系の病気などの症状もみられます。 通常、女性は2本のX染色体を持っていますが、Turner症候群の女性は1本のX染色体が欠けているため、異常な性染色体構成を持っています。この欠失は、通常は両親からの染色体異常によって引き起こされますが、具体的な原因はまだ完全には解明されていません。
ジェイコブス症候群(XYY症候群)
男性のX染色体が2本ある症候群です。X染色体は、男性のY染色体と比べて少ない数を持つ染色体です。
通常の男性よりも身長が高くなる傾向があり、学習障害や行動障害を持つ可能性があります。また注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの行動障害を持つこともあります。 通常の受精過程中に生じる染色体異常です。通常、男性はXY染色体を持ちますが、ジェイコブス症候群の患者は、受精時に父親からY染色体の代わりに2本のX染色体を受け継いでしまいます。この染色体異常は、通常の受精過程中に偶発的に起こるものであり、特定の原因やリスク要因は明確にはわかっていません。
トリプロイディ
ヒトは通常46本23対の染色体数を持ちますが三倍体(69本)の染色体をもっている状態です
三倍体妊娠のほとんどが妊娠初期に流産となります。69,XYYは常に父型由来で、胚発生しないか、妊娠前に消失します。 三倍体妊娠は2%程度で、69,XXX、69,XXY、および69,XYYの3種類があり、父型または母型の由来がある。69,XYYは常に父型由来で、胚発生しないか、妊娠前に消失する。

遺伝子異常性(微小欠失症)

状態 影響 原因
プラダー・ウィリー症候群
この症候群は、通常、父親から受け継がれる染色体異常である15番染色体の一部が欠失していることによって引き起こされます。
この症候群は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもたちが抱える特徴的な行動を指します。
特徴的な行動としては、社会的な接触を拒否することがあります。彼らは他人との関わりを避け、孤立した行動をとる傾向があります。また、自分の行動を繰り返すこともあります。同じ動作や行動パターンを何度も繰り返すことで、安心感や予測可能性を得ようとするのです。
さらに、特定の行動を繰り返すこともあります。例えば、物を集めたり、特定の興味や関心を持つことがあります。これらの行動は、彼らの世界を安定させるために行われるものであり、彼らにとっては重要な意味を持っています。
15番染色体の一部が欠失していることが原因であり、多くの場合、父親の精子の形成過程で起こります。この欠失により、特定の遺伝子が欠落し、プラダー・ウィリー症候群の特徴的な症状が現れます。ただし、稀にこの症候群は、母親からの染色体異常や、染色体異常のない突然変異によっても引き起こされることがあります。
アンジェルマン症候群
15番染色体の一部であるUBE3A遺伝子の変異や欠失によるものです。
智能の低下や学習能力の障害が見られ、言葉の発達が遅れたり、ほとんど話さない場合があります。そのため社会的な相互作用やコミュニケーションが困難になり他者との関係を築くことが難しい場合があります。
姿勢の制御や協調性に問題があり、歩行や動作が不安定な場合などもあります。また、手の細かい動作や筋力の制御にも困難があります。
15番染色体の一部遺伝子の変異や欠失にが原因です。この遺伝子は、脳の発達と機能に関与しており、正常な遺伝子の働きが妨げられることで症状が現れます。この変異や欠失は、通常は親からの遺伝によるものですが、まれに新たに発生することもあります。
ウィリアムズ症候群
染色体7番にあるウィリアムズ症候群染色体(WBS)と呼ばれる染色体異常を起こしている状態です
認知能力の低下や学習障害が見られることがあります。幅広い額、広い口、鼻の橋の低さなどの顔面的特徴も出やすくなります。 心臓の構造や機能、腎臓の機能に問題が生じることがあり、免疫不全の症状も出やすく免疫系の機能が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。 ウィリアムズ症候群の原因は、通常、染色体7番の一部の欠失または重複による染色体異常です。具体的には、ウィリアムズ症候群染色体(WBS)と呼ばれる領域の欠失や重複が主な原因とされています。この領域には、多くの遺伝子が含まれており、これらの遺伝子の欠失や重複がウィリアムズ症候群の特徴的な症状を引き起こすと考えられています。
クリ・デュ・シャ症候群
5p-と表記される5番目の染色体の短腕末端が欠損している状態です。
新生児期の甲高い泣き声から猫なき症候群といった別名もあります。低出生体重・小頭症・窒息・筋緊張低下・呼吸障害などの症状を伴い、小顔、丸顔、耳の位置が低い、顎が小さいなどの特徴的な顔つきをしています。他にも離眼症、大きな鼻梁、下がった口角、短い人中、白髪、異常な横屈曲、口蓋が高い、かみ合わせの悪さ、歯のエナメル質の形成不全、慢性歯周炎などが見られます。 5p欠失症候群は、5番染色体の短腕(p)の末端領域の欠失によって引き起こされ、欠失部分の大きさによって知的障害や発達の遅れが重症となる可能性がある。複数の遺伝子の機能と関連しているとも考えられています。
ディジョージ症候群
22番染色体の小さな欠失がある状態で生じる疾患です。
先天性心疾患、副甲状腺機能低下症、胸腺の低形成、特異的顔貌、精神発達遅滞、言語発達遅滞などが見られます。具体的な症状に応じて、手術や薬物療法、生活指導、介入や療育などの治療を行います。 22番染色体の長腕(22q)の一部(22q11.2)が欠失し、その部分に含まれるTBX1遺伝子の発現に異常が生じることによるものと考えられています。両親の染色体とは関係がなく「突然変異」によって起こることも知られています。
スミス・マゲニス症候群
17番染色体(17p11.2)の位置にある、レチノイン酸誘導遺伝子1(RAI1)に異常がある状態です。
外見的な特徴としては、短い頭、額の突出、眉毛の癒合、顎の突出、短い指などがみられる。症状としては、睡眠サイクルの障害や自傷行為、知的障害、言語発達の遅れ、心疾患などが多く見られる。 17番染色体短腕の17p11.2領域に存在するレチノイン酸誘導遺伝子1(RAI1)の先天異常によるもので、RAI1が持つ睡眠や覚醒などの1日の体内リズム(概日リズム)を制御する機能が低下して症状が現れることになります。また、脳や頭、顔の骨の発達にも関わっている可能性があります。
フェラン・マクデルミド症候群
22番染色体(22q13)末端または中間部欠失している状態です。
身体的特徴としては、大きな手や耳、足指の爪の異形成、長頭、丸く膨らんだ頬部、幅広い鼻梁、先の尖ったあごなどがある。自閉症スペクトラム障害 (ASD) 様行動・情動の傾向にあり、異食行為, 痛覚鈍麻、習慣的に咀嚼をしたり口を動かしたりする神経行動学的特性があります。 フェラン・マクダーミド症候群の原因は、22番染色体の長腕の一部が欠失または変異していることが原因とされています。この欠失または変異は、遺伝子SHANK3の変異によって引き起こされることが知られています。SHANK3遺伝子は、神経細胞の発達や機能に関与しており、その変異はフェラン・マクダーミド症候群の特徴的な症状を引き起こす可能性があります。

新型出生前診断
(NIPT)の特長

NIPT検査の特長は、大きく3つに分けられます。

  • 01

    従来の出生前診断に比べ精度が高い

    これまでの出生前診断は、クアトロ検査で80%~85%、オスカー検査で約90%だったのに対し、NIPT検査の場合は、99%と非常に高い精度を誇ります。

  • 02

    検査方法が採血のみであるため、流産になるリスクが非常に少ない

    確定的検査である「羊水検査」と「絨毛検査」は、0.3%や1%など、ごくわずかではありますが、流産になるリスクが存在します。一方、NIPT検査は、検査方法が採血だけのためリスクが極めて少なく、母子ともに身体への負担が少なくなりました。

  • 03

    早い時期から検査をすることが可能

    NIPT検査は、妊娠10週0日から検査をすることが可能です。従来よりも1週~2週程度、早く診断することができるので、早く赤ちゃんの状態を知りたいと思っている妊婦さんにおすすめです。

NIPTの検査精度に
ついて

NIPTの検査精度は、「感度」、「特異点」、「陽性的中率」、「陰性的中率」の4つの指標をもとに考えられます。
NIPT検査でわかる21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの検査精度は以下の通りです。

21トリソミー 18トリソミー 13トリソミー
感度 99.70% 99.60% 100%
特異点 99.9% 99.9% 99.9%
陽性的中率 96.3% 86.9% 53.1%
陰性的中率 99.996% 99.998% 100%

またダウン症(21トリソミー)に対する、非確定的検査と確定的検査の感度は以下の通りです。

非確定的検査 確定的検査
検査名 コンバインド
検査
母体血清マーカー
検査
NIPT検査 羊水検査 絨毛検査
感度 80% 83% 99% 100% 100%

新型出生前診断
(NIPT)の注意点

新型出生前診断(NIPT)は、非確定的検査であるため、検査結果が確定しているわけではないことを念頭に入れておきましょう。
陰性、陽性、どちらの結果が出たとしても、あくまで可能性が高い(陽性)、低い(陰性)かどうかを判断する検査です。
NIPT検査の結果が陽性であったとしても、確定検査である「羊水検査」の検査結果が陰性になるケースもあります。
このような「偽陽性」になるケースも存在するため、検査結果を鵜呑みにしたりしないよう注意しましょう。
偽陽性とは逆のケースで、NIPTの結果が陰性であっても極まれに赤ちゃんが先天性染色体異常を持って生まれてくる可能性もあります。
性別検査も同様に、男児か女児か判断することは可能ですが、100%正しいとは言えないため注意しましょう。
この他に注意しておくべきことは、全国に多数の医療機関がありますが、NIPTを受診できる条件が決まっており、その条件を満たさなければ検査ができない場合があるということです。
たとえば、「超音波検査などで赤ちゃんが染色体異常を有している可能性があると示唆された場合」などです。
なかには「3つ子以上を妊娠している場合」のように、医療機関に関係なく検査を受けられない条件もあります。

  • Point

    01

    NIPTは主にダウン症、エドワーズ症、パタウ症といった染色体異常のリスクを評価しますが、全ての染色体異常や遺伝性疾患を検出するわけではありません。

  • Point

    02

    いくらNIPTが高い精度を持つといっても、その感度や特異度は100%ではないため、偽陽性(病気がないのに陽性と判定される)や偽陰性(病気があるのに陰性と判定される)の可能性があります。

  • Point

    03

    NIPTの結果はリスク評価であり、結果の解釈やその後の行動については、医療専門家との詳細な相談が必要です。特に、陽性の結果が出た場合には、侵襲的な検査を受けることで確定診断を得る必要があるかもしれません。

  • Point

    04

    NIPTにより、性別や染色体異常のリスクが早期にわかることで、倫理的な問題が生じる可能性もあります。例えば、性別に基づく選択的な中絶や、染色体異常のリスクを理由にした選択的な中絶など、様々な倫理的、社会的問題が浮上する可能性があります。そのため、NIPTを受ける際には、その結果が自身や家族、社会にどのような影響を及ぼす可能性があるかを理解し、慎重に考える必要があります。